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2024年03月19日 イイね!

2023年式MX-30 Rotary-EV感想文

2023年式MX-30 Rotary-EV感想文●令和を走るマツダの精神的生命線
2023年11月、新型ロータリーE/G(以下RE)を搭載したMX-30 Rotary-EVの情報が自動車メディアを賑わし始めた。日常生活では家庭充電でBEVとして利用し、長距離の際にはコンパクトなREを発電機として利用しシリーズ式HEVとして走行する独自のPHEVシステムを開発した。

REを発電機に利用する技術は後述するが元々他社が先行し、マツダでも研究を続けていた。最終的には駆動用電池は107kmに留めつつ、新開発のREに50Lタンクと組み合わせることで航続距離を確保。普段の生活は電動走行が楽しめるよう家庭充電機能も付いた実用的なPHEVとなった。

●REを発電用エンジンとして再出発させる
2010年代に遡るとレンジエクステンダーEV(REEV)という概念が存在した。当時からEVは航続距離に課題があったが、下記条件を満たせばREEVと呼ばれてBEV同等のZEVと見なされた。

外部充電による走行距離が75mile(120.7km)以上であること。
補助動力装置(APU:Auxiliary Power Unit)による走行距離が外部充電による走行距離以下であること。
補助動力装置はバッテリーの電力が低下するまで作動してはならない。
極超低公害車(SULEV)とエバポ排出ゼロ基準に適合していること。


上記を満たさない場合はPHEVとして扱われる。BEVの航続距離が全く実用に値しないことを自白するかの様なREEVという概念だが、考えてみればZEVを名乗るためにわざわざPHEVよりも不便にするという妙なカテゴリーだ。補助動力に頼り過ぎるようだとZEVと呼べないということらしい。

REEVは2014年にはBMWがi3を発売し、中国でも国内向けに数モデルが世に出現した。i3は21.8kWhの電池を積みEVレンジは196km走行可能だ。BMW i3はレシプロE/G(647cc2気筒)を積み、9Lタンクで150km程度は走行できた。確かにBEVが持つ燃料切れの不安から解消されるメリットは大きかった。

ここにREの可能性を見い出したのが、かつてのNSUを吸収したAUDIだった。2011年にAUDIが試作車ながらレンジエクステンダーEVを発表しており、ジャーナリスト向け試乗会も実施されている。



A1 e-tronは254cc×1ローターで18KWを発揮し、5000rpm定常運転で発電機を回してバッテリに電力を供給することで、EVレンジ50kmをREによって250kmまで拡張するという。シングルローターというところもNSUチックで、AUDI自らNSUの技術を葬った割にイメージ戦略には利用する点がクレバーだ。

マツダはこれを見て「居ても立っても居られなくなった?」のか2013年にはデミオDEベースでRrフロアにREを置いた試作車を発表した。

幻のシャンテ用3A型を彷彿とさせる330cc×1ローターで22kWを発揮。元々JC08モードで200kmEV走行可能な実力を180km延長した。この時の燃料タンクは9Lとされていたので20km/Lという燃費性能だった事になる。

REEVの補助動力源としてRE新時代が来るのか・・・・と期待したがそこから10年待たされて
REEVではなく、PHEV「e-SKYAKTIV R-EV」としてようやく実用化の日を迎えた。

●REを残すために身を隠した11年間
マツダが決死の覚悟で1967年に実用化したREは、バブル崩壊による経営危機やフォード傘下時代を乗り越えた。REはマツダのDNAであり魂でありご神体でマツダの個性・技術開発の象徴の一つと言えた。2012年にRX-8が生産中止になってもレネシス以降の次世代REの研究は行われており「16X」なるREの存在が知られていたが、世に出ること無くお蔵入りになった。

NSUがAUDIに吸収され、トヨタや日産、スズキやヤンマーがREを諦め、REを進化させることが出来るのは世界でマツダだけだったのに、その進歩が止まってしまったのだ。



