先日のTC1000で「
これが今の限界.これ以上は無理!」とこもりん.さんに伝えたら,これでも見て勉強しなさい・・・とtaka@黒インテ(元)さんのGK5のロガーデータを渡されました.
この日,takaさんは
朝一に走って自己ベストを更新されたそうなのですが,午後から来た私は入れ替わりとなり,実はご本人にはお会いしておらず,無断になるのですが(笑),takaさんなら許してくれると信じて勉強させて頂こうと思います.<(_ _)>
takaさんのデータは過去にも何回か頂いて比較・分析をやった事あるので,自分のデータと比較するのはいつ振りなんだろうなぁ~?と履歴を追い掛けてみたところ,どうやら今回が初のようでした.まぁ,あまりにもタイム差があり過ぎて,分析すると精神的ダメージが大きいので今までやらなかったんでしょうね(苦笑).
さて,ではテンゴのNAに,どこで・どんだけ引き離されているのか? 詳しく見てみましょうか(緑:GK5 青:EF8).
上が車速,下がタイム差です.今回のデータはこもりん.さんのDigSpiceⅣによるものですが,タイム差のところに高周波の波が見受けられますね・・・.これは20Hzのログだからなんでしょうか? まぁ,大して支障はないので,このまま読み解いてみましょう.
まず,実際のタイム差は約0.7秒ある訳なのですが,ロガーデータのタイム差の推移を見てみると,ブレーキングする度にGK5に引き離されている感じですね.中でも一番大きく波形が違うのは洗濯板の進入でしょうか(↓).
進入で2.9km/hも差がついています.「えっ? そんなに私のブレーキングはチキンだったのか??」と思い,プロにEF8に乗ってもらった時のデータを見返してみたのですが,ブレーキングの開始ポイントはほぼ同じでした.つまり,私がチキンという訳ではなく,私のEF8の性能的にここら辺が"限界"という事のようですね.
では,その"限界"とは一体何なのか? 例えば「制動力」という意味であれば,タイヤの太さに違いがあるので(GK5:225幅,EF8:205幅),確かにEF8の方が限界が低い気もします.しかし,減速の過程を見る限りGK5(緑)の「制動力」が圧倒している(ドッカンブレーキになっている)という訳でもなさそうです.
ならば,「車重」の違いか?とも思いましたが,
確かにGK5の方が軽い可能性はあるものの,重心位置はEF8の方が低いですし,洗濯板をすり抜けていく~という意味合いでは,有意な差にはならない気もします.
となるとライン取りの違いか?と思い,詳しく見てみると(赤:GK5 青:EF8),
ほんの僅かですがGK5(赤)の方がIN側に寄っているようです.「アレッ? 私の攻め具合が足りなかったか?」と思い,車載を見返してみたところ,
確かにタイヤ0.5本分くらい,洗濯板に寄せようと思えば出来なくもない感じではありますが,特別「攻めが足りない」という程ではないですね・・・.
となると更に手前に戻って,左高速コーナーでの姿勢の違いか?と思い,フリクションサークルを見てみたところ(↓),
同じ左高速コーナーの縁石の頂点付近で,なんと横Gが0.5も違う事に気づきました!(EF8の方が0.5も大きい)
GPSロガーのGの絶対値は参考程度にしかならないとはいえ,さすがに0.5ともなると明らかな差です.
これだけ横Gが掛かっている状態から,左→右と切り返して即座にブレーキング!となると,クルマの姿勢はかなり不安定になるでしょうから,その不安定さを感じとって,ブレーキングで奥まで突っ込めない!って事なんでしょう.これがEF8の"限界"の意味かなー?と思いました.
では,この"限界"は何によって決まってくるのか? 更に読み解いてみると,
GK5(赤)もEF8(青)も左高速コーナーではフリクションサークルの下半分にいるので,手加減なくアクセル全開で旋回している事が読み取れます.ライン取りを見る限り,両車はほぼ同じラインをトレースしていますから旋回半径は一緒.旋回速度も両車の差は0.8km/hなのでほぼ同等と見なして良いでしょう.旋回半径が同じ・旋回速度も同じとなると,物理学的に横Gに差が出るはずがないので,この違いの要因はなんなんだー!?と頭を抱えてしました・・・.
しかし,しばし悩んだ後に,ふと閃きました.
(VD講座:5.
ロール荷重移動 (2)より)
そうか! ロールスピードだ!! Σ(゚Д゚)ハッ
GPSロガーはダッシュボードの上に固定して計測しているので,所謂ところのバネ上に載せている事になります.
バネ上という事は,車体がロールして動くとGPSロガーも振られて加速度変化として読み取ってしまう訳で,
横G = 旋回の加速度変化 + ロールによる加速度変化
という図式で考えれば,旋回速度が同じなのにEF8の横Gが大きくなる理由が,後者の「ロールによる加速度変化」にあると推測出来ます・・・.
ロールによる加速度変化が大きい ⇒ ロールのスピードが速い ⇒ ロールの量が大きいと紐解いて,このロール量を決めている要因は「バネレート」になります.
そこで両車のフロントスプリングのレートを確認してみたところ,GK5は12キロで,EF8も12キロでした.
アレッ? 同じ??だとすると,スプリングの反発特性の違いか?と思い銘柄を調べてみると,GK5はサスペンションプラスのUC-01で,EF8がHAL springsの中反発.
(Øutlawなモータースポーツ:
スプリングメーカーごとの挙動についてより)
ムムッ・・・これも低反発系で似たり寄ったりか? となると残るはレバー比??
(AutoExe 貴島ゼミナール :
チューニングを楽しむための動的感性工学概論§15より)
GK5のレバー比は1.05で,EF8は1.5・・・.これだ!
このレバー比を使って両車のホイールレートを算出してみたところ,以下のような結果となりました(↓).
GK5 ・・・ 12kgf/mm /(1.05 × 1.05) = 10.9kgf/mm
EF8 ・・・ 12kgf/mm /(1.50 × 1.50) = 5.3kgf/mm
つまり,同じ力がスプリングに加わった場合,EF8はGK5の倍動く(=ロールの量が2倍)って事ですね.
倍も動けば,そりゃGも倍になりますわな・・・.
以上を纏めると,
・takaさんのGK5に対して,洗濯板のブレーキングだけで私のEF8は0.2秒も遅れている
・この遅れの主たる要因は,EF8のブレーキングが手前から開始しているため
・ブレーキングが手前になってしまう原因は,更に手前の左高速コーナーの横GがEF8は大きいため
・横Gが大きくなってしまう原因は,EF8の方がロール量が大きいためと考えられる
・ロール量が大きくなってしまう原因の1つとして,EF8のレバー比が考えられる
・レバー比を考慮しつつGK5と同じ走りを実現するためには,バネレートを倍にする必要がある
やっぱりEF8で楽々と40秒台に入れるためには,20キロ近いバネレートのスプリングをフロントに入れる必要があるって事なんですかね? それだと確かにロール方向は良くなると思いますが,今度はピッチ方向が辛くなる(タイヤを潰せなくなる)気がするんだよなぁ~.ハァ・・・難しい.orz(
その②に続く)