●スギレンさんがついに21世紀の車に!
家庭の都合により、しばらくマニアのイベントに参加出来ていない間に、
スギレンさんの通勤車両が増えていたらしい。
あるタイミングで仕事終わりのスギレンさんと会う機会が
あり初めて知った次第である。
(最初気づかずに無視してしまったwww)
そのクルマとは標題の
三菱ランサーセディアワゴンである。
思えばスギレンさんはワゴンが好きだ。
初代カルディナでカーライフを開始し、
カムリグラシアワゴンや
カペラワゴン、
カリーナサーフなど、
セダンベースのステーションワゴンを熟知したスギレンさんが
ついに三菱のステーションワゴンの世界に足を踏み入れたのだ。
ランサーセディアと言えば、我々の世代からすれば、
ランエボのベース車でというだけでなく、
テレビコマーシャルがカッコいいというイメージが強い。
いすゞジェミニのパクリだと言われようと、
趣味のいい「キャラバンの到着」のBGMを響かせながらフランスの町並みを
縦横無尽に疾走するセディアはかっこいい。
セダンからスタートしつつ、ワゴンやエボリューションでも
アレンジ違いのBGMを採用して広告の世界観を守っていた。
セディアは2000年5月にセダンが先行して登場。
ワゴンは同年 11月にフルモデルチェンジされた。
当時はステーションワゴンは富士重工のレガシィにて市民権を得て以来、
ポピュラーなボディタイプとなっており、
特に若者層から選ばれる割合も今よりも高かった。
当時のライバルはカローラフィールダー、
ファミリアSワゴン、インプレッサ、ウィングロードなど。
セディアは若干上級クラスのビスタやカルディナ、
或いはレグナムよりも、小柄だが、上質感を訴求したモデルであった。
外観は当時のトレンドであるキャブフォワードで背の高いパッケージをまといつつ、
不恰好に見えない絶妙なところで抑えている。
旧型に当たるリベロと比べると、ロングホイールベースで全高が高くなっている。
このパッケージは2000年時点では現代的で新しさのあるものだったが、
同世代のビスタに代表されるようにベルトラインから上のDLOが広すぎて不恰好に見える。
例えばビスタより後発のカローラでは全高を1470ミリと先代よりも85ミリも高くなったが、
ベルトラインを高い位置に引き直し、DLOを敢えて小さめにした。
結果、間延びしたドアアウターはサイドプロテクションモールでバランスをとった。
セディア(全高は1470mm)の場合、ベルトラインはビスタのように低目のままだが、
違和感なく背高フォルムを着こなしている。
セディアはフードが低く、カウルが低い。
フードヒンジに注目するとホンダ式のギリギリまで攻めたヒンジが取り付けられている。
同じコンセプトのカローラフィールダーは丸みを帯びてもっちりした印象なのに対し、
セディアワゴンは
ソリッドな魅力を感じる。
ベルトラインモールは一般的なモールよりも幅広で全高の高さを緩和している。
水平基調で長さ感を出している。
思えば、80年代に背高セダンを完成させている三菱ならではのデザインの力だろう。
昔からセディアワゴンのスタイリングは好みであった。
内装がスポーティかつ高級車ムードあふれるデザインだ。
エアコン吹き出し口は開口が大きく、
周りを黒木目のオーナメントがゆったりとしたワイド感を演出している。
大画面のインテグレーデッドナビがMOPで選択できるが、
試乗車は用品対応の2DINスペースに
三菱電機のDVDナビが装着されていた。
試乗車は最上級グレード(Touring スーパーPKG)のため、
本革内装とパワーシートが追加されて高級感が高い。
特にドアトリムの立体感はクラスを明らかに超えている。
さらにMOMO社製革巻きステアリングが装備され
スポーティかつラグジュアリーな雰囲気だ。
鍵を開けて乗り込んでみる。
ヒップポイントが高くて乗降し易いのが、
アップライトパッケージの美点だ。
ドラポジを合わせてみると、ベルトラインの低さ、
インパネの圧迫感の少なさゆえに抜群の開放感を味わえる。
ただ、ステアリング高さが遠くて低く、
高めに設定されたヒップポイントと整合していないのが気になった。
