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ノイマイヤーのブログ一覧

2025年11月03日 イイね!

2025年式フォレスターSPORT感想文

2025年式フォレスターSPORT感想文2025年4月にデビューしたフォレスターのガソリンターボ車に試乗する機会を得た。

北米では前年から売られていた6代目フォレスターはエクスプローラー的なアメリカン顔になって登場した。先代のSGPプラットフォームを継承し、ホイールベースは変わらず、サイズをほとんど変えていない。グローバルカーに向いていると言われるSUVだが、特にアメリカでよく売れておりボディサイズに対する感度が低いため、どのメーカーの商品も世代が進むごとに肥大化が免れない状況の中ではよく踏みとどまっている。



水平対向とシンメトリカルAWDというスバルDNAにSUVという「一般性」と安全機能と電動化を積み増したのがフォレスターである。まず安全性能から見ていこう。新しいフォレスターはサイクリストに世界で初めて対応した歩行者エアバッグをワイパー根元のカウルルーバーに設定した。アイサイトはステレオカメラだけでなく、単眼カメラとレーダーを追加してプリクラッシュブレーキのカバーエリアを拡大。渋滞時ハンズオフアシストやドライバー異常時対応システムが備わって「安全のスバル」というイメージを強化している。



そして長年のスバルの悩みの種だった燃費に関しても協業先のトヨタのキラーアイテムTHSを導入し、直噴2.5L水平対向E/Gに対してストロングハイブリッドを導入した。S:HEVと呼ぶスバル流THSも変速機の位置に2つのモーターとプラネタリギアを組み合わせたTHSによってWLTCモードで18.4km/L~18.8km/Lという飛躍的な進化を遂げている。18.1km/Lのエクストレイルe-POWERは凌ぐが、同じTHSを積むRAV4はモデル末期ながら20.4km/L~20.6km/Lと負けている。その分、フォレスターは縦置きE/Gを活かしてプロペラシャフトを残して高いAWD性能を維持した。競合車はRrモーターを積むことで後輪を駆動した電気式4輪駆動としているが、Rrモーターの性能(=サイズで決まる)に制約がありスバルが求める駆動力(=E/G+モーターのシステム出力)を実現する上でもプロペラシャフトを使った方が都合が良かった。

フルタイム4WDをウリにしてきたスバルだが、フォレスターには一定の条件でFWD(前輪駆動)に切り替えるクラッチ開放制御を採用。路面状況の良い自動車専用道路を一定速度で直進走行している時など、AWD性能が過剰となる場合にはクラッチを自動的に開放してFWDに切り替える制御だという。燃費のためにポリシーを曲げて魂を「ネンピの悪魔」に売った感じもあるが、公式サイトに拠れば

「しかし、この制御により、後輪への駆動力伝達をカットすることで機械的・電力的なロスを低減し、燃費性能の向上につなげています。切り替えは自動で行うため、ドライバーの操作は不要です。なお、X-MODE作動時やSI-DRIVEのSモード選択時は、開放制御は実施しません。また、この制御の作動には、応答性に優れた電子制御を採用しているため、瞬時に切り替わります。ステアリング操作や路面状況の悪化に応じて瞬時に後輪にもトルクを配分するAWDに戻るため、SUBARU SUVの特長である走行安定性もしっかりと確保しています。」

・・・とものすごい分量でフォローしており、社内でも後ろめたい気持ちがあったのかも知れないがいささか過剰反応気味か。トップクラスの低燃費は誇らなくても、後ろ指を指されず、維持する事が苦にならないトレンドラインに即した燃費性能を遂に手に入れた。



試乗車は1.8Lターボの「SPORT」だ。ラインナップ上、最廉価仕様にあたるが装備レベルや走らせた感触は決して安物ではない。税込み価格404.8万円は先代の同一グレードの価格346.5万円と比べると58.3万円アップで、最廉価だった2.0ツーリング306.9万円とは97.9万円アップとなり割高感が強い。米が昨年の2倍以上の価格になった事を考えればマシだと言われるかも知れないが・・・・。

かつての全天候型バカッ速ワゴンのキャラクターでは無く、スバルブランドの本格SUVとなったフォレスター。スバルが重視している北米では3列SUVのアセントやミドルセダンのレガシィがまだ残されているが、日本ではクロストレックとレイバックと並ぶ大きめのサイズの「インプレッサ系列SUV」の一つである。

