先日比較を行ったAP1のオーナーから,プロドライバーとの走りの比較をご要望頂きましたので,完全な第3者目線で比較をしてみます.
なお,残念ながらオーナーデータはベストラップのものがないので,サードベストくらいのちょっと物足りないデータでの比較になりますが,プロの1秒以内のタイムを出せるドライバーなので,きっと自分で補って読みとってくれるでしょう(笑).
さて,話を始める前に,まずこの日のAP1の状態に関して.
昨年このクルマにプロが乗られた時には,その完成度の高さを大絶賛し,セッティングが決まらずピーキーな状態だった当時のEF8とは「真反対のクルマ」とまで言われる程でしたが,この日は狙って施したセッティングが外れて,非常に乗りにくい状態だったようで,プロの技術をもってしてもコントロールに苦戦するクルマとなっていたようです.
まずは,その苦戦振りの一部始終をご覧下さい.
3つ目のコントロールは,さすがプロ!といった感じですね.
それでは,比較です(青:オーナー 緑:プロ).
1コーナー進入(1つ目の赤丸)
4km/h近くプロ(緑)の方が上回っています.この原因は,やはり最終コーナーの立ち上がり方にあるので後述します.最も大きな違いはホームストレートで4速に入れられるかどうかで,これが最後の一伸び違いを生んでいる気がします.オーナー(青)側で気になる点は終端速度が凸波形ではなく,凹波形になっている点で,レブに当たるのを嫌ってアクセルを少し戻しているのでしょうか?
また,一番大きなブレーキングポイントの差で,オーナーはオーバーステアを嫌って早めに開始しているのかもしれませんが,こんなに違います(上:オーナー 下:プロ).

(↑左上の信号の位置に注目)
1コーナー出口~2コーナー(2つ目の赤丸)
ブレーキをリリースするポイントは,ほぼ同じ.但し進入速度が違うのでボトムスピードも異なり,6km/h程度プロ(緑)の方が高いです.しかし,このプロの鋭い突っ込みにクルマ側が耐え切れず,一瞬オーバーステアが発生! すかさずプロはカウンターを当ててコントロールするのですが,これによってラインを外してしまい,2コーナーでクリップを外してしまいます.
一方のオーナーは,突っ込み過ぎず,オーバーステアが出ないように手前で抑えているので,ブレーキリリース後,きれいに向きを変えて2コーナーのインについています.結果,ラインが苦しくてアクセルを開けられないプロ(緑)に対し,躊躇なくアクセルを開けられるオーナー(青)の方が車速の伸びが良いです.この結果,あれだけ旋回速度に違いがあったにも関わらず,プロから僅か0.05秒しか遅れていません.
第1ヘアピン(3つ目の赤丸)
ここもブレーキングポイントに大きな差があります.画像でご覧頂きましょう(上:オーナー 下:プロ).

(↑縁石の位置を確認)
ブレーキングの開始が遅く,進入速度も4km/h以上高く,コース幅も目一杯使って走っているプロ(緑)が圧倒的な差をつけそうに思えるのですが,実は立ち上がり重視のラインで小回りしたオーナー(青)も互角の走りをしており,立ち上がり重視のラインで加速の良いオーナー(青)がそのままプロ(緑)に食らいついていく形となっています(タイム差変わらず).
第2ヘアピン
これが「アマには使えない技」なのでしょうか? 1ヘア~2ヘアの僅かな加速区間でプロ(緑)は2速→3速→2速とシフトチェンジし,少しでもタイムを削り取ろうとします(4つ目の赤丸).更にオーナー(青)よりもタイトにイン側に寄せてライン的にかなり苦しいはずなのに,あっさりと向きを変えて加速体勢に持ち込んでいます(5つ目の赤丸).この僅かな区間だけで,何と0.3秒もプロ(緑)は差をつけます!
バックストレートエンド
先程の2ヘア立ち上がりの差が決定的な差となり,ここから先は引き離される一方.グングン加速していくプロ(緑)に対し,オーナー(青)は全くついていけず,洗濯板手前のブレーキング時点で何と10km/hの車速差! タイム差も0.5秒まで拡大します.
最終複合コーナー
洗濯板でのブレーキングポイントはプロ(緑)と全く同じ.とは言っても10km/hも違う状態で同じな訳ですから,圧倒的にプロが突っ込んでいる事になります.また,減速度を見るとオーナー(青)の方がプロ(緑)よりも角度がキツく,強めにブレーキングしている事が分かります.この結果,早くインに寄せる事が出来るのですが,これはむしろインに寄せ過ぎで,ラインがきつくなってアクセルをなかなか開けられません.画像で見るとこれも明らかです.
(上:オーナー 下:プロ)
そして,この全開ポイントの違いが先程のホームストレートの4km/h差,4速を使える差につながっている訳です(最終的には1.1秒,プロに差をつけられます).
以上を纏めると,オーナーは,このAP1の挙動を知り尽くしているだけあって,2ヘアまでの前半区間では全くプロに引けを取りません.無理な突っ込みをせず,早め早めのブレーキングから丁寧に向きを変えて,しっかりとクルマを加速させる事でS2000らしからぬ安定した挙動を作り出し,効率良くタイムを稼いでいます.
しかし,車載で見ていても「苦しいなぁ~」と思う程,2ヘアのライン取りがマズく.ここから先でプロに圧倒的な差をつけられています.前半で良い勝負をしているだけに,後半のこの差は非常に勿体無いです.あとちょっとライン取りを研究すれば,かなりプロに迫る事が出来るのではないでしょうか?
その一方で,「アマには使えない技」と自ら仰る通り,2ヘア以降のドライビングは圧巻の一言で,FRを操れない私からすると想像を絶する世界です・・・.
それでは,最後にオーナー(上)とプロ(下)のアタックラップをご覧下さい.
Posted at 2017/12/14 23:04:43 | |
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