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2025年10月03日 イイね!

2016年式S660 α感想文

2016年式S660 α感想文●床の間スポーツカー
ホンダが販売した初めての乗用車であるSの名を引き継いだ2025年現在の最新作。その名の通り660ccの軽乗用車である。



Sの系譜は幻のS360から始まる。ホンダの4輪進出にあたり、商用車のT360とともに2シータースポーツのS360が開発されたが、市場ニーズは商用車であるとしてT360だけがデビュー、S360は発売されず、1962年のモーターショーにS360と共に展示された小型車版のS500が発売された。その後S600、S800と進化を続け最終的には最高速度100MPHを達成し、本格スポーツカーとして認められる性能を誇った。



時は流れ、1990年にホンダ初のミッドシップスポーツカーのNSXがデビューしたわずか1年後の1991年、「ミッドシップアミューズメント」を謳うBEATが登場。BEATは開発中のスクープ記事はS660では?と期待されていたのに、結局S660を名乗らなかった。一説によれば「走る精密機械」と呼ばれたDOHCを採用しなかったからとも言われるが真偽は不明だ。他社が過給に頼る中、自然吸気のまま8500rpmまで回して64psを達成していたBEATは、ABC三兄弟の「B」として軽自動車の贅沢なパーソナルカーとしての可能性を示した。



ホンダのスポーツモデルは以降、本格サーキット走行も可能なTYPE Rが脚光を浴びていたが、1998年には許容回転数が9000rpmという超高回転型NAを搭載したS2000を発売した。ホンダはS2000のためにほぼ手作りの生産ラインを高根沢工場に用意し、専用のFRプラットフォームを与えた、私も10分ほど同級生が買ったS2000を運転したことがあるが、とにかくピーキーでじゃじゃ馬で、路面の凹凸でポンポン跳ねるような感覚があり、直線路でアクセルを深く踏めばレースカーみたいなデジパネのバーグラフが踊り、9000rpmまできっちり回った。

それ以後はシビックTYPE Rが作り続けられてホンダのスポーツイメージをけん引し続けてきた。

今回取上げるS660は2010年に本田技研50周年を記念して社内公募で選ばれた新商品企画案が基になっている。エクステリアデザインは2011年のEVスターというコンセプトカーをベースに、史上最年少の22歳(入社4年目)のモデラ―(クレイモデルを造形する専門職)が開発責任者になった。エンジニアではないため補佐役のベテランエンジニア達が彼を支えた。

スポーツカーにとっても最も大切な走りに大きな影響のあるパワートレーン・トライブトレーンはN-BOXで実績のあるS07AターボE/Gに対して軽自動車初の6速MTを新開発するという夢の様な組み合わせを実現してくれた。せっかくのチャンスとばかり、ほとんどの部品を新規開発するというこだわりきった開発には流用行為を拒絶し、専用設計を尊ぶ好事家もニッコリだろう。



S660は2015年4月から、2022年3月までの7年間に38916台が生産された。絶対値で言えば初代コペンの58496台(国内)に及ばないが、販売されていた年数を考えればほぼ互角の販売実績と言える(S660:463.3台/月 初代コペン:475.6台/月)。ただ、月間目標販売台数は800台だったので、ホンダとしてはもっと売るつもりだったのかも知れないが、月販3000台を謳ったBEATが5年半で33892台(513台/月)売った実績と比較して、S660は健闘している。



オープンエアモータリングが楽しめる軽スポーツカーというジャンルの中で、ヒット作とされる初代コペンと比較するとS660はルーフ開口が狭く、開閉が手動のため手間がかかり、ラゲージスペースは壊滅的に狭い。それでも結果的に善戦したのはS660の持つ「しつらえ」たメカニズムが神秘性を保ってきたからだと私は思う。

S660はBEATっぽさも残した元気印のエクステリアデザイン。充分以上の質感を持たせたオーセンティックなインテリア、しっかり高回転まで回るターボE/Gと実利も取れる6MT、4輪ディスクブレーキ、4輪独立懸架といったスポーツカーの記号性を大切にしている。



実際に運転してみても、スポーツカー特有の気難しさを感じさせずにどんどん踏み込んで、切り込んでいける。だから私のようなアホが「モアパワー!もっとスリルが欲しい」などと錯覚できるほど安定した走行性能はE/G以上に速いシャシ性能の成果であろう。

私の感じたS660の最大の弱点は、高い剛性を確保した結果の乗降性の悪さだ。膝周りのスペースとカウルサイド部の開口が不足しており、小柄な私でさえ足捌きに苦労するようでは脚が長い現代っ子にも辛いだろう。毎回シートをスライドして下げるのも億劫だった。モアパワー派のために社外品のECUを装着すればよいが、ボディは変えられないのでS660を購入したい人は乗降性だけは確認しておくと良い。

唐突だが私は一応、中型二輪の免許を持っている。2輪車で一番所有してみたいのは、意外かも知れないがホンダドリーム50である。乗った事すら無いのだが、カタログを中学生時代に入手したのだが、これは私が唯一持っている二輪車のカタログである。乗った事が無い私が考えるドリーム50の魅力はその美しさであり、「床の間バイク」という別名も持っているほど美しさに定評がある。クロームメッキが奢られたクラシカルな意匠、50ccでありながらDOHC4バルブを採用し美しく輝くE/G。いつか所有できなくても、走らせてみたいと思える私の憧れの一台だ。



ホンダS660はこのドリーム50的なものを感じている。作った人たちの想いとは違うと思うが、私はS660を見ていると本来は走ってナンボのスポーツカーなのに、きっと所有したら、毎日ガンガン乗るよりも飾っておきたくなる「床の間スポーツカー」になれる素質もあると思う。(個人の見解)

まだ終売から日が浅いS660も25年経過してしまうと、マイクロスーパーカー的な面白がり方をされて海外に渡ってしまう個体が増える。どうしても欲しいなら、プレミア価格なのが癪だが早めに中古車を抑えておいた方が良いだろう。

Posted at 2025/10/04 00:15:54 | コメント(2) | クルマレビュー
2025年09月21日 イイね!