ミニバンを除いてファミリーカーに最適な広々としたキャビンと上質な走りはフォレスターの魅力であり、さらに純ガソリンE/Gが選べることもフォレスターの魅力である。ただ、アルミホイールの設定が18インチにとどまり、オールシーズンタイヤが早めにスキール音を出すことを考えるとプレミアムグレードで選べる19インチサマータイヤも選べるようにするなど、あと少し胸を張って乗れるターボ車であって欲しい。アイサイトのヒットと北米市場での成功によってスバリスト層切り捨てに舵を切っている状況は変わらないが、まだ微かに真面目な部分も残されている。

自動変速車が好きな方で、ブランドより道具としての機能性を求める人ならフォレスターは良い選択肢になるだろう。

Posted at 2025/11/03 21:57:10 | コメント(1) | クルマレビュー
2025年10月03日 イイね!

2016年式S660 α感想文

2016年式S660 α感想文●床の間スポーツカー
ホンダが販売した初めての乗用車であるSの名を引き継いだ2025年現在の最新作。その名の通り660ccの軽乗用車である。



Sの系譜は幻のS360から始まる。ホンダの4輪進出にあたり、商用車のT360とともに2シータースポーツのS360が開発されたが、市場ニーズは商用車であるとしてT360だけがデビュー、S360は発売されず、1962年のモーターショーにS360と共に展示された小型車版のS500が発売された。その後S600、S800と進化を続け最終的には最高速度100MPHを達成し、本格スポーツカーとして認められる性能を誇った。



時は流れ、1990年にホンダ初のミッドシップスポーツカーのNSXがデビューしたわずか1年後の1991年、「ミッドシップアミューズメント」を謳うBEATが登場。BEATは開発中のスクープ記事はS660では?と期待されていたのに、結局S660を名乗らなかった。一説によれば「走る精密機械」と呼ばれたDOHCを採用しなかったからとも言われるが真偽は不明だ。他社が過給に頼る中、自然吸気のまま8500rpmまで回して64psを達成していたBEATは、ABC三兄弟の「B」として軽自動車の贅沢なパーソナルカーとしての可能性を示した。



ホンダのスポーツモデルは以降、本格サーキット走行も可能なTYPE Rが脚光を浴びていたが、1998年には許容回転数が9000rpmという超高回転型NAを搭載したS2000を発売した。ホンダはS2000のためにほぼ手作りの生産ラインを高根沢工場に用意し、専用のFRプラットフォームを与えた、私も10分ほど同級生が買ったS2000を運転したことがあるが、とにかくピーキーでじゃじゃ馬で、路面の凹凸でポンポン跳ねるような感覚があり、直線路でアクセルを深く踏めばレースカーみたいなデジパネのバーグラフが踊り、9000rpmまできっちり回った。

それ以後はシビックTYPE Rが作り続けられてホンダのスポーツイメージをけん引し続けてきた。

今回取上げるS660は2010年に本田技研50周年を記念して社内公募で選ばれた新商品企画案が基になっている。エクステリアデザインは2011年のEVスターというコンセプトカーをベースに、史上最年少の22歳(入社4年目)のモデラ―(クレイモデルを造形する専門職)が開発責任者になった。エンジニアではないため補佐役のベテランエンジニア達が彼を支えた。

スポーツカーにとっても最も大切な走りに大きな影響のあるパワートレーン・トライブトレーンはN-BOXで実績のあるS07AターボE/Gに対して軽自動車初の6速MTを新開発するという夢の様な組み合わせを実現してくれた。せっかくのチャンスとばかり、ほとんどの部品を新規開発するというこだわりきった開発には流用行為を拒絶し、専用設計を尊ぶ好事家もニッコリだろう。



S660は2015年4月から、2022年3月までの7年間に38916台が生産された。絶対値で言えば初代コペンの58496台(国内)に及ばないが、販売されていた年数を考えればほぼ互角の販売実績と言える(S660:463.3台/月 初代コペン:475.6台/月)。ただ、月間目標販売台数は800台だったので、ホンダとしてはもっと売るつもりだったのかも知れないが、月販3000台を謳ったBEATが5年半で33892台(513台/月)売った実績と比較して、S660は健闘している。



オープンエアモータリングが楽しめる軽スポーツカーというジャンルの中で、ヒット作とされる初代コペンと比較するとS660はルーフ開口が狭く、開閉が手動のため手間がかかり、ラゲージスペースは壊滅的に狭い。それでも結果的に善戦したのはS660の持つ「しつらえ」たメカニズムが神秘性を保ってきたからだと私は思う。