また、Aピラーが寝ている関係で
ヘッダーと私のおでこの距離が接近して狭く感じる。
パッケージ的には高いところに座っているのに、
低いところにある操作系を
見下ろす様な感覚は気になった。
この時代故にテレスコの装備も無く、
比較的手足を投げ出した様なポジションとなる。
私は体格に恵まれない165センチのために、
シートを前に出してシートバックを立て気味のドラポジを好んでいる。
このため、体格の良いスギレンさんでは気にならないという。
シートは本革パワーシートが装備されてヒップポイントが高いだけでなく、
シート座面自体も随分分厚く感じる。シートバックも丈が充分で、
肩甲骨の辺りもキチンと支えてくれて心地よい。
一方、リアシートは標準の背もたれ角度では
カタログ上の室内長を確保するため反った形状をしており、
一段立てた状態がオススメだ。
座面サイズや膝前スペース、私が最近気にしている足引き性は良好だ。
●リーンバーンの新しい世界を切り拓いたGDIエンジンを搭載
ランサーセディアは高級感あふれる内外装と新世代パッケージングが売りだが、
当時最大のセールスポイントとしていたのが
1.8L GDI + INVECS-III CVTという
組み合わせの新時代の走りだ。
GDIと言えば「Gasoline Direct Injection」の略で、
三菱自動車が1996年に世界で始めて量産化した
筒内噴射リーンバーンエンジンの事である。
ジーディーアイ、ジーディーアイ、ジー・ディー・アイ!
という掛け声が今でも思い出される。
GDIについて門外漢の私がサラッと説明すると、
より少ない燃料で車を走らせるアプローチとして当時は
リーンバーン(希薄燃焼)が盛んに研究されてきた。
一般的なエンジンでは燃料1に対し空気14.7という比率で
燃焼させていたが、それを例えば空気20で燃焼させる
(=空気量固定なら燃料を節約して燃やす)技術だ。
吸気ポートに少な目の燃料を噴射し、
シリンダー内に混合気を十分撹拌させて着火させる。
これだけの事だが、
薄い混合気を綺麗に燃焼させる事は大変難しいことであった。
燃料が薄いと火花が混合気に燃え移りにくく、
仮に着火したとても燃焼がゆっくりで燃え広がりにくく、
不完全燃焼に陥りやすく燃え広がるにも時間がかかる。
結果的に出力が小さくなり排ガス性能が悪いという問題がある。
いわば、お母さんが作るカルピスの様に原液に対して
水を入れ過ぎた希薄カルピスだと
味わいというパフォーマンス低下が見られるのと同様の話だ。
エンジンの場合、点火プラグ周辺だけに濃い混合気を集めておいて
上手に着火させる層状燃焼を実現させ、
その火炎をすばやくシリンダー内に拡散させる強い渦を起こせば
リーンバーンが実現できる。
吸気ポート形状を工夫して燃焼室内に強力な渦を作る、
或いは2つの吸気ポートの片側だけ濃い混合気を出すことで
空燃比を1:23あたりまで薄めて、約20%の燃費の向上を実現していた。
それ以上燃料を薄くするためには、より効果的にプラグ周辺に
少量の濃い混合気を集めてやる必要がある。
より
高度なリーンバーンを実現する為に生まれたのが筒内直接噴射である。
吸気ポートにインジェクターを置くのではなく、
燃焼室内にインジェクターを置くことで
吸気ポートに付着してしまう燃料のロスを
差っ引いて噴射量の精度が向上する。
そしてインジェクターによる正確な噴霧をいかに
点火プラグの周辺に集め、着火できるように工夫したのか。
GDIは
「直立吸気ポート」と
「湾曲頂面ピストン」
によって解決している。
燃料を含まない吸気を燃焼室に入れる角度がほぼ直上という
特殊な吸気ポートの恩恵で吸気は真上から燃焼室に入る。
ピストンが下死点から上昇している最中に
シリンダ側面にはインジェクターがあり燃料を噴射する。
燃料は吸気と一緒にピストンにぶつかるのだが、
ピストン形状が半球状に凹んでいる為、
跳ね返されて縦型の渦(タンブル)になり、
ピストンの上昇につれて点火プラグ周辺に混合気が集まる。
そこに点火してやれば層状燃焼を実現することが出来る。
インジェクター自身も従来よりも大幅に高圧噴射と
