
タイトルを「このごろ何だかカローラです。」から変更しました。
一週間、800kmほど運転しましたが、当時のトヨタの本気度が分かる車でした。
ああ、お金をかけるとカローラもこんな風になっちゃうのか!という感動があります。
外観は薄型のヘッドライトが黄ばんでおりますが、
当時の流行にそった丸いデザインで、初代のセルシオテイストも感じられます。
日本人好みしそうなデザインの中に欧州を意識したハイデッキをさりげなく織り込んだり
ワールドカー特有の要件が美味くミックスされています。
ボデーパネルの隙関係は2011年の狙い値よりも緩いですが、
例えばウィンドゥにはメッキモールが必ず着いています。
今のトヨタだとSAIとかマークX買わないと着いていませんよ。
ベルトラインモールがステンレスなのも今では
ヴィッツのジュエラが「ステンレスだぞ!」と威張っていますが、
そんなの1990年代のカローラには普通の事なのです。
また、現代ではお金がかかるためにやらない
ロッカーブラックアウトもキチンと実施されています。
これがあるから7代目カローラはスッキリとシャープに見えます。
乗り込んでみます。
インパネアッパーは全面ソフトパッド!
優しい曲面がゆとりを感じさせます。
現代のアクシオも全面ソフトパッドですし、
最新モデルのほうが塗装をしたり木目調加飾がありますが、
カローラは黒とベージュのコントラストで勝負しています。
6代目のような派手なマルーン内装ではなく、内装色のセンスも多少良くなりました。
トリム類はものすごくコストがかかっています。
ルーフヘッドライニングは成形性が良くなったのか、
現代の車と同様にフロントヘッダーからトリムがなくなりました。
これによりスッキリした印象になっています。
逆にすごいのがA/Bピラーのガーニッシュです。
今では考えられないくらい大きな金型で一気に作っています。
これはパーツ点数を減らして合わせをスッキリさせたかったのでしょう。
ついでボデーのフランジを隠すためのオープニングトリムを廃止して
ガーニッシュでボデーのフランジを隠しています。
現代ではここにウェザーストリップがあるので構造が違いますが、
もしウェザーが無いのならこの構成が最強です。
しかし、組み付け性も明らかに悪いし、部品の大型化で
樹脂成型のための金型もでかくなって今のトヨタなら絶対やれないレベルです。
しかも、驚いたのがドアフレームが黒く塗られているのです。
現代の車もそうですが、一般的に室内から一部車体色のドアフレームが見えてしまうものです。
これを嫌ったトヨタはわざわざ黒く塗ってくれています。
カローラクラスなのにものすごい配慮。
欧州のライバルと較べて内装のクオリティが圧倒的に高いというのは
この時代に限って言えば全くその通りだったと言えるでしょう。
本当にものすごいコダワリ様に感動しました。
見栄えを良くしようという当時の設計者の想いが伝わってきます。
「どうせお客さんはわかんないでしょ」を合言葉にコストダウンしまくって
ついに見えるところまでケチり出した挙句、欧州車にお株を奪われる形になった昨今。
走りも見栄えも欧州車という現状で良いんだろうかとこの車を見ていて思います。
ちなみに運転してみると、これまた運転しやすい車です。
1500のAT車ですが、トルコンの特性を活かして市街地の加速は活発そのものです。
エアコンを使用していても動力性能の悪化代は気になりません。
シフトショックも変速は遅いもののよく抑えられていて90年代なら納得のレベル。
今の様に積極的にロックアップする技術も無く、思想も異なっていたために
ある程度加速してスピードが乗ってアクセルから足を離すと空走します。
また速度が落ちたらアクセル踏んで加速して、また空走して・・・・。
この車に私がMT車にこだわる右足とのシンクロ感は一切ありません。
ただし、思い通りに走らせようとすると辛うじてやれないことは無く、
