
Surlusterの方に「
POWER SHOT(ガソリン添加剤)を試してみて!」と頼まれたので,TC1000でテストしてきました.
この商品に関しては,以前
DC5をDynapackに掛けた時の比較結果を見せてもらって,「出力で4.7PS,トルクで0.25kgm向上」との事で興味がありました.
ただ,その後,同時に計測していた排ガス成分の結果で,HC/COの値がかなり減少していた事から「最初の計測状態があまり良くなかったのでは・・・?」と若干不安も感じつつ,ま,モノは試しという事で.
なお,Surlusterの方から
公式なレポートが上がる気もしますが,ソレはソレ,コレはコレという事で(笑),いつもの私らしく,手持ちのデータからガッツリ分析してみたいと思います.
まずは,POWER SHOTの素性理解.
ジャンルとしては「ガソリン添加剤(燃料油添加剤)」のようです.燃料油添加剤には,「洗浄剤」「酸化防止剤」「流動点降下剤」「オクタン価向上剤」「燃焼助剤」「スラッジ分散剤」「潤滑性向上剤」等がありますが,ボードの内容を読む限り,
「洗浄剤」
に該当しそうです.
「オクタン価向上剤」であれば,ノック制御に影響を与えて,謳い文句通りの「パワーUP」「レスポンスUP」「燃費向上」が得られる気もしますが,「洗浄剤」だと,
「効果はエンジン内部の汚れ方次第」
な気がします.
続けて,成分調査.
主要成分は「PEA(ポリエーテルアミン)」と「PIBA(ポリイソブテンアミン)」.やはり洗浄剤の成分のようですが,「PEA」の機能は「溶かして汚れを除去する」,「PIBA」の機能は「金属面を皮膜で保護する」なので,サーキットでの高負荷・高回転のシーンで継続的に効果を得るにはPIBAの働きに期待したいところです.
ベースデータ取りに1本走った後,それでは投入!
POWER SHOTの濃度は,燃料残量に対して0.4~0.6%だそうです.少なければ洗浄効果が薄く,多ければ燃料成分を変化させる,という事になりますが,OBDⅡで燃料残量が正確に読めるならまだしも,EF8はアナログな燃料計しかないので,正直,
「濃度を合わせるのが面倒臭い」
ちなみに,今回はタイトル画像の資料に添加量の目安が書かれていた(右下の表)のですが,パーセントで言われても正直ピンと来ませんでした.サイトの方(↓)のリットル表記の方が多少感覚が掴めますが,
それより,「ボトルの半分」「1/3」「1/4」・・・という表記の方が分かり易いかなぁ~と思いました.こういう商品って,難しく考えて使う人は少ないと思われるので,直感的である事の方が重要に思えます.
例えば,ボトルの一部を透明にして残量が分かるようにするとか,キャップに目盛りを付けて計量カップの代わりにするとか,「きちんと効果を発揮させたい!」と思うなら,もう一工夫してあげるとユーザーフレンドリーな気がします.
(勿論,法規/規格やコストの制約はあると思いますけどね)
あと,少し目線を変えて,もしサーキットでタイムアタッカーに売り込みたいなら,彼らは「45Lフルタンク!」なんて事はまずやらないので,240mlボトルではなく,5~10Lくらいに適した小サイズのボトルを数本セットで売った方が使い易いんじゃないかと思いました(例えば,50ml×5本のセットとか).
POWER SHOTを投入後は,TC1000の奥のスペースに移動して,ひたすら8の字.
燃料としっかり攪拌させた後,20分程度,放置しました.
そして,始動.
ここでいきなり驚きました.何とLinkで,こんなデータ(↓)が取れたんです!
今まで一度も取れてなかった始動時のデータが計測出来ました.始動というのは,キーを捻って,スターターが回り出すと,白丸で囲ったようにバッテリ電圧が一時的に降下するので,これまで毎回ECUとの通信がリセットされてデータを計測が出来なかったんです.
これが「計測出来た」という事が何を示しているのか?というと,「始動の時間が短くなった」すなわち
「始動時の回転がスムースになった!」
という事です.つまり,POWER SHOTの洗浄効果が早くも発揮されているという事ですね.これには驚きました.
そこから,コースイン.
コースインまでにEF8を移動させている間も,エンジンの吹け上がりが良くなっている(軽くなっている)のが,よく分かりました.「これは期待出来るかも~」と思いつつ,アタックを開始.
ところが,タイム的には変わりがなく,高回転領域でも違いを感じません・・・.データでも確認してみます.
これはLAP+を使って出した簡易パワーカーブです(青:投入前 赤:投入後).
場所はスタートライン~1コーナーまで.かなり強めのフィルタを掛けているので絶対値は無視して下さい.
気温及び路面温度の違いがあるので正確性には欠きますが,それぞれ得意/不得意な回転域はあるものの,総じて見ると大きな隔たりはない,と言ったところでしょうか.
更に最高速も見てみます.
投入前 ・・・ 126.1km/h
投入後 ・・・ 125.7km/h
POWER SHOT投入後の方が0.4km/h低いですが,ま,この程度は計測誤差の範疇でしょう.
もう一度,Linkに戻って,ラムダ(空燃比)の値を見てみます(緑:投入前 ピンク:投入後).
こちらはスタートライン~1ヘアまでの間ですが,白枠で囲ってある全開域を見ても,ほとんど違いはないですね.回転数は"投入後(ピンク)"の方が若干低く,加速が鈍っているように見えますが,これは吸気温が2℃高いためと思われます.
つまり,
「高回転域では,ほとんど効果はない・・・」
という事かと思われます.
以上を纏めると,私のテスト結果としては下記の通りです.
・スピード → 横ばい
・パワー → 横ばい
・レスポンス ↑ アップ!(但し,低回転域に限る)
結局のところ,POWER SHOTは洗浄剤なので,エンジン内部が汚れているクルマ程,効果が大きいのだと思います.例えば,吸排気を変更しているのにECUがノーマルで,燃調が少し濃い側にズレているクルマとか,サーキットには行くが,そんな頻度が高くなく,あまり高回転まで回されていないクルマとかでしょうか.
私のイメージ的には,「プロに同乗してもらった後,エンジンの吹け上がりが良くなった!」みたいな体験をした事がある人・クルマに最も向いている気がします.
私のEF8の場合,最低でも月1回はサーキットに行ってますし,近年はプロに乗ってもらった後でも吹け上がりは変わらないので,最も効果が出にくいサンプルだったのかもしれません.ただ,そんな効果が出にくいサンプルでも,始動~2000rpm以下は効果を体感出来たのですから,きちんとした性能を持った商品ではあると思います.