旋回パターンで燃料噴射できる当時として最先端の
高性能インジェクターがあって初めてGDIが実現している。
結果、従来よりも
薄い燃料(1:40)でも
燃焼させることとができるようになった。
直噴エンジンの実用化はエンジニアの夢のエンジンとまで
言われていたが、三菱自動車はそれを実用化したのだ。
因みに、水だけを口に含んだ状態で少量のカルピス原液を
ストローで吸う、GENEKI_CALPIS DIRECT INJECTION、
即ちGDI(笑)を実施してみたが、
ストロー捌きを工夫して上手く舌の近傍に原液を運べれば、
味わいを楽しみつつ原液を節約するかも知れないが大変困難で、
三菱が味わった苦労の一端に想いを馳せる事が出来よう。
GDIは低負荷時はリーンバーンで、
高負荷時は従来型エンジンと同じような燃焼を行う。
このときは燃料噴射タイミングをピストン下降中に噴射する。
濃い目の混合気は燃焼室内に広がり、圧縮・点火される。
GDIは筒内直噴であるため、燃料が気化するときに
燃焼室の温度を奪うことで冷却効果が得られて、
ポート噴射よりも多くの空気を吸い込める他、
耐ノック性が強い。
圧縮比が12と当時としては相当高く、理論熱効率も良くなる。
結果的に低燃費(燃費35%UP)かつ高出力(10%UP)と宣伝された。
(GDIは奥が深く様々な工夫・特徴があるが長くなるので割愛する)
当初はギャランの4AT/5MTでスタートしたGDIだが、
ランサーセディアでCVTと初めて組み合わされることになったと先にも述べた。
GDIを含むリーンバーンエンジンの場合、低燃費モードと高出力モードの
トルク変動がドライバビリティを損なうため、
電子制御スロットルを開け閉めして変わり目の段差をぼかす必要がある。
CVTは元々レシオカバレッジが広く、連続的に変速できる為
エンジン回転数を変えずに低燃費モード内で運転できる。
GDIのジキルとハイドの二面性をぼかすデバイスとしてもCVTは有効だ。
従来は発進用クラッチの耐久性が日本の使用環境にマッチしておらず、
早々に故障するケースが多かったが、2000年頃にはAT用のトルクコンバーターと
ロックアップクラッチを利用した新世代CVTが登場し始めており、
セディアもトルコン式CVTを採用している。
ランサーセディアに搭載されたGDIエンジンはギャランと同じ型式だが
最高出力は150psから130psに低められている。
恐らく車格だけではなくCVTとの相性もあったのだろう。
カタログ値は
例の件でインターネットで探しても
それらしいものが出てこないが、
スギレンさんが持っていた当時のカタログによると16km/Lだったようだ。
競合関係にあるカローラフィールダー1.8Sは4ATで15km/Lなので
圧倒的な優位性は無い。
ギャランの場合、150psでありながらMTで18.2km/L、
ATで16.2km/Lという驚異的な燃費を誇っていた(偽装データの可能性があるが)が、
ランサーセディアの場合は若干控えめな数字だと感じる。
●現代の目で見れば力強く違和感のない走り
新車当時、既に免許を持っていたが、
これと言って興味の湧かない普通のワゴンだと考えていた。
当時考えもしなかった様な事が起こった後の
2017年に改めてランサーセディアワゴンと向き合う機会を得て、
早速走り始める事にした。
最上級グレードといえどもスマートキーはまだ無く、イグニッションキーを捻る。
一般的なエンジンと同じように始動する。
この車両には三菱電機製のカーナビが取り付けられているが、
スリーダイヤの起動画面が現れる。
スギレンさんの遊び心でオーディオからは
「いとしのレイラ」が鳴り始めて、
気分がハートビートな方向に盛り上がってくる。
経年でアイドリングが不安定になるというGDIだが、
この個体は状態が良いらしく安定したアイドリングだ。
メーター内に
GDI ECO表示灯が点灯している。
パワーを必要としないアイドリング時は希薄燃焼で充分であるはずだ。
現代にあってはアイドリングストップが一般化しているが、
当時はアイドリングは当たり前であったから、
アイドリング時のリーンバーンは意味ある技術だった。
早速走り出す。
