●アウトドア派新婚カップルの新車購入記
今も付き合いのある小学校の同級生が
結婚して二人で暮らしているのだが、
車を買う事になったと相談を受けた。
夫のG君は小学校の同級生で、
小学校、中学校と同じ学校に通う。
当時から彼は成績優秀で文武両道を謳う某進学校へ。
その後、法科大学院を経てお堅い仕事に就く。
現在32歳。
妻のNさんとは職場で知り合い、
一年ほどのお付き合いの後、結婚。現在30歳
結婚式では私が友人代表のスピーチを仰せつかった。
夫はあまり車に興味がなく、
仕事で社用車を運転する程度。
妻はペーパードライバーで運転に不安がある。
「妻もノイマイヤーの言うことなら大丈夫」と言ってくれ、
夫妻の初めての自動車購入の相談役に就任させていただいた。
車を買う人に相談を受けることは多々あるが、
全権委任してくれるのは嬉しい。
車選びという楽しい瞬間を依頼者のお財布で楽しめるのだ。
その分、アドバイザーとしての責任も負わねばならないが。
二人の出した条件は以下の通り。
1.自転車積みたい
2.車中泊したい
3.軽が良い
軽で自転車が2台つめると来たら
「ウェイクだよ!」に
ほぼ決まりになってしまう。
そんなわけでウェイクと対抗馬として
N BOXを当てて車選びがスタートした。
私は事前に候補となる車種と
その周辺車種を下調べしておいた。
今回もごり押しではなく、
本心から友人が欲しい車を見つけるお手伝いが出来るように努めたい。
特に始めての車購入と言うことで、
選び方もさる事ながら試乗を丁寧に行うことで
あるべき新車像を明確に持ってもらうことも重視した。
●ウェイクを見にダイハツへ
車選び初日、私は実家へ帰省し
夫とダイハツディーラーへ。
このお店は私が小学生の頃から通っていた懐かしい店舗だ。
当時、嫌な顔をしながら対応してくれたお姉さんは既に居らず、
優しく対応してくれたお兄さんは今やこの店舗の店長になっている。
その店舗で若い営業マンが対応してくれた。
自分は友人の代理で来店していることを説明し、
車を見せてもらった。
ウェイクは1BOXのような存在感で軽とは思えないデカさがあるが、コレが売り。
知人情報によると、ハイゼットの置き換えで開発がスタートしたものの、
後輪駆動の根強い支持があり、商用モデルから乗用モデルとして
発売された経緯があるという噂だ。
FF商用車と言えば旧くはエルフマイパックがあったが短命に終わっている。、
近年ではNV200はFFを採用しており、
後輪駆動はトラクション的に有利でして・・・。
という通説も徐々には通用しなくなってきているのだが。
サイズは3,395×1,475×1,835。
アトレーワゴン(1875mm)に匹敵する1835mmは
タワーパーキングに入らないなど不都合がありそうなものだが、
ウェイクはとにかく容積を追ったのだろうし、
荷室容積からパッケージングが決まっているのかもしれない。
乗用車としてはとにかく広い。
運転席に座ってもそこから広大な頭上空間が広がっている。
個人的にはこの頭上空間は不要に映る。
ただ、荷室を考えるとルーフの高さは必要なので
そのための副次的な頭上空間であると理解してする方が納得しやすい。
そしてRrシートも大人2名が十分に座れる広さを確保している。
シートスライドも可能で、夫婦が欲している車中泊だって
フルフラットにすれば十分に可能だ。
個人的にはRrシートの下部の機構部が張り出している影響で
足が引けない事がどうしても我慢できなかった。
設計する際のマネキンは足を引いて座ることがないからだろう。
アクアのときはバッテリーがあるからなぁ・・・という事で
渋々納得できたが、ウェイクは納得できなかった。
アップライトに座らせるパッケージングが勿体ない。
後ろにはレジャー用品ばっかり載せる人は無視できるだろうが、
人を乗せる人は注意した方が良い。
ウェイクの売りはRrパンの付加底収納スペースと
折りたたみシートによる広大な荷室スペースだ。
助手席も折りたためるので自転車のような嵩張る
積荷も飲み込んでしまうのだ。
カーゴマットは丈夫な厚手のゴム製でネイキッドを思い出した。
シートバックは傷つきにくい樹脂で覆われており、
ガンガン使ってくれと言うメッセージを発し続けている。
ウェイクは荷物がかさばりがちなアウトドアユースで活路を見出すべく、
アウトドアレジャーのプロの意見を参考に開発されており、
遊び倒す為のパンフレットまで用意している。
私が唯一好んで行うスポーツにスノーボードがあるのだが、
ウェイクはなんとルーフラックを使うことなく
4人でスノーボードにいけてしまうのだ。
男性用の板は少し短い気もするが、
私の周囲では短めの板を使う人が多いので確かに写真はウソではない。
恐らくリクライニングは出来ないと思われるので、
本当にゲレンデまで乗員が耐えられるかは疑問だが理屈では可能だ。
