
水温センサーの取り付け位置が悪くて制御がおかしいトラブルなんかもありましたが、付け直して正常動作する様になり、試験走行なんかもできたので、今の時点での電動ファン化の感想を書いてみます。
あくまでも2016年2月の冬の時点の話ですので、今後の真夏ですとかの感想はまだ書けません。それについては夏を待つしか無いですね。どうなることやら。
カップリングファンに補助電動ファンも外して、純正のファンは全て撤去、その後に社外品のファンを搭載してみたわけですが、エンジンをかけて最初に気付いた事は、エンジンの騒音が減ったという事でした。
純正のメカニカルファンは、ファンクラッチを介して水温によってある程度回転数が変わるとはいえ、ベルト駆動で動く構造ですので、ファンが回る必要が無い時でも常時ファンが回って風切音だのの騒音が出ています。最初からそういうものだと知っていれば気にしない事ですが、いざ無くなってみると結構な騒音が出ていたんだなと気づきます。
次に気づく事は、冷間スタート等のエンジンがあまり安定していない時の振動が、電動ファン化する前よりも大きく感じる様になりました。考えてみれば、メカニカルファンはファンクラッチとファンがベルトによって回っているので、ある意味ではフライホイールの様に回転を安定させて、回転の不整脈などの振動を抑えていたのかもしれません。今回はそれが無くなったので、全体的な出力やらレスポンスの向上とトレードオフで、振動などの安定性が劣っている印象が少しあります。
冷間スタートの時にはファンが一切動かないので、電動ファン化する前に比べて水温の上昇が早くなっています。暖機運転が早く終わるという点でメリットですね。
また、エアコンの内部圧力等で度々駆動していた補助電動ファンも撤去されたので、「カチッ、ブァーン…」と間欠動作する騒音もなくなりました。ファンコントローラーのオーバーライド機能を使って、純正での補助電動ファンの作動条件と変わらない条件で電動ファンが作動するように配線してあります。エアコンの圧力スイッチと水温による作動ですね。コレに関しては取り付ける電動ファンによって騒音が変わりますが、今回のファンは全開にしても元々のファンよりも静かな様で、今までのアイドリング時の補助電動ファンの間欠動作の騒音が気にならなくなりました。凄いぞDerale。じゃなくてファンの供給元のSpal。
もともとの補助電動ファンがなくなった事に対するエアコンコンデンサーの冷却能力については、電動ファン化による今回のファンでも十分に冷却できている様です。今まではプッシャーでしたが、吸引の際にしっかりと空気を吸い込んでいるので、以前より風量や効率は上がっていると思います
車両からの強制動作についてはパイロットランプで確認できるようにしてありますが、エアコンなどでちゃんと作動し、圧力スイッチが解除されればちゃんと止まるのを確認しています。肝心のエアコンの効きに関しては、夏場になってみないとなかなか体感できないのかな…。これについては夏場になったらまた触れてみたいと思います。
動き出してみると、クリープでの力が強くなった気がします。また、出足が若干軽くなり、走行中は以前よりも車が静かに滑らかに走っている感じがします。もともとエンジン補器で抵抗となっていた物が無くなったので、その分の出力向上が体感できます。アイドリングすぐ上でもトルクの増加が分かりますが、2000RPMで巡航中に加速するといった動きでも以前よりも出力向上が感じられます。試験走行中に同乗していた友人と、「なんか高級車っぽくなったぞ!」なんて言いながら走ったりする程度には違いがありました。改造して運転している本人以外に、同乗者も気づいたのでプラシーボというワケではないみたいです。
で、今回は同時にエアポンプを撤去しているので、その分のエンジン本体軽量化によるレスポンス向上もあると思いますので、何処までの内容がどの程度影響したのかは、ちょっと分かりきらないところがあります。一つ一つ対照実験していないもので…。
またメカニカルファンとは違い、走行風での冷却が十分な場合にはファンを完全に停止する事ができます。この為に高速道路などで巡航している場合はファンが殆ど回らないといった事もあります。ファンシュラウド内部の圧力が強まった場合には、フラップから風が逃げていって、抵抗を抑えたりする工夫がしてあります。イマドキの車みたいですね。取り付けるシュラウドの形状次第なので電動ファン化に限らない話ではありますが。
電動ファン化のデメリットとして一概に言える内容ではないのですが、今回使用しているファンコントローラーのPWM制御のせいなのか、ファン駆動時にノイズ音がするという点があります。オーバーライドで強制動作させた時や、水温が上がってきた時などですが、ファン本体の風音などよりも微弱ではあるものの、「キュィイー」といった音がしています。
汎用のPWMファンコントローラーとして売られている製品なので、組み合わせるファンのモーターに合わせてPWMの周波数だとかデューティー比の適正化がされた商品ではありません。その点ではこのノイズに関してはしょうがない点かもしれません。
