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2019年09月17日 イイね!

1998年式カローラ1.5XE-Saloon感想文

1998年式カローラ1.5XE-Saloon感想文








●カローラの代車はカローラだった

カローラを板金修理に出す際、代車として貸してもらったのが、表題のAE110系後期型XEサルーンだ。このお店では過去にAE100NZE120を借りたことがあり、私のカローラ運転暦コンプリート活動にも協力してくれている。(残すは初代と2代目)

このカローラは1995年にデビューした8代目カローラの商業的失敗を受けて
1997年にクオーターパネルやインパネを新設するという大規模な手直しを受けたマイナーチェンジ後のモデルだ。その後2000年8月に9代目、いわゆるNCVカローラにバトンを渡すまでの三年間に亘り販売されたカローラの代表的なモデルだ。
このカローラを借り受け、毎日の通勤や遠乗りに使用したので記録として文章に残したい。

●シェイプアップしてスリムで健康的な前期型


1995年5月15日、トヨタの看板車種カローラ/スプリンターはフルモデルチェンジを受けて8代目となった。その4年前、バブル期に企画開発された7代目は感性品質の向上と安全性の強化を達成する為に大型化・高級化を図った。スーパストラットサスペンション、20バルブツインカムVVTエンジンなどの分かり易い高級メカニズムの採用に留まらず、例えば主要回路のコネクタへの金メッキの採用、電気式メーターの採用などマジメな信頼性の追及も行われた力作であった。ところが、急激な景気減速のあおりを受けた7代目は「背伸びしすぎた」と見なされてしまい思うような販売成績を上げることができなかった。

今まで右肩上がりの成長を信じてより良い車を求めてきた私たち日本人は、悟りを開いたように華美を戒め、お金を節約し始めたのだ。価格破壊をキーワードに今まで当たり前だったモノの値段を画期的に下げるプライベートブランド等のアイデアが生まれ、豊かなものより安いものを求める時代の空気が醸成された。

自動車業界も例外では無かった。例えば、1994年のカムリ、カローラIIは基本メカニズムは先代をキャリーオーバーし、先代モデルのグレード構成を縮小、優しい曲面で構成されたフォルムを直線的な質素なものに改め、内装に掛けられたコストも目に見えてレベルダウンした。触ると柔らかかった内装が、硬質樹脂に変えられ、種々の部品は良く見ると先代と変わらない形状をしていた。

不景気でもお客さんに買い換えてもらえる価格にするために、先代モデルとできる限りの部品を共用化し、それ以外にも部品の価格を下げていき、低価格を実現していた。当時の新聞記事の経済欄でフルモデルチェンジの記事が出ると部品共用化率**%みたいな数値が必ず出てくるほど無駄遣いをしないフルモデルチェンジは繰り返しアピールされた。

今ではちょっと信じられないがバブルの雰囲気を切り替えられずゴージャス気分なままフルモデルチェンジをしようものなら「旧い」「時代の空気が読めてない」と袋叩きに遭う可能性は十分あった。

そんな1995年、8代目カローラをポストバブルの大衆セダンとして時代の空気を読みすぎるくらい読んでデビューした。極力先代モデルのコンポーネントをキャリーオーバーしながらも地道にルーフを高くしてヘッドクリアランスを確保したり、フードやラゲッジドアの端部を持ち上げて運転席からの視認性を高めた他、エンジンを従来のカタログ値重視からトルク重視に切り替えて実用域の走りを追求した。

またトータルコストオブオーナーシップ(購入から維持にかかる経費を含めたコスト)の低減として修理費用の低減を図る為にサイドプロテクションモールの黒素地化、前後バンパーを上下2分割化し、傷ついた側だけ交換できるような意欲的な試みを形にした。また、進みすぎて品質が追いつかなかったワイヤー式ウィンドウレギュレータをXアーム/Iアーム式に戻し、ノブが取れ易かったダイヤル式スイッチが組み込まれたヒーコンパネルはレバー式に戻された。それらはコストダウンだけでなく、品質向上させ維持費の低減も実現したのだ。素材費を節約でき、NVH以外のあらゆる性能が向上する軽量化も推し進められ、セダンで-50kgも軽量になり、購入時の重量税負担額が安くなるグレードも増えた。

●痛切な反省を表明した後期モデル
8代目カローラの前期モデルは中学生だった私の目にも寂しさが漂ったし、世間の評価も似たようなものでセールス的には決して成功策とは言えなかった。特に2分割バンパーは否定的な意見を持った人が多かったようで、登場後一年の一部改良で早くもカラード化されたほどだ。豪華すぎても質素すぎてもうまくいかない、カローラは苦しんでいた。

若者向けに先代の化粧直しに加えて4WDを追加して人気が出たツーリングワゴンがその穴を埋めてくれていたのだが、カローラブランドの本流たるセダンもマイナーチェンジで大きく手直しを施すこととなった。



ヘッドライトはマルチリフレクター化し、ラジエーターグリルもメッキが増えてゴージャスになった。2分割バンパー一体化され、黒素地部品は一気にフルカラード化され、クオーターパネルを新設し、ラゲッジドアには歴代で初めてRrコンビランプ(クリアランス、バックアップランプ)が設定されたが、これも10代目までの歴史で唯一の仕様でコストがかかっている。

内装も、カチカチの硬質樹脂は改められてフルソフトパッド化、少し暗めだった内装色も明るい色調に改めた。Rrシートのピローは立派なヘッドレストに進化し、衝突安全に配慮してボディはGOAを採用。室内もトリム内部に衝撃吸収リブを持ったソフトアッパーインテリアも備わることとなった。

特筆すべきはスポーツツインカムを搭載したGTが新開発の6速マニュアルを得て復活するなど力の入ったマイナーチェンジとなった。



余談だが、2009年にデビューして大ヒットとなった3代目プリウスのカタログに後期型カローラがカメオ出演している。しかもマッドガードが付いていないからXE-Saloonと思われる。(クオーターガーニッシュが黒いが、
ドアハンドルがカラードなのでLX用を使っているかCGで消したのだろう)

●エクステリア
車を引き取り、翌朝じっくりと代車を見た。



フロントマスクを特徴付けるフルカラードバンパー、カローラ初となるマルチリフレクターヘッドライトは既にDXも含めて全車標準装備となっており時代の進化を感じる。ラインナップ中、上級タイプのXE-Saloonは最上級のSE-Saloonと較べてタイヤサイズが異なり、カラードマッドガードが着かないくらいで後はほとんど見分けがつかない。



フロントマスクは高級感のあるキラキラしたヘッドライトとラジエーターグリルのお陰でカローラらしい高級感が味わえる。バンパーが上下一体化され、ロアーグリルのワイド幅が広がったことで視覚的な安定感も同時に付与された。



サイドビューはAE110が過去のクルマであることを強烈に印象付ける。25年前の典型的なセダンスタイル、すなわちフードが、カウルが、ベルトラインが低いのである。クルマはスマートに見えるほうが格好良い、という原則に則ってセダンもワゴンも実用性の許す限り車高を低く設定していた。カローラもその例からもれず、7代目より全高が上がっていても現代の目から見ると異質なくらい車高が低い。それでも狭そうに見えないのはベルトラインが低くバランスが取れているからだ。無理に大径タイヤを履いていないから全体的なプロポーションも良い。全長4315、全幅1690mm、全高1385mmでホイールベースが2465mmとは思えない。

例えば現代的なハッチバックをベースとしたコンパクトなセダンは、歩行者保護要件の為ボンネットを低くすることが出来ず、パッケージ的な流行もあり背が高く、その流れでベルトラインが高い(もしくは前下がり)ため、どうしてもトランクスペースが高くなり、上記の価値観で見ると不格好と言わざるを得ない。ロアーボディとグリーンハウスのバランスや各モールの位置などセダンの魅力の出し方を心得た手慣れた仕事を味わった。



特にルーフとピラーの接合部はロウ付けされて継ぎ目がなく、雨垂れ対策の為のドリップチャンネル構造が採用されているので目隠しモールにメッキが入り、SUS製ベルトモールと相まってキラキラしたモールがぐるっと一周窓枠を覆っているが、見た目の高級感は現代の同セグメントを凌駕している。



リアビューがAE110の最もAE110らしい部分である。既に触れた通りクオーターパネルを新設してラゲッジの開口幅を大きく取りつつ、ワイドなリアビューをも手に入れている。このクオーターは海外仕様(欧州や一般国)と同形状となっていてWRCでおなじみの個性的な丸目仕様にマッチしたRrコンビランプが収まるように設計されている関係で日本仕様も若干ファニーな丸さが目立つものの、点灯部分を下半分にまとめて四角く光るようにするという細かい配慮のお陰で大きな違和感に繋がらないように調整してある点はさすがだ。



日本向けとしてのマッチングでは前期方の方がカッチリしているのだが、Rrコンビランプが大きく見えてリアのボリューム感が出過ぎる面もあったし、そのRrコンビランプが開口幅へのハードになっていた。ラゲッジドア側にもランプを設けることでラゲッジ開口がストレート化して実用性が大幅に向上した。後期型ではこの部分でデザイン性と実用性のバランスが取れたように思う。



カローラのエクステリアは、マイナーチェンジゆえにスタイリストのやりたい事の全てがやれたかは疑問だが、前期型で質素に見えたことに対するリカバリーは十分出来ている。この頃、クロカンブームが一段落し、セダンの次はミニバン、
MPVにファミリーカーの定番の座を奪われつつある中で十分豪華で嫌味の無い温厚なスタイルを実現しており、次期でキャビンフォワードの背高パッケージを採るカローラにとっては旧来型FF大衆セダンの集大成とも言えよう。

●インテリア
マイナーチェンジでインパネに手が入った。カラーリングの変更、2DINカーナビへの対応や質感対応は行われたが、基本的な配置関係は前期型を踏襲している。



カローラのよき伝統だったオーディオが最上段にある様式を守りつつ、インパネの上に飛び出すようにスペースを確保したのは2019年の目で見れば現代の流行を先取りしたかの様に感じられ、金型新設のメリットを十二分に生かしている。

インパネは上面がフルソフトパッドでしっとりと柔らかい。前期型でパッセンジャー型のみソフトパッドであったことを考えると
飛躍的に質感が向上した。

この触感に注目すれば、ドアトリム(フルトリム)のベルトライン部分を触ると柔らかい事に気づく。現代の常識だとこんな部分はカチカチの硬質樹脂だと相場が決まっているのにソフトパッドなのだ。指で押すとソフトに撓むが決して底付きしないので驚いた。アームレスト上のエリアはシート生地と同じ柄のファブリックがあしらわれて統一感がある。また、使い心地もドアの開閉やパワーウィンドゥの操作などで一切の不満を挟む隙を与えない。デザインの為に使いにくいドアトリムを採用する現代車の作り手にはカローラの精神を学びなおしていただきたい、とドアトリムを見て触っただけで言いたくなるほど機能的だった。

XE-Saloonはフルトリムで運転席のみドアポケットが装備されるが、それより下級のLXでは同形状ながらドアポケットは省かれる。ドアポケットはビス止めになっており、細かい仕様差でも金型を使い分けなくても良いようになっている。しっかりしているなあと感心したのだが、逆に上級のSE-Saloonではドアポケットが一体になった成型ドアトリムを採用しデザイン性がさらに向上する。なんというコダワリ・・・・。(成型ドアトリムはパワーウィンドウ専用なのでアームレストのデザインも微妙に洗練されている)この成型トリムは先代の7代目ではXEにも採用されていたが、8代目では過剰と判断されたようで格下のフルトリムになった。しかし確かに必要十分だと思う。



驚きはシートにもあった。身長165cmの私でもはみ出してしまうほど小ぶりなシートは昭和の大衆車でよく見られるが、その代わり、シート生地がフワフワで優しい触り心地である。前期では乗員の肌が触れる部分以外はビニールレザーだが、後期型のXE-Saloonはほとんどの部分が豪華なシート生地で覆われている。この触感、新型クラウンでも味わうことが出来ないレベルだがカローラ、それも最量販グレードでこれをやるなんて・・・・・



現代ならクラウンクラス?と言っても差し支えない位の配慮が行き届いていて、これが車両本体価格130万円程度(A/Cなし)のクルマの内装なのだろうか。と感心した。

ドアトリムとシートの連続感があるとすれば、シートとシートの間にあるコンソールボックスも布巻きなのは現代の車ではちょっと考えられないお金の使い方だ。



さらに面白いのはRr席のドアトリムも触ると同様に柔らかいのだ。Rrトリムの仕様はPWスイッチがアームレスト式ではなく、あまり評判の良くないシーソー式になるものの、上段から下段までの構成はドアポケットが無いが他はFrと変わらない。足が当たりがちな下段をビニールで覆って傷つきにくくするあたり、これ程まで優しくして戴いても宜しいのですか?と恐縮してしまいそうだ。

●メカニズム
FFになって以降のカローラのメカニズムは5代目(FF初代)にて前後ストラット式サスペンションの採用、6代目でサスメン導入し、ハイメカツインカム初搭載、
7代目でハイメカツインカム(第二世代)の全面展開と進化を続けたが、8代目では基本的にキャリーオーバーされており、大きく注目すべきすべき新機軸は無い。



しかし、コンセプトは進化しており、今回試乗した1.5Lの5A-FE型エンジンもカタログ馬力を5psダウンの100psとした上で5000rpmまでの全域でトルクを向上、バルブスプリングを柔らかくする、シリンダブロックのリブを廃止する、フューエルカット領域を拡大するなどの地道な方策を採用して軽量化やコストダウンだけでなく、燃費の向上(25%向上)や扱い易さと言うメリットもユーザーが享受できるようにした。

その後の歴史から「8代目カローラは7代目カローラのコストダウン版」と考える人が多いのでは無いかと考えられるが、全てがそうかと言われればそれは誤りだ。



例えばカローラの方向指示器レバーは現代のクルマと同じオール樹脂構造になっている。反対側のワイパーレバーも同様に樹脂製だ。確か先代のAE100は鉄製の芯棒が付いていたから新型でコストダウンと軽量化が実施されたのだが、普段乗っているRAV4(金属製)と全く遜色ない操作フィーリングであったので改めて気づくまで何も考えなかった。

TNGAが採用された現行のプリウス以降のステアリングコラムに締結されるレバーも樹脂製だ。しかし、新しい方は剛性がグニャグニャで操作すると撓みが大きくて操作の節度間も感じられず、操作力のせいでステアリングコラムカバー本体もだらしなく歪む、という情けないシロモノである。

仮に単品剛性が高くとも車両状態での剛性「感」が無いと車そのものの商品性や品質感を損なうものだ。今回の例は目視でも変形が見えて最低最悪の設計なのだが。

一方、今回取り上げたカローラは樹脂化するに伴い金属製相当の剛性感を目標に設計されたのだろう。車両になった後も従来の金属棒と変わらぬ操作フィーリングを達成している。

決して8代目カローラが、7代目から引き算をしただけの原価低減カーでないことが分かっていただけると思う。(ただしワイパーレバーは裏面の剛性リブ丸出しという格好悪い状態で世に出してしまい、後期型では目隠しカバーが付いたし、ATシフトレバーのボタンは車両下方向がリブ剥き出しだった)

●居住性/パッケージング


運転席に座った。2000年代以降に流行した高めのヒップポイントとカウルが前進し傾斜したAピラーから成るパッケージングが一般的になって20年が経とうとしている。その目線でカローラの運転席ドアを開けて乗り込んでみると、少し低めのヒップポイントなのが逆に新鮮だ。

決してクッションがつぶれて底付きしない立派で手触りの良いシートに座り、前後位置と角度を調整した。一発でドラポジが決まった。かつては背もたれ角度を一番立てた状態にしても角度が寝過ぎだと指摘されていたが、この世代ともなるとリクライニング角度も立たせ気味でも調整できる。

それ以外の調整機構はテレスコピック機構はおろかチルトステアリングも備わらない。シート高さも調整できないという現代の軽自動車にも劣るような旧態依然とした構造にも関わらず不思議とカローラのドラポジが合うので不思議な感覚だ。

ドアミラーは電動格納は備わらないものの立派にリモコン電動ミラーである。左右方向は端の1/3に車体が、上下の半分に地面が来る様に合わせた。ドアミラー越しにRrのホイールアーチが確認し易かった。

このまま後席に移る。着座してみると、ヒップポイントが低いものの、ホイールハウスが邪魔になる事無く座面は広い。またカタログ値の室内長を追いかけたような寝そべったシートバックではなく、正しく座れる位置関係になっている。後期型のXE-Saloon以上は別体式のヘッドレストが備わっており、前期型のピローよりも安全性が向上し、実際の乗車中は頭を支えてくれて非常に楽である。

XE-Saloonよりも上級のSE系ではセンターアームレストが、GTでは6:4分割可倒機構が装備されている。一般的な使用ならXE-Saloonの別体ヘッドレストで十分以上の機能がある。本来はCTR席分もヘッドレストを備えたいところだが、これは後年、法規で縛られるまで待たねばならない。