2023年式フレアワゴンXS/スペーシアHYBRID X感想文

2023年式フレアワゴンXS/スペーシアHYBRID X感想文●宿敵を超えようとする執念が育てた商品

スーパーハイト軽は名実ともに現代の大衆車である。「現代の最もポピュラーなファミリーカー」というタイトルを欲しいままにしているジャンルだ。かつての大衆車は1000ccクラスの2セダンだったが、日本国内ではいつしか軽規格にスライドドアを組み合わせた3列ミニバンの3列目を切り飛ばしたような商品が市場を席巻した。

この市場は2003年にダイハツがタントで切り拓き、ホンダがF1技術者をLPLに抜擢して追撃したN-BOXが大衆車としての地位を確固たるものにした。

アルトやワゴンRで軽自動車の新しい世界を切り拓いてきたスズキはどう戦ってきたのか。タントから遅れること5年、2008年にパレットを発売した。



スーパーハイトプロポーションに両側スライドドアを組み合わせてタントに挑んだのだが、前年にFMCを敢行した2代目タントはミラクルオープンドアを採用し商品性を高めており、まんまと陳腐化されてしまっていた。例えは2008年(1-12月)の販売台数はパレットが7.3万台だったのに対してタントは15.9万台売っていた。スペーシアは完敗だが、まだワゴンRが20.5万台と軽自動車のトップに君臨していた。

2013年に名称をスペーシアに改めて再度挑戦した。スズキがダイハツとの燃費競争で磨き上げた
低燃費技術エネチャージや、実質的なマイルドハイブリッドともいえるSエネチャージを採用したのだが、今度は彗星のように現われたN-BOXの前に敗北してしまった。



例えば2013年度の販売台数はスペーシアが13.8万台売れたのに対し、タントが18万台と勝り、N-BOXに至っては22.6万台を売って軽自動車トップに君臨していた。グリーンハウスが大きくて明るい健康的なハイトワゴンだったのだが、ユーザーからはこのことが不評だったと後に判明するのである。

2017年の2代目スペーシアはスーツケースをモチーフに内外装をトータルコーディネートし、先進安全技術と新P/Fによる軽量ボディとマイルドハイブリッドの組み合わせで燃費を磨き対抗した。



このスーツケースデザインには秘密がある。それは先代の不評点「開放感があるが、一方で不安感がある」という顧客からの声に応えてベルトラインを高くしているのである。スズキも悔しかっただろうが隣にN-BOXを並べてショルダーの位置を調整しながらデザインした事で、N-BOXが持っていた「立派さ」と「守られ感」を手に入れた。

競合を真似するだけではない。年々過酷さを増す酷暑への配慮としてスリムサーキュレーターを軽として初めて採用し、逆に冷房のスポット風が苦手な女性を意識して風を拡散させるエアコングリルを採用した事もニュースになった。ソフト・ハード共にライバルをベンチマークし、着実に距離を詰めていった。例えば2018年(1-12月)の販売ランキングはスペーシアが15.2万台と13.6万台の3代目タントに勝利する事ができた。確かにタントは2019年の全面改良を控えており、商品力が低下していたとは言え遂に悲願を達成する事ができた。しかしながら、N-BOXは相変わらず24.2万台を売ってトップを維持していた。時々トップをスペーシアがN-BOXから奪う事ができても年間ランキングではN-BOXが優位であり、2024年(1-12月)もスペーシアが16.6万台に対して、N-BOXは20.6万台を売っている。



ただし、N-BOXが昨年度累計比89%と人気を落としているのに対して、スペーシアは135.5%と追撃の勢いが強まっている。N-BOXが高いブランド力を以てトップを守り続けるのか、スペーシアがこのまま商品力強化を積み重ねて悲願を達成するのかこれからも目が離せない。



今回試乗したのは2023年12月にデビューした3代目スペーシアのマツダ版(フレアワゴンXS)だ。
「わくわく満載!自由に使える安心・快適スペーシア」が商品コンセプトである。フレアワゴンXSはノーマル系上級仕様で、子育て世代のセカンドカー、或いはメインカー需要にも応えうる便利装備が満載されている。

ターゲットユーザーは
①後席に家族や仲間、荷物を載せる事が多いユーザー
②軽ワゴン及び軽ハイトワゴンからの乗り換えユーザー
③室内の広さは欲しいが、経済的に維持しやすい軽自動車を求めるユーザー
特にノーマル系は日常の脚としての利便性・経済性に軸足を持ちつつ広さを求める人としている。

スペーシアは子育て世代だけではなく、子育て終了層もターゲットにしているが彼らは購入時に特に重視する機能として安全運転支援機能を挙げているというデータに基づき予防安全装備が強化されている。具体的には単眼カメラとミリ波レーダーに加えて超音波センサーも追加したことで衝突被害軽減ブレーキの機能のうち、交差点での衝突回避機能や対自転車事故への対応能力が上がっている。

成功した先代を引き継ぎ、今回は「コンテナ」をモチーフにしたエクステリアデザインだが、先代より少し大人しくなったと印象で先代は可愛く作りすぎたという反省があるようだ。リブをたくさん入れた箱っぽいデザインは実際に触ったときの剛性感もあり、触感による頼もしさも持っている点が面白い。



走らせてみると、スーパーハイト軽の進化を感じる。加速性能は緩慢でむず痒く苦しいものの、一旦速度が乗ってしまえば、扱いやすい。また、ブレーキの減速感は希薄なものの、コントロール性が高く同乗者の状態を揺らさないように停止できる点は、10km/hでE/Gを止めたときの挙動と合わせて同乗者への違和感を消す事が可能だ。

高速道路は絶対的な出力不足が効いてくるシーンであり、追い越し車線を元気に走るような勢いは無く、月に1回以上高速道路を走る機会があるならターボを選んだ方が良いと思う。NAではハッキリ動力不足と言い切れるレベルだ。

ファミリーがこれ一台で全てをこなす、と考えると動的性能の頼りなさの総合的レベルアップが必要だ。しかし、それ以外の運転席のホールド感とキャビンの広さ、後席の便利さや収納へのこだわりを見ているとP/F流用で手堅くまとめたスペーシア(フレアワゴン)が支持されるのも納得がいく完成度だと素直に感心した。ただし、仕様設定に関しては廉価グレードの左側だけでもパワースライド機構のオプション設定があると良い。



ライバルが存在し、販売で優位に立つために改良を重ねていくことの大切さを実感した。★をつけるなら3。例えば動力・操安・制動など絶対的レベルが低いものの、バランスが良く取れている点を評価したい。
Posted at 2025/09/21 22:50:18 | コメント(1) | クルマレビュー
2025年08月23日 イイね!

2024年式シビックRSミニ感想文

2024年式シビックRSミニ感想文2021年発売の現行シビックは個人的に好ましいモデルだと感じていた。若年層に売れている、という報道は売り手の願望が生み出したプロパガンダかと思いきや、確かに若いドライバーがシビックでドライブしているのを見る機会があった。

更に私が注目したのはMT比率が高いという事だ。初期受注の35.1%がMTだったという。決して安いとは言えない価格設定のシビックの、さらにオワコンと言われかねないMT車に対して意外なほどの受注をなぜ勝ち取れたのか不思議に感じる人も居るだろう。個人的な見解では、「それなりの車格」で「それなりのE/Gと組み合わせられているから」だと考えた。

かつてカローラ(セダン/ツーリング/スポーツ)にもMTがあったが1.2Lターボという非力なE/Gが組み合わせられただけでなくシフト配置も理想からは遠く、コレジャナイという感じが残っていた。マツダ3にもMTが設定されていたが、人気のあったディーゼルのMTは廃止され、自然吸気のガソリンE/GのみにMTが設定されたが、のちに追加されたスカイアクティブXにMTが設定された。残念ながら、当時は割高だとして忌避感を生み、MTのラインナップは縮小の一途をたどる。

