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2024年10月10日

2022年式アウディQ4 e-tron感想文

2022年式アウディQ4 e-tron感想文
レビュー情報
メーカー/モデル名 アウディ / Q4 e-tron Q4 40 e-tron Sライン_RHD(AT) (2022年)
乗車人数 3人
使用目的 仕事
乗車形式 レンタカー
総合評価
おすすめ度
3
満足している点 1.BEV界で真っ当なパッケージング
2.雰囲気的には間違いなくAUDI
3.突出して尖ったところが無く乗りやすい
4.高速走行時の安定感
不満な点 1.インパネに太陽光が反射して眩しい
2.上下がフラットなステアリング形状
3.実際の航続距離が短い
4.細部の作り込みが雑で質素
総評 ●まだBEVは近距離向け高級車にしか適さないのか

AUDI Q4 etronで県外まで走る機会を得たので記録として感想文を残す。

ディーゼルゲート以降、欧州メーク視点で先の無い内燃機関に見切りをつけ、エコでクリーンなEVへシフトする。

2026年には新型車はBEVのみになり、2033年には内燃機関の生産をやめる。アウディのみならず、脛に傷を持つ独ブランド達はBEVシフトに邁進している。

アウディは2021年からe-tron GTというBEVを作っていたが、BEV全体の名称としてe-tronを使うようになり2024年現在ではQ8/Q8スポーツバックe-tronとQ4/Q4スポーツバックe-tronに加えて元祖のe-tron GTがラインナップされている。

今回試乗したQ4 e-tronは2021年4月量産モデルが発表。2021年6月に欧州市場で、2022年11月に日本市場で発売された。内燃機関を持つシリーズがQ2、Q3、Q5であるため、Q4はe-tron専用の車種と言うことになる。諸元は下記の通りでQ3とQ5の丁度中間的かつ、同時期にデビューしたアリアに近い。



全長が4590mmということで台数が期待できる車格のe-tronが設定されたことは販売上大きな意味があり、発売直後に2000台以上の受注があったようだ。Q4 e-tronが押し上げる形でアウディのBEV販売は2022年に808台となったという。

ポイントは丁度良いサイズと輸入プレミアムSUVとしては値頃感のある599万円という価格だ。アリアB6_FFの539万円、BZ4Xの550万円、あるいはUX300eの580万円を考えれば割安な設定である事が分かるはずだが、ID4が514万円というスタート価格も含めてVW‌グループがBEVに力を入れていることがよく分かる。

エントリー価格が安いと言ったところで私が今回試乗したのは最上級のS-Line(当時689万円)なのだが、普段の試乗とは異なり3時間以上かけて300km以上走行させた。

私の感覚としてBEVはまだ知的好奇心の高い層の大きなガジェット、富裕層の見せびらかし消費、或は社会の要請によって公共的性格の強い用途で普及が進んでいる感がある。ひたすらに廉価性を求めていくと、アルトやミライース、或いは中古車がいくらでもあり、自動車移動をBEVで行わなければならない理由が無い。個人所有のBEVがプレミアムブランドから普及していくことは自然ではないか。

今回の主役たるQ4 e-tronはアウディだからと期待しすぎてしまったらしく、私には商品性不足のように感じた。

具体的にはプレミアムカーとして期待したい快適装備が物足りず、アウディらしい幾何学的な内装デザインは太陽光の反射で眩惑され不快だし、充電はトラブルで満充電出来ず余分に急速充電が必要になっており、「クールなドイツのプレミアムブランドがガソリン車に匹敵する航続距離を実現しつつ、従来よりも身近な価格設定で挑む普及作」とは言えないのが率直な感想だ。

一昔前の軽自動車ですら満タン500kmは平気で走れている相場観に対して今回は330km程度を走りきるのに2回の充電を必要としたのは煩わしさが心に残った。

私はBEVはプレミアムカーに向いていると思うし、世の中の普及状況もその方向にあると思う。静かでパワフルな電動ユニットはいわばV8のようなものだし、それが重い電池の搭載を伴うとしてもプレミアムカーは元々重くて高いのだから文句は出まい。