こうして身近な遊び道具が車内に持ち込まれていると、
ウェイクを買った暮らしが想像しやすい。
今回新車を買う事になった友人夫婦も車中泊や自転車を積んだ
レジャーシーンを大いに思い浮かべたことだと思う。
車というのは乗ってみないと分からない。
アウトドアグッズ満載の展示車を見ていると
友人はそのまま購入しそうになっている。
●試乗すると分かるウェイクのデカさ
試乗したのは最上級グレードのGグレード。
営業マンは同乗せず二人での試乗となった。
(私は事前に同じコースで試乗済なので、
友人の試乗に私のインプレを織り交ぜているので悪しからず)
彼は普段の仕事で業務用車(ADやプロサク)を運転するらしいが、
運転には全く興味がないらしい。
なので、ドラポジの取り方や内掛けハンドルをやめるように
アドバイスしてから出発している。
完熟走行として市街地走行を行う。
軽自動車の本領を発揮するのはやはり住宅地である。
敢えて狭い路地を求めて二人が通った小学校付近を走った。
狭隘な直角カーブをウェイクはスルスル通過する。
通称「張坂」という急斜面を登った。
地元にはこういう坂がたくさんあるが、ウェイクはアクセル全開なら
十分坂を上ることが出来た。
次に流れの速い自動車専用道路へ向かった。
ランプウェイから本線に合流する際、
フル加速で合流した。
軽ターボなので合流でモタつくことは無く、
俊敏に本線に合流できた。
中速域以上では、ヒューンという音が聞こえるが、
基本的にうるさい車ではない。
ところが、
空気抵抗によって車が押し戻されている感覚が
素人の私にでも分かるレベルで、
街乗りと幹線道路では車の動きが全然変わってくるのだ。
高速道路で100km/hは十分出るだろうが、余裕度があまりない。
幹線道路は比較的急な上り坂があり
動力性能を計るには好都合な区間がある。
ここで敢えて中間加速を試みた。
アクセルを床まで踏めば欲しいギリギリの
加速度が得られたことを確認して
山頂でUターンしてディーラーへ戻った。
友人の感想は
1.ものすごく背の高い車を運転している感覚があって怖い
2.ターボはやっぱり欲しい
であった。
1に関しては普段彼が乗っている業務用車は
旧来のセダン的なヒップポジションである為、
違和感が大きかったのかもしれない。
私の感想としてはあれだけ背が高い車を
よくここまで安定して走らせているなぁと、
むしろ好印象を持っていたが主役の意見を重視。
2に関してはまさに私と同意見である。
先ほどの追い越し加速レベルの追越が出来ないと
例えば名阪国道の五ヶ谷でトレーラーを追い越せなくなってしまう。
私の周囲を見渡すと
「レースするわけじゃないんだから・・・・」
と車に興味がない人ほど力強い車を敬遠する傾向があるが、
友人は
安全に走る為にはある程度のパワーも必要なのだ
と言うことを理解してくれたのだと思う。
●ウェイクはターボの安い奴で決まり?
後にベストバイグレードを検討し、支払い総額を見積もっていただいた。
グレードは4種類。
NAの最廉価のD(税込135万円)、NA上級のL(税込152.2万円)、
ターボの下級のX(税込162万円)にターボ上級のG(税込170.6万円)である。
これにスマートアシスト(衝突軽減ブレーキ)を付けると追加4.32万円となる。
試乗した結果、NAを除外するとXかGの二択になる。
Gにしか着かない装備は
本革ステアリング+シフトノブ
シルバードアアームレスト
15インチアルミホイールなどだが、個人的には革巻きは魅力。
Gには標準でXにMOPで追加できる装備は
コンフォータブルパック(1.6万)
内容:〈スーパーUV&IRカットガラス(フロントドア)、
スーパークリーンエアフィルター〉
レジャーベースパック(1.4万)
内容:ユーティリティフック、荷室床面フック、固定ベルト、
上下2段調節式デッキボード(固定フック付)
RH側パワースライドドア(4.86万)
である。
全てを選ぶならGの方がお買い得になるだろうが、
RH側のパワースライドドアが不要ならXの方が買い得度が高い。
本革巻きと15インチアルミはかっこいいが、お買い得度重視で
Xのスマアシ付166.43万円にメモリーナビ(8.64万円)、
チルトステアリング+シートリフターが着くドライビングサポートパック(1.2万円)、
レジャーベースパック(1.4万円)、コンフォータブルパック(1.6万)に加え、
寒冷地仕様(1.4万円)を選択。
これだけで
182.67万円に達した。
更にETC、ボディコート、メンテパックやサイクルホルダーなど
用品を色々付けていった結果、
最終支払い総額は220万円ちょいに達した。
アウトドア志向の強いウェイクの場合、オプションカタログを見ていると
どんどん色んなものが欲しくなってしまうようだった。
サイクルホルダー2台分→4.6万円というのは
ちょっとすごい価格だ。