特に感銘を受けたのは、室内長が狭いが脚の納まりが良く、つま先が綺麗にシートの下に入る事だ。前席シート下の空間が広く、シート取り付け部品がロッカー、CTRトンネルから生えておりフロア面が広いのである。その恩恵でよっぽど身長が高い人で無い限りホイールベースが短くても十分座ってくつろげるのだ。

最新型のTNGA世代のカローラスポーツの場合、前席取り付けブラケットが床から上方向に生えているので足を置く自由度が極めて少なく、私はくつろげなかった。これはシート自身がもはや衝突部材と化した事やシートを直接ボディに取り付けた方が、乗り味が向上する為と想像されるが、これにより失った後席の快適性は小さくない。

8代目カローラの後席は狭いながらもよく検討された緻密な空間設計だと感じる。Rrドアトリムの豪華さもさることながら、「どうせ前しか乗らない」という作り手目線の重み付けでは無い平等さ、「後席も使って下さい」というトヨタの生真面目さを感じ取ることが出来て嬉しくなった。

●市街地走行


車に乗り込む前にカローラをまじまじと眺める。うーん、懐かしい。うーん、スーパーホワイト(040)がまぶしい。うーん、当時そこまでプロポーションが良いと感じなかったけど、今の目で見ると相当スタイルが良いなぁ。などと色々考えてなかなか出発できなかったが、意を決して乗り込んだ。

バタンというドア閉まり音は決して高級感は無いが、自分の6代目と較べればドアの重さのおかげで安心感がある。また、弱い力で閉めて半ドアにならないドア閉まりの良さが心地よい。ドアが綺麗に閉まらない理由は色々あり、一概に剛性とか建付けだけのせいではないのだがカローラのドア閉まり性能の高さは毎日開閉する際のストレス軽減に大いに役立った。

RAV4と同時代・同形状の鍵を差込みエンジンをかけた。自分のカローラのような「よよよよよ」という弱々しいセルではなく力強く安定感のあるセルモーターが
当時既に旧く感じられたハイメカツインカムの5A-FEを目覚めさせた。

タコメーターは未装備なのだが、ちょっとしたアイドルアップ状態の中、Dレンジに入れて、軽いガレージシフトショックを感じた後、出発した。

住宅地を徐行しているとATのイージーさがありがたい。路地を曲がる際に油圧パワステを操作して曲がるのだが、しっかりした手ごたえを感じるのは電気パワステとの大きな違いだ。



旧来のセダンらしく、低く座って手足を投げ出すドラポジである事は事実だが、まだこの時代はベルトラインが低く、ピラーも細く、角度も立っている為に右左折の死角は小さくスポーツカーのような閉塞感は無い。

信号を超えて県道に入った。アクセルを軽く踏むだけでシフトアップを繰り返しあっという間に50km/hまで到達する。かつて運転した1800ccクラスのカムリで経験した、アクセルに足を載せているだけで無意識に50km/hに到達する感じではなく、積極的にアクセル操作をしてやる必要がある。

のんびり走らせている限りシフトショックも皆無でスルスルーと加速してアクセルを抜けばスルスルーと惰性走行する。普段はMTを愛して止まない私だが、たまにATに乗るとそのイージーさにやられそうになる。「イージーだ!すごい」→「思い通りに運転したい」→→「100%意のままは難しい」→「やっぱMTだ」という不毛なサイクルを回し続けてしまう。

8代目カローラのATは油圧式ATとしても最後の世代であるが、ちょっと面白いのは特定の条件化ではアクセルオフで自動的に3速にシフトダウンする制御が追加されている。60km/h近傍でアクセルをオフにすると、明確に減速感が強まり微かにE/G音が大きくなる。ホンダの電子制御ATほど賢くシフトダウンは出来ないが、後にフレックスロックアップや登降坂制御などを駆使して燃料カットやブレーキの多用によるロスを減らす試みが取り入れられている。



田舎の県道を走っていると、アクセルペダルを薄く踏んで50km/h+αの速度域でのんびりするとこのクルマのゾーンに入れる事に気づいた。

165/80R13という現代では軽自動車レベルのタイヤを履いているが、乗り心地は角が取れていて全く不快感が無い。舗装のうねりが酷い区間をそれなりの速度で通過してもステアリングに強いキックバックも無く真っ直ぐ走り抜けた。

聞こえてくるノイズはロードノイズが主でラジオさえ掛けておけば無視できるレベルだ。コーナリングも多少ステアリングがスローだなと感じ、キビキビ感は感じないが許容レベルでコーナーをクリアする。



市街地の交通量の多い道路でもカローラの見せ場がある。信号ダッシュではアクセル開度50%程度で先頭集団の流れをリードできる。多少のE/Gノイズを響かせながら加速しても巡航するとすぐにシフトアップしてE/Gの存在感は小さくなる。

店舗に入るため停止した車両を見つけて強めのブレーキをかける。確か自分の6代目カローラGTと同じ13インチベンチレーテッドディスクだが、こっちの方が利きが良いように感じた。ただし、サスが柔らかいのでノーズダイブは大きめだ。

カローラで走る市街地は、俊敏な加速と十分なブレーキ、柔らかいサスの恩恵でかなりイージーな走りが可能だ。クルマとの対話、なんてことよりもドライバーが安全運転や他の事に集中できるように車側から妙な主張はしないのがカローラらしい。

●高速走行


カローラでETCゲートを潜るとランプウェイのコーナーを抜けて本線に流入する。40km/h制限が終わりウインカーを右に出して100km/hまで加速させる。アクセルをじわじわ踏めば早めにO/Dに入ってE/Gトルクを使って加速していくが、キックダウンさせれば2速を有効活用して俊敏に加速をこなす。90km/h-100km/hの範囲内で3速にシフトアップし、アクセルを緩めるとO/Dロックアップまで一気に切り替わる。

7代目カローラで報告したとおり、ロックアップしてしまえば後はもうひたすらロックアップ状態で走り続けようとする。そのため、伊勢湾岸道の名港トリトンのようなだらだら続く上り坂ではうっかり失速してしまい、慌ててアクセルを踏み込んでシフトダウンさせるという失態を演じてしまうため、坂に差し掛かる時は事前にアクセルを開けて勢いをつけていかねばならない。名阪国道のようなきつい上り坂ではドライバーの操作によってO/DスイッチをOFFにしておけば軽快に追越し車線を走行できるが、そうでなければビジーシフトを繰り返して走りのリズムは一気に崩れる。

100km/hでの走行感覚は風雨に見舞われなければ、十二分に安定して巡航できまるし、高速道路のカーブ走行や割り込みに対するブレーキにも対応できうる実力を持っている。

意外なほど静粛性が高く、巡航時の騒音はロードノイズが6割、風切り音が2割という印象でE/Gからの音はほとんど聞こえない。カローラでこれほどまでに静かにする必要があるのかと思うレベルだった。

120km/h走行が許される区間をカローラを走らせた。100km/h区間ではトラックの後ろについてイージードライブを楽しんでいたが、いざ日本で一番速度が出せる区間に入りアクセルを踏み込むが、油圧ATの反応が鈍く変速がワンテンポ遅れるものの、3速に落ちるとグワァッと加速し、すぐに120km/hに達した。



真っ直ぐステアリングに手を添えてあげればまだまだ速度を上げていけると感じる程ビシッと走るという現実に驚きを隠せなかった。1500ccの100psエンジンでタイヤ幅はたったの165しか無いにも関わらず十分に立派だと認めざるを得ない。

一方で、カローラは外乱への弱さを感じさせる場面もあった。元々道路のうねりに対する反応はぽわーんとマイルドなのだが、この速度帯になってくると少々手応えが欲しくなる。明らかにクルマが浮き上がっているような感覚でステアリングインフォメーションが希薄になっているのだ。

この傾向は100km/h程度で横風が強い橋梁を走る際にも感じられた。風に煽られて修正舵を当てるのだが反応が鈍くて少々ハッとする。もちろん速度を下げればよいだけの事なのだが。

基本的によく調律された走りだが、スイートスポットを外れたエリアでの挙動の変化率は現代のモデルよりも高いと気づく。このあたりがカローラの弱点の一つかもしれない

●山道走行

山坂道にカローラを持ち込んだ。まず山を登るのだが、実用域のトルクが太いカローラはストレス無く坂道を登っていく。スローなステアリングをせっせと操作していくつかのコーナーを抜ける。頂上を越えて今度は下り坂に入るのだが、タイヤが鳴くほどではない常用域だがコーナリングの軌道が遠心力で外に膨らんでいく感覚が他の車より強めの傾向ある。



決して破綻するような感じではないが、意のままに走るというよりは、「危なくないように頑張って耐えてます」感があった。一般ドライバーの運転を模してDレンジのままだとどんどん速度が上がってしまうので、ステアリング操作がどんどん忙しくなる。カローラ自体が曲がりたがる性格ではないので、コーナーでステアリングを切る、或いは切り足したり戻したりする操作のゲインが鈍い。鈍いのでさらに操作しなければならずちょっと忙しくなってしまう。加えてカーブ手前で減速というセオリーを守ってやる必要がある。そのブレーキもあと少ししっかり感が出れば良いのになという感じで、私が楽しいなぁと思う乗り味ではなかったが、これはこれでトヨタは重々理解した上でこうしたのだろう。

●遠乗り
せっかくの8代目カローラなので、遠乗りに供する事にした。いつものETCゲートを抜け、いつもと違う方向に方向指示器を出した。交通量が少なめの合流路ではO/Dのままじわじわ加速して本線に合流した。

100km/hで巡航して1時間強、眠くなるほど快適に走った。カローラの得意分野から外れないように運転すれば「疲れさせない性能」のお陰でストレスフリーのドライブが楽しめる。つまり、過度に速度を出さない、JCT等のコーナー手前でしっかり減速する、登降坂時はO/Dオフを適宜活用という気配りさえあればカローラの守備範囲から外れないから相当快適なのだ。

一般道(市街地走行)かつ、信号少な目・適度なカーブ・オレンジセンターライン・50km/h制限、という相当気持ちいいドライブコースを走らせた。さほど急カーブがないのでじわりじわりステアリングを操作して順調にコーナーを抜けていく。



アップダウンがあるのでO/Dスイッチオフを駆使してスムースな走行を心掛けた。上り坂ではハイメカツインカムの豊かな中速域のトルクを使って3速で登坂車線のトレーラーをオーバーテイクできた。



ひたすら気持ちよく走ってみた結果、燃費は15.6km/Lと好成績を記録した。(10・15モードは14.6km/L)

3時間以上運転して腰やお尻が痛くならなかったのは、自分のカローラGTが30分も乗れば確実に腰が痛くなってくることを考えれば進化を感じる。

●家族でちょっと移動


せっかく代車が来ているので家族でカローラに乗った。近隣の町まで一般道のみでくるっと一周したが、3人乗車だと信号ダッシュはアクセルを踏む量が少々増える。ただ、決して力不足ではなく極めて適正な範囲内だ。少々ブレーキの甘さが目立ってくるが、これも飛ばさなければ許容範囲だ。

助手席の妻は「なんか豪華で広いね」とまんざらでも無さそうだ。デミオでは助手席を前に出さないといけないが、カローラならある程度自由度がある。さらに独立したトランクルームがあるので家族4人ならカローラがあれば十分じゃないか!という当たり前過ぎてここに書くことも憚られるような感想が涌いてきた。元々家族4人の為の車なのだから当たり前なのだ。



妻にステアリングを渡し、私は後席に座った。後席は前述したように脚の収まりが良く、私には十分なレッグススペースがある。加えてサイサポートが適切で太ももをしっかりサポートしてくれ、足引き性も良いから足を伸ばし気味でも引き気味でも足を開いても足を左右のどちらかに揃えても座れる。シートバックも適切でヘッドレストがしっかり頭を支えてくれる。これならある程度距離がある移動もこなせるなぁと感じた。

妻は「オートマが久しぶりすぎて怖い」「アクセルを離したら惰性で走るのが怖い」とまるでMTドライバーの様なコメントをしてくれた。(MT乗りです)
市街地を流した後、ドラッグストアの駐車場でステアリングを回して車庫入れを試みたが、油圧式パワステは妻にとっては重いらしく「回せない」とギブアップされてしまった。EPSに乗りなれていると据え切り性能が劣る油圧PSは重いステアリングに分類されるらしい。

●結論


マジメな車、カローラはそんなクルマだ。びっくりするような新機構を持たず、デザインの為のデザインをしていないが、実用性と実用性に関わる性能はピカイチだ。通常の使用範囲では、高級感のある内外装と必要十分な装備水準を持ち、走る曲がる止まるも十分。

運転を楽しむ為の運転はあまり得意ではないが、行かねばならないところがある、誰かを連れて行かねばならない場所がある、などと目的がある時、快適な移動を約束してくれるのがカローラだ。

この車を捕まえて、面白くないだの没個性だのと言うことは容易だ。しかしこのクルマのオールマイティーさは他の追随を許さない。

中学生で例えれば国語、数学、理科、社会、英語、保健体育、音楽、技術家庭科、テストは全て80点、身長も平均より高いほうで、サッカーも野球もダンスもある程度できて、部活もキャプテンでは無いけどレギュラー。世間の流行もそれなりに押さえていて友達との会話もついて行ける。

クラスの中の女子とも、物怖じせずそれなりに話せ、リア充グループともオタクグループともそれなりに会話が出来る、もしそんな中学生「花冠くん」が居ればスーパー中学生と言って良いだろう。特出した何かが無くてもそのステータスの総和は高い。

そのステータスを調整すれば、倹約家のDXにも、いぶし銀スポーツのGTにも、バランス重視のXE-Saloonにもなれる。私はXE-Saloonに乗っていると車はこれで良いじゃないか、と言うカローラからの囁きが聞こえるような気がした。

子供を乗せてもチャイルドシートでご機嫌にしており、自宅に着いて下ろす際に運転席に座らせると、キャッキャ喜んでいた。「幸せなカーライフ」なんて使い古されたコピーは確かにカローラの根底にあるものであった。



しかし、不幸なことに8代目カローラが売られていた時代はファミリーカーがセダンからミニバンにシフトする過渡期であり、セダンを求める層は価値観が固まった中高年か営業車としてのフリートユーザーしか望めない状況だった。それなのに年間ベストセラー1位を死守しなければならず、ヴィッツやフィットと言う強力な21世紀型大衆車や豊富なラインナップから成るミニバン、或いはSUVを前にカローラは極めて旧時代的に映っていた様に思う。

スライドドアでも3列でもないカローラは、コンパクトだけど中も広くて十分な快適装備を備えながら、性能もそこそこで誰もが買える低価格を実現していた。こういう正攻法の商品がもう無くなりかけている。移り気な消費者には優等生に飽きた様子だし、自分たちの合理性を重んじる作り手の双方の意思でいよいよ市場からフェードアウトしそうだ。

いやいやカローラみたいなマジメなクルマを本当に無くしていいのだろうか。そういうクルマを評価する人が居ないけれど本当にそれでいいのだろうかと思う。「花冠くんは真面目でいい人なんだけどね」で終わらせておいて良いのか、と。

最新のコネクティビティを装備したグローバルでエモーショナルなモデルをローンチするのは結構だが、仕向け先の地域最適化を理由にサイズを拡大するクルマがあるのなら、日本の為にこのサイズ感を死守していて、しっかり現代の性能を持った車があっても良いのでは無いか。

ごちゃごちゃと書いてしまったが、カローラXE-Saloonは、使いやすく便利で快適なクルマだった。

昭和型大衆セダンの集大成は幸せなファミリーカー。

結論としてはそういうことになる。

2019年に運転してみると、何だか子供の頃よく遊んでもらった親戚のおじちゃんに会った様な嬉しい気持ちにさせてくれた。そんな暖かい気持ちにさせてくれる代車に感謝。

2019年06月20日 イイね!

2019年式RAV4 アドベンチャー感想文

2019年式RAV4 アドベンチャー感想文●ボディサイズは七難隠す?