目先は重くて高い電池の不始末をブランド力で誤魔化しつつ電池の小型化は低価格化の研究を行い、低価格帯商品を普及させるのが自然なんじゃ無いかと思う。



Q4 e-tronは2024年現在の価格で716万円のスモールSUVだが、高級感の訴求が中途半端。それなら他のブランドのPHEVやICE車を買った方が満足感は高いのではないか。細かい部分も作り込みが不足しているし、ドイツ車としてはこんなに長距離走行に向いていない車は初めてだが、BEVはどれも似たようなものだとしたら、もっと高価格のドイツブランドのBEVもあるが、まるでドイツ車の美点が活かせてないのでは無いか。富裕層が近所を走り回る軽自動車みたいな使い方をQ4 e-tronでするか、不便を楽しみながらBEVライフを送るようなアウディ好きの方くらいしか満足に使って貰えそうに無い。

今回の試乗では急速充電でも充分な充電がなされずBEVの悪い面が出てしまったことは否めないが、そもそも充電トラブルが起きてしまうことこそで根本的な安心感を損なっている。ICE車では給油キャップが寿命で壊れたり、固着しない限り類似の不具合は起きない。だったら近距離利用メインのコミューターとして考えると、もう少し小さなボディサイズがほしくなる。もしかすると、もう少し小さなQ2 e-tron(仮)あたりがあった方がQ4よりも良いんじゃ無いかと思える程だ。

つまり、市街地でもハイウェイでもメリットが見いだしにくく、私はこのクルマに★3を超える評価は与えられない。3-(2.75)くらいが適当かも知れない。四捨五入して★3だ。完成度は低いが価格が安いBYDの方がまだ納得感があるが、BYDの自動車としての未熟さはアウディには見られない。五十歩百歩だ。

半日じっくりとQ4 e-tronを運転してみて、私のファーストカーがBEVになる日はまだ先だと感じた。
項目別評価
デザイン
☆☆☆☆☆ 3
待ち合わせ場所に現われたアウディQ4 e-tronは、どの角度から見てもアウディらしい。Q2から始まったポリゴングリルはBEVらしく開口がシルバーのパネルで埋まっている。BEVアピールは他にRrパンパーにe-tronの文字があるくらいで、例えば彫りの深い外板プレス部品やルーフ部にレーザー溶接を使った継ぎ目のないボディや、端末部も滑らかなベルトラインモールを見ると「普通のアウディ」のようだ。




ヘッドライトのLEDヘッドライトは「デジタルデイタイムランニングライト」という装備が目新しい。運転席からの操作で4種類のデザインパターンを選べるそうだ。トヨタではあの「いろいろメーター」なる名称でメーターの色がスイッチ操作で選べます、という装備品が珍品扱いされていたがアウディがこれをやると「この遊び心が素晴らしい」とでもなるのだろうか。まぁ、好みで変えられるという「かゆいところに手が届く」感じは
確かにプレミアムかも知れないなと思うけれども。

ヘッドライト点灯時のパターンの格好良さは確かに良いなと思うが、よくのぞき込んでみると金属の化粧パネルは精密加工でカットされて簡単に曲げてある。まるで1960年代の大衆モデル(ダットサン・サニーとかフォード・ファルコンとか)のラジエータグリルを思い起こさせるのだが確かに加工精度は高い。ちょっと離れて見たら独特の存在感を放っているのだからデザイン的な意味は確かにある。プレミアムというのは一見、下らないところにもコストを使って遊んでみるというのが必要なのだと思う。



真面目な人はQ4 e-tronのプロポーションがアウディらしくないことに気づくだろう。ロングホイールベースに極限まで切り詰められたショートオーバーハングは、縦置きFFゆえフロントオーバーハングが長い歴代のアウディとは大きく異なっている。



