
気温も下がり,いよいよタイムアタックのシーズンインをうかがわせる時期となってきました.
11月入って早々,早速オレさまFD2に挑む面々が筑波サーキットに集結し,ドライバー・マシンのコンディションチェックに励んでいました.
「打倒!オレさまFD2」という同じ目標を掲げる面々だけあって,議論が白熱し,反省会はタイトル画像のように深夜の時間帯まで行なわれ,初めて同席された方が「たったこれだけのコトで,こんなに熱く語り合えるのがスゴイ・・・」と呆気にとられるくらいでした(苦笑).
さて,今回は,オレさまFD2のお弟子さんから「
前回のように,またアドバイスして欲しい」と要請を受けたので,私如きがおこがましいですが,GPSロガーを携えてTC2000へ行ってきました.
それでは,まずはお弟子さんの当日ベストからご覧下さい.
残念ながら自己ベストを大分下回る結果となってしまったようですが,車載を見せてもらったところ,かなり速度差があるクルマ達と同じクラスだったようで,トラフィックが酷く,まともにクリアが取れない状況でした(ちなみに,お弟子さんは25台中3番目のタイム).加えて,タイヤ・ブレーキに若干の不安を抱えていた事もあり,それらを含めてプレッシャーのキツイ状況だったのかもしれません.
続けて,以前頂いたお弟子さんのロガーデータと比較してみます(緑:'18/2月 青:今回).
上が車速,下が'18/2月に走行した時からの遅れ(上に行くほど差が開いている)ですが,これを見ると全体的にストレートが遅いですね.例えば,バックストレートだけで0.2秒も失っています.'18/2月(緑)の方は冬なので気温によるパワーの差という可能性もありますが,車載を見ると3→4速へのシフトアップで引っ張り切れていない気がします(=シフトアップが早い).
特に1ヘアの手前などが顕著で,画像で比較するとこんな感じです.
【'18/2月】
【今回】
画角が違うので,ちょっと分かりづらいですが,左上のコース図における座標(赤丸)の位置を見てもらうと多少分かるかと.'18/2月時はS字の1個目の縁石にフロントタイヤがのるくらいの位置でシフトアップしているのに,今回はその縁石が遠めに見える位置でシフトアップしています.画像の通り8km/hも低い状況でシフトアップしているので,そりゃあ,車速が伸びません.トップエンドの最もパワーの出る領域(8000rpm以上の領域)で,200~400rpmは使えていないのではないでしょうか? これはちょっと勿体ないです.
最後に,師匠とも比較してみましょう(緑:師匠 青:弟子).
師匠 ・・・ 1'06.964
弟子 ・・・ 1'08.653 (+1.689)
①1コーナー進入(1つ目の赤丸)
弟子(青)の方がボトムが4.2km/hも低いですね(ここだけで0.4秒の遅れ).当人に感触を聞いてみたところ,
弟子 :速度が遅いとは感じていたけれど,前回,アクセルの我慢が足りないと言われていたので辛抱した.
私 :速度が遅いと感じるなら,もっとステアリングを切り込めば良いんじゃないですか?
弟子 :あれ以上は切り込めない.縁石を越えて芝生の上を走ってしまう!
これを聞いてピンときました.多分,ライン取りを間違えていますね(立ち上がり重視のラインが出来ていない).
折角なので,プロがFD2を走らせた時のお手本と比較してみましょう(赤:プロ 青:弟子).
まず,進入ですが,プロ(赤)の方が弟子(青)よりも外側,かなりイン側を空けてアプローチしているのが分かると思います.これはコーナー出口(立ち上がりの左側)の縁石をかすめて,アクセル全開で抜けるために,逆算してこうなっています.
続けて,クルマの向きが変わる点(ラインがカクッと折れている点)ですが,イン側をかなり空けているのが分かると思います.一見するとエイペックス(クリップ)を外して距離的に損しているように思えますが,その"インが空いている"というのがポイントなんです.先程,弟子は「あれ以上は切り込めない.縁石を越えて芝生の上を走ってしまう!」と言っていたかと思いますが,こうやってイン側が空けてアプローチすれば,芝生の上に出ないですよね? つまり,もっとステアリングを切り込めますよね? このステアリングを切り込むスペースを作るために,ワザとインを空けているんです.
そして,立ち上がり.先程より深くイン側にステアリングを切り込む事が出来た事で,クルマの向きを大きく変える事が出来ます.これによって,プロはコーナー出口のイン側の縁石をカットしながら,一直線に立ち上がる事が出来ています.一直線なので舵角(抵抗)が少なく,一直線なので躊躇なくアクセルを全開にでき,一直線なのでタイヤのグリップを全部縦方向に使えるので(RE-71Rが得意とするところなので)加速する,これが立ち上がり重視のラインのメリットだと思います.