そもそも車両本体価格182万円の軽自動車というのも中々すごい。
カローラ1.5G(181.3万円)が変えてしまう価格である。
いや、カローラ1.5Gが181万円するのもすごくないか?これ。
ウェイクに関しては翌月から
10万円キャッシュバックのキャンペーンがあるそうだ。
更に値引きも出来ますと担当営業マンは言ってくれたが、
友人はあまり乗り気ではなくなった。
●N BOXを見にホンダへ
次に近くのホンダディーラーへ。
私の妹夫婦がN BOX+を愛用しているので随分と運転させてもらっている。
自転車が積めるかどうかはちょっと微妙だが有力候補として検討したい。
参考:当時のN BOX+試乗記
かつてベースモデルのN BOXに試乗した際に
固定式Rrシートの遠さを指摘した。
レッグルーム寸法をアピールする為に過度に後方にシートを配置、
Rrタイヤ直上に座らせることで快適性悪化にも繋がっていた。
参考:NBOX試乗記
先日マイナーチェンジがあり、ついに3万円のMOP装備で
Rrシートスライドが追加された。価格としては高いが、
選んで損はないOPT装備だと思う。
店頭にはNAの試乗車があり、ターボなしの軽を体感する上でも
せっかくなので試乗してもらった。
●限界の動力性能
NAでウェイクと全く同じコースを走った。
幹線道路への合流ではアクセルを床まで踏むようにアドバイスした。
けたたましい音を響かせて本線に合流した。
いくら重量の嵩むハイトワゴンのNAとは言え、
アクセルを床まで踏めば幹線道路の合流くらいは出来る。
平地はこのまま流れに乗って走ったが、
平地は十分に走れる。
ただし、そこから急な上り坂に差し掛かり、
ウェイク同様中間加速を試みたが、
床まで踏んでもらっても
大人3人乗車のN BOXは満足に加速できなかった。
高回転を維持しながらじわじわと加速する為、
私のような車好きなら、高回転を楽しみながら走らせるのだが、
今回の主役を含めて車好きでは無い人、車に興味がない人、
生活するうえで必要性があって嫌々車に乗らざるを得ない人は
アクセルを床まで踏むと言う行為を極端に嫌う。
エンジン回転数が高くなり、大きな音が出ることから
「車に悪い、壊れそう」「近所迷惑」「環境汚染に繋がる」と考えている。
確かに騒音や燃費に関しては一理はあるが、車のエンジンと言うのは
元々高回転を使っても大丈夫なように綿密に耐久試験されているものだ。
車好きは非力な車を運転するとき、
持てる力の全てを引き出してやらないと
思い通りに走らせることは難しいことを良く知っている。
ところが、車に興味がない人の場合は
アクセルを深く踏み込む=怖い
という印象がとても強いようだ。
とは言えパワフルなエンジンについては
レースをするわけじゃないんだし、、、に繋がってしまう。
今回の試乗で動力性能に余裕がないエンジンは疲れる、
という事を学んでいただいた次第。
特に、私の地元では急な坂が多いので
スーパーハイト軽ではターボを推奨する。
●N BOXのターボの走りは良かったが・・・・
次にターボ仕様に乗せてもらった。
試乗車はカスタムのターボなのでまさに最上級。
ウェイクよりは遊び心がなく一般的だが、
車重が軽いのと、エンジンが元気なため
友人曰く、
一番乗りやすかったし、
背が高い車の乗り味ではなかった、と言っていた。
具体的な商談を行った。
G LターボPKGを選択。
Rrシートスライド機構を選びつつも、
総額は190万円程度。
設計が旧くなってきた事もあり、値引きが緩んでいる印象がある。
安く買うならこちらか、ウェイクでもう少し頑張るか、
と考えていたが友人の考えは違った。
●町に溢れるN BOXか運転感覚に違和感が残るウェイクか。
私の妹夫婦はN BOX+カスタムに乗っているが、
実は友人の妹夫婦もN BOXカスタムに乗っているそうだ。
しかも同じ職場の人もN BOXに乗っており、
周囲にN BOXが溢れていて
ちょっと食傷気味に感じているとのこと。
実際に試乗してみて良かったのだが、
いざ商談して本格検討をすると踏み切れない部分があったのだと言う。
そこでダイハツの別店舗でウェイクに再び試乗したが、
運転感覚の違和感はぬぐえないと言う。。。
●もう一度ゼロから考え直そう
友人を新居に送る道中、
思い切って普通車はどう?
と薦めてみることにした。
軽自動車は今も進化著しい。
昔の軽と違い、今は軽でも十分にファーストカーとして
遠出も出来るし、多様な使い方が出来るように進化した。
しかし、レギュレーションが厳しく制限されている軽故に
どうしても限界はある。
つまり、広さはあるが動力性能がきつかったり、
トレッドやホイールベースの狭さのせいで運転感覚や
操安性にもある程度割りきりがある。
いわゆる普通車でもコンパクトで使い勝手が良い車がある。
私はとても
狭いニッチを突いたモデルが閃いた。
長くなってきたので後編へ続く。