それはアウディの他のe-tronと同じくRrモーターを基本とするレイアウトなのと、SUVは比較的顔が平面的で四角いので平面視のラウンドを必要としなかったからかも知れない。

走行性能
☆☆☆☆☆ 4
Q4 e-tronは航続距離594kmを誇る82kWh(実用領域は77kWhとのこと)のバッテリーが床下に設置される。82kWhといえば4人家族(15kWh/日)が5日半で消費する電力量と等しい。



この電力によって150kW(204ps)/310Nmのモーターが後輪を駆動する。スペックは必要十分に映るが、Q4 e-tronは車重が2100kgとガソリン仕様のQ3(1560kg)と比較しても重さは明らかである。

それゆえ、走らせた感触もアウディらしいしっかり感を感じさせつつも、BEVに期待される爽快感はあまりない。高速道路の合流加速も必要充分なレベル(0→100km/h:8.5秒)は確保されているが、一般民衆が抱くBEVの幻想(無音で強烈な加速)にまで付き合わない。この加速性能は実はVWのID4と同値である。私が企画担当なら「プレミアムカーなんだからテスラより早い加速タイム」とか言っちゃいそうなところだが、アウディは地に足が着いているのかも知れない。

航続距離は360km、A/Cオフで390kmまで伸びるが、SOC80%でこれって100%でも450kmしか走らない計算なのだが・・・。公称値の約76%しか走らないのが実電費らしい。

乗り込んでみても想像よりも普通で奇を衒った様な部分は少ない。運転席の中で最も奇怪なのは時計で言えば12時と6時の位置がフラットなステアリングである。円周方向は操舵に必要なので一定の寸法が必要だが、上下端は乗降や前方視界を意識したのかバッサリとカットされている。



市街地のようにステアリングを持ち替えて操舵する機会が多い場合はストレスにしかならないが、幸い今回は高速道路メインの試乗のため持ち替えなくても済んだ。ただ、実際に購入してQ4 e-tronと生活すると市街地もたくさん走るので、この形状は受け入れがたい。

メーターも2020年代の当たり前「TFT液晶」だが、インパネの一等地にもディスプレイが備わる。試乗車はSONOS(ソノス)のオーディオシステムが組まれているが、残念ながら試乗のために1620kHzの交通情報くらいしか聴かなかったが、使っているうちに指紋だらけでかなり汚くなった。これは中年男性3人で出かけた弊害かも知れないが。

運転席に座ってドラポジを調整したが、このクラスでパワーシートが不採用なのには驚いた。高身長ドライバーのための座面延長機能やドイツ車らしい無断調整ダイヤル式リクライニング機構は好ましいが商品として考えるとパワーシートを望む人は多いだろう。



面白いのはスマートキーを持っていれば、乗り込んですぐベルトを締めシフトスイッチを操作すれば走行が可能であることだ。朝、慌ただしい私にはありがたい機能で、PレンジとPKBボタンを統一するなどまだまだ車の操作には簡略化できる要素があるのだなと感心した。Q4 e-tronはBEVなのでシフトチェンジもへったくれも無いのでDかRに入れておけばとりあえず走り出すことが出来る。



回しにくいステアリングを操作して走り始めた。市街地のアスファルトの粗い路面を走ったが路面の粒をトレースするような微振動が伝わり、ロードノイズが大変気になった。さらに橋の継ぎ目ではちょっとした突き上げ感もありBEVも重さゆえ、シャシーが締め上げられているのかなと懸念した。ただ、足を置いているフロアには振動が伝わらず、丈夫な電池を抱えているため剛性は高いのかも知れない。

高速道路へ合流した。前述の通り、スペック的に大したことない(失礼)ので加速性能はリーズナブル。実用車として不満が無いが+αを求めるには生ぬるい。本線合流後、ビシッと真っ直ぐ走る様にさすがドイツ車だと感心した。分解能が高い、とでもいうのかちょっとした操作に反応を示しつつどっしりと据わりの良いステアリングは好ましい。