なお,これを実現するために注意すべき点は,以下の2つかと.
1.進入でインに寄せ過ぎない(意識的にイン側を空ける).
2.インから離れる事で,曲がれるかどうか不安になってもアクセルを緩めない(高い速度を維持する).
余談ですが,これを手っ取り早く実現する方法は,自分が思っているよりもチョット速い速度でコーナーに突っ込む(ブレーキングをワンテンポ遅らせる)事です.オーバースピードで進入する事で,自然とインに付けませんし,アクセルを踏んで突っ込むので,緩める暇なんかないです(笑).
まぁ,当然の事ながら,その分リスキーにはなるので,高度な技術を持っているドライバーならブレーキング時のペダルコントロールで実現した方が良いでしょうね.
②1コーナー~1ヘア
ここは先程述べたシフトアップの影響です.2→3速(2つ目の赤丸)で0.1秒,3→4速(3つ目の赤丸)で0.1秒遅れています.
③1ヘア
進入のブレーキングで,開始(4つ目の赤丸)が早く,終了(5つ目の赤丸)が遅いです.このブレーキングだけで0.4秒遅れています.ここが"突っ込み番長"の異名も持つ師匠と弟子との差なんでしょうね,師匠は1ヘア手前のS字の2個目(右側)の縁石を下りてからブレーキングを行なうのに対し,弟子は縁石にのせる手前からブレーキングを開始している差でしょう.
ただ,最初,弟子が縁石下りてからブレーキングするのは,短い距離で止める自信がないからかな?と思っていたのですが(私もそうだったので),車載を見ると(聞くと),かすかにブレーキがロックしている(ABSが作動している?)ような音がしていました.弟子のFD2のリアのバネレートは20キロと言っていたので,もしかすると,縁石にのせた時に右リアが蹴られているのかもしれません.そうだとすると車体の挙動が不安定になるので,ブレーキングを詰められないのも納得出来ます.一度,減衰を弱めてテストしてみたいところですね.
③ダンロップ(6つ目の赤丸)
ここも師匠との差が明確に出ていますね(0.3秒の遅れ).前走車がいたので集中力が乱されたのだと思いますが,まだ1ヘアを立ち上がって,左側に寄せ切る前にアクセルを離すのは,さすがに早過ぎですね・・・.
ただ,アクセルを離す理由が「クルマを信用し切れない(左→右と車体を振り回すのが怖い)」せいであるならば,それはドライバーの技量のせいではなく,クルマのセッティングが自身の好みに合っていないのかもしれません.どういう時に不安になるのか?を減衰や内圧だけでも良いので,イジって探ってみては如何でしょうか?
加減速のタイミングはともかく,描いているライン取りは,以下のようにプロ(赤)と比べても遜色ないので,このライン取りのまま,如何にスピードを乗せられるか?という問題だと思います.
④80R~2ヘア~バックストレート
ここは師匠(緑)に全く引けを取らないですね.明確なタイム差にはなっていませんが,2ヘアなんかは弟子(青)の方が上手いように見えます.
⑤最終コーナー
ここは,師匠(緑)が最も得意としているコーナーなので遅れるのは止むを得ないですかね.師匠は進入のアクセルOFF(7つ目の赤丸)で無理やり0.2秒稼ぎ出していますし,ボトムをキープする事(最後の赤丸)で更に0.2秒稼ぎ出しています.ただ,このデータの師匠は最後アンダー出して失速しているので,コーナーの出口側で弟子(青)が0.2秒取り戻しています.
ここはクルマを信用し切れないとアクセルは踏めませんので,同じFD2同士,パワーにハンデを背負っている訳でもないので,詰めるのは最後の最後で良いと思います.
以上,纏めると,スタートライン~ダンロップまでの前半区間だけで1.4秒差がついているので,ここを何とかしたいところですね.ドライバー側では加速時のシフトアップ,減速時のライン取りをトレーニングしたいところです.また,クルマ側では,ブレーキング時を含めた全体的なスタビリティ(前後バランス)を確認したいところですね.
ブレーキング時のスタビリティ等は,ドライバーのテクニックでカバー出来る部分ではあるのですが,その分,心理的なプレッシャーも大きくなるので,クルマ側で対策を打って,ドライバーの負担を下げてあげた方が良い気がします.
まずは,自分のクルマを自分が信用出来る状態にする,それが出来たらクルマを自由自在に振り回せるように試してみる,この2点ではないでしょうか? くしくもこの2点は,師匠が日光・筑波で数年かけて取り組んできた部分でもあるので,そういう意味では,師匠の言葉に耳を傾けて,しっかりと背中を追う事が近道なのかもしれません.