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2011年06月07日

《再録》不定期連載みちのく紀行記 十和田湖の神秘・触れあう人情

《再録》不定期連載みちのく紀行記 十和田湖の神秘・触れあう人情 十和田湖の辺りまで来るとはなはだ地理感覚が怪しくなってくる。
とりあえず、青森・秋田・岩手の県境付近だよなくらいの意識しか持っていない。もっともそれが冒険意欲をそそり、旅をしているという意識をさらに高揚させる効能もあるだろう。

さて、林道経由による青森入りを諦めたわれわれは、これまた金で有名な小坂の手前で国道を右折し、十和田道(国道103号)に向かったと思う。なにやら頼りなさげなのは、あまり記憶にないからだ。ただ、地図で見るとこの道しかないだろうなという検討がつく。発荷峠に行くルートといえばこの道路が最適だろう。発荷峠に立ち寄ったことはよく覚えている。

小雨が立ちこめるなか、幻想の世界にいるような感覚で発荷峠に着く。
実は旅程中はここが峠ということすら知らなかった。左手に土産物屋が一軒あるだけのどうということのない土地であった。しかし、右手はというと対照的に急斜面となる。それを防御するのは若干の照葉樹林だけである。そして、斜面の下を眺めると大規模集落のように水をたたえた十和田湖が広がる。ようやく着いたかという安堵感とともに、旅の安全を深く感謝したのであった。

十和田湖は非常に透明度が高い湖である。それでいて水深は最大で327メートルにも及ぶ。こういう湖は湖畔まで行って実際みてみたいと思うのが私の心性である。発荷の峠を下って、一気に湖畔まで降りた。木製の旧い船着き場のようなものがあったので、湖の上を渡る木製のそれを頼りに湖面の透明感を実際に味わってみる。深さはよくわからなかったが、実に透き通っている。浅い湖岸付近であれば、底が見えてしまう。この木製船着き場で大の字にでもなって、空を冷風を浴びながら見上げる(気温は10度程度であった)のも良いかなと思った。
ただ、地図をみると十和田湖に突きだしている中山半島にいろいろ名所があるようだから、そこまでクルマを動かすことにした。

相変わらず湖とそれを織りなす周囲の木々が綺麗だ。
湖上に浮かぶ恵比寿島・大黒島を眺めた。実はこれ、一つの小島かと思ったのだが、二つの島から成り立っていたようだ。松の木の一種が数本映えている。松島にある島の数々に似ている。この島にある種の松は生存競争の面では不利だという。ただ、十和田の小島という厳しい環境下にあると強さを発揮するという。以前にも述べたか、銚子の犬吠でも同様の傾向が見える。犬吠崎は年中、潮と強風を浴びた「一般的な」植物には不毛不適の地である。潮と強風を仲間にするくらいの強烈な個性を持つ植物だけが生き残る、というか植生する。
こういう強烈な個性を放つ松の木が私は好きだ。そして、植物は自己主張しない。強烈たることを雄弁ぶらない。

そのあと開運の小路という森林に囲まれた気持ちの良い路を通った。
わずか200メートルばかりの路だが、なかなかに忙しい。岩肌が削られた箇所に複数の神が祀られている。風の神・火の神・山の神・金の神・天の岩戸・日の神といった案配である。たくさんの神様の祝福を受け入れられるのは有り難いが、敬虔な日本古来の神道を奉ずる人にはさぞかし大変であろう。都度、お辞儀をして柏手を打たねばならぬ。小路を抜けて十和田神社の本殿に行く。といっても偉容は小さく、派手さはない。近所にありそうな風情でもある。だが、その由来は実に大きいスケールに彩られている。
初代征夷大将軍坂上田村麻呂が蝦夷征伐の必勝を祈願し、日本武尊を祀ったのを起源とする(807年)。そして、1334年に北畠顕家に従って、当地に来た甲州の南部氏が再興した。
なんとも壮大ではないか。

参拝そこそこに、再び湖岸に向かって歩いた。
高村光太郎が作成したという乙女の像が目に入った。
彫像にはあまり興味がないので、二体の乙女が向き合う像の真下まできて、彼女らの乳房やら表情を観察してみたが、あまりピンとこなかった。目が彫られていない。穴が開いているだけだ。どの方向からでも像をみている人が彼女たちにみられていると感じさせる様に工夫されたものだしい。光太郎は二体の乙女が向き合うあいだの三角形の空間をみて欲しいと述べたという。それがどういう芸術的・思想的意図なのか汲み取ることはできなかった。

小腹が空いたので、駐車場付近にあるお店でなにか食べようということになり、急ぎ十和田神社本殿の鳥居を出た。時刻は5時。大抵の店は閉店である。そんな中、十和田湖でなくとも東京でも埼玉でも神奈川にでもありそうなうどん・そばのお店が開店されており、中へ入った。店主ともう一人の方だが、なんというか口数が重く、場合によっては冷たい印象を受ける。応対が合理的に満ちていて、余計な口を出さないのだ。
馴染みの店に十和田出身のマスターがいて、「南部の人は口が重いからね」と述べていたが、まさにその通りだなと思った。まあ、私はこうした木訥さが好きである。
先述のマスター曰く、「寒いから口が開かないのだよ」。
その通りかもしれないと思った。そういえば車中で暖房を入れていたことを思い出した。

われわれはカウンター席でおのおのそば・うどんをすすっていた。
左隣の常連さんとおぼしき人がお酒を飲んでいる。そのうちにもうひと方が店内に入り、ともにお酒を飲み始めた。
さてそろそろ退席するかなとおもったときに、
「これ、いかめしですが食べてみませんか」と後から入ってきた方に進められた。訛りはあるのだが、食べ物と所作をみれば、おっしゃっていることは理解できる。
恐縮しながらも、いかめしを頂くことにした。

「味はどうでしょうか?」
「おいしいですね。イカめしの米というとモチモチさが時に過剰なのですが、白米本来のしゃりしゃり感が残っているといいますか。ところで十和田でイカめしは盛んなのですか?」
旅の高揚で私は話を郷土的なことに振ってみた。
「これは八戸のもので、商品化しようと企画しているんです。もっとも八戸にはイカめしも売っています。八戸に行かれるとのことですから、その際は食べてみてください」

なんとも有り難いことだ。深くお礼をして立ち去ろうとしたら、今度は鯖寿司が出てきた。
「せっかく、こんな田舎まで来られたのでよかったら食べてください」
有り難くいただいた。鯖寿司だけで数種類。面白かったのは菊で包まれた鯖寿司であろうか。私は関東の人間だから、菊を食べる習慣はかろうじて保持しているが、西の人が聞いたら仰天しそうだ。

「鯖はとれるんですか?」
「八戸ではよくとれます」
実に簡にして要領を得た回答である。
はじめはどこかよそよそしかったお店の方も、最後には
「いいときにきたね」と声をかけてくださった。
こんなに素晴らしい旅の経験があるだろうか?

歓びと感謝の意で満たされながら、われわれは八戸へ向かった。
今夜の宿泊場所である。
気温は10度を下回っていた。
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Posted at 2011/06/07 21:48:03

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