市街地で不満だった乗り心地は高速道路で一気に良化した。さすがアウトバーンの旋風(違)。高速道路を淡々と走る限りQ4 e-tronは快適だと思った。朝日を浴びながら新東名を疾走し、120km/hくらいから風切り音が気になり始めるが、基本的に運転しやすく疲れない。浜松辺りの風力発電機を見ながらゼロエミッションのプレミアムSUVで新東名の追い越し車線なんかを走っちゃうと私の中の微かなエコミーハーな気持ちが刺激されて気持ちよかった。



ところが、100km程度走行したところSOCが50%になったため浜松SAで充電することにした。高速道路は消費が早いのは予備知識通りだ。



30分急速充電を行ったが、65%までしか回復せず残り距離は230kmとなった。これだと100%充電でも354kmに留まる。今私達の使い方でこの航続距離は充分と言えるだろうか。充電を待っている間、車内で待っていると意外とブーンという音が目立ち、気になるので降りて各部をじっくりと観察した。エンジンフード(ではないが)を開けてみると短いノーズには補機がぎっちりと詰まっており、E/Gが無い事から防音材が省かれている。ダッシュパネルも板金丸出しで、あたかも1990年代の大衆車のような有様だが、音源が無いのだからこんな部分に投資は不要と言うことなのだろう。

乗り心地
☆☆☆☆☆ 3
改めて出発した。

Q4 e-tronはSUVルックながらCD値0.28という良好な値を出しており、最低地上高は150mmと低めだ。これは航続距離を稼ぐには空気抵抗を減らす必要があるからで、この世界の先駆者であるTESLA MODEL Yは0.23という実験車並みのCD値を誇る。オイルショック後、空力性能の高さを競った時代があったがBEVの世界では再び空力競争に突入するだろう。

日がどんどん高くなってきた静岡市付近でQ4 e-tronの最大の弱点に直面した。印象的なインパネデザインの弊害で太陽光が反射して眩しいのだ。私は運転中サングラスをかけているが、そんなものでは耐えられないくらい反射光が眼に入る。



インゴルシュタットに晴れは無いのだろうか。常に薄曇りや夜間でしか走らないというのなら問題は無いが新東名を午前中に沼津方面に走る方は要注意である。これを対策するにはローレルやマークIIの様にスウェード生地を巻く位しか対策方法が無いだろう。経験上、これほどまでに反射を無視した車を私は知らない。

インパネを明るい色で塗ると、ウインドシールドガラスへの映り込みで前が見えにくくなるが、これは偏光サングラスで対策が可能だ。一方、反射は直接的に強い光が眼に入るのでサングラスでも防御が難しく大変不快だった。運転しながら顔の位置をずらしたり、前が確認できる程度に薄目を開けるなど考えたが我慢するのが一番手っ取り早かった。

苛立たしいことに目的地の大黒PAまでの距離を考えたとき、たどり着けない恐れが出てきた。仕方なく長泉沼津SAにピットインして補充電を行った。



余裕を持って早朝に出発したが、速度を控えめに走ったり充電時間によって段々と到着予定時刻が危なくなってきた。ガソリン車で立てるような移動計画ではなく頭を切り替える必要があったのだ。

時間に追われ始めたので15分ほどで急速充電を切り上げ、残り航続距離97km(SOC25%)で再出発。

御殿場IC付近に東名高速の最高地点が過ぎてからは長い下り坂となる。Q4 e-tronはアクセルオフでよく転がることに気づいた。個人的には前に進むためにはアクセルを一定に踏ませてアクセルオフでは軽い減速感が欲しいと考えるタイプだが、電費を突き詰めていくと「コースティング」が有利なことは否定できない事実だ。下り坂で増速するような空走感のあるCVT車には閉口するが、Q4 e-tronの場合、市街地では減速感を出して高速道路ではNレンジに入れたかの如くコースティングさせる感がある。このあたり、空気抵抗が大きくなる高速域で使うならさほど気にならない事は私の新しい発見だった。