現代のどうしようもないCVT車と較べるとまだ納得レベルです。
当時は燃料カットではなく以下に惰性走行させて燃費を稼ぐかという思想だったのでしょう。
高速道路に入ると80キロ付近を境にロックアップが働きます。
これが強力でなかなか外れないので高速燃費向上には役立つでしょう。
アクセルオフでMTの様にエンブレが効くので気持ちいいことは良いのですが、
5A-FE型エンジンは若干のトルク不足を呈してしまい、中央道の上り坂ではどんどん失速して
たまらずキックダウンしてまたロックアップして・・・と繰り返すビジーシフトに陥っていました。
この辺りの改良は1997年のスパシオの登降坂制御を待たねばなりません。
高速域の乗り味は少し頼りないです。
もちろん飛ばす車ではありませんが、ふらふらしてしまう傾向があります。
なので90キロくらいで走らせようとすると失速するし・・・・。
100チョイくらいが一番気持ちよく走れるエリアと言えそうです。
静粛性ですが、高速では風切り音が少ない方です。
エンジン音はハイギアードすぎるATのおかげでほとんど気になりません。
一番気になるのはロードノイズでしょうか。
このカローラはあまりいいタイヤが奢られていなかったのでかなりうるさいです。
通勤や休日の買い物に使用して燃費は14km/L。なかなかいいではありませんか。
もちろん熱いのでエアコンはフル稼働させました。
見た目も中身も豪華絢爛で5ナンバーサイズの小型セダンが
現代の車よりも遥かに運転しやすいなんてすごい話です。
今のトヨタは過度にコストを削減したせいで
IQSという指標で他メーカーの後塵を拝しています。
昔はトヨタの独壇場だったのですよ。
私はこのカローラを見て、
ふいに「トヨタはこれで(或いはこの時期)に燃え尽きてしまったのではないか」とさえ感じました。
他社が未だにショボイ内装なら良いのですが、今の他社は強力なライバルです。
頑張ってほしいなぁというのが希望なのですが・・・・。
もちろん、今は規制が厳しくて
衝突安全や排ガス対策など見えない部分にお金をかけなければならない事情は
十分理解してるつもりなのですが・・・。
●おまけ(2020年追加)
前期型 SE-Limited MT車にも機会があり試乗しました。
同じSE-Limitedなので全般的な印象は後期と変わらないが、
前期のグリーンメタリックが90年代トヨタ的で
微妙なニュアンスのボディカラーです。
内装色も2色あってボディカラーに合わせて
コーディネートされるなんてなんて洒落ているのでしょうか。
ディテールは前期モデルらしく、
後期より質素(特にグリル)ではありますが
ワイド感は前期の方がありますね。横基調のグリルと
Rrコンビランプをそのまま延長したような
ライセンスガーニッシュは当時の
クラウンロイヤルサルーンとも似たような処理でした。
早速E/Gを始動させ、ギアを入れて慣熟走行します。
このとき、何も意識せず運転しても滑らかにクラッチが繋がり、
シフトアップしてもがくがくしない。私がうまい訳でなく
カローラの許容範囲がものすごく広いイメージです。
マニュアルは非日常だから、とか敢えて好きな人が選ぶから、
と言うのではなく正しく普通のMT車、と言う感覚です。
3名乗車で走らせても、加速も軽快で2000rpm毎にシフトアップすれば
事足りるし、3000rpmまで引っ張れば十分にスポーティな感覚です。
その時の乗り心地は柔らかめで
ロールを許容するが、意外とよく曲がる印象でした。
別の機会に試乗したAE110後期と較べても
ハンドリングが良いように感じましたが、
これはオーナーの好みで履かせた14インチホイールとタイヤの効能かも。
クルマの軽さが際立って、私のAE92と同じようにどんどん曲がって行きつつも、
ステアリングは正確そのものでボデーがしっかりしている感覚が伝わってきます。オリジナルの感想文にも書いてますが、AE100が一つの頂点であるという考えが更に強くなりました。