5世代目のRAV4が日本市場に復活した。

RAV4が切り拓いたジャンル「SUV」は
現代におけるグローバルモデルとして
最も最適なボディタイプと言える。
本当に路面状況の悪いところでも、
そうでないところでも世界中で売れ、
大柄なボディサイズも、
かつての本格オフローダーの多くが
大柄だったことから
ある程度の大きさも許容されてきた。

日本でもSUVがもてはやされ、
80年代生まれの私には
子供時代のRVブームの再来か?と勘違いしそうになるが、
当時のような無理して街で乗る
「ヘビーデューティークロスカントリー」ではなく、
日常使いで少し便利なスタイル重視の車として
ソフィスティケートされた車
が現代のSUVブームの主役だ。

トヨタの視点では日本市場のために
ボディサイズを縮小したハリアー
2013年から販売されており、
独自のポジションを確立しているにも関わらず、
改めてRAV4を再導入するのは
日本のSUV市場を重視しているからである。

トヨタ以外にも、ホンダCR-Vも一旦、
日本市場から撤退しながらも、
ヴェゼルだけでは顧客ニーズに応えられないとして
改めてCR-Vを再導入した。
また、マツダもCX-5とCX-3がありながら、
更にCX-30を導入しようとしている。

各メーカー視点ではまだ
SUVのポテンシャルを感じており
ワイドバリエーション戦略をとりたいのだろう。

尤も今のRAV4にとって一番の主戦場はアメリカであろう。
海外旅行で現地をドライブした知人曰く、
少なくともRAV4くらいのサイズがないと
大きなフリーウェイで不安
な感じがしちゃう、と語っていた。
北米におけるRAV4は昨年、
モデル末期にも関わらずカムリよりも売れた。


そんな状況下では
キュートなチョロQルックで世に出たRAV4と言えども、
北米主体の商品企画になってしまうことは
どうしても避けられないのである。

元来、RAV4は「RECRATIONAL ACTIVE VEHICLE 4WD」
という意味であったが、
新型では「ROBUST ACCURATE VEHICLE 4WD」と再定義した。
オフローダーらしい力強さと
トヨタらしい緻密さを併せ持つ4WDとでも意訳出来よう。

つまり、新型は初代の精神は一旦切り離し、
2019年時点のトヨタのSUVラインナップの一つ。
そう考えれば初代ファンも多少は
理解できるのではないだろうか。

新型はカムリ系と設計を共有するP/Fを採用。
先代のカローラ系からクラスアップを果たした。

日本で売られていた3代目と比較すると
全長4335mm→4610mm(+275mm)
全幅1815mm→1865mm(+50mm)
全高1685mm→1690mm(+5mm)
ホイールベース2560mm→2690mm(130mm)

とかなり大きくなった。




アメリカではカムリより高い販売価格で売られており、
P/Fのベースアップはリーズナブルと言えよう。



一方でエンジンは3代目の2AZ型2.4Lエンジンから
UXで頭出しとなったM20A型のレギュラー仕様となった。
排気量が400ccダウンとなっている。
税制ランク的には2代目までの水準に戻された。
(北米は2.5L NAが採用されている)

一方で国内初となるハイブリッド
A25A型2.5Lエンジンと前後モーターが組み合わされる。
エコ性能を前面に押し出すというよりは、
従来の大排気量エンジン的なキャラクター設定となっている。

この新型RAV4と日本で競合するのは、
日産エクストレイル、ホンダCR-V、
スバルフォレスター、マツダCX-5、
三菱エクリプスクロス辺りか。



その中でRAV4はオフロードイメージを前面に押し出す。
25年前の初代RAV4が爽やかな都市や郊外の
舗装路を颯爽と走るCMだったのに対し、
新型のCMではひたすら道なき道を走り続けている。

初代は土臭いクロカンだらけの中に現れた新ジャンル
「都市型クロカン」だったが、いつしかSUVと呼ばれるようになり、
今度は並み居る競合との差を付けるため自らの立ち位置を
クロカン寄りのSUVへシフトさせた。

初代はクロカンに見えるギリギリの要素だけ残して、
あとは乗用車の流儀でまとめたが、
今のSUV市場はそんな車で溢れかえっている。

いまや後発組となったRAV4は
競合車と違うところを目指さなくてはならない。
それがオフローダーイメージの強化なのだろう。



勿論、従来からのRAV4的なSUVを好む顧客の
期待にも応えねばならないので
あくまでも乗用車然としたノーマル系がメインストリームだが、
イメージリーダーとしてオフロードイメージを強調した
「アドベンチャー」がラインナップに加わった。
(実は先代の北米仕様にはすでにアドベンチャーは存在)



25年前ならスポーツツインカム搭載のType Gのように
スポーツグレードをイメージリーダーに据えただろうが、
SUVブームの今は更なるオフロードイメージを足すところが面白い。
ちなみに、新型RAV4アドベンチャーの型式はMXAA54-ANX「V」Bだ。
このVの記号はトヨタ通ならピンと来るだろうが「GT」にも使われていた
スペシャルティ色の強い記号が与えられているのだ。
(私のカローラはAE92-AEM‘V'F)


●エクステリア




新型RAV4のエクステリアデザインのテーマは
「クロスオクタゴン」と言うそうだ。
オクタゴン=八角形ということで、
あたかも二つの八角形が鎖のように繋がった
形状
をモチーフにしていると言う。
とは言え、モチーフそのままでは車にならないから
着想を活かしつつ細部を自動車らしくまとめていくと
不思議な事に、アドベンチャーグレードからは
「六連星の皇居ランナー」風味を強く感じた。
狙って似せたわけでは無いだろうが、
カーキのボディカラーとホイールアーチモール、
スカシカシパン風のアルミホイールのデザインが
何だか「六連星の皇居ランナー」に似てしまった感がある。

ネットではパクりという辛辣な意見もあったが、
造形の基本が違い、作り手に盗用の意識は無いと思うが、
細部のデザインが結果的に似てしまい、
私たちのような一般国民に似て見えてしまうのだ。



それを差し引けばバタ臭いノーマル系よりも
明快なアドベンチャー系の方が好みだ。

ちょっと気になるのはオクタゴンと言いながらも
ラジエーターグリルの形状や
クオーターのレリーフは六角形
なのだ。



クロスオクタゴン(八角形とは言っていない)?
「節子、それオクタゴンちゃうで、ヘキサゴンやで」
と叫びそうになった―UXのCMのように。



私が唯一発見したオクタゴンは
エアコン吹き出し口のノブ形状だけだ。

バンパー形状の工夫でデザイン的な重心が高めで
標準グレードよりもリフトアップされたような演出だ。
この顔つきも北米のタコマや4ランナーに近い雰囲気を持っている。
加えてグリルに対してFrバンパー面が突き刺さるような処理も
ランクルプラドと類似している。

初代同様に本格的なフレーム構造の
パートタイム4WDを持たないが
身近でカジュアルなオフローダーのイメージには
ぴったりな見た目を得たと言えるだろう。



フロントビューでは大型グリルやスキッドプレートが目を引く。
Xグレードは素地色のグリルだが
上級のG系はカムリと似たガンメタ塗装が加わり、
アドベンチャーは素地に戻るが専用意匠となる。
ノーマル系のバタ臭い意匠もヘッドライト下の面構成がエグみを感じるが
他のドヤ顔のトヨタ車と比べると抑え目にも感じられて
意外とファンが居るかもしれない。
ヘッドライトは2.5HVと2.0ガソリン車とでは設定が異なり、
前者はプロジェクター式のBIビーム(一つの光源でHI/LO切り替え)、
後者は光源が別のマルチリフレクターLEDヘッドライトが装備される。
最近はグレードマネジメントでヘッドライトに差を付ける事例が多いが、
今回はガソリン車にBIビームのオプション設定は無い。
廉価品と馬鹿にしがちなマルチリフレクター式でも
かつての「ディスチャージヘッドライト」相当の
光量があり十分以上の装備内容といえるだろう。

サイドビューは、SUVの王道を行く
スクエアで健全なキャビンデザインだ。
傾斜したクオーターピラーを持つハリアーと
差別化する意図があるかもしれない。
また、ベルトラインが従来型よりも低めに抑えられている。
TNGAによって部品を低く配置するだけでなく、
人の座らせ方も変わったため、
グリーンハウスとサイドドアの割合は良くなった。
スバル風のホイールアーチモールは気になるし、
クオーターのくの字折れもゴルフの様だが
フェンダー部の張り出しでクロカンらしさを追求するなど、
トヨタにしては控え目でやり過ぎていないので、
最近のトヨタデザインに食傷気味の人にも
一定の理解が得られるかもしれない。

3代目までのRAV4はサイドドア下端の見切りが一般的なセダンと同じように
板金製のロッカーだった為に、汚れた車体に足が当たり、
ズボンの裾が汚れていたが、新型は下見切りになり
乗降性が良くなっただけでなく、汚れも多少は気にならなくなった。



さて、Rrビューは初代から3代目までのRAV4のアイコンとも言えた
背負いタイヤを他社に倣ってやめ、
コンベンショナルなバックドアを得たことが視覚的に大きい。
背負いタイヤの横開きドアはさすがに古典的に過ぎたか。
伝統的にRAV4のRrコンビランプはちょこんとした小ぶりな意匠だったが
海外専売の4代目も含めてバックドア側にもライトがあり、ワイドな印象だ。
(ちょっとJeep的な感触もある)

ライセンスガーニッシュの上部はグレードによって外板色か
メタリック塗装かの2種類がある。
X、アドベンチャーは全車で、G系はメタリック塗装だ。
かつてのトヨタなら、広い面をクロームメッキのペラッとした
モールで一体で作ってしまうだろうが、
個人的には今回の構造の方が好みだ。



面白いのはRAV4らしくない左右2本出しマフラーだ。
私なんかは脊椎反射のようにAE101を思い出すが、
素直に高性能を予感させてむしろ好印象だった。
よく見ると太鼓から出てくるテールパイプが左右対称では無いが、
マフラーカッターのお陰で巧く違和感を緩和している。
ただ、マフラーカッターからキラキラとしたテールパイプが
見えているのは最高にかっこ悪い

黒く塗るか、パイプが汚れて黒ずんでくるのを待つしか無い。
カタログではうまく消してあるので購入希望者は実車を確認のこと。

外装に対して私が注文をつけたいのは、
Rrドア下のロッカーのフランジ部分のブラック塗装が無く、
黒いモールの切れ目からボディ色がチラ見えしている点だ。



まるで誰かの社会の窓が開いているかの様、
或いはしゃがんだ時にパンツのゴムが見えちゃったときのように
見ているこちらが気恥ずかしくなってしまった。

素人なりに理由は分かる。車両をリフトアップする時に
アタッチメントがかかる部分ゆえにモールで隠せないのだ。
そうであれば黒テープやブラックアウト塗装と言う手も有った。

ちなみにC-HRはこういう部分に配慮が行き届いており、
当たり前のようにロッカーは黒塗装されている。



さすが現代のスペシャルティだ。
(叱られそうだが私は現代のセリカLB的ポジションだと思っている)

他にも太いドアフレーム断面が目立つ割に、
黒塗装や黒テープ処理が無いのも気になる。
ドアを閉めて外から見ると、
目に入るボディカラーが気になるのだ。

手前味噌だが私の初代RAV4はブラックアウト塗装を巧く使って
リフトアップ感やデザインテーマの
「サンドバギー」感を上手に演出していた。

そういえば2トーンカラーの見切り処理として
Frピラー根元とクオーターに黒いモールを設定しているが、
Frピラー部分は全てシボ入りの素地色だが、
クオーター部分(と一部Rrスポイラー)はグレードによっては
光沢のある黒ツヤ塗装になっており、ちぐはぐな印象だ。
前と後で担当者が違うから、なんてことは無いだろうが、
細部であっても全体的に統一した印象を持たせると良かった。

一般的に、価格の高い車はチラ見えの部分を減らしており、
高く「見える」車もチラ見えを嫌うものだ。
最近ではシエンタがMCでラジエータサポートの縦向きの
柱を目立たせないように変更して
グッと見映えが引き締まり好印象だった。

そんな些細なことで、と思う人も居るかもしれないが
街で見かける誰かの車ではなく、自分の車として
じっくり観察すればこういう部分が目立ってくるのだ。
後で述べるが、RAV4は決して安くない。お買い得でもない。
顧客はそれなりの覚悟をしてこの車を買うことだろう。
そういう車なのに細かい部分で手を抜くのは
「100年に一度の転換期」のために
資金を確保したい
と言う焦りなのだろうか。

エクステリアの印象をまとめると
アメリカ市場のトラック系車種のエッセンスを
巧みにちりばめ
ながら、
嫌われないバランスのデザインになったと思う。

上級モデルのイメージを利用する手法は、
ソアラのイメージを持った
レビン/トレノに代表されるように
トヨタが得意とする手法の一つだ。

●インテリア



インテリアは樹脂パキパキの初代~3代目と較べて、
ぐっとクオリティアップした部分だ。

左右のハンドル位置に対応した
シンメトリカルなインパネは水平基調だ。
手に触れるグレーのセーフティパッドは
某社のXブレーク的なステッチが入り、
I/Pアッパーも触ると柔らかい素材が奢られている。

インパネの玉座にはカーナビ取付けスペースが確保され、
最大で9インチの大型タイプをが装着可能。
I/Pアッパー全体を持ち上げなかった為、開放感を損なっていない。
カーナビ画面の下には空調のレジスターが配置されているが、
最廉価のX以外はシャットダイヤルが設けられているのは
3代目からの美点が継承されている。
(3代目の北米仕様にシャットダイヤルは無く、有るのは日本/欧州のみ)

初代はラジカセインパネ
2代目はGショックインパネと呼ばれてきたが、
今回の5代目は、何らかのモチーフは無さそうだが、
挿し色を効果的に使いながらソフトパッドを活用しており、
歴代で最も豪華なインパネと言える。
RAV4の見せ場はSUV的な演出として採用したのは
運転モードの選択機構(ダイヤル、スイッチ)である。



ダイナミックトルクベクタリングが備わる
アドベンチャーとG"Z_PKG"のみマルチテレインセレクトとして
「MUD&SAND」「ROCK&DART」「NORMAL」をダイヤル/プッシュで操作できる。
ガソリン車の4WDも同様の装備がボタンで操作できる。
HVの場合、最上級のHV・Gのみダイヤルが備わるが、
4WDシステムが異なる為「ECO」「NORMAL」「SPORT」の選択となる。

いずれにせよ、新型RAV4は
オフロード感を演出する為スイッチ類に力を入れた。
私の初代RAV4はスターレットやコロナ用のスイッチを流用し、、
個性的に感じるものではなかったが、
新型RAV4もTNGAとして流用しつつ、
アイキャッチとなるスイッチに専用品が奢られている。



新型RAV4のシートはアドベンチャー専用のスポーツタイプ
ベーシックタイプの2タイプ。
スポーツタイプはエンボスパターン入りの合皮、
ベーシックタイプはX系がファブリックで
上級のG系は合皮の設定だ。
これはちょっと驚きで、本革シートの設定が無い。
合皮と言えば「通発レザー」等の懐かしいイメージだが、
現代の合皮は柔らかく本革に似た風合いがあるものもある。
しかし、ちょっと夏場は蒸れ易く、
冬は冷たいのではないかと懸念している。
ベーシックでもG系にはHI/LO切り替えのシートヒーターが標準装備、
アドベンチャーには3段階調整機構つきの
シートヒーターとベンチレーションシステムがOP設定されている。
日産エクストレイルのようにファブリックシートを選択出来るように
備えておくと良いかもしれない。



メーターは基本的にエンジン毎に1種類、グレードで2種類に分かれる。
廉価用のアナログタイプは何と海外専用だった4代目とほとんど同じ構成で
文字盤の意匠のみ異なる用に思う。(WEBサイトで確認)
上級用はカローラスポーツと同じ7インチTFT液晶が備わる。
この上級用メーターは、現状ではナビ画面を写す事などは出来ず、
あまりありがたみを感じない点は少し残念だ。



一応、デジタル表示も出来るようだが何だかパッとしない。
RAV4には似合わないが、かつてのトヨタ高級車のような
デジパネ風やセルシオのオプティトロンメーターを再現してくれたら面白いのに。
(スポーツカー用で往年の名車の計器を再現するとか)

或いはRAV4らしく、アウトドア用の高機能腕時計のように
気圧や高度が表示されたり、かつてのクロカンのように
車体の傾きを絵で表示したり、
ランクルのように電圧と油圧表示が
追加できるような仕掛けがあれば楽しかった


今のところ、メカ部分に左右されない液晶ならでは!
という機能の訴求が無く物足りない
印象だ。

●居住性・積載性

室内寸法は室内長1890mm、室内幅1515mm、室内高1230mm
3代目は室内長1820mm、室内幅1495mm、室内高1240mm
それぞれ+70mm、+20mm、-10mm
ボディ拡大分の恩恵は得られていない。
どちらかと言うと、セグメンテーションや
衝突安全対策の意味合いが強そうだ。

運転席に座ると初代や3代目よりもセダンライクなドラポジだ。
ヒップポイントは上下調整はあれども低めでベルトラインも
現代車の流儀に合わせて高いのでSUVの開放感、
コマンダーポジションを楽しむ為には
シートリフターでヒップポイントを上げてやらねばならない。



前席に座ると横方向のゆとりを感じ、
狭いと言う人はさすがに居なさそうだ。
少なくとも165cmの小柄な私には余裕たっぷりだった。

次いで後席に座った。
TNGAお得意のお尻の位置と足の関係が
左右方向にずれる欠点も共通化されているが、
レッグスペースも広く、UXやカローラスポーツで感じた
嫌らしさはずいぶんと緩和された。
豊かなボディサイズのお陰だろうか。