シビックの場合1.5Lターボで182PS/24.5kgmという高性能を発揮し、決して引け目を感じさせないスペックを持っていて、「我慢の廉価仕様」という感じが小さいことも一因かもしれない。



そんなMTが珍しく好評なシビックの弱点の一つは回転落ちが悪く重たいフィーリングだった。アクセルオフで燃料がカットされて減速をはじめるレスポンスが悪く、例えばクラッチを切ってアクセルをふかしてシフトダウンをする「回転合わせ」を行おうとすると待てども暮らせど回転が落ちない(比喩表現)のである。

確かに現代のMTは厳しい環境にいる。例えば電子制御スロットルだ。本来、ドライバーの意志に沿った動作ができる技術だが、ペダル操作に依存せずにスロットルを開閉できることから、安全デバイスだけで無く動的性能の辻褄合わせに使われることも少なくない。そして自動変速車ファーストな適合によって、本来は右足でE/Gと会話できるはずのスロットルがON-OFFスイッチのような鈍感なものに変えられたり、不感帯域が設けられるなど拷問のような設定が当たり前になっているのだ。キャブレターの自動車に乗った人にはEFIのフィーリングが気に入らない人が居たが、同じようにワイヤー引きスロットルを知る者にとって電子制御スロットルの違和感は計り知れない。近年は、その最悪期を脱しておりドライバーが制御しやすいスロットル特性のMT車も増えている。何しろ、クラッチの接続にはE/Gとの対話が不可欠でありシビックのMTはその点で問題は無かったのに回転落ちへの指摘の声が私だけでは無く、自動車評論家からも相次いでいた。

2024年、ホンダはLX/EXのMT仕様を廃止すると同時にMT専用のRSグレードを追加した。初動のMT比率の高さや若年層の支持を背景にMTへの改良の投資も説得できたのだろう。



カーグラ誌のインタビューによれば「日本でシビックを立て直したいという思いが強かった」という。所詮グローバルの主戦場は5割が北米、4割が中国、残る1割をアジア(含む日本)と南米で分け合うシェア構成なので、日本市場など無視できる存在だと思われているのだと私は想像していたが、意外にそうでは無かった。

日本での発売後、開発現場からの「もっとよくしたいという声」が出たため、各部署にヒアリングしてアイデアを持ち寄り、外国仕向けの別スペックの部品をかき集めて作ったのがRSなのだという。RSという名前自体は営業部門の意見で決まったそうだが、確かに北米仕様に存在する200psのSiという程ガチでは無いのだが日本ではお馴染みのSiRグレードの復活というのも悪くなかったように思う。(私はGLとか復活して欲しいが・・・)

・ショートストローク化
・軽量フライホイール

これによって前述の不満は解消され、変速することを楽しみに変えた。軽量フライホイールは質量が23%軽くなり、慣性モーメントは-30%低減したという。結果、回転落ちは50%向上したとされる。

さらに「レブマッチシステム」がタイプRから流用された。これはシフト操作をすると、アクセルを踏まなくても自動的に適切な回転数に合わせてくれてクラッチを繋いだときのショックをほとんど消すことができる。

カタログには書いていないが、シフトノブもドライバー側に寄せて曲げてあるそうだ。スッと手を置いた位置にシフトノブが来るように一筆入れてあるのはすばらしい。

このほか、大型ブレーキをはじめとしてシャシーもRS専用に再セッティングされ、ドライブモードスイッチに自分好みに設定できる「INDIVIDUAL」モードが追加されていて活用するしないに関わらず意オーナーの意志に少しでも寄り添おうという意志は感じる。ヒエラルキー上、タイプRがあるので、差別化をやり過ぎること無く、ウェルバランスを狙ったシビックRSは大変好ましい。

MTの改良と走りに関係するところは細かく手が入っているものの、内外装の差別化が慎ましい。具体的には上級のEXに対してハニカムグリルやグロスブラックの加飾、Rrバンパーのエキパイフィニッシャーも専用デザインだ。ホイールも切削加工が廃止されて(!)黒一色に。内装は赤ステッチや赤アクセント加飾とに留まり、ド派手なエアロとかインチアップだとかそういった差別化のための差別化にお金を使っていない点が好ましい。

しかし、ネガティブな印象を持ったのはグリル開口の空力上抜きたくない部分の穴埋め部の処理が下手な事だ。ただ埋めただけという感じで、実際の穴あき部との見栄え上の差が激しいのは高額な車としては残念である。例えば欧州ブランドの車はこういうところにも桟の立ちを高くしたり、シボのかけ方や部品分割を工夫している。これは他のホンダ車でも共通した不満点であり、コストを最優先にした結果だと思われるが、車の顔に関わる部分なので意識を高めて欲しい。



シビックRSは貴重なMT派のために真剣に考えられたMT車だ。トヨタもカローラにMTを設定していたが、非力な走りとシフト位置の悪さなど適当に作ったMTを引っ込めてしまった。マツダはマツダ3にMTを設定しているが、昨今のマツダはディーゼルやMTに対して冷淡で従来よりも強く効率を気にしているようにも映る。

そんな中でMTの基本機能に改良を加えて、普通に乗れるシビックRSの存在感は大きい。弁護のしようが無い価格設定を一旦脇に置いておくと我が家の有力な買換え候補の一つとして気になる存在になった。(だからといってポンと541万円も払う余裕が我が家には無い)

最近の私は毎朝の通勤経路で颯爽と右折してくるシビックRSとすれ違う。30代くらいの若い人が通勤に使っているようだ。毎朝「良いクルマに乗ってますね」と心の中で声をかけている。そして「頑張りましたね」と彼の決断を労ってしまう。

クルマの内容だけなら4~4.5★でも良いと思うが、足元を見た価格設定があんまりだ。RSの最終評価は★3だ。惚れ込んだ人は買って後悔はしないだろう。
Posted at 2025/08/24 00:58:33 | コメント(1) | クルマレビュー
2025年08月19日 イイね!

愛車と出会って9年!

愛車と出会って9年!8月19日で愛車と出会って9年になります!
この1年の愛車との思い出を振り返ります!

■この1年でこんなパーツを付けました!
中古スタッドレスつき純正ホイール

■この1年でこんな整備をしました!
ワイパーブレード交換
ドア水没対応
E/Gオイル+フィルタ交換
助手席レジスター交換


■愛車のイイね!数(2025年08月18日時点)
350イイね!

■これからいじりたいところは・・・
現在、主治医の工場にお泊まり保育中。

■愛車に一言
お疲れ様です。あっという間の9年です。兼ねてからやりたかったことが、実現しようとしています。今は見守るだけですが、また楽しく走らせたいです。

少しでも気持ちよく、長く乗れますように。

>>愛車プロフィールはこちら
Posted at 2025/08/19 00:45:49 | コメント(2) | トラックバック(0) | RAV4
2025年08月12日 イイね!

