
ある日,Twitterを眺めていたら見覚えのあるクルマの写真が添付されたツイートを見つけました.
どうやら,どこかの会場で展示されているものを撮影したようなのですが,そのクルマは私が16年前に見た朽ち果てた姿ではなく,キレイな姿をしていました.「確か東京の車庫で放置されていたはずなのに,どうして・・・?」と思い,調べてみたところ,この
ニュースを見つけました.
どうやら2014年にスズキに寄贈されたらしく,3年半の月日をかけてレストアし,今は浜松市にあるスズキ歴史館に展示されているとの事.懐かしくなり現地に赴いてみました.
展示されていたのは,3Fの「ものづくりの歴史」コーナー.歴代のクルマの中に混じって,それは展示されていました.
1979年に作られた「武蔵3号」.セルボをベースとした水素自動車(Liquid H2 Car)です.
水素自動車といっても,MIRAIやCLARITYのようなFCV(燃料電池車)ではなく,内燃機関をベースとした車両.
内燃機関ベースの水素自動車というと,BMWの7シリーズやマツダのRX-8等が有名ですが,この車両は1979年に岡山で開催された「瀬戸内2001大博覧会」に展示された車両です.
「21世紀」をテーマにしたこの博覧会にて,リニアモーターカー等と並んで21世紀を語る技術として展示されたようで,リアガラスに「2001年排出ガス規制適合車」なんてデカールが貼られています.
ベースとなった初代SS20型セルボを同歴史館の中では見つけられませんでしたが,550ccの2ストロークエンジンを搭載したRRレイアウトの軽自動車で,デザインはジウジアーロだったそうです.
武蔵3号は,RRのレイアウトはそのままに,エンジンはキャブから直噴方式に変更され,後部座席の位置に65Lの液体水素タンク,液体水素ポンプを搭載されています.
外観上の大きな違いはこのロングノーズですが,資料等では触れられておらず,理由は不明です.
エンジンは,直列3気筒 539cc,ボア×ストロークは61.0mm×61.5mm,圧縮比は7.0.ベースとなったT5A型では最大28PSを発生したのに対し,燃料が水素であっても24PS発生したそうです.
(水素はガソリンに比べてエネルギー密度が低いので,通常出力は半分以下になる)
水素エンジンの性能はバックファイヤとの戦いなので,「機構上,ロータリーと相性が良い」とマツダはアピールしていましたが,2スト+直噴の相性も悪くなかったのかもしれませんね(オイル消費と排気臭の問題はあるようですが).
リアガラス越しに見えるポンプ&タンクも非常にキレイな形で復元されていました.
燃料となる液体水素は-253℃の極低温で保管されているため,外気に触れる燃料ポンプ部分は結露してサビだらけになっていたと思うのですが,サビを削って磨いたのか? 全部作り直したのか? 細部まで非常にキレイでした.
キレイといえばタイヤもそう.ワックスで艶出しをしているのかもしれませんが,新品のように思えます.
昨年,YOKOHAMAが「ADVAN HF Type D」を出しましたが,このクルマが履く145/80R10なんてラインナップにはないはず(ブロックパターンも違う).「メーカー特注で入手ルートがあるのかな?」なんて思って後で調べてみたら,カタログには載っていないものの「G.T.SPECIAL Y350」というヒストリックカー用のタイヤは今も新品で入手可能なのだそうです.ヒストリックカーのマーケットなんて非常に限られているでしょうし,儲からないと思うのですが,こういうニッチな部分を支える企業姿勢には非常に好感がもてます.
自分のクルマではないとはいえ,かつてボロボロの姿だったモノがキレイな姿で蘇っているのを見るのは,やはり感慨深いです.他のMusashiシリーズが今どうなっているのか知りませんが,せめて象徴となっていたZ32の8号くらいは,この3号と同様にレストアして博物館行きになっていて欲しいものです.
Posted at 2018/07/16 00:39:24 | |
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博物館見学 | 日記