3代目までのリクライニング&スライド機構は簡素化され、
2段の簡易リクライニングのみとなってしまった。
私は後席に座ると前席の人とコミュニケーションをとるため、
スライド機構があれば大抵前寄りに設定する。
足引き性も良くなって良い事尽くめなのだが,
残念ながら廃止された。



素晴らしい点としてRRシートベルトを取り上げたい。
3代目や現行ハリアーのようにアンカーを
Cピラーに配置していないので、
リクライニングしても肩からベルトが離れなくなり
大いに進歩的な設計
になった。
アンカーが無ければピラーを細くでき、
斜め後方の死角も減った

家族を乗せることを考えると、ゆったりしたサイズ、
リクライニングしても肩から外れないシートベルト、
後部A/C吹き出し口があることは好ましい。

ISO-FIXも当然設定があるので
チャイルドシート(CRS)取り付けも容易だ。
2歳、90cm、12kgの我が子を乗せる場合、
屈まなくても良い分腰への負担も小さく感じた。

一方でドアが90度まで開かないのでCRSの脱着は難儀する。
乗せ降ろしも、車幅があるためにRrドアを大きく開けられず、
小さい開口で身体をよじりながら乗せ降ろしする事になるだろう。

ドアの長さもあるので、
コンパクトカーのドアの感覚よりも不便さを感じるかもしれない。
従ってポストミニバンとしてRAV4を検討する方は
この点をじっくり検討していただきたい。
(特に自分でドアを開けるお子さんの場合、ドアパンチをし易い)

もう一点看過できないのが
新型RAV4は乗り込んだ後のドア操作が重い事だ。
ドアトリムのハンドルが前にありすぎて
余分な筋力をドア開閉に費やすことを強いられる。
筋トレ中ならいざ知らず、女性や子供の手では
相当な負担だし、私のような男性でも
手首への負担が大きく、高齢者にはきついのではないか。



カローラスポーツでも指摘したがカッコいいドアトリムを否定しないが
ドアトリムには意匠性だけではなく、使用性も求められる

例えばCFRPやアルミを使って質量を下げて
操作力を等価に置くなら、このような意匠もあり
だと思うが
現状のままで良いとは思えない。



ラゲッジに目を移すと、実に広大である。
カタログの580Lの容量と言われてもピンとこないが、
子育てファミリーが泊りがけで出かける際、
ベビーカーとその時期特有の赤ちゃん用品
(おもちゃ、バンボ、バウンサーなど)、
着替え満載の旅行カバン、手土産を積んでも余裕がありそうだ。
我が家のRAV4やデミオなら後席を半分畳んで満載になる荷物量でも
新型RAV4ならラゲッジだけで収まりそうだ。

ただし、ラゲッジのデッキ面は
バックドア側に向けて傾斜がある。
例えばデッキに積んだボウリング球が転がって
バックドアから飛び出してつま先に落下するかも知れない。

ローディングハイトを確保しつつ、
SUVらしく履き出しデッキを実現した為、
仕方ない部分かも知れないが少々気になる。

この状態で無理やりフラットデッキを作ろうとすると
プリウスPHVのように上げ底デッキになってしまう。
あのがっかり感を味わうくらいなら、
多少の斜面は受け入れざるを得ない
だろう。
実質的にカバンやベビーカーが斜面のせいで
転がり落ちる確率はそう高くないのだから。
どうしても気になる場合、二段デッキボードを下に下げれば
段差が得られ、例のボウリング球が落下することは無い。
個人的にミニバンのフロアが傾斜しているのは許せないが、
荷物を置くだけの荷室なら許容できる。

●動力性能・乗り心地

目玉グレードのアドベンチャーに試乗した。
まず、ドラポジを調整した。
なんとアドベンチャーグレードはパワーシートが標準装備
別にマニュアル式で良いのになと思いつつ、有り難く使う。
ステアリングもチルテレがあり、調整幅も広かった。

しかし、これで思い通りのドラポジが取れると思ったら大間違いなのだ。
ステアリングのセンターが中央にオフセットしており、
シート自体も左方向に回してあるので何とも気持ち悪い。



こんなにサイズに余裕があるのに何故こんなに無理をしているのか。
自分のRAV4も多少はズレているが、
新型は2019年の新型車にしては相当ズレ量が大きい

プッシュボタンでE/G始動。
ドライブモードセレクトダイヤルより遠い位置の
シフトレバーをDに入れると、EPBは自動で解除される。
HOLDモードを併用すれば普通に運転している限り
パーキングブレーキ操作は不要で、EPBは確かに便利だ。

いつしかこれが常識になった暁には
「まだ自分でパーキングブレーキかけてるの?」と
言われてしまうかも、という予感がした。

走りはじめて気づいた面白い点
運転席からの眺めが普段乗っている初代RAV4を感じさせる事だ。



しっかりエンジンフードの存在感があり、フード裏の
あまり見えて欲しくない裏面もチラ見えする欠点までも初代と同じなのだ。
(セラミックのドットで緩和する対応は新型の方が上手)



幾度とモデルチェンジを重ねる中でフードがスラントし、
徐々に運転手の視界に入らなくなっていったが、
新型はしっかりとフードが存在を主張し、たくましさを感じる。

UXから新採用されたダイレクトシフトCVTだが、
グッと発進して回転数が上がったあと、
シンクロ機構を通じてCVTに引き継がれ、
その後はCVT的な変速感のため、
トヨタが言うダイレクト感とは何なのか今も分からない。

発進用ギアであってもトルクコンバーターを介して発進する。
ゆえに、ステップATでもCVTでも大したダイレクト感は出ず、
ハイギア側でこそダイレクト感を感じるものなのだと思う。
この領域ではただのCVTとなり1000rpmに向かってせっせと
変速を続け、アクセルを踏み込むとステップ変速をしながら加速する。

右足とゲインの直結感を求めるのは求めすぎだろうか

トヨタブランド初となるM20A-FKSエンジンは
レギュラー仕様でありながら
ハイオク仕様のUXと同等のスペックだ。
これはボディサイズの違いによって
レイアウトに余裕が生じた為と言う。
いずれにせよ、俊敏という印象は持てないとしても、
必要十分+αの性能は持っており
直噴とポート噴射を併せ持つD4S、
レーザークラッドバルブシートなどのハイテクを駆使し
最大熱効率40%を達成するという。
80年代から見れば夢のようなエンジンのおかげで
旧世代のエンジンを積むハリアーのガソリン車よりも力強さを味わえた。

ちなみにパワーウェイトレシオを比較すると下記の通りとなる。


新型RAV4:1630kg/171ps=9.53kg/ps
ハリアー(4WD):1630kg/151ps=10.79kg/ps
3代目RAV4:1470kg/170ps=8.64kg/ps
初代:1160kg/135ps=8.59kg/ps


上り坂でも加速性能は十分だが、少々エンジンが吼える印象だ。
特に3000rpmを越えた辺りからエンジン音がキャビンに侵入する。
のんびり走っている時は気にならないが、上り坂や、信号ダッシュ、
高速の合流などではほぼ必ずエンジン音が聞こえるだろう。
音質も決して上質なものではなく、
もう一段のレベルアップを望みたい部分だ。
競合のCR-Vは1.5Lターボ、フォレスターは2.5L・NAだが、
いずれもトルクに余裕があり、さほど回す必要が無いし、
回しても騒音は気になるレベルではない。

試乗は、市街地走行しか試していないが
路面の凹凸は期待しているよりも上手に受け止めていた。
とくにアドベンチャーは19インチを履いているにも関わらず、だ。



P/Fを一新して例えばRrサスのショックアブソーバーを
直立式に改めたり、井桁型サブフレームの採用や、
構造用接着剤を採用するなど改革が一気に織り込まれたので
各種改良の個別の効果量は素人には判断しかねるが、
見た目からは意外に感じるほどセダン感覚だ。



また、世界初のダイナミックトルクベクタリングAWDが採用されており、
前後左右のタイヤのトルク配分を連続的に変えて
旋回時の安定性を高める
だけでなく、
定常走行時はFF状態に切り替えてロスを減らす。
同種のシステムは過去にもあったが、
特にFF状態への切り替え時にクラッチを使って
「プロペラシャフトの回転を止めてしまう」点が新しい。

ちなみにディスコネクトの燃費向上効果だが、
WLTCモードのトータル燃費は変わりが無いが、
有は無よりも郊外や高速道路で0.1~0.2km/L良い。

私のRAV4はセンターデフ式フルタイム4WDだ。
常に4輪駆動の為、タイヤがべったりと
地面に張り付く感覚を楽しめる反面、
燃費はお世辞にも良いとは言えない。
初代:12.6km/L(10・15モード)
新型:15.2km/L(WLTCモード)

試乗したのが市街地の乾燥路ということもあり、
新4WDの凄さを体感できるようなシーンが無かった。
ただ、メーター内に
前後左右のトルク配分を示す表示があり、
これによると発進時は後輪にもトルクを配分し、
定常走行時は完全にFFだと表示されていた。
200mくらいの区間で曲がりくねった道があったが
アクセルを踏みながら曲がると外側の車輪に
多くトルク配分されていることが分かった。

私のような一般人は有無を乗り較べない限り
体感できないので、
4WDの有り難味が分かり易いこの表示は
優れものだ。(表示内容が正直なら)

普段の運転のし易さと言う面では
比較的Aピラーが傾いておりセダン的だ。
自分の初代はAピラーが立っており、
それがクロカンを感じさせていただけでなく
右折時の死角を減らしていた。
新型ではドア付けのドアミラー(変な日本語)によって
ピラー付け根の空間を開けることで死角に配慮した。
ベルトラインそのものも低く抑え、
上でも述べたが、Cピラーを細くして
死角を減らす工夫も見られる。

それでも絶対的なボディの大きさはどうしても気になる
ドアミラーもハリアーと較べれば鏡面が拡大されて
見やすくなった
し、Rrホイールアーチモールが
目印になって車幅も認識し易いが、
360度モニターがあればぜひとも欲しい。

「多分、仕方ないんだ」と念仏のように唱え続けても
頭の片隅にはサイズへの不満があり、
日本で乗るならやっぱりもう少し小さくして欲しい。
しかし日本よりも規模が大きい北米市場を考えると
ボディサイズが小さくできないジレンマに対して、
ホンダ(アコードやオデッセイ)も
トヨタ(カムリやカローラ)も悩み続けてきた


このRAV4に限らず、昨今の新型車からは悩んだ形跡は感じられず、
日本に対して知らん顔して大きい車を導入しているように感じる。
大きい車でも、慎重に運転すればぶつからないし、いつかは慣れる。
新型RAV4より大きい幼稚園バスも狭い路地を走っているではないか。

しかし、新型RAV4に試乗した後、同じコースを
自分のチョロQ型RAV4で走ると、
狭い道でもストレス無くキビキビスイスイ
と小気味良い。
同じ道路を走ってもライン取りの自由度が高い。

新型RAV4に試乗して感じるのは、
グッと良くなったところ、
そうでもないところがチグハグに感じた。
競合車と比べても致命的にダメだと言うところは無いが、
競合の追従を許さないほど突き抜けた所があるかといわれると、
あくまでも今のトヨタが作ったミディアムSUVという範囲内にある。
「もっと良いクルマ」というスローガンとは裏腹に
ドラポジの乱れや使い勝手の点、
或いは愛車として見てもらうための見栄えなどに
まだまだ弱さが残る。

先に乗ったUXやカローラスポーツと較べて
大きなネガが少ないのは、
何となくボディサイズの大きさが
功を奏している
ような気もした。
無理をしてもボディサイズがうまくぼかしてくれたのか。

●番外編 ハイブリッドG



営業マンの方が口をそろえて走りを重視するなら
明らかにハイブリッドの方が格上、と勧めて頂き、
一周だけハイブリッドGに試乗させていただいた。

走り始めてすぐに電動走行の力強さと
レスポンスのよさが気に入った。
個人的には、俊敏と言えるほどの軽さは無く
スポーティとは言いがたいが、
グワっと飛び出すような類ではなく、十分リーズナブルだ。

例えばハリアーハブリッドと較べると、
絶対的な加速性能は似ているものの、
EV走行できる領域の広さを感じた。
私のような非オーナー以上に、
現行ハリアーオーナーの方が違いに気づくだろう。

カローラスポーツで感じた感想そのままだが、
RAV4 HVも市街地をそっと走っている限り
EVランプは点灯し続けてくれる。
3代目プリウス付近までの常にエンジンの音が聞こえるハイブリッドは
一体なんだったのかと言いたくなるほど、
新世代のハイブリッドは洗練された。

ブレーキのタッチはUXよりも好みでギクシャクする事無く、
もしかすると重量級(1690kg)なのが功を奏したか。

4WDを売りにしている事はハイブリッドでも同じで、
擬似デフロックが使えるTRAILモードも備わっている。

従来のハイブリッドはE-FOURと言いながら、ギリギリ生活四駆
のパフォーマンスしか与えられてこなかったが、
2.5Lエンジンと前後モーターによる222PSのシステム出力を得て、
ある程度のオフロード走行ができるのだとか。(乗っていないが)
それでいて燃費は20.6km/Lを誇るのは立派だ。

パフォーマンスの差を考えれば
ハイブリッドを選ぶ人のイメージは
一昔前ならL4とV6で後者を選ぶ人なのだろう。

税制ランクも上がるが、パフォーマンスは明らかに違い、
こちらは静粛性が高い。

問題は同グレード比で税込み60万円と言う価格差だが、
営業マン曰く、ガソリン車を買うのは比較的若い人、ファミリー層。
ハイブリッド車を買うのはミニバン卒業組なのだとか。
ヴェルファイアやエスティマからの乗り換えの為、
価格が取り立てて高いと指摘は無いとの事だ。


●見積もりイメージ

店内で見積もりを作成してもらった。
グレードはアドベンチャー(税抜290.5万円/税込313.7万円)
ボディカラーはアーバンカーキのオーキッドブラウン内装とした。
ツートンは上が黒なら選んだかもしれないが、
明るい色をルーフに選ぶことはあまり好みでは無かった。
ピラーから上はブラックアウトした方が車が低く長く見えて
カッコいいと個人的には感じた。

私が追加したMOPは
スペアタイヤ(1万円)、インテリジェントクリソナ(2.8万円)、
バックカメラ(2.7万円)、Rrクロストラフィックブレーキ(6.7万円)、
本革巻ステアリング+シートヒーター/ベンチレーション(7.6万円)、
ハンズフリーパワーバックドア(7.5万円)、寒冷地仕様(2.2万円)、
合計約33万円。

何回か私の新車見積もりを見たことがある方からすれば
定番とも言える追加内容だ。
もし私がRAV4を買うなら安全装備はぜひとも選びたい。
RAV4の場合、「トヨタセーフティセンス」という
パッケージ装備が標準装備となっており、

歩行者回避支援機能やクルーズコントロール機能が備わった
レーダー+単眼カメラのプリクラッシュセーフティシステム、
レーンからはみ出さないようステアリング操作を補助するLTA、
オートマチックハイビーム、標識検知機能、先行車発進告知機能が
セットで装着されている。

メーカーオプションとして
インテリジェントクリアランスソナー、
ブラインドストップモニターが追加できる。
上記を追加すれば前、後の壁やクルマを検知して
出力を制御してくれる為、踏み間違えの事故に効果が期待できる。

悲惨な事故の報道が過熱する昨今、
この機能が欲しくなる人は少なくないだろう。
そこで早速追加すると合計で約9.3万円のオプション価格が上乗せされる。
(妻のデミオは標準装備品なのだが・・・)

試乗して感じたのは本体価格300万円を超える価格のクルマの割に
ステアリングがウレタンであったり、気温が高い日は
合皮のシートの通気性が悪く蒸れるという車格にそぐわない点がある。
そうなると本革ステアリングやシート空調機能が欲しくなる。

そして電気式バックドアロックボタンの高さが上にあり過ぎて
操作しにくいのでパワーバックドアが欲しくなるが、
これも比較的高額オプションとなり、
気がつくとGを超える価格になってしまうのだ。
私はまんまと彼らの術中にはまったと言うわけだ。

DOPは
ボディコート、フロアマット(デラックス)、ラゲージソフトトレイ、
マッドガード、ETC、ドラレコ、カーナビ(7インチ)、
合計約35万円。

メンテナンスパックと延長保証で約12万円。

残り諸費用24万円

総合計は417.7万円と想像以上に跳ね上がった。
DOPはマットもカーナビも安い方にしたしバイザーもつけなかったが、
最上級マット(+0.8万円)、9インチナビ(+8.4万円)、バイザー(3.2万円)
営業マンのさりげないお勧めに乗っていればさらに12.4万円も高くなる。

RAV4が400万円台中盤と言うのは、
昔のカジュアルなRAV4を知っている人からすれば驚くだろう。
私は「どうかしてる」とすら思った。

●イメージリーダーでしっかり稼ぐグレード構成

改めて価格を整理する。

X・FF  260.8万円
X・4WD 283.5万円(+22.8万円)
アドベンチャー 313.7万円(+30.2万円)
G 320.2万円(+6.5万円)
G"Z_PKG" 334.8万円(+14.6万円)