NV性能について触れると、BEVでありがちな「静けさを訴求できる秀でたNV」が与えられていないということが特徴だ。市販されている幾つかのBEVに乗った印象として「パワフル・静粛・先進」がBEVの持ち味として期待されていて、それに応えようとした形跡が見られる車種が多く、そうで無い車は苦戦する傾向がある。

プレミアムブランドのアウディなのだから、期待せざるを得ないのだが意外なほどQ4 e-tronは現実的なNV性能だった。市街地ではロードノイズが気になったが、高速では120km/h付近を越えてミラーからの風切り音が目立ち始め、タイヤは「ホーホー」気柱共鳴音のような騒音が目立つ。



このあたり、日産アリア辺りの方がもっと「それらしい」のが残念なガッカリポイントである。

首都高速横浜北線に辿り着く頃はゴールが近くなり航続距離の残りが少なくなってきても気にせず走った。BEV独特のドラビリの良さとアウディらしいどっしりした乗り味に疲れにくいシートなどは好感を持てた。休憩ポイントの大黒PAのランプ路をぐるぐると旋回した。

急速充電スポットが空いていたので無事クルマを駐車。EPBが作動したら、降車して荷物を下ろし、急速充電用のカードをタッチし、給電プラグを挿入したら、ドアをロック。これで私のBEVロングドライブは終了した。

積載性
☆☆☆☆☆ 3
ラゲージはVDA法で520Lである。アリアは466Lであり、サイズが近い割に優位性があるのはDピラーが立った正当なワゴンスタイルなのとアウディのパッケージングの優位性があるのだろう。Rrモーターの割に荷室は充分な容積があり、掃出しフロアとなっている。ローディングハイトは783mmと少し高めなのだが、800mmを超えていなければ実用上問題は無いはずだ。

デッキサイドのカーペット基材で荷物を傷つけないように配慮されているのはプレミアムカーならでは。



居住性はSUVらしく良い。運転席の居住性に文句は出ないレベルなのは当然であるとしてBEVは後席の居住性の優劣の差が大きい。ホイールベースを長く採り、床下にバッテリーを積む関係で前後間距離を取りヒール・ヒップ段差が取りにくいパッケージなのはBEVだけでなく、PHEVを持つ各社も同じ状況のはずである。

これを克服しているのがQ4 e-tronである。脚を投げ出すように座らせるものの、トルソ角(背もたれ角)を寝かせ気味にして座面を前上がりに作ることで姿勢を安定させる。この前上がり傾向が丁度良いので長距離ドライブでも疲労が少ないのは
さすが!と感心した。

個人的には全ドアにペットボトル飲料が差し込める窪みが付いていて、しかも斜めに収納できて取り出しやすい点は収納面の工夫として評価したい一方でRHDあるあるの助手席グローブボックス小さすぎ問題を久しぶりに見た。(LHD基準でECUやジャンクションボックスを配置している弊害)



ID4同様、BEVのネガを感じさせないパッケージは好感が持てる。
燃費
☆☆☆☆☆ 2
上述の通り、公称値は594kmとガソリン車に匹敵する航続距離なのだが試乗車の朝一の航続距離は360km。その後急速充電を繰り返し340km程離れた場所を目指した。

当初の予測だと給電無しで走りきれる距離だったが、2回の急速充電を要し45分ほどタイムロスを喫した。



BEVに対して不利な高速道路を使った結果とは言え、普通のガソリン車なら無給油で走りきる距離が走れないというのは私には物足りない。

カタログ値で800km位走るBEVでないとガソリン車とほぼ同等の航続距離が得られないが、巨大なバッテリーを積むのは中々コストのかかる話である。

燃費の悪い大排気量マルチシリンダーE/Gを積む旧来のプレミアムカーは燃料タンクを大きくすることで比較的容易に航続距離が稼げる。

BEVは莫大なコストと質量が求められるのだから、冷静に考えてBEVってやっぱり近距離向けでは?と冷静になってしまう。



個人的にはBEVの愉しさと航続距離や燃料補給の用意さを考えれば、予算が許せばPHEVは悪くない選択肢だと思う。ただ、せっかく燃費が良いHEVに重い電池を載せるナンセンスさは忘れないようにしたい。

