
EF8の先輩との対決第4戦が迫ってきましたが,次戦はホームコースのTC1000であるにも関わらず,ここのところ43秒も切れず,ピンチな状況です.
TC1000だとハンデは0.7秒になりますが,先輩は
昨年同月に41秒台に入れているので,42秒台は絶対条件で,そのためには何かしらの策が必要なのですが,先日の
リアウイングの調整は失敗に終わり,途方に暮れていました・・・.他に何か策がないか?アレコレ思案していたところ,そういえば「VTEC切替ポイント」が変えられる事を思い出し,早速テストすべく,TC1000へと向かいました.
さて,比較する回転数ですが,
Link ECUにする前,
ショップオリジナルのECUの切替ポイントが4500rpmだった事と,B16Bノーマルの切替ポイントが6000rpmである事から,この2点で比較してみる事にしました.
なお,今回は,この2点を便宜上,「E枠」と「K枠」(走行した枠名)と呼称します.
まず,それぞれの公式タイムですが,以下の通りです.
E枠 ・・・ 43.145
K枠 ・・・ 43.290
いきなりですが,TC1000だと切替ポイントを1500rpm変えても,0.15秒程度しか影響しないという事が分かりました.内心では0.2~0.3秒くらいは差が出るかと思ったのですが,意外と差が僅かで少々ガッカリです・・・.ちなみに,K枠は午後(13:20~13:40)なので,気温的に若干不利だった点を考慮すると,実際の差はもっと少ないと思われます.
次に,LAP+の比較です(緑:E枠 青:K枠).
まず,ホームストレートエンド(1つ目の赤丸).ここがTC1000で最高速をマークする箇所ですが,K枠(青)の方が1km/h高いです.これだけ見ると「おおっ・・・K枠(青)のセッティングの方がパワーがあるのか!」と思いたくなりますが,スタートラインを越えた瞬間から1km/h以上の差がついているので,K枠(青)の方がパワーが出ているというより,差が変わらないと捉えた方が良さそうです.
次に,2コーナーの加速(2つ目の赤丸).K枠(青)の方が85~95km/hの領域で高い速度を出しています.これでまた「K枠(青)の方が中間加速が良いのか!」と思いたくなりますが,こちらもその一つ手前,1コーナーのブレーキングに目をやると,K枠(青)の方がしっかりと速度を落としてフロント荷重を生み出している事が分かります.従って,加速が良いのはパワー差ではなく,フロントタイヤのグリップがある事によるトラクションの良さと思われます.
とはいえ,その後2コーナーをクリアして,1ヘア(3つ目の赤丸)に到達するまでの間,全域でK枠(青)の方がE枠(緑)の速度を上回っているのですから,ここでも差は変わらないと捉えて良さそうです.
更に,1ヘアの立ち上がり(4つ目の赤丸).低回転からの全開加速なので,VTECの切替ポイントの影響が最も出る部分だと思いますが,ここでもK枠(青)の方が上回っています.ブレーキングポイントの違いで2ヘア進入の速度は,E枠(緑)の方が僅かに高いですが,タイム的には0.05秒,K枠(青)の方が速いので,こちらの方がパワーが出ている可能性があります.
続けて,洗濯板の手前(5つ目の赤丸)ですが,ここは完全に互角.速度差も0.2km/hと本当に僅かな差です.
そして,最終コーナー(最後の赤丸).ここはK枠(青)の方が僅かにモタついていますね・・・.これはラインが苦しかった(アクセルを開けたくても開けられなかった)のかな?と思い,ライン取りを見てみると(E枠:赤 K枠:青),
問題の部分は右端の緑丸の箇所なのですが,完全に一致していますね.これだけ見ると,ライン取りが苦しかった(アクセルを開けたくても開けられなかった)という訳ではなさそうです.となると,タイヤがヨレてトラクションが掛からなかったのか? いずれにせよ,この加速がワンテンポ遅れるだけで0.15秒差がついているので,E枠とK枠で差がついた理由はコレだったようです.
両者の差が本当に僅かだという事が分かったので,今度はLink ECUのデータで更に詳しく見てみる事にします.
(緑:E枠 ピンク:K枠)
まず,ホームストレートのスピード差(1km/h差)の件です.
上から3つ目のスロットル開度(TP)を見ると,最終コーナーからの立ち上がりは,E枠(緑)とK枠(ピンク)でほぼ同じである事が分かります.更にK枠(ピンク)は75km/h地点で一瞬スロットル(TP)を緩めているにも関わらず,そのまま200rpm程度高い回転数を,シフトアップする8000rpmまでずっと保っている事が分かります.元々K枠(ピンク)の方が吸気温が2℃高かった点も加味すると,K枠(ピンク)の方がよりパワフルなのではないかと思えてきます.
次に2コーナーの加速.
スロットル開度(TP)を見ると,やはりブレーキングからのアクセルONでは,K枠(ピンク)の方が一気に全開に出来ていました.加速力の良さはこれが原因ですね.ただ,その後,5600~5800rpmの領域で速度が高過ぎて一瞬スロットル(TP)を緩めている事も分かります.時間にして約0.6秒程度ですが,この間,回転数が停滞している(加速が一瞬鈍った)にも関わらず,1ヘア進入時の速度が同等以上という事は,やはりK枠(ピンク)の方がパワーが出ているように思えます.
更に1ヘアの立ち上がり.
K枠(ピンク)の方がボトムスピードが6km/h高いので,立ち上がりでスロットル(TP)を一気に開けられません.時間にして約1秒も全開にするのが遅れているのですが,2ヘア進入までの加速力はE枠(緑)と互角ですね.この点からも,やはりK枠(ピンク)の方がパワーが出ていそうです.
ここから先は,スロットルの開け方が違い過ぎて比較しづらいので,一気に飛ばして最終コーナーのモタつきについて見てみます.
これを見ると,K枠(ピンク)の方がスロットル(TP)を開けていなかった事が分かりました.では,なぜスロットルを開けられなかったのか?というと,恐らく,K枠(ピンク)の方がクルマの向きを変え切れていない事に起因していると思われます.
では,なぜ一見同じライン・車速に見えるのに,クルマの向きを変え切れていないのか?というと,K枠(ピンク)の方がタイヤの縦・横のバランス崩れている,すなわちパワーが出ていてタイヤを縦方向に使う量が大きい分,横のグリップが不足していたのではないか?と推測しています.
以上を纏めますと,タイム的にはK枠の方が0.15秒遅かったですが,この原因は最終コーナーでアクセルを全開にするのがワンテンポ遅れたためで,それ以外は両者に差はなかったという事が分かりました.そこで,更に細かく調べてみたところ,K枠の切替ポイントの方がパワーが出ている可能性が高い事が分かりました.
乗っていた時のフィーリングとしては,2コーナーで一瞬スロットルを戻している事からも分かる通り,K枠の切替ポイントの方が乗りづらかったです(E枠の切替ポイントに変更して乗った瞬間,最初は「こっちの方が乗りやすい!」と思ったくらいです).ただ,それはK枠の切替ポイントの方がパワーが出ている分だけコントロールが難しい,という事の証だったのかもしれません.
タイム的に見てみれば両者の差は極々僅かですし,フィーリング優先でE枠の切替ポイントを選んでも良いのかもしれませんが,僅かでもパワーが出ている可能性があるなら,
この間のように1/1000秒を搾り出したくなるシーンが訪れるかもしれないので,次の対決では,K枠のセッティングで挑んでみたいと思います.