HVの場合
X・FF 320.2万円
X/4WD 345.0万円(+24.8万円)
G   381.7万円(+36.7)

X→Gではグリルやスキッドプレートが塗装され、
シート地が合皮になり、内装にメッキが追加される。
ドアトリムもソフトになり、メーターも7インチTFT液晶になる。
加えて本革ステアリング(2.8万円相当?)や
パワーバックドア(5.9万円相当)が備わる。

更にXではOPのアルミホイール(4.3万円)や
バックカメラ(2.7万円)などの装備が標準化される。
これらのOP総額は約15.7万円。

36.7万円の価格差から15.7万円を差し引くと21万円残るが、
グリルに色が付く、自動防眩ミラー、
シート地が合皮に変わったり、
ドアハンドルにメッキが着く程度の変更範囲で
21万円も差が付くようには思えない。

思ったほどGにお買い得感が無く、
Xでも後から追加できる装備があるので
Xに必要な装備だけ追加する買い方は全然アリだ。
少なくともフォレスターのように廉価グレードにOPT追加で
上級グレードより高くなるようなことは無い。

G→G"Z_PKG"では
ホイールのインチアップ、4WD機構のグレードアップ、
ダウンヒルアシスト、デジタルインナーミラー(4.3万円)、
ハンズフリーパワーバックドア(1.6万円)、
が追加されるが、G"Z_PKG"専用なのは19インチホイールと
4WD機構位、ハンズフリーパワーバックドア位のものだ。
ホイールの1インチアップはXのOP価格から4.3万円と推定すれば、
残りは4.4万円となり、これが
ダイナミックトルクベクタリングAWDの価格と考えられる。

X→アドベンチャーでは、
ホイールの19インチ化(1インチ4.3万円なので8.6万円?)、
4WD機構のグレードアップ(4.3万円)、
専用外装、シートのグレードアップ(合皮スポーティタイプの電動)、
自動防眩ミラー、フォグランプ(3万円)、7インチTFTメーター、
ドアトリムグレードアップ(ソフト化)、カップホルダー照明、
シャットダイヤル追加、と言った部分だ。
価格がわかる分だけでも15.9万円となる。
価格差30.2万円から差し引き14.3万円という上がり幅は
専用の外装に対する費用
と言う位置づけなのだろう。

思えば私の愛車カローラGTは見た目では分からない
玄人好みの仕様設定でマニアにはたまらない一方で
フツーのユーザーの選択肢には上がらない。
カタログでもSE系ばかり採り上げられ、
価格を高く設定して利益率が高いGTでも台数は少なかった。
新型RAV4アドベンチャーはスペシャルグレードを
しっかり訴求し、利益を出そうという意思
を感じた。
商品の魅力で稼ごうとすること自体悪い事ではないと感じた。



つまり、RAV4のグレード選びは
「アドベンチャーカッコいい!」となれば即終了

他のグレードとは比較できなくなる為、
あとはどんなオプションをつけるかという話になる。
G相当の快適装備を後から追加すると、
車両本体価格313万円だったものが343万円になる。


つまり、Gより約23万高く、G"Z_PKG"より約9万円高いのだ。

一方でアドベンチャーの持つダイナミックトルクベクタリングAWDや
オフロード感溢れる意匠がさほど魅力出なければ、
実質的に装備が充実しているGの方が安い価格設定になる。
ダイナミックトルクベクタリングAWDがどうしても欲しいと言う人は
G"Z_PKG"も選択肢に入ってくるだろう。

Xは検討に値しない廉価グレードなのか
と言うとそうでもない。
オートエアコンや17インチアルミホイール、
ドライブモードセレクト(4WD)を持ち
夏場でも蒸れないファブリックシートが装備されている。
3代目RAV4ユーザーの買い替えならXに
好きなオプション追加で対応するのが最もお買い得
だと感じる。

例えば283.5万円に対して安全装備、
バックカメラ、フォグランプくらいをつけても
ギリギリ300万円を切る本体価格だ。
ただ、所有する喜びをくすぐる装備は皆無で、
道具として付き合える方ならこれで十分だろう。
むしろFFを選択するのも大いにありだ。

逆の言い方をすればXで物足りない、と感じれば即座に
400万円クラスのお買い物になるという事だ。

RAV4に限らず、CR-Vやフォレスターの見積もりを取ったときも軽く
400万円を超える領域に踏み込んでくるのでこのクラスのSUVは
こんなもんですよ!という売り手のいいたい事も分かるが
その中でもRAV4は高めの部類に属している。

競合も含めて揃いも揃ってこの価格帯と言うのは
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」精神が発揮されている。
日本市場はお買い得を競うのではなく、
いかに少ない台数で利益確保するか、
取れるところからがっちり稼ぐ。
―という感触で今後もこういうビジネスが続きそうだ。

昔の日本市場は新車に4年で買い換えてくれたが、
今はその2倍以上乗り続けると言う。
売り手からすれば利益確保の為には
2倍の粗利を上乗せすると言うことなのだろう。
次の100年のための資金が欲しいことは理解できるが、
それならば嘘でも良いから
2倍の粗利に見合う商品力強化を望みたい。

また、海外仕様には6速iMT仕様があるが、
ディーゼルオンリーのCX-5より少し
廉価に手に入る対抗馬として
台数限定でも導入してみれば面白いのだが。

●まとめ

まだまだ伸び代があるらしいSUV試乗に、
パイオニアたるRAV4が復活した。

懐かしいのは名前だけで基本的には
トヨタの2019年発売のSUVに過ぎず、
過去からのRAV4との連続性はほとんど無い。

ボディサイズが大きいので、
他のトヨタTNGA車で感じたネガは目立たない。
ボディサイズの大きさが七難隠した格好だ。

オフロード感を強く意識させる
アドベンチャーグレードは、
相当に収益を意識した良く考えられた仕様設定。
昔のGTのような玄人好みの面影は無いが、
ビジネスとしては大いにアリ。
RVブーム時代の子供時代を過ごした私には魅力的に映った。

CMもカタログもアドベンチャーグレードを強く訴求し、
WEBサイトのみクリック操作でノーマル系に
フォーカスした構成に変更できるようにしている。
ディーラーの営業マン曰く、
アドベンチャーの契約台数が多いとの事だ。

価格設定は強気だが、
競合も強気な設定ゆえにセグメントとしては普通の範囲内。
ただし、細部の下らない部分の見栄えが悪く
頑張って買う人をがっかりさせかねない。

個人的にはドラポジのズレが許容しがたく、
2019年デビューでこれかよ、と悪態をつきたくなる。
これだけボディサイズがあるのに、
アレほどまでにズレるのは何故なのだろうか。

例えば我が家でどうしてもこのクラスのSUVを
買わねばならない状況下に有ったとしても
RAV4は選択肢から外れざるを得ない。

1996年式の同じ名前の車は気に入っているので
少々残念な結果となった。



あるディーラーで私のRAV4を見た店長さんは
「あっサンルーフ付ですねー、懐かしいです」
「初代は小さくて安くて若い人にも中年にも良く売れました」
「それ以上にキムタクのCM効果で女子高生に人気がありました、
ポスターをくれと言う電話が殺到し、断るのが大変でした」
と当時の思い出話をしてくださいました。

その店長さんが私のRAV4を見ながら
「色々凄いんですけど、
 高く、大きくなっちゃったんですよねえ」

という言葉が少し寂しそうにも感じられた。
Posted at 2019/06/20 01:54:36 | コメント(0) | トラックバック(0) | 感想文_トヨタ・レクサス | クルマ
2019年02月11日 イイね!

2018年式UX200/UX250h 感想文

2018年式UX200/UX250h 感想文●節操の無いプレミアムブランド?

2018年11月、レクサスのクロスオーバーSUVの
ボトムエンドとしてUXがデビューした。
RAV4のP/Fを基にレクサス化したNXに対して
UXはC-HRのP/Fをベースにレクサス化したイメージだが、
UXとじっくり向き合ってみると
本来レクサス全体のボトムエンドを担うCTの
FMC版の中の1バリエーションとして企画されながら、
独立した車種として開発した様にも見受けられる。

旧い話だがコロナのFMC版がいつの間にかコロナマークIIに
独立したようなストーリーだったのではないか。

デビュー当時はトヨタ流の解釈で
BMW1シリーズ的なキャラクターが与えられたCTは
2011年のデビュー以後、
2017年のMC後は放置プレー中。
ディーラー担当者も雑誌でも次期CTの情報は無い状態で
このままモデル廃止の可能性も充分ありえるとの事だ。



プレミアムブランドたるレクサスは
例えスモールSUVが業界的にアツいカテゴリーだと言えども
安易にCTを放置して次期CTたるモデルに対し、
SUVソースを振り掛けるだけの
安易なキャラ設定をすべきでは無かったのではないか。

個人的にはCTをしっかりブランドとして育てた上で、
機構を最大限共通化しつつ差別化したUXを出すべきだったと感じる。
ジャーマン3は1シリーズもAクラスも育てた上でX1やGLAを展開している。
売れる商品をタイムリーに最小限の投資で世に出すことは当然だが、
プレミアムブランドは商品を長い目で育てて欲しいと思うのは私だけだろうか。

私はかつてCT、1シリーズ、Aクラス、V40を
同時期に比較試乗する機会に恵まれたが、
CTは未成熟な部分はあれどもレクサスらしい
個性を感じることが出来るエントリーカーだった。
Aクラスも2世代目に移行し、
1シリーズはいよいよFFに変更されて3代目となろうとしている。
競合が着々と進化する中で
CTの二世代目に期待していたところで、UXがデビューした。

トヨタブランドがクラウンのようにセダンを捨てて
クーペ風に変わることはまだしも、
プレミアムブランドたるレクサスがポリシー無く
ふらふらと売れ筋だけの商品を開発するのは少々残念に思う。
どのプレミアムブランドも基本モデルは
いつも定番としてラインナップしている。
流行に即した商品を追加すれども、
基本モデルをおろそかにしないからこそ、
そのブランドが信頼されるのでは無いかと思う。

●UX200/UX200hをショールームで見る

ボディサイズは4495mm×1840mm×1540mmと
CTよりは一回り大きなボディサイズだ。
スタイリング的にはNXやRX、もしくはC-HRやプリウスに代表される
昨今のトヨタ車を見慣れた目には素っ気無いほどスッキリした
エクステリアデザインだが、UXが位置する価格帯を考えても
大人な雰囲気を持ったスタイルは受け入れ易いのではないか。
私はポジティブに捉えた。



例のスピンドリルグリルとDS3ほうれい線のFrマスク。
高級車らしくSUSモールで覆われたウインドーフレーム。
ベルトラインが高くキャビンが小さく見せつつ、
ドアが分厚く少々間延びしているが、
妙なプレスラインが無いだけマシだ。



ホイールアーチとロッカーに素地色のモールがありSUVを感じさせる。
SUVらしさを補強するならOPTでアルミルーフレールや16インチの
ガンメタホイールが選択できる。
Rrビューは開口が小さめの樹脂バックドアと
左右が繋がった光るガーニッシュで構成され、
比較的スッキリとしていて好感が持てた。



インテリアも最新のレクサス的という表現がピッタリのテイストだ。
実質的なCT後継らしくSUVらしくないデザインでまとめられている。
特に面白いのは和紙をモチーフにしたインパネ上面のセーフティパッドだ。
和紙の如く繊維質の紋様が光に照らされて現れる。
勿論フェイクなのだが、濡れた手で触れば簡単に破れてしまう
和紙の風合いを、耐候性や強度を挙げつつも金型で再現する技術は
サプライヤー天晴れではないか。



好き嫌いはあれども日本ブランドらしいと感じた。
個人的には肯定的に見ている。

デザイン的にはレクサスらしく落ち着いている。
カローラスポーツで指摘したドアアームレストのP.L.の露出などは無く、
ごくごく当たり前の設計かつ、ドアフレームもボディ色が見えないように
丁寧にトリムが付けられているあたりは格の違いを感じた。
(もっとも、C-HRだってドアフレームに黒テープが貼られ、
 従来の ボディ色丸見えのドアフレームからは見栄的に大幅進化している)

乗り込んでみると、意外なほどセダンライクと言うか
ハッチバック然としたパッケージングだ。
自称SUVだが、見下ろすようなSUVポジションが取れない。
目線も下手するとハイト系軽自動車よりも低い事には驚いた。
P/Fを共有するC-HRの運転席はSUV的に周囲を見下ろす様な
座り方(ヒール×ヒップの落差が大きめ=アップライト)ができるのに、
UXは明らかに感触が異なり、C-HRというよりカローラスポーツに近い。

実質的な従来車のCTは1シリーズに似て低く座り、
手足を投げ出し、狭い窓から外を覗き込むパッケージングだ。
UXは現代ではCTと較べれば常識的な
高めのヒップポイントゆえに乗降性が改善されている。
同じP/Fでもこんなに印象が変わるなら面白いものだ。

運転席に座ってみると低く座っている割に、
I/Pや10.3インチワイドディスプレイの高さが抑えられていて
閉塞感が無いことは以外だった。
前述のCTは低く座り、高いI/Pの上辺から外を覗き込むスタイルだったので
小柄な女性にも優しいパッケージングは嘘では無いと思った。

後席に座るとTNGA特有の脚の納まりの悪さがUXでも味わえる。
前席は2名、後席は3名が座る為、乗員の体の中心が左右方向にズレており、
右後席に座ると左足がシート取り付け部と干渉して収まらない。
これはTNGAのトヨタ車だけでなく、ボディに直接前席を締結する
全ての車が抱えるネガなのだ。
この構造は最近の流行と見えて様々なメーカーが採用している。
シート取り付けBKTを介して取り付けるのではなく、
ボディに直締めした方がドライバーの感じる操縦安定性が向上するらしい。
その分、従来シートBKTを屈曲させながら
Rr席の足と折り合いをつける対応が取れない。
TNGAの場合はレッグスペースが長いLSやESのような車種は
少し足を引けば我慢できるが、
UXのようなモデルでは足の置き場に制約があり、
自然な体勢で座るとストレスがかかることこの上ない。
巧く座るコツは、尻を中心に右を向くことである。
アームレストに左手を預けて足を右に向ければ何とか収まる。
姿勢としてはルーズになるで個人的には好きではないのだが、
TNGAは後席のパッケージングには目をつぶっているらしい。

ちなみに積載性はあまり優秀ではない。
樹脂バックドアを開けてみると、
そもそもローディングハイトが高く、
バンパーレベルからハッチが開くといっても
荷室の高さ方向は余裕が無い。



旅行で使うようなボストンバッグ
なら4人分が問題なく積み込めるだろう。
一方、我が家の帰省セット
(ベビーカー、赤ちゃん用品、
 赤ちゃんのおもちゃ、着替え、手土産)は
床の高さゆえに溢れかえりそうな雰囲気だ。
独身者、夫婦二人なら問題なく使用できる、
SUVはスタイル優先かつ実用性が有るところが魅力なのだが、
UXの運転席以外の出来栄えは少々失望させられる。

●UX200試乗

UX200に試乗した。
乗り込んでドラポジを合わせ、スタートスイッチを押した。
UX200に搭載されるE/Gは、M20A型4気筒DOHC D-4Sエンジン。
国内で初めて採用されたこのM20A型E/Gは、
競合する輸入車同様にプレミアムガソリン仕様ゆえに、
174ps/6600rpm、21.3kgm/4000-5200rpmというハイパフォーマンスを誇る。
CT200hのシステム最高出力が136psであった事を考えれば、
充分なパフォーマンスが期待できそう。
身近?な例で98年式RAV4のTypeGに搭載された3S-GE
(180ps/6600rpm、20.5kgm/6000rpm)に匹敵するスペックを持つ。
E/Gの凄さは約40%の熱効率を誇ると言う点でもある。
私が学生時代、ガソリンE/Gの熱効率はせいぜい25~30%と言われていて
ディーゼルは30%~40%と言われていた。
そこから考えればディーゼル並の高効率E/Gという凄い事になる。



やれFCEVだのHVだのと言っておきながらせっせとガソリンE/Gでも
高い熱効率を発揮する新製品を準備している点はトヨタの凄いところだ。

この新世代ダイナミックフォースE/Gのキーワードが
「レーザークラッドバルブシート」だ。
従来のE/Gではシリンダヘッドにリング状の焼結合金をポートに
圧入していたバルブシートをレーザー技術を用いて
直接シリンダヘッドに溶射(肉盛)する技術だ。
これによりポート形状の自由度が出て圧損が少なく、
空気を吸いやすい吸気ポートを得ることが出来たのだ。

実はこの技術は流面型セリカのGT-FOURに搭載された3S-GTE型E/Gにも
採用されていた技術だが、設備の維持管理が容易で
グローバルに大量生産可能な技術となるよう改善を加えて再登場した技術だ。

