無免許カー

パリショーが行われるポルト・ド・ヴェルサイユのパビリオン3。ホンダとスズキに挟まれた比較的広い一角に、前から気になっていた数社の出展ブースがあった。なかでもリジェは、かつてマトラV12のソプラノミュージックで一世を風靡した(1970年代)フランスのF1コンストラクター時代を知っていたので、なおさらだ。CHATENETはシャントネと読むのか。MINIのパクリみたいで面白いね。他にもいろいろあるんだ……。

いつもは取材に追われてなかなかそこまで手が回らなかったのですが、プレスデイ2日目のちょっと空いた時間帯に、AIXAM/MEGAというグループのブースで足を止めてみたわけです。AIXAMはエクサムと発音するフランスの"NO LICENSE CAR"、直訳すると無免許自動車の専業メーカーで、MEGAはその商用車部門であるようだ。リジェのブースにも掲げられていたように、マイクロカーという呼び方やフランス語表記でクワドリシクル(4輪自転車：ニュアンスとしては４輪原付でしょうか）とカテゴライズされたりもしている。

ボディサイズは全長3ｍ、全幅1.5ｍ。車両重量は350kｇ、エンジンは排気量400㏄の4ｋＷ（5.4ps）で最高速度が45㎞/hに制限される。以上の規定を満たしていれば、16歳以上なら原則免許無用。このカテゴリーにはもう一つ、制限速度は設けられないが最高出力が20ps以下に抑えられた車種が存在し、そちらは学科試験だけで取得可能な免許が存在するという。

現在のところパワーソースはなぜか日本のクボタ製2気筒ディーゼルが主流で、AIXAM/MEGAを初めとする多くのメーカーがZ402とかZ602といったクボタディーゼルを好んで採用していた。AIXAM Crossline のベース価格は11 990ユーロ。現在の円高為替環境でも136.9万円とそれほど安くはない。

この無免許カー＝マイクロカーは、若者向けというよりも免許取得困難となった老人の足代わりといった性格のモビリティツールで、大都市部よりも公共交通機関にかぎりのある地方の町の乗り物として重宝されているようだ。軽自動車が大きな市場性を持ち、時間帯によっては過密状態にある日本の道路環境にそのまま持ち込むことは難しいかもしれない。

ちなみにAIXAMクロスラインの燃費は2.9ℓ/100㎞。16ℓの燃料タンク(軽油)で450～500㎞の走行レンジをカバーする。

この無免許カーにはEVにも適合モデルが存在し、たとえばルノーのTwizzyはこのカテゴリーを当て込んだ新感覚のEVということができる。これは現在プジョーなどが多く販売している3輪スクーターを意識したもので、価格帯もそれとの競合を意識したものが検討されているようだ。ヨーロッパも国によって様々で、なかなか一括りには言えない。今回あらためてそれを実感しました。