この様にBEVの実用性を語る上で航続距離は未だ各社の技術の差が見える部分であるが、ICE車の後塵を拝している。ICEがズルいのは燃費が悪くても燃料タンクの容量でカバーできることだ。

だから、仮に私がBEVの航続距離の不利さを誤魔化そうとするなら、
難癖をつけて燃料タンクそのものに規制をかけて(例えば25L以下に削らせる)しまうかも知れない。

ICE車やHEV車の航続距離を強制的に削ってしまえばBEVの航続距離とE/Gを積んだ車との差異が小さくなって目立たない。

試しに試算してみると、21.8km/LのトヨタRAV4_HEVは55Lタンクなので1199kmも走れる計算になる。

けしからんので燃料タンクを30Lに規制してしまえば545kmとなりBEVの高いモデルと同じ煩わしさを与えることが出来る。上記は冗談の一種だが、BEVと言うものはそれだけバッテリーの効率が悪くて燃料が積めない状態で普及を無理矢理急いでいる状況だ。



今回の試乗では航続距離に不便があったので★2とする。
価格
☆☆☆☆☆ 2
価格は下記の通りである。




最廉価グレード(599万円)の価格と航続距離が大きなアピールポイントだが、この手の常でヘッドライトやアルミホイールの意匠、ボディカラー一色の設定(T型か!)で「買わせないぞ」という無言の圧力を感じてしまう。



実質的には+63万円のadvanced(662万円)からが文化的エントリーグレードとなる。ボディカラーの選択権が与えられる上に3ゾーンA/CやアドバンスドキーやLEDマトリクスライト、切削アルミホイールなど内外装・実用面でグレードアップがある。



個人的にはadvancedで充分なのだが、+27万円でドレスアップ派のための最上級S Line(689万円)がある。

20インチホイールやローダウンサスで見た目に凝縮感が出てスポーティになるほか内外装も専用意匠となる。

最廉価は仕様面・選ぶ楽しみでリスト落ちをさせておいて「advancedも良いけど、ちょっとした追金で最上級のS Lineが手に入るなら、査定も高く付きそうだしパノラマ着けてこっちにすっか!」
という風に誘導するやり方は誰もが想像できよう。

最近は全部これ。お客様の選ぶ愉しさよりも、収益と下取りのための選ばせない効率。

私がシミュレーションしたところ2024年現在は値上がりしている関係で支払総額は771万円だった。

カイザーブルー(8万円)、ステアリングヒータ(4万円)、MMIナビゲーション(20万円)、SラインインテリアプラスPKG(11万円)=合計43万円。



ここから法定費用やらフロアマットやらコーティングやらで最終金額はきっと自分の金銭感覚とは合わない領域になってしまうのが庶民の悲しいところだ。

エコカー普及のために血税から補助金が出ており、36万円(国)+30万円(刈谷市)≒66万円のディスカウントが期待できるので、実際の本体価格は705万円となる。

700万円を超えてくると、ちょうどディーゼルE/GのQ3(四駆)にオプションを持った仕様と大差ない価格となる。(私だったらQ3を選ぶと思う)

アウディを乗り継ぐファンがBEVに興味を持ち、A1やQ2からステップアップで検討するなら納得感があるかも知れないが、初めてプレミアムカーを考えるような人にとっては電動チルテレも付かず、内装も硬質樹脂が目立ち、ウェザーストリップも収まりが悪いQ4 e-tronに大金を支払う事を期待するのは楽観的すぎやしないか。