レーシングカーでも採用されるような技術が織り込まれ、
かつての3S-GEを髣髴とさせるスペックでプレミアムガソリン仕様、
というただの廉価グレードでは無さそうな雰囲気を漂わせているのがUX200だ。

そこに組み合わせられる変速機は新開発のダイレクトCVTと呼ばれる、
発進用ギアとCVTを組み合わせた新発想のCVTだが、
これも国内トヨタとして初めて採用された。
せっかく無段変速のCVTにギアを持つなんて無駄なように感じるが、
発進用のギアを持つことで、CVTで連続的に変速するレンジが広がって
高速域で更なる低回転化が期待できる。

期待しながら実際に運転してみた。
動力性能的には1500kgのUX200を
大きな不満なく走らせることが出来る。
E/G音としては特に官能的という事は無く、
回して楽しい部類のE/Gではない。
2Lで174psというスペックを考えると、
少しスポーティネスを期待してしまう気持ちも有ったが、
少々実用車然とした感触が強かった。
またダイレクトCVTと言いながら、発進時に特別な
ダイレクト感を感じることは出来ず、
ショックレスな志向で味付けがなされているようだ。

確かに発進時から速度が乗るとロックアップ相当のショックを感じ、
CVTに移行して走り続ける。
アクセルオフではスッとハイギア側に変速してしまうので
普段MTに乗ってアクセルワークで自由自在の走りが出来ることを
知っている人にとってはドライバビリティが良いとは感じなかった。
まさにCVTでございますと言う乗り味である。
プレミアムカーでCVTを採用している車種はそう多くないが、
アメリカ仕様のカムリが採用するダイレクトシフト8速ATが
組み合わせられればHV嫌いのためのドライバーズカーになれたかも知れない。

結局運転する楽しみを与えてくれるような感触は無かったが、
ドライブモードセレクトをSportsにすると、
ATライクなステップ変速制御が入るほか、
アクセルオフ時に変速せず
その直前のE/G回転数を維持するので個人的には
Sportモードを標準にして欲しいくらいに差が有った。
マニュアルモードを活用したいと思ったが、シフト位置が
カローラスポーツ同様に後方に位置しており、大変操作しにくい。
MTだと我慢できないほど酷い配置だがUXは自動変速車のみなので、
アクセルとブレーキだけで走らせる車ということもあり、
まぁ前進と後退と駐車だけできれば慣れの問題かもしれない。

Fスポーツはパドルシフトが標準だが、
レクサスなのだから全車にパドルシフトを
奢っての良かったのでは無いか。

乗り心地はTNGAらしく角の取れた乗り心地が味わえるが、
例えば「特技はダンス」なるプロフィールを持つ
CT200hで感じられた過敏なほどゲインのあるハンドリングが
味わえるわけではなく、高級車らしい落ち着いた感触だった。
CT比で考えると乗り心地は柔らかくホッとする。

ドラポジ含めてハッチバック感が極めて強く、
エクステリア程にはSUV感が無いのだが、
ステアリングのグリップが極端に太くもっちりしており、
この太さがSUVのたくましさを想起させた。

話が逸れてしまうが、カローラスポーツに
このエンジンとMTを組み合わせてみれば良いのにとも感じた。

●UX250h試乗

HV仕様はUX250hを名乗り、上級エンジンとして
146ps/6000rpm、19.2kgm/4400rpmに出力を落としたM20Aエンジンに
109ps、20.6kgmのモーターを組み合わせてシステム出力184psを誇る。

プリウスやC-HRではTNGAになる前の
ZR系エンジンと組み合わせられており、
2.0LのHVもガソリン車同様UX250hが頭出しと言うことになる。



ディーラーを出てまず感じるのは、
既に良くなったと体感できた
TNGA第一弾の4代目プリウスやC-HR、カローラスポーツと較べても
グイッと押してくれる感覚が随分と強くなったということだ。

アクセル操作に対してモーター走行時も
トルクの反応を見せてくれるので、ドライバビリティが良い。

かつてのTHSはアクセル操作に対して
モーターのトルクが増える感じがスカスカで
アクセルを更に踏むとE/G回転を上げながら加速し始めるような
CVT感が強く、モーター走行の有り難味を感じにくかった。

UX250hはバッテリー残量さえあれば市街地走行で
少々アクセルを踏んでもモーターで踏ん張ることが出来る。
信号ダッシュのような加速ではE/G回転が上がりつつ加速するが、
アクセルを緩めればすぐにE/Gを止めてモーター走行に切り替わる。
レスポンスのよさは進化を感じられる。
新しいE/Gとの組合せにより相当パワフルな走りが楽しめるようになった。

今後、トヨタは一つの車種でもハイブリッドのエンジン仕様を
複数持つ方針だと海外のモーターショーで発表したようだが、
是非他のモデルにもこのユニットを展開して欲しいものだ。
カローラスポーツやC-HRに組合わせると良い走りになりそうだ。

一方、ブレーキタッチは最近好印象だった
トヨタにしては少々疑問が残った。
ディーラーに到着してバックで車庫入れをする際に
Rレンジでクリープ時の飛出し感が強く、
減速しようとブレーキを操作すると
カックンブレーキのせいでかなりガクガクとした挙動になってしまった。
こういう際の身のこなしも高級車が身に着けたい部分であり、
UXにも当然備わっていて欲しい部分だと感じた。
ホンダの回生ブレーキは何故あそこまでスムースで、
トヨタはいつまでもカックンさせ続けるのか。
このカックンブレーキが無ければUX250hを手放しでお勧めできるのだが。

●お買い得グレード不在?

UXは今後のレクサスの実質的なエントリーカーであり、
流行中のコンパクトクロスオーバーSUVということもあり、
はじめてレクサスを買うと言う人からも注目される一台となる。

スタート価格390万円(ガソリン車)と言うことだが、
CT200hと較べるとHV比で48万円もの価格差がある。
勿論、E/G排気量も拡大し、種々のグレードアップ分はあれども、
UXはがっちりと「SUVプレミアム」を顧客から取っている。
最低地上高を3センチほど少し上げてホイールアーチやロッカー下部に
素地色モールを付加してリフトアップ感を出すことで
上記プレミアムが手に入るならビジネスとしては魅力があっただろう。

営業マンとの会話で売れ筋は
HV仕様のバージョンC、Fスポーツとの事。

HV仕様はガソリン車の35万円高。
NXの場合64万円差なので、自然とHVへ向く価格設定だ。
加えてエコカー減税で重量税と取得税が
免税(約15万円)になるため、
購入価格では20万円差に縮まるのだ。

更に仕様燃料がプレミアムからレギュラーに変わり
ランニングコストも下がる為、
ディーラーでも積極的にHVを薦めているようだが、
試算してみると年間1万km使用するユーザーで
実質20万円高額なHVが得をするのは7年後と言う結果が出たので
好みや動力性能や予算で決めてしまえば良いだろう。

グレード構成はCTと類似しており、
本革シートの最上級バージョンL、、
専用の内外装やサスセッティングを持つFスポーツ、
合皮シートを採用したバージョンCと
ファブリックシートの標準グレードの計4種類が選べる。

ガソリン車で390万円という価格設定の標準仕様は
カラーヘッドアップディスプレイや
ルーフレール、18インチ塗装切削ホイールも選べるなど
オプション次第で上級モデルに近づけることも出来るが、
価格が高くなるだけでなく、
安全装備のオプション設定が限定され、
プレミアムカーとしては少々寂しい装備内容だ。
どうしてもファブリックシートが欲しい人か
予算上の理由がある人以外は選択するメリットが少ない。

バージョンCは最量販の位置づけで
D/P席シートヒーター付合皮シート、
パーキングサポートブレーキ、LEDフォグランプ、
LEDコーナリングランプ、ステアリングヒーター、
D/P席パワーシート、雨滴感知ワイパー、
左右独立温度設定エアコンが備わり、価格は標準の24万円UP。
ただし、標準グレードでもフォグは3.3万円、
パーキングサポートブレーキは2.8万円でオプション設定が有る為、
実質的な差額は17.9万円だが、意外とファブリックよりも
合皮の方が生地の価格が安いのでは?と感じるため
価格差と装備内容に大きなお買い得感は感じない。
それよりも、三眼フルLEDヘッドライト(AHSつき)、
ブラインドスポットモニター(BSM)、
パノラミックビューモニターのオプション選択権が
付与されることが重要なのかも知れない。
(GAS_414万円/HV_FF_449万円/HV_AWD_475万円)

FスポーツはバージョンCに加えて専用の内外装に
スカッフプレート、専用18インチホイール、サスセッティング、
ハンズフリーパワーバックドアが備わる他、
専用ボディカラー、NAVI AI AVS+Rrパフォーマンスダンパー、
専用本革スポーツシート、
マークレビンソンオーディオのオプション選択権がある。

バージョンCとは29万円の価格差であるが、
NXの最量販IパッケージとFスポーツの価格差は48万円、
こう考えるとUXのFスポーツがお買い得に感じるが、
NXで装備されるNAVI AI AVSやパフォーマンスダンパー、
本革シートが備わらないため、それらを追加すると
38.8万UPとなり、実は67.8万円の価格差になる。
しかし、上記OP装備が必須でなければ
他車よりも割安に専用の内外装を選択できるという
点でUXが魅力的に映る人が居るかもしれない。
(GAS_443万円/HV_FF_478万円/HV_AWD_504万円)

バージョンLはバージョンCではオプション設定の18インチアルミ、
三眼フルLEDヘッドライト、ITSコネクト、
ハンズフリーパワーバックドアが備わる上に、
バージョンCでは追加できない本革シート、遮音Frドアガラス、
スカッフプレート、Rrコンビランプ加飾や
エアコンレジスターの部に非接触給電イルミが標準装備され、
Fスポーツ同様にNAVI AI AVSやパフォーマンスダンパー、
マークレビンソンなどの上級装備もオプション追加できる。
バージョンCとの価格差は60万円だが、
そのうちオプション追加できるものを差し引くと34.1万円。
本革シートはFスポの追加価格24.8万円を合わせると、58.9万円となり、
バージョンCと標準グレードの差と同様にさほどお買い得に感じない。
ただし、本革にこだわりが無ければ、バージョンCフルオプション
で充分だと判断できる人も居そうである。
(GAS_474万円/HV_FF_509万円/HV_AWD_535万円)

全グレードの装備と価格のバランスを考えると、
NXのIパッケージのような決定的なお買い得グレードや
ムリをしても選びたくなる上級グレードは存在せず、
予算に合わせた普通のグレード選択になるだろう。

こうして考えると「安全装備が欲しいから標準は嫌。
本革シートのバージョンLは一クラス上のNXが
買える位の金額になるから、バージョンC」とか
「他と比べてFスポの価格差が小さいから、お買い得感のあるFスポ」
という感じでグレードが決まって行きそうに感じた。
私が小市民なのでレクサスが買えるようなゆとりのある方は
どんな風に選ぶのかちょっと想像がつかなかった。

●見積もりを取ってみた

私自身がもしUXを買うならどんな仕様にするか。
見積もりを作成していただいた。

UX200とUX250hだが、私は後者を選ぶ。
E/Gそのものに大きな不満は無いがCVTがスポイルしている。
私の場合走行距離も多いのでレギュラー仕様のUX250hが光る。
ブレーキのカックンは大変悩ましいがあたりが付いてきたら
緩和することがあるだろうか?

グレードはバージョンCを選択。
私はUXに対してハッチバック感を強く感じるので
AWDは不要でFFを選択。(449万円)
225/50R18 RFタイヤと
アルミホイール(7.1万円)を追加。
AHSが欲しいので三眼フルLEDヘッドライト
+寒冷地仕様(18.6万円)を追加。
BSM/パーキングサポートブレーキ/
パノラミックビューモニター(11.8万円)を追加。
災害時の保険代わりにアクセサリーコンセント(4.3万円)を追加
合計42万円のMOPを追加

#UXをSUVっぽくするには逆にホイールは標準デザインのままの方が
#タイヤが分厚く見えて力強さが増す。
#ここにルーフレール(3.2万円)を追加しても悪くないと個人的には思う。
#写真ではみすぼらしく見える標準ホイールだが、
#展示車を見ると意外と好印象だった。

ここにフロアマット、ドラレコ、ナンバーフレーム、
ボディ/ホイール/ガラスコート、ホイールロックナットで
26万円分のDOP追加。

結果、車両価格449万円+MOP42万円+DOP26万円=517万円となった。
ここに諸費用14万円(取得税+重量税免税)が計上されて、
総支払額531万円という凄い金額になった。

外板色は軽快なセレスティアブルーガラスフレーク、
内装色はお洒落なコバルトを選択。

スタート価格390万円のプレミアムコンパクトSUVだと思って見に行くと
随分と見積もりが膨れ上がってしまった。
どんな車でもオプションをどんどん追加すると割高になるものだが、
プレミアムエントリーはそこに活路を見出しており、
更にムーンルーフやハンズフリーパワーバックドアなどを追加すると
どんどん金額が膨らんでいってしまうのだ。

CTだと元々の車両本体価格もレクサスとしては安い為、
粗利としてはそれほど美味しくないが、
UXはかなり美味しい価格設定になっているように感じる。

営業マンと話をしていて面白いと感じたのは、
近頃は残価設定ローンが一般化して
この手の車を買うお客さんはローンよりも
残価設定型ローンを選ぶ人が多いという点。
UXは3年後の残価が55%程度に設定できるらしい。
これがセダンだと30~40%に落ちてしまうが、
SUVのリセールの強さが活かせるのだと言う。

上記の見積もりの場合、3年後の残価が284万円も残ることになる。
(逆に284万円も価値が下がっているのだが)
実質年率4.1%として計算サイトで頭金200万円を入れると
月々の支払額は残価設定なら2万4000円。
これを通常ローンで支払うと9万8000円程度となり、
支払額が全然代わってくる。
月々の財布の痛みが軽く手を出しやすいと言うのが
残価設定型ローンなのだが、総支払額で比較すると
一般ローンよりも16万円高くなる。

日常生活の家計を圧迫しないが、
知らない間に利息を払い続ける
リボルビング払いのような印象を私は持っている。

残価設定ローンの利息を低く設定し、
本体からの値引きも大きくしてくれるメーカーもあるようだが、
このような支払い方だと確実に3年後に顧客が乗換えを意識するので
長い付き合いで商売が続く自動車販売業にとっては魅力的なのだろう。

私の場合、せっかく吟味した一台なのだから、
長く付き合いたいと考えているし、時にはその性能を
高いレベルまで引き出してみたいと思うことも有るが、
残価設定ローンの場合、色やオプション、グレードも
残価率が高く残るようにすることを考えてしまうので、
Lパケの白の・・・とかFスポのサンルーフつきの黒の
・・・というステレオタイプな仕様しか選べなくなる。
しかも、残価のことも有るからお客様気分で愛車と付き合うことになる。

残価設定型ローンは今までもローンで車を買っており、
3年ないし5年で定期的に新車に買い換えて来た人には
特に損は無いと感じるが、車を貯金して現金で買うタイプの人や
1台の車と長く付き合う人には向かないと感じた。

3年ごとに新車がやってくる楽しみもある。
もしお金に余裕が有る方なら残価設定ローンを使って
たくさんの車と暮してみる贅沢も悪くないだろう。


●まとめ
UXは現代のトヨタの最新の技術が
惜しみなく投入された車であることは感じられた。
一方で、まだまだ改善の余地が残されていることも感じた。

UXは見た目をギリギリSUVに見せながらも
商品としてはほとんどスタイリッシュハッチバックだ。
あくまでも車をファッションとして楽しめる方、
後席に人を乗せず、ラゲッジに荷物を載せない方に向く。

繰り返すが、グローバルでは30年の歴史を持つ
プレミアムブランド「レクサス」として見た時、
CTを放置して売れそうなUXだけ開発する点に
まだまだブランドを育てる視点が足りないかなとも思い、
その点が少し気になっている。
CTの次期型を出して私を驚かせて欲しい。

●おまけ BMW X1 18d Xライン

UXをじっくり見たときに、
競合車が気になりBMWのX1を見てきた。



RAV4でBMWディーラーに突入するのは相当恥ずかしかった。

対面したX1だが、見ると何だかホッとする車だった。
BMWというプレミアムブランドだが先鋭的なスタイル重視でなく、
SUVってこういう車だよね、という定番を行くスタイルなのだ。
つまり、背が高く、ベルトラインは低めでルーミー。
既に横置きFFになり、古参のファンからするとガッカリモデルなのかもしれない。

展示車の黒いMスポはボディ同色のアーチモールが着き、精悍な印象だ。
運転席に座ってみたが、今時アナログメーターなのがホッとする。
先進イメージのあるフル液晶メーターは奥行き感が無く、
幾ら液晶のグラフィックで勝負しようともアナログには劣る。

比較的小径のステアリングにスッと収まって
文字盤がステアリング外周に被らないとか、
パワーシートでも無い代わりにドラポジがピシッと決まり、
大腿部の座面長まで調整できるシートに感動した。
インパネデザインはさすがに古さを感じるがBMWというのは
昔から内装デザインに凄みを感じてこなかったので私は気にしない。