いわゆるCVTライクな燃費の最良点を
ひたすら追いかけて変速するタイプで、
擬似ATのような今時のギミックは使われていない。
私は妻の軽自動車で、普段からCVTには慣れ親しんでいるが、
これと比べれば排気量の差で圧倒的に力強さを感じるし、
変速が穏やかなのである程度の食いつき感を伴うのは好印象だ。
もちろん同年代の競合他社と比べてもCVTの味付けは人間の感性に逆らわない。
定常走行ではハイギアを志向し、
アクセル開度が増えてドライバーの加速欲求を検知すると
途端にシフトダウンしてエンジン回転が上がり、一定の回転数で張り付く。
そうして所定の速度に達して
ドライバーのアクセル開度が小さくなると再び低回転走行となる。
エンジン回転上昇が先行する加速はCVTを否定するときの常套句であるが、
それこそがランサーセディアワゴンの通常メニューであった。
MTやATとは異なるもたつき感は、
右足との一体感を大切にする人には受け入れられない。
しかし、2017年の一般的な日本車を基準に置けば決して
ダメな部類ではない。
実際、私などは社用車や妻の軽自動車でCVTに嫌という程乗っており、
イラつきながらも仕方ないと諦めている節がある。
それと比べればランサーセディアワゴンはエンジンの余裕のおかげで
トルク感はまだまだマシで、リーズナブルだと感じた。
しかもGDI ECOランプはなかなか消えず
一名乗車なら大抵の走行パターンでランプが消えることはない。
一般的な市街地を走っている限り、ランサーセディアワゴンは普通の乗用車、
と言った感覚で極めて快適な車といえよう。
特にロングホイールベースにもかかわらず、
4.9mの最小回転半径を誇り、
見た目のために大径ワイドタイヤを履く現代の小型車よりも
広さの割に使い勝手が良い。
次に走らせたのは早朝の広域農道は私の通勤経路である。
驚いたのはこうしたワインディング路での振舞いが完全に想像以上であったからだ。
カローラクラスのステーションワゴンというカテゴリーから
飛躍的に高いレベルの操縦安定性を誇る。
ドイツの田舎道さながらの農道を元気に走らせても
私の技量ではタイヤが鳴く気配は一切無く、
ステアリングの微妙な加減に反応を見せる。
敢えて切り出してもノーズが軽く内側を向いてくれて
ランサーエボリューションのベース車というのも伊達ではないと思わせられた。
CVTをマニュアルモードにして引っ張って走らせた。
当時の競合だったカローラフィールダー、ウイングロードに乗った事があるが、
走りの質としては一線を画すレベルだと感じた。
これがインプレッサスポーツワゴンであったなら分からないが、
ランサーセディアワゴンは見た目の大人しさ以上に俊敏な身のこなしであった。
エンジンの絶対的な出力はそれなりで高回転まで回しても
官能的なフィーリングなどは皆無だが、
前:ストラット 後:マルチリンク式 という贅沢な脚まわりは
オーバークオリティと言えるほどのコーナリング性能を堪能させてくれた。
ロール自体は程々だが、パッケージ的なヒップポイントの高さゆえ、傾く感覚は強めに出る。
完全にエンジンよりシャシーが勝っている。
現代のアンダー200万円クラスの車には到底真似のできないレベルだ。
2010年代に向けた燃費ファーストな思想と
1990年代の動的性能に重きを置いた車らしさが同居する感覚だ。
エアコンは常時使用でワインディング路を経由して
朝の通勤渋滞の中を走るモードでは燃費が10km/Lちょいという感じだった。
期待ほど燃費は伸びなかったが、スギレンさん曰くエアコンを使うとこんなものらしい。
高速道路を使って遠出を試みた。
高速道路はランサーセディアワゴンが最も輝けるステージで、
見晴らしの良い運転席、ロングホイールベースを活かした安定した走りのおかげで疲れが少なかった。
ワインディングでの安定感は高速道路においてもそのまま安心感に繋がっている。
100km/h時のエンジンの回転数は2000rpm近傍とハイギアード。
加速に入ると2500rpmまでポーンと上がるが、
じわじわアクセル操作をするとハイギアのままトルクで乗り切る努力をしてくれる。