S660はBEATっぽさも残した元気印のエクステリアデザイン。充分以上の質感を持たせたオーセンティックなインテリア、しっかり高回転まで回るターボE/Gと実利も取れる6MT、4輪ディスクブレーキ、4輪独立懸架といったスポーツカーの記号性を大切にしている。



実際に運転してみても、スポーツカー特有の気難しさを感じさせずにどんどん踏み込んで、切り込んでいける。だから私のようなアホが「モアパワー!もっとスリルが欲しい」などと錯覚できるほど安定した走行性能はE/G以上に速いシャシ性能の成果であろう。

私の感じたS660の最大の弱点は、高い剛性を確保した結果の乗降性の悪さだ。膝周りのスペースとカウルサイド部の開口が不足しており、小柄な私でさえ足捌きに苦労するようでは脚が長い現代っ子にも辛いだろう。毎回シートをスライドして下げるのも億劫だった。モアパワー派のために社外品のECUを装着すればよいが、ボディは変えられないのでS660を購入したい人は乗降性だけは確認しておくと良い。

唐突だが私は一応、中型二輪の免許を持っている。2輪車で一番所有してみたいのは、意外かも知れないがホンダドリーム50である。乗った事すら無いのだが、カタログを中学生時代に入手したのだが、これは私が唯一持っている二輪車のカタログである。乗った事が無い私が考えるドリーム50の魅力はその美しさであり、「床の間バイク」という別名も持っているほど美しさに定評がある。クロームメッキが奢られたクラシカルな意匠、50ccでありながらDOHC4バルブを採用し美しく輝くE/G。いつか所有できなくても、走らせてみたいと思える私の憧れの一台だ。



ホンダS660はこのドリーム50的なものを感じている。作った人たちの想いとは違うと思うが、私はS660を見ていると本来は走ってナンボのスポーツカーなのに、きっと所有したら、毎日ガンガン乗るよりも飾っておきたくなる「床の間スポーツカー」になれる素質もあると思う。(個人の見解)

まだ終売から日が浅いS660も25年経過してしまうと、マイクロスーパーカー的な面白がり方をされて海外に渡ってしまう個体が増える。どうしても欲しいなら、プレミア価格なのが癪だが早めに中古車を抑えておいた方が良いだろう。

Posted at 2025/10/04 00:15:54 | コメント(2) | クルマレビュー
2025年09月21日 イイね!

2023年式フレアワゴンXS/スペーシアHYBRID X感想文

2023年式フレアワゴンXS/スペーシアHYBRID X感想文●宿敵を超えようとする執念が育てた商品

スーパーハイト軽は名実ともに現代の大衆車である。「現代の最もポピュラーなファミリーカー」というタイトルを欲しいままにしているジャンルだ。かつての大衆車は1000ccクラスの2セダンだったが、日本国内ではいつしか軽規格にスライドドアを組み合わせた3列ミニバンの3列目を切り飛ばしたような商品が市場を席巻した。

この市場は2003年にダイハツがタントで切り拓き、ホンダがF1技術者をLPLに抜擢して追撃したN-BOXが大衆車としての地位を確固たるものにした。

アルトやワゴンRで軽自動車の新しい世界を切り拓いてきたスズキはどう戦ってきたのか。タントから遅れること5年、2008年にパレットを発売した。



スーパーハイトプロポーションに両側スライドドアを組み合わせてタントに挑んだのだが、前年にFMCを敢行した2代目タントはミラクルオープンドアを採用し商品性を高めており、まんまと陳腐化されてしまっていた。例えは2008年(1-12月)の販売台数はパレットが7.3万台だったのに対してタントは15.9万台売っていた。スペーシアは完敗だが、まだワゴンRが20.5万台と軽自動車のトップに君臨していた。

2013年に名称をスペーシアに改めて再度挑戦した。スズキがダイハツとの燃費競争で磨き上げた
低燃費技術エネチャージや、実質的なマイルドハイブリッドともいえるSエネチャージを採用したのだが、今度は彗星のように現われたN-BOXの前に敗北してしまった。



例えば2013年度の販売台数はスペーシアが13.8万台売れたのに対し、タントが18万台と勝り、N-BOXに至っては22.6万台を売って軽自動車トップに君臨していた。グリーンハウスが大きくて明るい健康的なハイトワゴンだったのだが、ユーザーからはこのことが不評だったと後に判明するのである。