また、取り付けるファンモーターや制御方法にも左右されますが、メカニカルファンと違い、ファンの駆動のためにオルタネーターの負荷が大きくなります。そのために、強化品のオルタネーターへの交換か、最低でも純正新品のオルタネーターへの交換が必要じゃないかなと思います。また、オルタネーターの出力を上げたならば関連の配線も引き直す必要がありますね。
今回使用したファンコントローラーについては、ファンの駆動にリレーを使用しない制御方式ですので、突入電流がどうだのと言った問題も無いものですね。かといってこのファンコントローラーで既存補助電動ファンを使えるかというと、出力が足りなさすぎでうるさすぎですけれども。
信頼性に関して言えば、オルタネーター、ファンコントローラー、ファンモーターのいずれかが死んでしまうとオーバーヒート一直線です。高速道路で巡航していれば意外と水温は上がりませんけれども、街乗りならすぐに止めないと危険な状態ですね。メカニカルファンは構造がシンプルで、ベルトとクラッチが死ななければ機能しますので、信頼性という意味ではメカニカルファンに劣るかも知れません。
そのために今回の電動ファン化では、軽量化のメリットを捨ててファンモーターを2基使用しています。
肝心の水温についてですが、冬の首都圏の話になりますが、
基本的には85~90℃で安定しています。80℃以下の温度を狙うなら、恐らくローテンプサーモなんかが必要になってくると思います。最大冷却能力だけでなく、開弁温度なども関わってくる温度域ですので。
高速道路なんかで巡航中ですと、殆ど走行風だけで冷却できています。プッシャー側の補助電動ファン関連が丸ごと無くなったので、以前よりも走行風の取り入れが効率よくできるようになっています。また、エンジンアンダーカバーもぶった切って排気口を作ったので、以前よりも効率的に空気を入れて、排出する様になっています。一般的な速度域であれば、巡航状態で85℃あたりを示しています。
高速走行後の街乗りや、SAでのアイドリングではエンジン熱が一気に回るのか、一時的に95℃あたりまで水温が上昇しますが、すぐにファンコントローラーの方で制御が入って85℃あたりまで冷却されて行きます。冷却能力としては十分な様ですし、手動で強制動作させなくてもちゃんとファンコントローラーにて水温を下げるように機能しています。一安心ですね。よくある2ステージ制御のコントローラーではなく、PWM制御で水温調整を行う為に目標水温付近で行ったり来たりということも少ないようです。
水温を故意に105℃まで上昇させた後にオーバーライドをかける実験を行った所、すぐに85℃あたりまで冷却できたので、今回の冷却システムの冷却能力は問題なさそうです。オーバーライドなどでファンが強く回っている時にフロントグリル近辺に行くと、グリル前から強力に空気が吸われているのがわかります。補助電動ファンだけの時よりも随分強力なので、300Wファン2基は伊達ではないみたいです。あとは外気温40℃超えの真夏の環境下でも冷却能力があるかが、今後要確認ですね。
理想を言えば、急激な水温上昇に対して即座に適正な出力で対応して、殆ど水温が変化しないというのが望ましいのですが、汎用品のファンコントローラーと汎用品のファンの組み合わせでは中々難しいと思います。
今回使用したファンは市販品の中では強力なファンではありますが、ブラシレスファンではないのがちょっと残念な点かもしれません。大出力のブラシレスファンを、車両に合わせて適切なチューニングをしたコントローラーで制御するというのが良いんでしょうか。頑張ってファンコントローラーを自作して、PIDとかのチューニングをするのも楽しそうですが、いっそフルコン化なんかに合わせて後付ECUにまとめて制御させるのも良いかもしれません。冷却水の循環も合わせて考えると、行き着く先は電動ウォーターポンプになるんですかね。この手は言い出したらキリがないですね。
電動ファン化についてはもちろんデメリットもありますが、メリットも大きいものです。とは言え、元々電動ファンではなかったクルマを電動ファン化するという事で、それなりにお金に時間と労力が必要となります。今回自分が使った部品は日本国内で正規販売されていない物を個人輸入でアメリカから買ってきましたし、保証だ信頼性だというと中々難しいですね。
そもそも電動ファン化しないと水温が高くて乗っていられない様なクルマではなく、適切にメンテナンスされていれば神経質になる必要もないので、電動ファン化するしないについては趣味の話になるかとおもいます。寝板でクルマの下に潜り込むのが楽しい人なんかは良いネタになるかもしれませんよ?ちなみに新年のお隣さんへの挨拶が車の下からコンニチワでした。そういう人以外はお財布を握りしめてプロに頼むか、変なことはしないで普通にメンテナンスするのが良いとおもます。
長々と書いてしまいましたが、電動ファン化をやってみた感想としてはひとまずこんなところでしょうか。
電動ファン化について、取り付け作業と動作確認は一通り落ち着いたので、今後はフロントグリル廻りのエアスクープ廻りの検討と、夏場の性能確認あたりかなと思っています。
ファンの出力計代わりにアナログ直流電圧計なんかを付けてもいいですね。PWM制御だとデジタル表示の相性が良くないので…。