Rrシートも広い。余裕でファミリーユースはこなせる。
UXはカローラスポーツと代わらないハッチバックレベルだが、
X1は我々がSUVと聞いて期待するだけの広さがある。
足元もFrシート取付け部と足が干渉するようなことは
当然無くて窓も広くてルーミー。
真四角なラゲッジも余裕で家族で旅行に使える容量を誇る。

スタイリングやパッケージングは奇を衒わないマジメなもの。
こういう王道を狙えるのはBMWの余裕なのかもしれない。
後発ブランドは「それとは違う」個性を育てて
伸ばさないと市場で埋没するという危機感を持っている。
X1がこれほどまでにフツーなのはBMWだからなのかも知れない。

感じの良いセールスマンが試乗を勧めてくれた。
試乗車はX1の18dのXラインと言う上級グレードだ。
最廉価と較べると、オートエアコンが付き、
ホイールが少々派手な18インチになり、
ロッカーモールやバンパーにシルバー塗装が施され
本革シートが備わる。

E/Gを始動するとディーゼルを感じるが、
妻のデミオ同様に走っていればそこまでディーゼルを感じない。

店舗から出て加速させると、一発目の加速でそれほど動力性能に
余裕が有るわけでは無いなということに気づく。
初代CX-5で感動した「ぶっ飛ぶ加速」とは異なり、
X1はフツーな加速フィールだった。

しかしながら、X1は真っ当に走る。
決して遅いと言うわけでは無いし、
アクセル操作に対して反応もあるのでストレスはたまらない。
乗り心地が硬すぎることもないし、
特にステアリングが真ん丸なので回し易い点が気に入った。
かつて116で驚いた高性能度合いと較べると大人しいが、
20i以上を選べば「そういうBMW」になれるのかも知れない。
久しぶりにフツーのSUVに乗れた気がする。

営業マンは18dのMスポにお勧めMOP付きの見積もりを作ってくれたが、
本体517万円+MOP35.5万円+用品34.7万円。
諸費用込みの合計619.5万円というぶっ飛んだ見積もりになった。さすがBMW。
「実はモデル末期なので値引きなら凄いのが出せます」とのことだが、
死ぬまでにBMWを買うなら320iのMTと心に決めているので、
今回は買いません(買えません)。

ちなみにX2も展示車を見たが外装は差別化できているが、
内装はカラーリングやステッチが変わるくらいで少々差別化が少ない。
しかし、マジメな部分は引き継がれておりUXの場合コチラの方が
キャラクター的に被るのかも知れないが、私ならX2よりもX1を選ぶ。
2018年10月10日 イイね!

1981年式カリーナ1.8ST-EFI感想文

1981年式カリーナ1.8ST-EFI感想文










●スギレンさんの秘蔵っ子

スギレンさんの3代目カリーナをレンタルするのはこれが3台目。

後期型1600GT-R後期型1800SG豪華マイロードを経験したのだが、
今回の前期型1800ST-EFI
スギレンさんが最も大切にしていると思われるカリーナだ。

スギレンさんのご両親がかつて
ファミリーカーとして愛用されていた同一グレード。
かなり酷い改造車を購入後、
オールペンしコツコツとオリジナル部品を使って
こだわりのレストアを実施した個体だ。



購入直後の悲惨さを考えると良くぞここまで!
と声が出てしまうような渾身の一台なのである。
そんな貴重な車を「借りませんか」と言って下さったのだが、
0.2ミリ秒ほど熟慮に熟慮を重ねた結果、「是非」と回答した。

●毎回惚れ惚れするスタイリング

ある晴れた休日、RAV4で待ち合わせ場所へ向かうと
見慣れたスギレンさんの愛車がそこにあった。




3代目カリーナは定規で引いたような
シャープな直線
で構成された80年代らしい
明るいキャラクターを持ったエクステリアデザインである。

三寸法は4390mm×1650mm×1400mmである。
今も売られているカリーナの末裔の三寸法は
4590mm×1695mm×1475mm
20センチも全長が違うとは思えないほど
3代目カリーナの方が堂々と見える。

フードは低く長い、キャビンは小ぶりだが
ベルトラインが低くルーミネスな印象だ。
そしてトランクも欧州調のハイデッキで機能と空力性能を両立している。
CD値はセダンで0.41と私のRAV4よりも悪い位なのだが、
車幅の狭さと全高の低さが相まって
現代のセダンよりも投影面積が小さく空気抵抗による抗力は少ないはずだ。

カウル部分に注目すると、セミコンシールドワイパーの恩恵で
全体的なスッキリした印象がさらに強調されてシンプルで美しい。
確かにフードを持ち上げた影響でフェンダーからクオーターまでを
貫く水平基調のプレスラインに対して
Frドアのベルトラインの駆け上がりと
フードの斜面が気になってしまうが、
これは真横から見ない限り大きな問題とは言えない。




フロントマスクは70年代から継承した
重く、大きなウレタン衝撃吸収バンパーと
黒い樹脂製ラジエーターグリルの脇に
角目4灯式ヘッドライトが配置されている。
ただの角目4灯ではなく、LOとHIの間に
長方形の車幅灯が配置されワイドかつスポーティな意匠だ。
特徴を出しにくい規格サイズのヘッドライトを採用していながら、
車幅灯を挟むことでカリーナのフロントマスクは個性を放つ。

トヨタ車としては異例なほど光物による加飾が少ない
「足のいいやつ」としてデビューしたカリーナは
硬派な男性的な味、欧州的な味を売りにしており、
豪華でおめでたい感じを魅力とするカローラやコロナとも
上手く住み分けされていたのである。




サイドビューは前述の通り典型的なロングノーズショートデッキ
ベルトラインの低さが現代の車には無いプロポーションのよさを持つ。
スギレンさん曰く、もう少しRrオーバーハングが
長いほうが好みなのだそうだが、
私は今の比率でも相当なかっこよさだと思う。
恥ずかしい話だが自分のカローラGTも自宅駐車場で眺めていたら
良いなぁとうっとりしてしまう瞬間がある
が、
このカリーナST-EFIも眺めているだけで
ご飯を何杯もおかわりできそうなほどスタイリッシュだと思う。
このプロポーションを持つ車はもう現れないのでは無いか。

(トヨタのTNGA車両のベルトラインは下がってきているが、
歩行者保護性能ゆえにこのカリーナのレベルまで
フードを下げることは相当難しそう)




リアは欧州的なハイデッキスタイルだが、
腰高な印象を持たせないのは
ベルトライン下を貫くプレスラインが効いているように思う。
現代の車よりも成型技術が未熟な時代のプロダクトだが、
現代の車よりも明確にエッジの効いたプレスラインなのは、
恐らく工程数(=金型の数=投資額)が多いのだろう。

トランク容量は実質的に必要充分だが、
現代の目で見れば深さはもう少し欲しい。
長いトランクリッドの恩恵で床面積は充分だ。




開口は現代のようにバンパー上とは行かず、
ライセンスガーニッシュからになるのだが
当時のセダンとしては一般的である。

ところで過去に実施したスギレンさんの
レンタカー企画で運転した3代目カリーナは
いずれも後期型であったが、今回は前期型である。

視覚的な変化点として前期型はバンパーも黒く、
メッキ部品も少ないので素朴な印象だが、
カリーナとしては引き締まって見えて私は好きだ。
前期後期であまり大きな意匠変更を伴わなかったのは、
直線基調のスタイリングが好評だったのだろうと推測する。

そんな訳でレンタル期間中、車に見入ってしまい、
毎度乗り込むまでに少々時間がかかったのはここだけの話としたい。

●意外なほど快適なインテリア

インテリアも独特のな雰囲気を持っている。
特にスピードメーターはカリーナらしくスポーティな
専用デザインとなっている。




視認性に優れる大型のスピード/タコメーターに加えて
油圧計、燃料残量警告灯、ツイントリップメーターが備わり、
ロングツーリングに役立つ装備が備わっている。
警告灯もデジパネの装備もあるが、アナログメーターも
文字や警告灯が浮き出るように演出され
現代の目で見ても新鮮で目を引くような工夫が心憎い。
現代のオド/トリップ、燃費や外気温などの液晶表示を
組み込まないと気が済まない計器盤では
得られない見易さがある。




更に舵角がついても
視認性を損なわない2本スポークステアリング、
直線基調で車両感覚を掴み易いインパネなど
基本的には「スポーティ」がキーワードなのだが
操作しやすいダイヤル式ヒーターコントロールパネル
ソフトなシートなど大衆車とは違う小型乗用車としての
快適性も充分確保
されている。



居住空間は現代の目で見れば狭いと判断されてしまいそうだが、
運転席でドラポジをとっても圧迫感を感じるようなことは無い。
ヒップポイントは低く、シートバックも寝かせ気味になるが、
充分なワークスペースが確保されている。
ただ、カップルディスタンスは車格を考えれば近いと感じるし、
後席も、身長170センチ以上の方なら
もう少し足元スペースがあればと感じるかもしれない。
このあたりの不満が解消されるのは以後のFFモデルということになるのだが、
例えばロングホイールベースを活かして膝前空間が充分に取れて
脚を組めるほどの広大なスペースを確保したカリーナの末裔は、
それはそれで価値があるのだが、
3代目カリーナのスタイリッシュさは何とも捨てがたい。
ピラーが細く、ベルトラインが低いので開放感があり
実際の寸法よりも圧迫感は感じない
点が素晴らしい。

●イージーでストレスのないST-EFIらしい走り

スギレンさんはカリーナST-EFIに雨の日は乗らないそうだ。
晴れた週末に乗って平日はボディカバーをかけられているが、
今回は特別な許しを得て月曜日から通勤に使用した。
雨天にも遭遇したがスギレンさんのOKもあり、
ワイパーを作動させながらの運転もあった。
当然のことながら慎重に運転したが、
炊きたてのご飯を床に捨てて足で踏む位、
罰が当たりそうな感覚
だった。
本当に1981年からタイムスリップしてきたような個体なのだ。




朝、鍵を開けてカリーナに乗り込む。
スギレンさんから支給された運転用手袋をはめ、
シートベルトを締めてイグニッションキーを捻る。
このとき、ちょっとしたコツが必要で、
セルモーターが動き始めたらアクセルを少しだけ煽って
補助をしてあげると調子よくかかるらしい。

最高出力105ps/5400rpm、最大トルク16.5kgm/3600rpm
を誇る3T-EU型エンジン
が目を覚ましたら
ATセレクターをDレンジに入れる。
軽いガレージシフトショックを伴い、Rrが沈み込む。
PKBを解除してやればフワッと走り始める。

住宅地から県道に出るまではE/Gを暖機しながら
クルクルと大径のステアリングを回して徐行する。
油圧PSが装備されているが操作力は比較的重め。
最小回転半径5.0mとのことだが、
切れ角が大きく、車幅も狭い方なので
住宅地などの狭い道路でも全く苦にならない
現代の感覚なら軽自動車のようなものだ。

県道に出ると制限速度の50km/hまで加速する。
一般的な4速AT同様に水温が上昇するまでは3速までしか入らない。
2~3km走行すればOD(オーバードライブ)に入る。
3代目カリーナから4速ATが採用され、
イージードライブに磨きがかかった。
まだ4速MTも一般的だった時代なので、
当時のユーザーには現代の多段ATのように
進歩的に映っていたかもしれない。

ただし、ロックアップ無しの4速ATゆえに
アクセル操作に対して先にタコの針が動き、
トルコンの存在を感じながら車速が上がる。
感覚としては主変速機はトルコンで、
4段の変速は副変速機
のようなイメージだ。
ロックアップ付のATだと、
一定速度以上で定常走行すればすぐにロックアップする。
効率の面ではそれでよいのだが、
ロックアップ状態から再度加速しようとすると、
ロックアップ解除後に回転が上がる「まどろっこしさ」が付きまとう。
幸か不幸かロックアップそのものが無い
カリーナの4速ATはストレスフリーな走りである。

一般走行ならばDレンジのままなら
40km/h辺りからODに入って、
多少のアップダウンもODのまま走り続ける。
中低速トルクが豊かな3T-EU型エンジンと
4速ATは良いマッチング
を見せる。





蛇足だがカリーナの4速ATはODをアピールする為か
4速にシフトアップした瞬間、
ぼんやりとODスイッチの文字が光る仕掛けが施されている。
夜間はハッキリと認識できるが、日中は全く分からない。
夜間、ODランプがぼんやり光っている時に
強めの加速をした瞬間、パッと消えたときに存在を思い出す程度だ。

さて、朝の通勤路は渋滞区間があるが、
ATゆえに快適で肉体疲労も少ない。
カーブが連続する農道を走らせるが、
ラックアンドピニオン式ステアリングの恩恵で
思いのほかシャープな切れ味でコーナーをクリアできた。
タイヤが鳴くほどのハイスピードコーナリングでなくとも、
運転の楽しさが味わえる正確なハンドリングである。

路面が荒れていても、Frストラット/Rrセミトレーリングアーム式
4独サスペンションは凹凸をいなして通過させてくれる。
さすがに魔法の絨毯の様、とまでは行かないが
角が丸められた乗り味は同乗者からクレームが出ることは無いだろう。

特に、タイヤが純正サイズの165SR14という
今では中々お目にかかれないサイズの
細いタイヤなのだがサイドウォールの厚さも
快適な乗り心地性能に一役買っていると考えられる。

走行中、E/G音はうっすらとキャビンに侵入するが
それ以外のロードノイズがかなり小さいのも
この車の特徴と言える。
速度域が高まると今度はピラーからの風切り音が聞こえてくるが、
タイヤ起因のゴーという音は目立たないし、
荒れたアスファルト路面を走らせても不快な音が聞こえない。
素晴らしいタイヤを履いているのかと
改めて銘柄を確認すると、BS製のスニーカーであった。
特に静粛性を謳ったプレミアムタイヤでもないのに
こんなに静かなのは分厚いタイヤの恩恵と思われる。
ただし、ボディ剛性も低めなので、凹凸のある路面を通過すると、
こもり音はそれなりに発生していた。




通勤に使っている限り、走りも充分、
乗り心地も良好で快適な車と言えそうだ。

ほとんどA/Cを使用して358kmほど走り、
燃料系の針が残り1/4となったところで給油した。
38.4L程給油したので、9.3km/Lを記録した。

AT車の10モード燃費が10.0km/Lなので達成率93%と中々の好成績だ。
昔の車のカタログ燃費はかなり正直という印象を持っているが、
カリーナもその印象を裏切らなかった。

●遠乗り試乗

片道160km程度の遠乗りを企てた。
E/Gを始動し、暖機しつつ自宅付近のインターチェンジへ向かった。

ETCゲートを潜り、ランプウェイから加速車線へ。
本線上の様子を伺いながら、右ウインカーを出しつつ
思い切ってキックダウン
5000rpmを越えるあたりまで勇ましいサウンドを響かせながら
強く加速していくが、6000rpmまでは使わずにシフトアップしていく。
思えば3T-EU型エンジンは最大出力が5400rpmで発揮されるので
回すだけ無駄ということなのかもしれない。





制限速度にはすぐに達してクルージング回転域でゆったりと流す。
ロックアップ無しなので正確な回転数は不明だが、
80km/h時のE/G回転数は2000rpm近傍、
100km/h時は2500rpm近傍を指している。

高速道路ではロックアップが無くとも、
およそ一定の回転数を保つが、
追越し加速をかけるときにアクセルを踏み込むと、
若干のスリップ感を伴いながら加速体勢に入る。
普段の追越し加速ならODのままで充分に対応可能なので、
ロックアップ付ATよりもレスポンスに優れる。

高速道路の走行車線を流れに沿って走っていれば、
35年以上前に発売されたカリーナでも充分な走りを見せる。
むしろ、ゆったりとした乗り心地のおかげで、
せせこましく飛ばして走ろうと思わせない。
NV性能としてはうなり音とピラーからの風切り音が聞こえるが、
ラジオの音量を上げてしまえは気にならないレベルであった。




途中、高速道路としては急な6%の上り坂に差し掛かった。
ODのままではトルコンのスリップを以ってしても
100km/hを維持することが出来なくなる。
100km/hを維持する為には更にアクセルを踏み込んで
キックダウンを活用する必要がある。
3速3500rpmに回転が上がり速度を保つことが出来るが、
少しアクセルを緩めると再びシフトダウンしてビジー感が出る。
このあたりに当時のATの限界を垣間見た。

速度が80km/hであればODのまま2400rpm程度で上りきれるのだが、
少しでもアクセルを踏み増すと途端にキックダウンして3000rpm程に上がる。
3T-EU型エンジンのスペックがグロス105psだとネット90ps程度で換算される。
車重が1085kgなので、現代の車ではカローラアクシオ1.3X(95ps/1050kg)に近い性能だ。
そう考えれば比較的な急な上り坂をすまし顔で上れなくても
まぁ諦めがつくというものだ。