2017年の2代目スペーシアはスーツケースをモチーフに内外装をトータルコーディネートし、先進安全技術と新P/Fによる軽量ボディとマイルドハイブリッドの組み合わせで燃費を磨き対抗した。



このスーツケースデザインには秘密がある。それは先代の不評点「開放感があるが、一方で不安感がある」という顧客からの声に応えてベルトラインを高くしているのである。スズキも悔しかっただろうが隣にN-BOXを並べてショルダーの位置を調整しながらデザインした事で、N-BOXが持っていた「立派さ」と「守られ感」を手に入れた。

競合を真似するだけではない。年々過酷さを増す酷暑への配慮としてスリムサーキュレーターを軽として初めて採用し、逆に冷房のスポット風が苦手な女性を意識して風を拡散させるエアコングリルを採用した事もニュースになった。ソフト・ハード共にライバルをベンチマークし、着実に距離を詰めていった。例えば2018年(1-12月)の販売ランキングはスペーシアが15.2万台と13.6万台の3代目タントに勝利する事ができた。確かにタントは2019年の全面改良を控えており、商品力が低下していたとは言え遂に悲願を達成する事ができた。しかしながら、N-BOXは相変わらず24.2万台を売ってトップを維持していた。時々トップをスペーシアがN-BOXから奪う事ができても年間ランキングではN-BOXが優位であり、2024年(1-12月)もスペーシアが16.6万台に対して、N-BOXは20.6万台を売っている。



ただし、N-BOXが昨年度累計比89%と人気を落としているのに対して、スペーシアは135.5%と追撃の勢いが強まっている。N-BOXが高いブランド力を以てトップを守り続けるのか、スペーシアがこのまま商品力強化を積み重ねて悲願を達成するのかこれからも目が離せない。



今回試乗したのは2023年12月にデビューした3代目スペーシアのマツダ版(フレアワゴンXS)だ。
「わくわく満載!自由に使える安心・快適スペーシア」が商品コンセプトである。フレアワゴンXSはノーマル系上級仕様で、子育て世代のセカンドカー、或いはメインカー需要にも応えうる便利装備が満載されている。

ターゲットユーザーは
①後席に家族や仲間、荷物を載せる事が多いユーザー
②軽ワゴン及び軽ハイトワゴンからの乗り換えユーザー
③室内の広さは欲しいが、経済的に維持しやすい軽自動車を求めるユーザー
特にノーマル系は日常の脚としての利便性・経済性に軸足を持ちつつ広さを求める人としている。

スペーシアは子育て世代だけではなく、子育て終了層もターゲットにしているが彼らは購入時に特に重視する機能として安全運転支援機能を挙げているというデータに基づき予防安全装備が強化されている。具体的には単眼カメラとミリ波レーダーに加えて超音波センサーも追加したことで衝突被害軽減ブレーキの機能のうち、交差点での衝突回避機能や対自転車事故への対応能力が上がっている。

成功した先代を引き継ぎ、今回は「コンテナ」をモチーフにしたエクステリアデザインだが、先代より少し大人しくなったと印象で先代は可愛く作りすぎたという反省があるようだ。リブをたくさん入れた箱っぽいデザインは実際に触ったときの剛性感もあり、触感による頼もしさも持っている点が面白い。



走らせてみると、スーパーハイト軽の進化を感じる。加速性能は緩慢でむず痒く苦しいものの、一旦速度が乗ってしまえば、扱いやすい。また、ブレーキの減速感は希薄なものの、コントロール性が高く同乗者の状態を揺らさないように停止できる点は、10km/hでE/Gを止めたときの挙動と合わせて同乗者への違和感を消す事が可能だ。

高速道路は絶対的な出力不足が効いてくるシーンであり、追い越し車線を元気に走るような勢いは無く、月に1回以上高速道路を走る機会があるならターボを選んだ方が良いと思う。NAではハッキリ動力不足と言い切れるレベルだ。

ファミリーがこれ一台で全てをこなす、と考えると動的性能の頼りなさの総合的レベルアップが必要だ。しかし、それ以外の運転席のホールド感とキャビンの広さ、後席の便利さや収納へのこだわりを見ているとP/F流用で手堅くまとめたスペーシア(フレアワゴン)が支持されるのも納得がいく完成度だと素直に感心した。ただし、仕様設定に関しては廉価グレードの左側だけでもパワースライド機構のオプション設定があると良い。



ライバルが存在し、販売で優位に立つために改良を重ねていくことの大切さを実感した。★をつけるなら3。例えば動力・操安・制動など絶対的レベルが低いものの、バランスが良く取れている点を評価したい。
Posted at 2025/09/21 22:50:18 | コメント(1) | クルマレビュー
2025年08月23日 イイね!