トヨタ博物館企画展「クラウン70周年記念展」後編

トヨタ博物館企画展「クラウン70周年記念展」後編~公式紹介文~
「クラウン」に対してどのようなイメージがあるでしょうか?

クラウンの原点には豊田喜一郎の「大衆乗用車をつくり、日本の暮らしを豊かにしたい」という想いがありました。 誕生から今年で70年。 国産最長寿の乗用車として16代にわたり続いています。

今回の企画展では1955年の販売開始から現在までを創業期・成熟期・変革期に分け、全16代の車両でご紹介いたします。
これまで決して平坦な道のりではありませんでした。なぜ70年生き続けているのか・・・時代によって変わっていく「日本の暮らし」に合わせて「クラウンらしさ」を追い求め、「継承」と「革新」を繰り返したクラウンの開発の歴史を知っていただければと思います。


前編はこちら

12代目トヨタ クラウン GRS182型(2004年)

2003年末、クラウンは12代目に進化しました。先代を引きずらず今度は「革新」の濃度を高めました。「伝統とは形骸を継ぐものにあらず。その精神を継ぐものである」というロダンの言葉に感銘を受けたチーフエンジニアは「ZERO CROWN」という旗を掲げ、ゼロからのスタートという気概でクラウンを一新させます。



P/Fから一新され、コンパクトで搭載性に優れるV6に切り替え、「静から動への変革」を体現するかの如く従来のクラウンから跳んだスタイリングになりました。従来のクラシカルなセダンスタイルからビッグキャビンを隠さずに凝縮感のあるスタイルへと変貌を遂げたのです。

そしてアスリートとロイヤルの2本立てで遅れてマジェスタがデビューしています。いずれも運動性能レベルを引き上げたのは「装備への不満はないが、スタイルと走りが不満」という顧客アンケートに基づいたものでした。

イメージリーダーは遂にアスリートになり、ロイヤルはその標準車としての立ち位置になりましたが、ロイヤルサルーンGの豪華な後席アメニティ装備やクオーターのエンブレム、シートバックグリップなどクラウンらしさを残す事も忘れていませんでした。

全てV6となったE/Gは全てストイキ直噴となり6速AT/5速ATが組み合わせられました。シャシもトレッドを外に出すとともにRrサスはマルチリンクが採用されたうえ、モノチューブダンパーやラックドライブEPSを採用するなど進化を果たしました。冷たく言えば、ゼロ・クラウンは、マークII改めマークXとコンポーネントを共通化した構成ですがそれでもクラウンらしく見せる技術はなかなかのものでした。



私が丁度免許を取得して数年の頃のクラウンでしたが、たしかに20代の若者にとってこのクラウンは現代的でカッコ良く見えました。カタログに初代が出てきたりしても「伝統を維持しながら革新を求めたんだな」と比較的好意的に受け取れたのです。当時の私は両親のライトエースノアに乗っていたので全く縁がありませんでしたが、同級生で代々クラウンを乗り継いでいた家がありました。同級生は「僕も免許とって父さんの車に乗るから、意見も聞いて!」と主張し、ちゃっかり白いロイヤルサルーンから白い2.5アスリートへの代替を果たしています。

この若い人が乗っても「借りてきた感」が無いスタイリングと従来のロイヤルサルーン的な味わいを残す事は大変難しい仕事だと思いましたが、比較的うまくやったと思います。競合のセドリック/グロリアも2004年から光景のフーガに社名変更されました。スカイラインのお兄さん的な立ち位置はまさしくマークXとクラウンの関係そのものでしたが、名前を変えなかったスカイラインとクラウンが2025年現在も残されたあたり、高級車にはそれなりのネームバリューが必要というエビデンスの一つになっているのかも知れません。

さて、ゼロクラウンの試みは成功したのでしょうか。調べてみるとゼロクラの国内販売台数は33万台でした。つまり先代を2万台下回っているのです。調べてみるとクラウンは2004年に12万台をピークに下降の一途を辿り、2007年には5.8万台程度までほぼ一直線で下降していきます。長年のユーザーでゼロクラウンについて行けないと判断した人や、従来クラウンを買っていたような層がミニバンやSUV、輸入セダンを買っているのかも知れません。



しかしトヨタはちゃんと手を打っていたのです。それは中国での現地生産と販売でした。2005年から中国で生産され、初年度3万台、以降4.2万台、5.4万台としっかりクラウン全体の販売量を支えました。それまでのクラウンも細々と輸出されてきましたが、中国は1964年まで輸出されていたので再び自動車先進国日本(当時の印象)の象徴的な高級セダンが再発売されるとなればセダンがメインの中国で受け入れてもらえたということなのでしょうね。かくして必要だったP/Fの統合もブランドの維持も果たすことができました。

13代目トヨタ クラウン GRS200型(2012年)
2008年、セダン市場が縮小する中で一応は成功作となったゼロクラウンのキャラクターを継承する形で13代目クラウンがデビューしました。私の周囲ではゼロクラの次だからイチクラだよね?という人が居て私もイチクラと呼んでいるがなかなか浸透してません(笑)。

全高を維持しながら全長を全幅を拡大。機械式駐車場の要件ギリギリに迫るサイズ感ですが、それでも超えてはいけない一線はギリギリ超えていません。先代を継承しながら、各部が高級車らしくブラッシュアップされています。個人的にはAピラー前端のドアベルトラインモールとぶつかる角部があるのですが、ドアミラーをドア付けにすることで気流を整えて空力性能と風切性能を向上させています。ドアフレームのSUSモールとドアベルトラインモールのSUSの繋ぎは意匠上処理が悩ましいのですが、13代目クラウンはドアミラーが無くなったことでドアガラス昇降のために必要な三角パッチを設定し、そこにSUSモールを仕込んで繋げるというとてもお金のかかった処理を行いました。



走行性能も更に引き上げられていますが、安全性能も一気にレベルアップしました。加速時のスリップを制御するTRC、制動時のスリップ(ロック)を防ぐABS、旋回時のスリップ(スピン)を制御するVSCによって備えは万全に感じますが、これらは限界を迎え、事故に繋がると車両側で判断した場合にシステムが作動する仕組みです。

クラウンではVDIM統合電子制御システム)を採用しました。VDIMにより走行限界になる手前からブレーキ・E/G・ステアリングを制御する事で限界に近づかない、あるいは安全デバイスの制御をシームレスに動かすことで制御を加えつつ自然にドライバーが狙ったラインをトレースできるといいます。この様な黒子に徹した高度な装備は他にもNAVI AIシフトに加えて地図と連動したサス制御を追加するという機能もありました。

高齢化したドライバーのための運転補助として安全装備充実はめまぐるしく、LKAやACC、道路線形に合わせた照射を行うAFSやドライバー監視型プリクラッシュセーフティなど2025年の目線でも高度だと思える装備が採用されました。その上で先代で不評だった突き上げを減らすため乗り心地改善が図られています。

