
「
Sタイヤ扱い」について色々調べてみたものの,結局,ATR-K SPORTがそれに該当するのか分かりませんでした.
分からないんだったら,Sタイヤの定義の中の1つ「レーシングタイヤに近いレース用の性能を持つ」のかどうかで純粋に判断してみよう・・・という事で,A052と比較してみます.
同一条件下ではないので多少正確性は落ちますが,チューニングの度合いは違えど同じ型式(FD2)&同じドライバーでの比較です.
厳密にはATR-K SPORTの方は借り物なので,ドライバーがマージンを取っている可能性はありますが,そこは2年間の師匠にしごかれて腕前が上がっているハズという事にして相殺扱いにします(笑).
まずは,車載から.
【ATR-K SPORT:41.155】
【A052:40.424】
両者の差は0.7秒といったところですね.A052と0.7秒差って言われると,少なくともRE-71Rくらいのグリップはありそうな気がしますが,さて?
続けて,LAP+による比較(青:ATR-K SPORT 緑:A052).
ホームストレートエンド
やっぱり同じエンジンのクルマだけあって,最高速はほぼ一緒(1つ目の赤丸).ATR-K SPORT(青)の時の方が若干突っ込み気味であるため,0.3km/h伸びてますが,この程度であれば同等と考えて良いでしょうね.これで一先ず,エンジンパワーは同等として以降の分析を行います.
1コーナー
まず気になるのは,ATR-K SPORT(青)の方が突っ込み気味なのに,ブレーキングの途中で減速量が弱まっている点(2つ目の赤丸).この時の前後Gを見てみると,
ブレーキングによってマイナス方向(減速方向)に進んでいた前後Gは,A052(緑)の方が-0.6G程度でプラス方向(加速方向)に反転しているのに対し,ATR-K SPORT(青)は-0.9Gまでそのままマイナス方向(減速方向)に進んでいます.
これが何を示しているか?というと,「ATR-K SPORT(青)は縦のグリップ力が強くてブレーキングでよく止まるから,減速の途中でブレーキを緩められる」のではなく,「縦のグリップが足りなくてタイヤが滑り(ロックし),減速量が鈍っているだけで,ブレーキ自体の踏力を弱められない」という事です.ドライバー的には,止まらないのでクルマが勝手に加速し,勝手に加速するからブレーキングの時間が長くせざるを得ず,結果ボトムが落ちている(3つ目の赤丸),という構図のようです.
これで「ATR-K SPORTの縦のグリップはA02より劣る」という事が確認出来ました.
2コーナー
A052(緑)の方が1コーナー出口で早くボトムを高く維持出来た分,2コーナーの旋回速度も高いのですが,さすがに高過ぎてアクセルを少し戻しているようです(4つ目の赤丸).このアクセル戻しの結果,A052(緑)は旋回途中で失速し,1ヘア進入速度(5つ目の赤丸)はATR-K SPORT(青)に負けてしまいます.
1ヘア(7つ目の赤丸)
ここも1コーナーと同様に,途中でブレーキがロックして減速量が落ちている・・・と思いきや,前後Gを見てみると,
ATR-K SPORT(青)の方が途中でプラス方向(加速方向)に反転しています.これが何を示してるか?というと,「タイヤがロックしそうになったので,ドライバーは一度ブレーキを弱めてロックを回避し,その後,再びブレーキを踏み直してクルマを止めようとした」という事です.ブレーキをON→OFF→ONみたいな操作をしているのですから,当然,制動距離は延びる訳で,ATR-K SPORT(青)の方がボトムが7.2km/hも低くなるのは当たり前でしょう(これでATR-K SPORTは0.3秒遅れます).
インフィールド(9つ目の赤丸)
ここは攻略の仕方に違いがあるようです.強く・短く止めて,小さく回るATR-K SPRT(青)に対し,クルマを少しづつロールさせるかのようにブレーキを緩めながら進入し,最大舵角=ボトムとなるようにして,そこからアクセルを開けていくような走らせ方です.タイヤの横グリップがあるが故の走らせ方だと思いますが,きれいなV字を描いていますし,アクセルONのタイミングも早いですし,上手いですねぇ~.
洗濯板(10個目の赤丸)
A052(緑)の方がバックストレッチの加速が良かったのに,最後の最後で車速が伸びず(アクセルを緩めている?),数値的にはATR-K SPORT(青)に負けています.ちょっと勿体ない感じですね.
最終複合(11個目の赤丸)
洗濯板通過後の再加速(アクセルを開けるタイミング)は,やはりA052(緑)の方が早いですねぇ.ATR-K SPORT(青)の方は若干横のグリップが足りないようで,再加速のタイミングが遅いですし,何より最後の最後でアクセルが開けられず,ボトムが64km/hまで落ちています.ブレーキングでもう少しクルマが止まってくれればアクセルを早く開けられるのでしょうが,それは敵わず・・・といったところでしょうか?(これで差は0.4秒に拡大)
最終コーナー立ち上がり(最後の赤丸)
ATR-K SPORT(青)の方は立ち上がりで横方向に踏ん張ってくれず,外に膨らんでしまい(タイヤ1本分コースアウト),それをコースに戻すのにステアリング操作が入った分だけシフトアップ操作が遅れてしまい,95km/h付近で速度が停滞してしまったようです(これで更に0.3秒差が開いて,トータル0.7秒差).
以上,ATR-K SPORTとA052の比較でした.
今回の分析結果を見ると,ATR-K SPORTはA052に比べて縦のグリップが乏しいようですね.A052もRE-71Rに比べると若干縦のグリップが弱いですから,RE-71Rが好みのドライバーからすると,かなり使いにくそうですね.また,この縦のグリップが低い=フロントタイヤを潰し切れない,という構図になる事から,コーナーの立ち上がりでアンダーが出易くなりそうです.この立ち上がりのアンダーを打ち消すために,ブレーキを残す(ブレーキでフロント荷重をキープする)方法が考えられますが,この方法だと,ただでさえ縦方向のグリップが足りないのに,縦を使ったまま横方向にもグリップを使おうとするため,相当ボトムスピードを落とさないと曲がれなくなりそうです.
言うなれば「ATR-K SPORTは縦が弱いタイヤ」とでも言えば良いでしょうか? 決して縦が強くないA052と比較して,そういう評価になるという事は,やっぱりATR-K SPORTは「Sタイヤ扱い」にはならないのかな・・・?と思いました.
Posted at 2020/04/03 00:18:40 | |
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