GDI ECOランプは基本的に点灯しっぱなしであった。
堅めの足回り、ロングホイールベースの安定性などが相まってリラックスできる。
多少の風切り音はあるものの基本的にグレード名のツーリングは伊達ではない。
結局、あまり休憩せずに3時間余りの走行が出来た。
気になる
燃費は17km/Lとカタログ値超えを果たした。
エアコンをつけて一般的なペースで走らせた結果だ。
ちなみにエンジンを切ったらクーリングファンが 7秒間動作する。
シトロエンDS3も同じ機能が付いていたが、熱害には有効だろう。
乗ってみた感じでは実に高級感があって走りも充分以上
な実力を持つステーションワゴンという感想になる。
それではランサーセディアに死角はないのだろうか。
見た目も良く、内装も高級感があり、
当時最先端のエンジンを搭載していながら
ライバルよりも割安な価格設定だったのには訳がある。
●無い袖は振れぬ、の細部
私が見つけたのは仕様のランクダウンだ。
例えば、この時代の車では徐々にドアシールが二重になりつつあったところを
一重(ドアウェザー)で対応していたり、
エンジンルーム内の防水シーラーや
蓋物のヘミングシーラを大幅に削減していた。
特にヘミングシーラはメーカーによっては軽自動車でもきちんとシールをしているのだが、
ランサーセディアの場合はヘミングした後電着塗装して
そのままボディカラーが塗装されている。
これでは経年時の
エッジ錆が懸念される。
長い目で見たときの防錆性能ではライバルよりも
明らかな仕様ダウンだ。
また、センターレジスターのシャットダイヤルは、
恐らく金型に起因する段差の公差を緩めて甘くしているのでは無いだろうか。
こうした地道な原価カットの積み重ねがセディアの価格競合性の高さを支えているのだ。
明らかにコストのかかるエンジンと変速機、
世界ラリー選手権を意識したボデーやシャシーと
充実した装備と低価格が両立するはずはない。
●まとめ 三菱が出した5ナンバーセダン/ワゴンの最適解
後年、セディアはGDIターボを採用し、エボリューション仕様が
追加されるなどの展開を見せたが、標準仕様はNOx対応の負担が大きくなり
年々燃費性能においてライバルの後塵を拝するようになり、
ついにGDIはラインナップから落とされてしまった。
今回試乗した初期モデルは三菱が
ギリギリで成立させた最適解であったのだろう。
無い袖は振れない厳しい台所事情も垣間見た。
そうまでして頑張ったGDIエンジンが後年あのような評価になった事は
三菱の担当者は悔しい思いをしたであろうが、
直噴エンジンは現代のエンジンの代表的な技術となっている。
近年トヨタが発表した新世代ガソリンエンジン群も直噴式を採用し、
タンブル流を効果的に利用している。
希薄燃焼の技術も先日、
マツダが予混合圧縮自己着火エンジンを
2018年度中にに実用化するとアナウンスがあった。
マツダはこれも
「夢のエンジン」と語っており、GDIを思い出した。
会社の同僚と昼食を食べている間に普段車の話をしないのに
ニュースの話題からマツダのHCCIやGDIの話をした。
「あ、なんかHCCIとかGDI聞いたことあるなぁ・・・・」
「あっ、大学でそれ研究しとったわ!」「10年も前のことやから完全に忘れてた」
「当時はハイブリッド全盛やったからこんな研究意味無いと思ってたわー」
とのこと。地道な研究だったそうだが、同僚曰く
「アレがものになるのはすごい」「全域HCCIは諦めてスパークプラグも併用するんだー」
と当時を懐かしんでいた。
まだ、詳しいことはわからないが、
GDIエンジンが直噴で切り拓いた超リーンバーンの世界が
20年以上の時を経てに進化するというタイミングで
GDIを積むセディアワゴンに乗ることができた。
まるで無かった事にされているGDIだが、
私がGDI搭載のランサーセディアに試乗してみて
当時の三菱の想いや苦しさを感じることが出来た。
近年の燃費の為に全てを捨てたエンジンと比べれば
そのエンジンらしさは十分に良さがあった。
また、エンジンを抜きにしてもスタイリングと居住性を両立させて
競合性のある商品になっていた。
今回、車を貸してくださった
スギレンさんに感謝。