そして最大のトピックは全面液晶メーターを採用したハイブリッドです。先々代で3Lのマイルドハイブリッドがありましたが、今回は3.5LのTHSでレクサスGS450hと同じシステムです。モーターで走行出来る範囲を拡大するためFR専用の2段変速機を備え、15.8km/L(10・15モード)という驚異の2Lクラスの燃費性能とシステム主力345psという4.5Lクラスの加速性能を両立しています。電動車らしい静粛さを求めてこもり音を逆位相の音を流して無効化するANCが採用されているあたり、元NV技術者だったチーフエンジニアのコダワリが生きているかも知れません。

ちなみにこのシステムの泣き所は実用燃費で雑誌市場などでは10km/Lを切るという有様でした。もっとも当時はプリウスであってもカタログ燃費との乖離が大きい時代でした。特にクラウンは方便のためのハイブリッドであり、暴力的な加速を楽しむV8の様な存在でした。

またマジェスタは4.7LのV8を積みラジエーターグリルの中央には王冠マークではなくトヨタマークが着いていました。レクサス店発足に伴い、セルシオのポジションが丸っと空いてしまった事から将来的にはクラウンの名前が取れてマジェスタがクラウンの上級車種として独立するのでは無いかという噂も出たほどです。

とにかくコストが掛かっているという感じでは流石クラウンという感がありましたが、実はその分車両価格は高額化していました。

例えば過去3世代の発売直後の開始価格(消費税無)を比較しました。
1995年ロイヤルエクストラ2.0:275万円
1999年ロイヤルエクストラ2.5:310万円
2003年ロイヤルエクストラ2.5:315万円
2008年ロイヤルサルーン2.5 :350.5万円

なんと85.5万円(11.3%)も高くなっていました。確かに13代目からはロイヤルエクストラが無くなっているのでロイヤルサルーンで比較するなら、2003年ロイヤルサルーン2.5:338万円ですから、12.5万円(3.7%)の値上げです。

試しに厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると2003年の大卒初任給の平均は20.13万円、2008年は同額の20.13万円なので内容が充実しているとは言えども購入価格は確実に高くなった訳です。



ハイブリッドは税込619万円という高価格には驚きを与えました。廉価版のスタンダードパッケージですら税込595万円なのですからもうV8マジェスタの領域に踏み込んでいます。

この頃はなんと言っても「団塊マーケティング」全盛の時代だったのです。これはマークX Zio感想文で取上げましたが、当時流行った消費トレンド予測の一つです。日本の消費社会を支えた団塊の世代の定年退職時期を迎え、豊富な退職金によって高額品の消費が進展するというトレンド予測です。当時はまともにこう言った願望がメディアで語られており、自動車業界もそれに乗っかろうという企画が散見されのです。

「退職金でひとつクラウンでも買ってみるか!」という消費を期待してイチクラが企画されたと私は推測しています。結果、内容が充実していると自負したとしても、ターゲット層は過度な贅沢をせず、「背伸び層」もついて来づらい価格設定だったことから販売的に苦戦します。

クラウンのイメージリーダーは3LのロイヤルサルーンGかも知れませんが、実際は2Lの最廉価仕様も販売に貢献していました。というのも、マークX(マークII)から背伸びをしてクラウン・ロイヤル系の安いヤツを買おうという人が一定数存在したのだと思います。マークXは若向き、クラウンは比較的フォーマルだったので棲み分けができ、ある意味でマークIIのお客さんを社内で奪うことでクラウンの台数を確保していた面もあったはずですが、今度の13代目は少し上級を意識しすぎた感じがあります。

特に慌てたのはハイブリッドにで特別仕様で装備を落として価格を下げにかかります。そもそもの開始価格が595万円。スタンダードパッケージと言いつつ、大まかに外装加飾が減ってファブリックシートに変わった程度でしたが、1年後に低周波ノイズを逆位相の音で打ち消すANCを廃止、あるいは先進安全装備を常識的なレベルに控えるなどしたスペシャルパッケージ(540万円)を発売しました。

マイナーチェンジでハイブリッドはアスリート風の外装をロイヤル系に戻したのは少しでも法人需要に応えるため。個人ユーザーを意識したアスリート風で躓いたために、再びフォーマル需要に救いを求めたのです。後期型では540万円の標準からPKGオプションで上級・オーナー向け中級仕様を設定しました。

こんな調子で比較的楽観的だった13代目クラウンは、初動こそゼロクラウンを上回ったのですが、以降の落ち込みが激しく明確に苦戦します。国内販売台数は約21万台。セロクラウンの36%減という販売台数は販売価格アップで収益性を上げたとしても苦しい状況だったでしょう。

先代から始めた中国市場が販売を後押しします。2010年には日本の販売を抜く程の成績を収め、2008~2012までで日中合わせて39万台を確保しました。経済成長著しく、伝統的なセダンに対するステータスがあった当時の中国は日本のクラウンを大いに助けたと言えます。現地生産するなら日本にメリットがないのでは?という指摘もあろうかと思いますが、開発行為自体は日中共通要素が多いのでグローバル(=日中合計)での生産台数が多いという事は存続させる意味では重要だと思われます。

良いものを作り、安く売るという姿勢だけでは企業活動に限界が来るのですが、
ブランド力を傘に「商品力を上げて高く売る」というやり方はクラウンでは通用しなかったようです。日本国内で相当のブランド力を持ったクラウンであっても市場が持つ相場観というものがあるようでそこから逸脱するような企画は目論見通りいかないという事なのでしょうね。

商品として盛りだくさんの力作だったのでトラブルの心配がない年式の浅い中古車を買った人は結構楽しめたのではないでしょうか。

14代目 トヨタ クラウン AWS210型(2013年)
2012年、クラウンはついに14代目へ進化しましたがその発表会は驚きに包まれました。さかのぼること3年前の2009年に豊田章男氏が社長に就任しました。リーマンショック直後という厳しい環境の中、「もっといい車づくり」をキーワードに掲げていました。

クラウンは先代の背伸びし過ぎた?企画から現実路線に揺り戻しがあり、特にハイブリッドを従来の3Lに代わる主軸に2.5Lハイブリッドを据えてニーズに対応しました。先代の540万円というスタート価格を税込410万円にまで下げることに成功しました。大きなトピックはこのTHSに組み合わせられるE/Gが4気筒になったことです。上級グレードに4気筒E/Gが搭載されるのは2代目以来と言えます。新開発された2AR-FSEはE/G単体では178psを発揮しますが、モータを合わせたシステム出力は従来の3Lと同等の220psを確保しつつ、JC08モードで23.2km/Lという低燃費を誇りました。従来のハイブリッドは高出力でしたが日本の条件下ではE/G出力が過剰なため、燃費を出すためにはせっかくのパフォーマンスを封印しながら修行の様に走ることになりますが、新型では排気量ダウンとそれに伴う燃費最良点多用による燃費向上という実利を得ることができます。ただし、4気筒になったという事実に対しては慎重に対策され、バランスシャフトをはじめとする対策が織り込まれています。理屈上の話にはなりますが、発進時はEV走行ができるため、起動時にNVで不利になる低回転域(トルク変動大きい)を使わず、二次成分はバランスシャフトで相当に良化させることが可能になります。