2024年式シビックRSミニ感想文

2024年式シビックRSミニ感想文2021年発売の現行シビックは個人的に好ましいモデルだと感じていた。若年層に売れている、という報道は売り手の願望が生み出したプロパガンダかと思いきや、確かに若いドライバーがシビックでドライブしているのを見る機会があった。

更に私が注目したのはMT比率が高いという事だ。初期受注の35.1%がMTだったという。決して安いとは言えない価格設定のシビックの、さらにオワコンと言われかねないMT車に対して意外なほどの受注をなぜ勝ち取れたのか不思議に感じる人も居るだろう。個人的な見解では、「それなりの車格」で「それなりのE/Gと組み合わせられているから」だと考えた。

かつてカローラ(セダン/ツーリング/スポーツ)にもMTがあったが1.2Lターボという非力なE/Gが組み合わせられただけでなくシフト配置も理想からは遠く、コレジャナイという感じが残っていた。マツダ3にもMTが設定されていたが、人気のあったディーゼルのMTは廃止され、自然吸気のガソリンE/GのみにMTが設定されたが、のちに追加されたスカイアクティブXにMTが設定された。残念ながら、当時は割高だとして忌避感を生み、MTのラインナップは縮小の一途をたどる。

シビックの場合1.5Lターボで182PS/24.5kgmという高性能を発揮し、決して引け目を感じさせないスペックを持っていて、「我慢の廉価仕様」という感じが小さいことも一因かもしれない。



そんなMTが珍しく好評なシビックの弱点の一つは回転落ちが悪く重たいフィーリングだった。アクセルオフで燃料がカットされて減速をはじめるレスポンスが悪く、例えばクラッチを切ってアクセルをふかしてシフトダウンをする「回転合わせ」を行おうとすると待てども暮らせど回転が落ちない(比喩表現)のである。

確かに現代のMTは厳しい環境にいる。例えば電子制御スロットルだ。本来、ドライバーの意志に沿った動作ができる技術だが、ペダル操作に依存せずにスロットルを開閉できることから、安全デバイスだけで無く動的性能の辻褄合わせに使われることも少なくない。そして自動変速車ファーストな適合によって、本来は右足でE/Gと会話できるはずのスロットルがON-OFFスイッチのような鈍感なものに変えられたり、不感帯域が設けられるなど拷問のような設定が当たり前になっているのだ。キャブレターの自動車に乗った人にはEFIのフィーリングが気に入らない人が居たが、同じようにワイヤー引きスロットルを知る者にとって電子制御スロットルの違和感は計り知れない。近年は、その最悪期を脱しておりドライバーが制御しやすいスロットル特性のMT車も増えている。何しろ、クラッチの接続にはE/Gとの対話が不可欠でありシビックのMTはその点で問題は無かったのに回転落ちへの指摘の声が私だけでは無く、自動車評論家からも相次いでいた。

2024年、ホンダはLX/EXのMT仕様を廃止すると同時にMT専用のRSグレードを追加した。初動のMT比率の高さや若年層の支持を背景にMTへの改良の投資も説得できたのだろう。



カーグラ誌のインタビューによれば「日本でシビックを立て直したいという思いが強かった」という。所詮グローバルの主戦場は5割が北米、4割が中国、残る1割をアジア(含む日本)と南米で分け合うシェア構成なので、日本市場など無視できる存在だと思われているのだと私は想像していたが、意外にそうでは無かった。

日本での発売後、開発現場からの「もっとよくしたいという声」が出たため、各部署にヒアリングしてアイデアを持ち寄り、外国仕向けの別スペックの部品をかき集めて作ったのがRSなのだという。RSという名前自体は営業部門の意見で決まったそうだが、確かに北米仕様に存在する200psのSiという程ガチでは無いのだが日本ではお馴染みのSiRグレードの復活というのも悪くなかったように思う。(私はGLとか復活して欲しいが・・・)

・ショートストローク化
・軽量フライホイール

これによって前述の不満は解消され、変速することを楽しみに変えた。軽量フライホイールは質量が23%軽くなり、慣性モーメントは-30%低減したという。結果、回転落ちは50%向上したとされる。