ドライブの後半、名阪国道の長い下り坂の区間に差し掛かった。
アクセルオフした程度のエンジンブレーキではほとんど用を成さず、
車速は斜度に比例して増加してゆく。
ODをカットしてエンジンブレーキを活用した。
今までカリーナST-EFIはゆったりとしたツーリングセダンという
印象であったが、速度域が高めの下り坂の急なカーブと言う状況では
少々細身のタイヤが不安になってくる。
実際はタイヤが鳴くそぶりも無く余裕を残しているのだが、
Rrスタビライザーが着いているとは言え、
ロールが大きくなり、操舵に対する反応が鈍くなってくるので、
しっかり減速してからコーナーに侵入するセオリーを守ることが重要だ。
ST-EFIはFrにベンチレーテッドディスクを採用しているが、
こちらも現代の目で見れば少し甘めの制動感と言わざると得ない。
ただし、踏力の調整がし易く名阪国道の下りでは扱い易かった。

このようなシーンであっても
15インチを履きこなしたGT-Rなら、
ハイレベルのコーナリングも自由自在かも知れないが、
ST-EFIはそこに目をつぶった代わりに
快適なクルージング性能が与えられているのだろう。

感心したのは高速道路で二時間ほど走らせても、
シートの出来が良く、お尻が痛くならなかったことだ。
カローラやRAV4は二時間も走らせれば腰とお尻が痛くなって
強制的に休憩を促してくるが、カリーナはドライバーが
お望みとあらば休憩無しで一気に距離を稼ぐことが出来た。
実際に私は大きな疲労感を感じる事無く、
渋滞込みで3時間半のドライブを
ノンストップ
で走りきることが出来た。

燃費もカタログ値に対しては随分と良かった。
目的地に到着して燃料計残り3/4目盛りで給油すると、
190km走行で13.2L給油、14.4km/L(A/C使用無し)
という好成績を残した。
帰路は意識的にA/Cを使用し、過酷な渋滞を抜けたが、
それでも10km/L程度は達成できた。
燃料タンクも60Lと大きく、
余裕を持って600km程度は連続走行できそうだ。

●まとめ

1週間に亘り、スギレンさんの宝物である
ST-EFIを貸していただき、敢えて普通に使用した。




チョイ乗り試乗ではなく、
共に暮してみるとST-EFIの良さが、
美味しい出汁のように滲み出てきた。

ヒエラルキー上、ST-EFIの上にはGT系が鎮座しており、
トヨタが誇るツインカムエンジンの官能的なレスポンスや
引き上げられたシャシー性能によって
手に汗握るエキサイティングなドライビング体験が出来るはずだ。
(後期4A-GEUはその点最高だった)

だから、短時間だけ試乗しただけでは
「やっぱGTの方が魅力的でST-EFIは一段落ちる」と
短絡的な結論
を出してしまいそうだが、I
毎日の通勤や職場からの出張に加え、ロングツーリングでも
ドライバーを疲れさせないと言う美点がよく理解できた。

ST-EFIは手に汗握るスリルこそないが、
運転作業に対して思わぬ挙動が出たり、
不快な振動騒音に悩まされることが無い。

元々FRなのでフィーリングが素直で癖が無い。
車全体としても「壊れる/壊れない」という強度設計だけでなく、
フィーリングを重視した剛性設計も取り入れられた時期と見えて
車両としての完成度は現代の車にも引けをとらないと感じた。

各性能のバランスが良いので運転してもストレスを感じないから、
結果的に疲労が少ない「足のいいやつ」である。
ツーリングカーとしてもカリーナST-EFIはGTとは違った魅力を持っていた。

また、今回の3T-EU型エンジンと同じ公称排気量の
1S-U型エンジンを積んだ後期型にも乗ったが、
3T-EUが70年代のエンジン、1S-U型が80年代のエンジン
であると明確に感じられた。
それはアイドリングですら分かる差であり、後者の方が軽快で小気味良い。
スペック上は5psの差があれども、車重で50kg差があるので性能は同等といえる。
実排気量上は1S-U型の方が有利だが、当時の技術の進歩は早い。
開発年次10年の差で、高性能イメージの強い半球型燃焼室や
クロスフロー給排気を持ったEFI付のエンジンを
くさび形燃焼室のカウンターフロー給排気のキャブエンジンが凌ぐと言うのだ。

T型エンジンを積んだST-EFIには良くも悪くもエンジンの重さが感じられて
ありがたみを感じたが、一方のS型エンジンを積んだマイロードは軽快な先進性を感じた。
同じ車体であってもエンジンが違うだけで一気に1970年代っぽくなったり、
1980年代っぽくなるという面白さがある。

似たような話はデビュー直後の4A-GEU型エンジンや2ZZ-GE型エンジンが、
それまでのエンジンと較べて「上まで回るけど、回るだけ」と揶揄された現象に近い。

今回、スギレンさんは車検切れと同時にしばらく保管フェーズに入れる予定との事だが、
きっと2年後、ST-EFIを復活させてくれるはずだ。
このボディサイズでこれほどまでにカッコいいセダンが作れたという事実を、
ぜひとも後世に示し続けていただきたいものだ。

最後になるが、貴重な宝物を快く貸して頂いたスギレンさんに感謝。
2018年09月26日 イイね!

2018年式カローラ・スポーツG"Z" iMT感想文

2018年式カローラ・スポーツG"Z" iMT感想文











●自分の中で是か非か結論が出しにくい

カローラ・スポーツ G"Z" CVT車感想文

カローラスポーツ Gハイブリッド 感想文

「初代コネクテッドカー」「若者向けコンパクトハッチ」として
発表されたカローラスポーツで実行された
車好き拡大に向けた施策の一つがiMTの採用である。

発売直後は自動変速機のみでiMT車は
8月発売とだけアナウンスされていたが、
無事発売され、先日晴れて試乗する機会を得た。
iMTのiはインテリジェントであり、今までのアナログな、
機械仕掛けのMTに知性を与えた機構を国内向けに追加した。

iMTがこれまでのMTと異なる点は
1.発進時アシスト制御
2.変速時の回転合わせ制御(スポーツモード時のみ)

である。

具体的に説明すると、
発進時アシスト制御は、
MT車の最も難しい操作の一つ「発進」を手助けするために、
ドライバーがローギアでクラッチを切り、
クラッチを繋ぐ操作をするとE/G回転数を自動的に高めてくれる。
回転数はメーター読みで1500rpm弱くらい。
平坦路から緩い上り坂ならクラッチだけでスムースに発進できる。

私はアイドル回転数のまま、
じわじわクラッチを繋いで発進するのが好みだが、
これはこれで素直に有り難いと感じた。

ちなみに、エンストしないという誤解があるが
クラッチを乱暴に繋ぐとエンストすることもある。
あくまでクラッチ操作を補助する前提のシステムであり、サキソマットとかイージーシステムと言った類のオートマ免許で乗れる機構とは一線を画す。

もう一つ、回転合わせ制御もトップからサード、
セカンドとデリカシー無く唐突にシフトダウンしても、
車が勝手にE/G回転数を合わせ込んでくれるので
運転者はグイッとシフトレバーを押し込んで
クラッチを繋げばショックレスに変速でき、スムースに走れる。
意地悪な私は敢えてローにシフトダウンしたが、スムースそのもの。
フォルクスワーゲンUP!を思い出すような感覚だった。

ディーラーには試乗希望者が殺到しているそうで私も
2組順番を待ち、私の後にも順番待ちが居た。
車好きを公言する社長が居るトヨタ自動車が
若者向けに問うたiMTなのだ。
皆が興味津々で購入を検討してみようかな、
と思わせる魅力がカローラスポーツiMTには確かにある。

発進させると、発進アシスト制御が嬉しかった。
ところが試乗コースに出て
2速にシフトアップした時に違和感が出た。

シフトレバーの位置が後方過ぎて、
2速への変速でシートのサイドサポートに肘が干渉するのだ。
勿論4速も6速も同様だ。
しかもシフトノブの位置も高過ぎ、加えてストロークも長い。
明らかに私が所有してきたMT車とポジションが異なっている。
すなわち、ヴィヴィオバンやカローラレビン、カローラGT、
ヴィッツ、シトロエンDS3、RAV4と較べて
シフトレバーが生えている位置が操作しにくい場所にある。

ドライブモードスイッチを後方に移して
シフトレバーをもっと奥に置くか、
ショートストローク化して2速にひじを引いても
サイドサポートに干渉しないようにして欲しかった。

ATと較べてMTはシフトレバーの動く範囲が広く、
より多くのワークスペースを要求する。
AT主体でパッケージングを組み、
意匠を優先するとシフトレバーの位置は余った場所に、、、となりがちだ。
MTは常にシフトレバーを操作せざるを得ない機構ゆえに、
ステアリングからスッと手を落とした場所にシフトレバーが居て欲しい。
MTのシフトレバーの配置スペースは特に重要視しなければならないが、
カローラ・スポーツの場合不十分だと感じている。

このようになった理由は空調スイッチをドライバーに近づける為に
張り出させたことも理由だと推測する。
1-3-5速のポジションだと手の甲とセンタークラスターが
50mmほどしかクリアランスがない。
MTのシフトレバーの配置よりも
空調操作パネルが優先されたのだろう。

ブレビスの様にペダルを後方に調整できれば、
テレスコと共にドラポジを後方に移動させるのだが、
カローラスポーツはそのあたりのことが全く考えられていないようだ。

私はシート位置をいつもより高めに調整して何度も
シートポジションを調整しなおして
何とか運転できるシートポジションを見つけることが出来たが、
今まで乗ってきたトヨタのMT車のどれよりもドラポジが決まりにくかった。

LHDが基本の欧州車のRHD仕様車は
粗雑なパッケージングで運転しにくいケースがある。
さすがに日本のトヨタが作るRHDだから
ステアリングの位置のせいでダメな点は何一つ無いが、
AT基準で作ったがためにMTのパッケージングに配慮が無い点が引っかかる。

類似した現象はドアトリムやPKBレバーにも見られる。
かつては手巻きウィンドゥとパワーウィンドゥが共存していた。
手巻きはワークスペースが必要なので、かつてのドアトリムは
比較的空き地が目立ち、アームレストは小柄で、
ドアトリムも平板であった。
ところが、パワーウィンドゥ全盛の今となっては
インパネの流れを打ち消さない立体的な意匠が実現できていると言うわけだ。
(それでもカローラスポーツのように
 操作しにくいPWスイッチが生まれてしまうのだが)

今後、PKBレバーも徐々にEPB化される事で
意匠への制約が減り、
センターコンソールの意匠自由度が出る一方、
旧来のレバー式が共存する場合に
使いにくい位置にレバーが無理やり配置されることも充分考えられる。

PKBレバーはまだしもシフトノブは使用頻度が高く、
まだまだ一等地に置くべきだと私は主張したい。

MTを操る楽しさとは車とコミュニケーションをとりながら
状況に応じて適切なギアを自ら選ぶ知的な作業だったはずだが、
カローラスポーツではそれが心置きなく楽しめる気がしなかった。

MTを販売してくれることはMT愛好家の私にとっても
嬉しいことなのだが、運転が楽しくないMTは増えても仕方ない。
むしろ、そのMTに期待を寄せて買った人が、
MT嫌いになってしまう懸念もある。
シフトチェンジのたびに肘が当たるようなMTを出すべきではない。

また、CVTで私が酷評したE/Gのレスポンスの悪さだが、
MTで走れば街乗りレベルでも一応の合格点が出せると感じた。
踏み込んでからのタメがあることには変わらないが、
E/Gを引っ張れるだけメリハリのある走りもできた。
しかし、いかにも走りそうな見た目とは裏腹に
絶対的に遅いと言うのはひっかかる。
2速で全開加速も試したが、「スポーツ」という言葉からは程遠い。
ただ、E/G音が意外とスポーティだったのは嬉しい発見だった。

実際に試乗させていただいた後で
私はこの車を肯定するべきか否定するべきか大いに悩んだ。

公式サイトでは
マニュアル車の“操る楽しさ”を高めるため、
マニュアル車の変速・発進操作をアシストする機能を採用しました。
と謳われているが、カローラスポーツの場合、iMTではなく、
基本的なパッケージングが操る楽しさをスポイルしている。

こんなもんじゃないだろ、
とトヨタのMTを乗り継いだ私は言いたい。
AT/CVTが主流となった世の中でもMTを出す以上は、
もっとパッケージングを大事にしないとダメだ。

雑誌では直列3気筒の1.6Lターボ(250ps)が出る
・・・という噂を目にした。
極端なハイパワーE/Gではなく150ps位の素直なE/Gで
MTの操作が楽しめるようにして欲しかった。
ボディ・シャシー性能はそれくらいでバランスが取れるだろう。

せっかく導入されたiMTの機能は肯定したい。
妻は「運転が上手くなったみたい」と喜んでいた。
1.2LターボE/Gのかったるさを許容ギリギリまで軽減するMTも肯定したい。
このご時勢にMTを設定してくれたことも私は心から肯定したい。

しかし、カローラ・スポーツのiMTで
新たな顧客層が切り拓けるかは疑問だ。
ビギナーがなじみ易い運転のしやすさが備わっていない。
(思えば教習車のコンフォートなどは、旧い設計ゆえ
シフトレバーの位置も適切な位置にあったはずだ)

それでは、カローラスポーツを「取るに足らない」と
切り捨ててソッポを向けばよいのだろうか。
私のような旧態依然とした車好きは、
すぐに新しい車のアラを探し出して
ついつい昔は良かった、などと批判してしまう。

メーカーの心理としてはせっかくMTを出したのに、
買う人が想定よりも少なければ、「やっぱりMTはダメなんだ」
と判断、お客様ニーズに合わせた改善として
MTの設定を廃止してしまってもおかしくない。

それでは無理してカローラスポーツを賞賛すればよいのだろうか。
よくぞMTを出してくれた!シフトチェンジしにくいけど、
出てくれただけマシだ!とはどうしても言えないのである。

●それでもトヨタのMTを諦めたくない

せっかくMTがラインナップされながら、MT派の私が
「お勧めはHV」などと言わねばならなくなるのは残念だ。
それでも私は、やはり、、、
カローラ・スポーツのiMTはお勧めできないと言わざるを得ない。

試乗に付き合ってくれた営業マン曰く、
「遅い」「シフトレバーの位置が悪い」という意見は良く挙がるそうだ。
特にiMTの試乗車は数が少なく、隣県からわざわざ試乗しにやってくる程で
ディーラーは大忙しだったようである。

オーリスRSの時は次に期待、と書いたが
今回は完全新設計のP/Fやパワーユニット、ドライブトレーンなので
下手したら20年は使い続けられるだろう。

2018年の20年後と言えば2038年。
今以上に電動化・自動化が進み、MTが存在する余地はあるのだろうか。
今回のP/Fに与えられたMTがトヨタ最後の世代のMTになってしまうのか。
それが今回のような出来栄えでは悲しすぎるではないか。

しかし、悲観することは無い。
幸いなことにFFなので、
センタートンネルのシフト穴位置だけ変更すれば
シフトレバーの前後方向の位置は改善できる。
加えてストロークの長さが気になるので、
シフトレバーも短くすべく設計やり直しだろう。
ATのシフトレバーもストロークを短くして
ワークスペースを稼ぐ車があるのだから、
MTも負けじと操作力を犠牲にせずにショートストローク化できないだろうか。

実際に設計した人達からは、あれやこれやと反論されそうだが
カローラ・スポーツのMT車に可能性を感じ、期待を寄せ、
本気で購入を検討したが、購入には至らなかった
素人の意見としてこっそりと主張したい。

営業マンの方が、メーカーにも意見を伝えたいので車好きの方の
忌憚の無い意見を教えてください、と言って下さったので、
せめてシフトレバーの位置と適度なパワー感の確保、
使いにくいPWスイッチをはじめとする作り込みの悪さを
何とかして下さい、お願いします。
と心から懇願するように意見を述べさせていただいた。

カローラスポーツは車好きな一般人から見ても
これは良さそうだ、と思わせる素質があるように思う。
しかし、そういう人たちを取り込むにはあと少し配慮が足りない。
あと一筆、二筆入れれば車好きな人が購入を検討してみようかなと
思わせる事に成功するのではないだろうか。
或いは車の運転が楽しい、
MTが楽しい、車って楽しい、
と思わせることが出来るのではないだろうか。

私は今後の地道な改良に期待したい。
トヨタから運転が好きになるストレスフリーなドライバーズカー(MT)が出現して欲しい。
間違っても、「それ見たことか」と
国内からMTを引っ込めてしまわないことを願う。

プロフィール

「@マルオちゃん さん ご名答。ここまで走れて内装も作り込んであるプロトタイプすごいですね。」
何シテル?   05/26 17:41
ノイマイヤーと申します。 車に乗せると機嫌が良いと言われる赤ちゃんでした。 親と買い物に行く度にゲーセンでSEGAのアウトランをやらせろと駄々をこねる幼...
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