一方、エントリーモデルとして2.5LのV6は残され、最廉価のロイヤルで税込353万円となりました。このロイヤルグレードではオーディオレスやマニュアル式チルテレやサイドエアバッグ未装着などなかなかの漢仕様っぷりに驚きましたが、意外と街中で見かける仕様でもありました。



ユニットの話を先行させてしまいましたが、私にとってのクラウンの驚きはとにかくフロントマスクにありました。ロイヤルは凸型、アスリートはピカチュウのしっぽの様な稲妻マークの様なグリルのカットラインでした。これはアッパーグリルとロアグリルを一体化させたデザインなのですが、とにかく異質に見えました。確かにアウディのシングルフレームやVWのワッペングリル(ブラックアウト仕様)の様な類似例はありますが、とにかくえぐいなと私は思いました。美しいだけのデザインは埋没してしまうと考えたのかもしれませんが、比較的常識的なリアビューや、ウエッジシェイプながらも太いCピラーが安心感をもたらすサイドビューと比べると、かなり強烈な印象を残しました。ロイヤルは高級車らしくフードセンター付近が持ち上がりグリル自体の高さが目立ちます。一方でアスリートはピカチュウグリルが目立つもののフード自体は低く抑えて代わりにレリーフが入っていました。このフロントマスク(特にロイヤル)は私自身は最後まで好きになれませんでしたが、話題にはなりました。

ゼロクラウンを保有していた友人宅ではこのクラウンに買い換えました。当時、息子である私の友人は新車でCR-Vに乗っておりクラウンにはほとんど乗らなくなったのですが、意外とアスリートが良かったらしく2.5HEVのアスリートSを選びました。私も一度乗せて貰ったことがありますがまとまった時間運転できたので燃費グラフがノコギリ波形になると言うことを学びました。

忘れてはならないのが発表会に展示したピンク色のクラウンです。これは大きな反響がありました。当時の企業CMは有名タレント達がドラえもんの世界を演じており、クラウンのピンク色は「どこでもドア」をイメージしたカラーリングでした。後に限定販売されただけでなく、場末の中古車ショップでは適当な中古のクラウンをピンクに塗って売ったりもしていました。トミカにもなったことから「ピンクのクラウン」はプロモーションとしては成功したのだと思います。



これも高貴で上品なクラウンというイメージを打ち壊すことはできたのかもしれませんが、同時に何か大切なものも壊してしまったような気がしないでもありませんでした。それを第三者が責めることは簡単でしょうが溺れる者は藁をも掴むというように開発陣は必至で答えを模索していたのでしょう。

また、高齢者が多いクラウンのユーザーのために踏み間違い事故を防ぐための安全装置「インテリジェントクリアランスソナー」や「ドライブスタートコントロール」をいち早く採用した点は流石だと感じます。運転支援機能は特に高齢ドライバーには有効になるでしょうし、こうした機能を地道に開発していることもトヨタの強さではないでしょうか。

その甲斐あって国内販売は23.6万台と先代を上回ることができたものの、今度は中国市場の下支えに頼れなくなってきます。それでも2017年までは右肩上がりで年間平均3万台弱の販売をしましたが、この世代を最後に2020年に生産を中止ししてしまいました。遂に中国でもSUVやミニバンが台頭してきてしまったのです。



ちなみに従来のV6と組み合わせた3.5LのTHSは、実質的にロイヤルのストレッチ版になったマジェスタに搭載されて有効活用されています。

「日本生まれ、日本育ち。」の話

15代目トヨタ クラウン ARS220 型(2018年)
2018年、ついに歴史的な15代目クラウンがお披露目されました。プレスリリースに「新たなモビリティライフを提案する、初代コネクティッドカー」と書かれている通り、コネクテッド機能が強化され、車載通信機を標準搭載し、コネクテッド機能を充実させた事がアピールされました。

唐突に出てくるコネクテッドというのは、通信機能を持たせることで利便性を向上させ、よりパーソナルな存在に近づくという表向きのメリットも語られていますが、メーカー側にとってもメリットが大きいのではないかと考えられます。例えばDCMを通じてすべての車両の状態を把握することができ、それによって故障が出たときの使用状況が終えたり、ユーザーの実際の使い方が調査できたり、品質向上のデータ収集に大いに寄与するはずです。こうした使い方はテスラがすでに活用しており、品質向上だけでなく通信を使って性能向上をさせるなどの新しい可能性を見出していました。

自動車業界の競争が苛烈になっていく中、新興メーカーに対してアドバンテージを持つためにトヨタもコネクテッドカーを最大限広めて情報を収集しておく必要がありました。

新しいクラウンはレクサスLSが使うようなTNGA-Lという大きなP/Fを採用し、サイズも全幅を変えず全長を伸ばしました。これは大きくしたかったというより、そうせざるを得なかったことが理由だと思われます。FR車が減っていく中で国際サイズのフラッグシップとなるLSとP/Fを共用化せざるを得なかったのです。こうした動きは他社(例えばBMWの3/5/7シリーズ共通化)でも見られました。

従来のロイヤル・アスリート・マジェスタという3シリーズをマジェスタ級のサイズでもっとも販売的に有利だったアスリート的なニュアンスで統一してしまったのです。この結果、2.0ターボ・2.5THS・3.5マルチステージTHSという性格の異なる3種類のユニットが同時にラインナップされました。

しかしながら最も大きく変わったのは、純日本的な価値観を持った端正な高級セダンであることを捨てて日本の高級セダン市場でクラウンの座を脅かしづづけるジャーマン3を主とした欧州プレミアムブランドを「追いかけること」に活路を見出してしまったという精神面が大きいです。



例えば従来の太いCピラーを改めてクーペ風の6ライトに改められましたが、これは欧米ブランドセダンのトレンドを意識した様です。それ以外にもあらゆる面で「クラウンネス(らしさ)」に対して否定したかのように映りますが、雑誌にて行ったチーフエンジニアへのインタビューによれば「私個人の思いは“最初から全部変えてやろう”でした」とのことで、どうにも「変えてやることが目的化」しているようにも感じられました。

当時のトヨタ内のトレンドもLSを6ライトにするなど確かにセダンをクーペ化する流行があったのだろうと思います。例えば北米市場でもセダン市場は縮退傾向にあり、マリブやアコードがCピラーを傾斜させ6ライトにしています。