さらに「レブマッチシステム」がタイプRから流用された。これはシフト操作をすると、アクセルを踏まなくても自動的に適切な回転数に合わせてくれてクラッチを繋いだときのショックをほとんど消すことができる。

カタログには書いていないが、シフトノブもドライバー側に寄せて曲げてあるそうだ。スッと手を置いた位置にシフトノブが来るように一筆入れてあるのはすばらしい。

このほか、大型ブレーキをはじめとしてシャシーもRS専用に再セッティングされ、ドライブモードスイッチに自分好みに設定できる「INDIVIDUAL」モードが追加されていて活用するしないに関わらず意オーナーの意志に少しでも寄り添おうという意志は感じる。ヒエラルキー上、タイプRがあるので、差別化をやり過ぎること無く、ウェルバランスを狙ったシビックRSは大変好ましい。

MTの改良と走りに関係するところは細かく手が入っているものの、内外装の差別化が慎ましい。具体的には上級のEXに対してハニカムグリルやグロスブラックの加飾、Rrバンパーのエキパイフィニッシャーも専用デザインだ。ホイールも切削加工が廃止されて(!)黒一色に。内装は赤ステッチや赤アクセント加飾とに留まり、ド派手なエアロとかインチアップだとかそういった差別化のための差別化にお金を使っていない点が好ましい。

しかし、ネガティブな印象を持ったのはグリル開口の空力上抜きたくない部分の穴埋め部の処理が下手な事だ。ただ埋めただけという感じで、実際の穴あき部との見栄え上の差が激しいのは高額な車としては残念である。例えば欧州ブランドの車はこういうところにも桟の立ちを高くしたり、シボのかけ方や部品分割を工夫している。これは他のホンダ車でも共通した不満点であり、コストを最優先にした結果だと思われるが、車の顔に関わる部分なので意識を高めて欲しい。



シビックRSは貴重なMT派のために真剣に考えられたMT車だ。トヨタもカローラにMTを設定していたが、非力な走りとシフト位置の悪さなど適当に作ったMTを引っ込めてしまった。マツダはマツダ3にMTを設定しているが、昨今のマツダはディーゼルやMTに対して冷淡で従来よりも強く効率を気にしているようにも映る。

そんな中でMTの基本機能に改良を加えて、普通に乗れるシビックRSの存在感は大きい。弁護のしようが無い価格設定を一旦脇に置いておくと我が家の有力な買換え候補の一つとして気になる存在になった。(だからといってポンと541万円も払う余裕が我が家には無い)

最近の私は毎朝の通勤経路で颯爽と右折してくるシビックRSとすれ違う。30代くらいの若い人が通勤に使っているようだ。毎朝「良いクルマに乗ってますね」と心の中で声をかけている。そして「頑張りましたね」と彼の決断を労ってしまう。

クルマの内容だけなら4~4.5★でも良いと思うが、足元を見た価格設定があんまりだ。RSの最終評価は★3だ。惚れ込んだ人は買って後悔はしないだろう。
Posted at 2025/08/24 00:58:33 | コメント(1) | クルマレビュー
2025年08月19日 イイね!

愛車と出会って9年!

愛車と出会って9年!8月19日で愛車と出会って9年になります!
この1年の愛車との思い出を振り返ります!

■この1年でこんなパーツを付けました!
中古スタッドレスつき純正ホイール

■この1年でこんな整備をしました!
ワイパーブレード交換
ドア水没対応
E/Gオイル+フィルタ交換
助手席レジスター交換


■愛車のイイね!数(2025年08月18日時点)
350イイね!

■これからいじりたいところは・・・
現在、主治医の工場にお泊まり保育中。

■愛車に一言
お疲れ様です。あっという間の9年です。兼ねてからやりたかったことが、実現しようとしています。今は見守るだけですが、また楽しく走らせたいです。

少しでも気持ちよく、長く乗れますように。

>>愛車プロフィールはこちら
Posted at 2025/08/19 00:45:49 | コメント(2) | トラックバック(0) | RAV4

プロフィール

「特に詳しい説明もなくサラッと置いてあるのが恐ろしい。リアディスクブレーキなのが意外でした。」
何シテル?   11/07 11:52
ノイマイヤーと申します。 車に乗せると機嫌が良いと言われる赤ちゃんでした。 親と買い物に行く度にゲーセンでSEGAのアウトランをやらせろと駄々をこねる幼...
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