アウディらしさをサラリと力みすぎずに表現し、過度にBEVをアピールしない飾らない日常の相棒、というならそうなのかも知れないが補助金を含めても700万円を超える価格のSUVであるならば、作り込みや+αの商品性が無いと厳しいと感じた。
その他
故障経験 大黒PAで充電状況を見たのだがメーターに警告が表示されていた。



試乗する1週間前は車両側の充電コネクタに異物が挟まっていて充電出来ないというトラブルを出先のアウディ販売店に飛び込んで対処して貰ったばかりだという。

こういうトラブルはBEVに対する信頼感を著しく損なう。ただでさえ航続距離が短い(=路上停止のリスク大)のに、きちんと充電をしようとしても、それがうまく遂行されないとなると、失望してしまうのも無理は無いだろう。

トラブルがあっても大丈夫なように、近くしか走らせないのであれば問題が出ないかも知れない。路上停止しても無料ロードサービスが・・・と言ったって、救援を待つ間路上で待ちぼうけする不便を想像すると、自動車の魅力として少し物足りないと思うのは私だけだろうか。

蛇足ながら、エクステリアはアウディらしい精巧なイメージがあるもののインテリアではガラスランやサイドドアオープニングウェザーの目隠しリップが左右とも浮いているなど造りの粗さが目立った。高額商品としては疑問が残る。


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Posted at 2024/10/11 00:24:37

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この記事へのコメント

2024年10月12日 0:14
どこにも書いていない真実、興味深く読みました。

初代MR-2がドイツでは、燃料タンク小さめなことから航続距離に問題があるとされていたらしいです。そんな地域でこのクルマが良しとされるのか…な? 現地でも高価なクルマなのでしょうし。
ドイツでもBEVユーザーは2台持ちだそうで、もう片方はガソリン車だったりするみたい。e-tronを所有する為に、足車のAセグを持つはめになりそうですね…。

あと、アウディ開発陣には酷な話ですが、会社が求めた商品と現実との間で苦労しているように見えます。収益を確保したいけど、コストは掛けられず、それが本車に現れてしまっていますね…。何とか完成に漕ぎづけたというのが実態ではないでしょうか。

やはりBEVとは、電池の技術革新があるまでは近距離モビリティとしての使い道が真っ当だと思います。
コメントへの返答
2024年10月14日 13:02
コメント有り難うございます。

あんまりこのクルマの航続距離に不満を述べる人は居ませんね。

MR2は車両中央のセンタートンネルに置くという航空機みたいな努力をしてましたね。調べてみると41Lだそうで、当時としては少ないですね。SW20mの54Lは頑張ったんでしょうけど重くなった結果航続距離はどうだったんでしょうね。

ドイツのBEVユーザーが2台持ちだとしたら、本当に遠くへ行きたいときにAセグなんか買ってしまったら、何のための高性能車なのかという感じになっちゃいますね。我が家だと、せいぜいセカンドカー止まりかな、の感触です。

Q4e-tronは、長い航続距離とリーズナブルな価格を実現した事実はありながら商品性はアウディに惚れ込んだユーザー達の信頼を裏切りかねないなと危惧しています。

現行N-BOXの不振も結局、社内事情と顧客層の審美眼を甘く見てコストをかけなかった事を消費者が見抜いた結果なんだと考えています。

BEVがこの先さらに大衆価格帯まで普及するのか不明瞭ですが、まず富裕層向けモデルで不便・不安なくICEモデルから代替できるようにならねばなりません。

日本では2時間の運転で15分の休憩をというので、時速120km/hで2時間走って15分で更に240km走れる程度に充電出来る性能が必要だと私は考えますが今回のQ4 e-tronに拠るドライブでは実際に不可能でした。

プロフィール

「@平原(へいげん) さん そんな目立つクルマで問題行動起こすソイツは頭おかしい(^O^)/」
何シテル?   05/21 12:58
ノイマイヤーと申します。 車に乗せると機嫌が良いと言われる赤ちゃんでした。 親と買い物に行く度にゲーセンでSEGAのアウトランをやらせろと駄々をこねる幼...
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