後席を重視するフォーマルな用途では太いCピラーでゲストの顔が隠れるようにすることで車外の情報を適度に遮断する狙いがあり、それがクラウンのアイデンティティーになっていましたが、15代目では簡単にそれを捨てました。それはもっとパーソナルな、ドライバーズカーにしたかったという狙いがあったようなのですが、そのためにパトカーとかタクシーとか社長さんの車というイメージを捨てるべきだと結論づけました。パトカー需要に対して新型はトランクスペースが要件に足りないため、先代をパトカー専用に残した他、タクシーイメージから離れたくて後席ドア開口のタクシールールを敢えて逸脱したという噂もあるほどです。(パトカーは要件を改定して後にパトカー化されました)

ドライバーズカーであるためには、優れた動的性能が必要です。それは会社の方針に沿っていました。だからこそTNGA-Lという本来クラウンマジェスタ級のオーバーサイズなP/Fを適用することで体幹を鍛えたのでしょう。(LS以外にこのP/Fを使う車種が少なく、減価償却を考えると選択肢が無かったのかも)

しかし、そのしわ寄せはボディサイズに向かいます。全長4910mm、軸距2920mmと先代ロイヤル系よりそれぞれ15mm、70mm大きく、マジェスタと較べれば-60mm、-5mmと大型化しています。その諸元でドライバーズカーらしく全体的にキャビンを後ろ寄りに設定して運転席を中心に後退させたのは良いのですが、後席を完全に切り捨てることができずにそのままキャビンが後ろにずれています。しかも、車幅はクラウンの縛りを遵守したために妙に細長く、余計に間延びして見えてしまいます。

そもそも、欧州ブランドに対抗したかったのになぜ北米方面のトレンドに乗っかったのでしょうか。ターゲットのジャーマン3も6ライトもあれど、どれも明確にラゲージを残すことで「セダンが好きな人」のためにスタイリングされています。ドライバーズカーにするなら、もっとキャビンをタイトなイメージの方がより良かったかも知れません。例えばBMWはF10系の5シリーズと全長や軸距が近しいですが、マイスターキンクのお陰もあり決して間延びして見えません。

このスタイルは更に実用性が優れるわけでもなくラゲージスペースそのものの容量はセダン並に確保できていても開口部が狭く、横穴式住居のような使い勝手なのです。セダンの良さはラゲージドアを開ければ真上からスーツケースなどの荷物を載せられることでしょう。狭いところに慎重に入れて、屈んで押し込んだり引き出したりという姿勢は美しくないばかりか人間工学的にもよろしくないのでは無いでしょうか。

確かにクラウン像をぶち壊して変わったと言えますが、それがドライバーズセダンらしくなったのかと聞かれると私は首をかしげます。太いCピラーに王冠マークが付いたゼロクラのアスリートの方がよっぽどドライバーズセダンに見えます。

興味深いことに15代目クラウンはニュルブルクリンクで走行試験を行い、そこで走りを鍛えたそうです。欧州への輸出予定は無くとも、目指しているジャーマン3のテイストに近づけるために動的性能を徹底的に鍛えたかったのでしょう。

最新の地図情報が入手でき、LINEと連携しればクラウン(AI)と楽しくチャットができる、などと嬉しさが何ら伝わらないコネクテッドカーを売りにしつつ、会社の都合でボディサイズを拡大し、ニュルで鍛えたシャシーを誇り、デザインは海外のトレンドを輸入した15代目クラウン。

随分な力作と見えて販売価格は2.0LターボのBで税込み460万円。先代より100万円以上値上げをしました。販売の中心となりそうな2.5HEVおよそ520万円~580万円。先々代モデルなら3.5LのTHSが買える価格帯ですが、サイズアップやコネクテッドなどに加え、レクサスLSと同じ新開発P/Fを採用したという点が販売価格に相当効いているように思います。

一体誰のためにこのクラウンを作ったのでしょうか。潔く従来のエンブレムを金色に変えてレースの半カバーを愛するような高齢者に別れを告げました。だからこそ「クラウンマスト」は要らなくなったのでしょう。変えるために変えたクラウンと名乗るDセグのクーペセダンは新しい顧客層を開拓し、輸入高級車に奪われたシェアを取り返すことができたのでしょうか。

どうやらそこにお客さんは居ませんでした。

この世代では中国の助けも無く、国内市場だけで勝負をしたのですが、日本のお客さんのために行ったことは車幅を1800mmに抑えただけ。その他は「とにかく変えてやろう」が先走り、日本のクラウンファン或いはジャーマン3を検討する若年富裕層の琴線に触れる要素は無かったということになります。

失敗が明確になっても以前のトヨタと違いクラウンに治療を施すこと無く、不評だったダブルスクリーンを物理スイッチに変え、液晶ディスプレイを大きくし、指を挟みそうなカップホルダーを一般的な凹形状に改め、各種装備を削ぎ落とした以外に何もしませんでした。

9代目クラウンの1年10ヶ月のマイナーチェンジや、3年8ヶ月で全面改良した5代目クラウンのことを考えると、15代目の処置が明らかに過去と違うのです。自分たちでも何故ダメだったのか自己分析が難しかったのでしょうか。クラウン像を変化させるにしても、従来だと慎重かつ緻密に行われていたと思います。

端正なセダンに見える「セダン」を出しながら、ファストバックスタイルを別ラインで出して丁寧に様子を伺うべきでした。そして、本当に左ハンドル車を輸出し、欧州車に殴り込みをかけるべきだったでしょう。欧州で一定の評価を勝ち取ってこそクラウンがニュルを走る意味も生きるし、そこで売るなら欧州のトレンドを追いかける理由も納得されやすいのでは無いでしょうか。

いずれにせよ、かつてのトヨタは失敗を失敗と認識し、負けを認め正しく処置する事が過去には出来ていたのに、それができていない。この点だけはどうしても腑に落ちません。何が真のカイゼンを阻害したのか。

クラウンには元々日本で長く信用を勝ち取ってきた老舗としての価値がありました。古くさいと言われようとも、急に神社仏閣がステンドグラスやレンガ積みのシックな建築にはならないわけで、ちゃんとした伝統はリスペクトされるはずなのに、作り手が全くその価値を理解していないとしか思えません。

彼らが意識するアウディもセダンのラインナップを守りながらスポーツバックなど応用車種はチャレンジをしていると思います。それはBMWのグランツーリスモなどでも同じでしょう。老舗和菓子屋が別ブランドを掲げて洋菓子に挑戦する事例もあるわけですが、和風の高級セダンであることが支持されていたはずのクラウンをいきなり輸入車コンプレックス丸出しのクーペセダンに変えたのです。

トヨタは元々競合を自分の土俵に誘い込んで倒すのが勝ちパターンでしたが、なぜ誘殺灯に吸い寄せられる虫のように相手の土俵に丸腰で歩いて行ったのか。自動車開発の頭脳が集まっているはずのチームが行った仕事にしてはピュアでイノセントに過ぎました。