ここ10年ほどのマツダは皆が知るとおり、E/Gと車体を含めて一括企画することで存在感を示してきた。ロードスターを残し続けてスポーツカーへの愛も失わなかったが、REに対しては冷淡と言える程の態度を対外的に示し続けてきたのだ。2012年にRX-8を生産中止とした後、挙げ句の果てには2018年にはRE開発部隊を解散させたと報道されるに至った。これはRX-9?への過度な期待をかわして実質的なREの存続を図るために地下に潜っていた期間だったのだと私は思う。

仮に2015年頃にスカイアクティブR!800cc×2ローターターボで350psだ!燃費はRX-8同等の9.5km/L!的な「ぼくのかんがえた最強のREスポーツ」が仮に発売されたとしたら一体どうなっていただろうか。

台数を稼ぐには北米への輸出が必要だが企業間平均燃費の縛りや世界的な原油高など、厳しい環境の中で規制値は右肩上がりに厳しくなる。発売した瞬間だけギリギリ適合しているような「その場限りのREスポーツ」では些細な規制強化につまずいてしまい、再びそそくさと市場から退散することになりかねない。多少の環境変化に負けずにREが継続的に存続できる技術が得られるまで身を隠す方が得策だ。

●まとめ~上手にREを復活させてくれた~
MX-30 ROTARY-EVの魅力と人々の興味は新しいPHEVシステム、その中のREが大部分を占めていることはほぼ断定しても問題ないだろう。そしてそのREの中身は経営効率や業界内勢力の拡大などのそろばん勘定による合理的判断では無い。



この技術はオワコンと化した自動車業界の中で車に興味の無い層へのアピールよりも、自動車にロマンを抱いている希少なファン層に向けたアピールが強い。更に、マツダ社内の従業員の士気を上げる為のちょっとした投資でもある。いや、福利厚生とでも言うべきかも知れない。MX-30 ROTARY-EVに触れ、乗ってみてこの車の主成分は相変わらずロマンだと思った。ドラマチックかつエモーショナルなRE復活劇のアウトプットが意外なほどチルなMX-30の追加バリエーションに結実したのが面白い。

MX-30は2020年にマツダ初の電動車として発売されたが、主流とは敢えて外れた道を行く「分かりにくい」モデルだった。MX-30の全体的にチルなキャラクターに濃厚なエモーショナルE/GであるREを内包した「e-SKYAKTIV R-EV」が加わることで全体のバランスがとれ、MX-30という車種が完成したように私は感じた。

RE復活に対して負の影響を及ぼしかねない偏狭なマニア層を遠ざけるのには最適のアッパーボデーともいえる。強すぎるマニアの期待の声というのはブランド的メリットの反面、商品を殺してしまう劇薬でもあるからだ。

そんなMX-30を見ているとフロントマスクやルーフにルーチェロータリークーペの面影を感じた。考えてみればスペシャルティな横置きFFのREという部分でも共通している。



MX-30 ROTARY-EVは2024年現在は納得できるEVレンジ(107km)と決して燃費が優れているとは言えないREを使って800kmを超える航続距離を手に入れ、パーソナルカーとしては不満の出ない使い勝手も持っているから、買った人が実用上困らないようになっている点は評価できる。このモデルで徐々に経験を積んで今後の展開にも期待したい。

パーソナルカーとしては意外なほど脱エモーショナルで、BEVらしいお約束演出が無いものの違和感が無く、燃費が悪すぎて致命的な拒絶反応を受ける事は無いSUVライクスペシャルティとしてはそれなりの説得力がある。しかし、純粋な道具としての機能は粗削りに感じられる面もあり、3★である。

マツダにはREの炎を再び消さないように「安全運転」で育ててほしい。REスポーツ待望論者も、この変化球を毛嫌いせずに「マツダへのふるさと納税」の様な気持ちで選択肢に入れることは、ひいてはREスポーツ復活の応援をしていると言うことに繋がるだろう。



コアなRE愛好家以外は、BEVの航続距離に満足出来ないシングルorカップルのファーストカー、或いは非常時給電に便利な発電機能付きセカンドカー需要では選択肢に入ればいいのだが。
Posted at 2024/03/20 00:37:28 | コメント(1) | クルマレビュー

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