この15代目を決定的にぶち壊したのは2020年11月11日、中日新聞の「クラウンセダン生産終了で調整 トヨタ、22年に新型投入」という記事でした。誰がリークしたのか分かりませんが、決定的でした。この新型というのがスポーツタイプ多目的車(SUV)に似た車形の新型車として2022年に投入すると言うことでトヨタがセダンに匙を投げたという印象が広まってしまいました。

実際に日産はスカイラインをいつまでも全面改良できず、マツダもマツダ6を放置してモデル廃止してしまいましたので日本ブランドのセダンというのは大変苦しい状況に居たことは確かです。身内でもレクサスISも細々と命を燃やし、LSはクーペスタイルになったことに加え、高価になりすぎてコケてしまい、ESが一手にセダンを背負う事態になっています。苦しいのはクラウンだけではないのですが、多少勝算があったクラウンだけは妙な逆張りをせずに真っ向勝負をして欲しかったと思います。

15代目クラウンの国内販売台数は2022年8月までの4年2ヶ月で約12.6万台余り。Wikipediaによれば初代クラウンの生産終了までの7年間の販売台数は15.3万台余りなので、15代目クラウンは歴代でもっとも生産台数が少ない世代のクラウンでした。

こうして現代のカンブリア爆発的「クラウン群戦略」なる現代へ繋がっていきます。クラウンはトヨタブランドのEセグメント、という捉え方で車を作ってはいけないと思います。グローバルな企業ゆえに日本だけを見るのは難しいと思いますが、例えばクラウンをFFベースで作るとしても、フォーマル用途に使える上品さと、国情に合わせたボディサイズを持つべきだと思います。

モノコックになっても、V6になってもクラウンと思わせるクルマ作りをしてきたのだから、本当は横置きベースでもそういうクラウンが作れたはずですし、それこそプロポーションの良いSAIやFCHVのクラウンコンフォートみたいなクルマを実現すべきだったと思います。もっと安易にカムリをベースに「マークIIクオリス」的魔改造でクラウンのようなものを作っても良かったと思います。

パトカーや個人タクシー、公用車などに使ってもらえて純和風セダンの世界を盆栽的に追求してくれても良かったと思います。そんなセダンが8代目クラウンのように売れるとは誰も思わないですが、間違ってもニュルでもないし、リフトアップでも無いでしょう。

16代目 トヨタ クラウン
2022年以降、先代までのクラウンの15代に亘る歴史を徳川幕府になぞらえて16代目を明治維新だと表現しました。もはや現代の進行中の事象であり、断定的な言及を避けるが日本的な価値を持った日本人のための高級乗用車クラウンという存在に目を瞑り、とにかく名前を残そうしているのだと私は感じてしまいます。

メディアも最大限に使って一生懸命ブランドを盛り上げようと最大限の努力をし、慌てて集めてきたレンタル家族のような派生車(雇われ外国人?)をまとめて群戦略と呼んでいます。販売チャネルを統一したのにクラウン専用の販売拠点(鹿鳴館?)をゼロから立ち上げるに至りました。文字に残ってしまうみんカラのブログゆえ、様々な趣向の方が居ることを尊重してこれ以上「彼らの明治維新」に関してあまり何も言いたくもありませんが、先代の不評点を正しく直さないといつまで経ってもこの混乱から抜け出せないのではないでしょうか。

今の私は本当のクラウンがいつ出るのかという一点に興味があります。クラウンの精神を正しく理解し日本人のために作られた高級車。決してセダン・後輪駆動・ドライバーズカーで無くても良いから必ず日本で使う上でもっとも便利に使える機能・性能を備えた高級車であって欲しいですね。

少し古い映画ですが「ジュラシックパーク」のように、この企画展に展示されているクラウンたちのDNAを正しく分析し、いつの日か技術の力でクラウンの精神を持った新型車を復活させてくれたらそれは素晴らしいだろうなと期待してしまいます。

既にマークII営業車のシャシーをベースにクラウン的なものを再現した最後のクラウンセダンで一度それをやっているのだから決して不可能では無いはずです。名前を残す事もやれば良いですが、その精神を残した自動車の開発も日本のために実施してほしいというのが内情も何も知らない素人の意見です。

企画展まとめ

企画展で歴代のクラウンを一気に見せていただきました。海外メーカーとの提携に頼らず、日本人の力で日本人のための乗用車を作ったという点がクラウンの原点であり、以後は日本らしいフォーマルな使い方もできるセダンとして世代を重ねましたが、日本の国力が上がるとオーナードライバーが増えて生産規模が上がり、いつしかフォーマルとパーソナルの対立に悩む事になりますが徐々にパーソナル思考を強めて欧州ブランドに近づいていった事が、並べてあるからこそ良く分かります。

会場に全ての車種が入りきらないということで模型を置いたり1階にもクラウンを置いた点も良かったですが、全体的に照明が暗いのと歴代クラウンの内装やリアビューもじっくり見たいなという点が数少ない要改善点でした。また、3代目クラウンは是非白いオーナーデラックスを置いて欲しかったですね。

このほか、年間パスポート保有者向けので初代クラウン同乗試乗会が開催され、抽選に当たった私は子供と初代クラウンに乗せていただいてきました。私は娘と後席に座りました。小振りな車体の室内は充分に広く、寛げますし足元も広いです。フロアに段差が無く乗降性は相当に高いです。室内はデラックスではないので決して豪華絢爛ではありませんが、乗用車自体が特別な存在であった当時の高揚感はひとしおでしょうね。



20km/h程度で走行していただきましたが、シートは平板で掴まるところもなく、意外にロールするため腹筋が鍛えられました。また、発進から定常走行でギアのうなり音が聞こえます。このあたりは悪路主体でNVや操縦安定性どころでは無かったでしょうから、当時はそれで良かったのでしょう。



それでもドライバーの腕も良かったのでしょうが不快なショックも無く乗り心地性能には気を使っていたという感じがします。

また、クラウンの他にマスターの走行披露もありました。独立懸架を持つクラウンのバックアップとして生まれ、たった一年でセダンは姿を消しましたが、欧州調のデザインは私はむしろクラウンより好感を抱きました。






やっぱり車というものは静的に置いてあるより、太陽の下で走っているときの方が美しいですね。

1Fエントランスに期間限定でマスターや4代目クジラのカスタムが置かれるなど少しでもクラウンの世界を楽しめました。




駐車場にも好きで乗っている感じのクラシックなクラウンも多数来館しており、
クラウンというブランドはまだ死んでいないと感じました。






・・・という訳で前後編にわたってお送りしてきましたが、後半の方が私がリアルタイムで見てきた記憶や体験が付加されることでクラウンが抱える苦悩と15代目の失敗から立ち直れない焦りを感じました。その方が人間臭いとも言えますし、これが起承転結の点だとすれば素晴らしい結に相当する次期型をじっくり時間をかけて開発してほしいと思います。

Posted at 2025/08/12 16:50:02 | コメント(3) | トラックバック(0) | イベント | クルマ

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