人生初のFR走行を楽しみ,「その時の走行データでも解析してみよう~♪」とPCを開いたら,メッセージのアイコンが光ってます.
「ん? なんだコレ??」と思って開いてみると,件名は「ブツ」.
「こ,これは・・・.ま,まさか!?」とゴクリと唾を飲み込み,震える右手を左手で抑えつつ中を開けてみると,そこにはこんなメッセージが!
「例のブツだ.使い方は任せる」
「君なら有効に使ってくれると信じている・・・」
なんという事でしょう.彼はとんでもないモノを送り付けてきました.こんなモノは私にはとても扱えない.巧妙に加工されたファイルは通常の手順では開けず,驚くべき事にエラー画面すらも表示されない.「dtb」や「nmea」といった拡張子のファイルも添付されていますが,一体これで何をしろというのか・・・?
そこから顎に手をやり,黙考する事10分・・・.次の瞬間,瞼の上の辺りで
フレクサトーンの音が鳴り響きます.
カッ!と目を見切らき,即座に2つのソフトを同時に立ち上げ,マウスを右へ左へ走らせつつ,素早くキーボードでコマンドを打ち込んだ先に見えたものは・・・!?
はい.そろそろ飽きてきたので元の文体に戻します(笑).
タイトル画像からお察しの通り,某黒のDC5乗りから「デジスパイスのデータが上手く読み込めねーから,
うっかりベストの要因分析が出来ねえんだよ.そっちでよろしくやっとけや!」とブラック企業顔負けの無茶振り指令が来たので,DC5のアップデートの効果検証をやってみます.
最初に,某黒のDC5乗りのこれまでのベストはコチラ(↓).
【2019.12.22 タイム:39.289】
そして,今回更新したベストがコチラ(↓).
【2020.11.01 タイム:39.072】
先週投入したアップデートと新品のA052の組合せで,0.2秒タイムを短縮していました.
さて,その投入されたアップデートはコチラ(↓)です.
「ええっと・・・Attack!にでも出るんですか?」と言いたくなるくらいのエゲツないカナードです.このカナードに合わせて新設されたフロントバンパーの下にはアンダーパネルも装着されており,フロントタイヤ前端部もディフューザー形状となっているため,相当効きそうな気配です.
今回縮まった0.2秒が,この空力デバイスによるものなのか? それとも新品タイヤの効果なのか? それを調べろ!というのが今回のオーダーになります.
では,早速,昨年12月(青)と今回(緑)の比較をしてみます.
ホームストレートエンド
トップスピードは140km/hで完全に互角.つまり,今回の空力デバイスは全くドラッグ(空気抵抗)が増えていないという事が分かります.
1コーナー(1つ目の赤丸)
ブレーキングの開始もほぼ同じ.ですが,ボトムスピードには大きな差が出ます(上:昨年 下:今回).
驚きの4km/hアップ! これが空力の効果なのか? 新品タイヤの効果なのか?は切り分けが難しいところですが,ブレーキング直後ですし,ここはタイヤという事にしておきましょう.
2コーナー(2つ目の赤丸)
今回(緑)の方が,105km/h付近でグイッと車速が伸びています.このポイントを車載で確認してみると,
ちょうど2コーナーのイン側の縁石に乗った辺り.今まではここでタイヤが限界を迎えて,アクセルを戻してアンダーを消すか,アンダー覚悟で失速するかしていたのが,何の苦もなく真っ直ぐ加速していっています.車載の映像も気持ちステアリングを戻せているようにも見えますから,これは間違いなく空力の効果ですね.
1ヘア進入(3つ目の赤丸)
ブレーキング開始時の車速を見てみると(上:去年 下:今回),
こちらも驚きの130km/h台に到達.2コーナーで失速しなければ,これだけのスピードが出せるという事ですね.空力デバイス恐るべし!
1ヘア立ち上がり(4つ目の赤丸)
ブレーキングからアクセルONに切り替わるボトムスピードを見てみると(上:昨年 下:今回),
4km/hも車速が高いのに,ブレーキングの開始ポイントが一緒なので,さすがに止め切れなかったのか? 今回(緑)の方は途中でブレーキを緩める事も出来ず,波形も乱れているので若干ロックしているように見受けられます.
それでもタイヤの力を使って無理やり(?)曲げて,強引の加速態勢に持ち込みますが,さすがは新品のA052.これに応えて昨年(青)よりも早くクルマを前に進ませています.
インフィールド進入(5つ目の赤丸)
今回(緑)の方が1ヘアの立ち上がり加速が良いので,インフィールド進入時の速度にも差が表れます.
(上:昨年 下:今回)
今回(緑)の方が2km/h進入速度が高いのですが,車載の映像で音を聞くとレブに当たっているのかどうかが判別出来ない感じ.昨年(青)の方は明らかにレブが3発くらい入っているので,「アクセルを少し戻してコントロールしたのか?」と思いましたが,本人曰く「レブは1発当ててる」との事.不思議だなぁ~?と思ってライン取りを確認したら,僅かに今回(緑)の方が進入でイン側に寄っていました.
インフィールド立ち上がり(6つ目の赤丸)
今回(緑)の方が進入でイン側に寄っているのであれば,その分曲げるのが苦しいはずなので,ボトムは低いのだろうと見てみると(上:昨年 下:今回),
なんと,3km/hも今回(緑)の方がボトムが高い! 気持ちステアリングの舵角も減っている気がするので,これも空力の効果なのでしょうね.
バックストレッチ~洗濯板進入
インフィールドを高い速度で駆け抜けたので,今回(緑)の方がグングン引き離していくのですが,2→3速へシフトアップした際にほんの僅かに失速.手の動きはスムーズなので,ちょっとラフにクラッチを繋いでしまったのでしょうか? この失速で洗濯板への進入速度は昨年(青)と同等に留まりました.
最終の複合進入(7つ目の赤丸)
洗濯板への進入速度はほぼ同等なのに,今回(緑)の方はブレーキを緩める事なく,ガッツリとボトムを落としています.なぜ?と思い,車載を見てみると,この位置(↓)からクルマをイン側に寄せていっていました.
一体何を狙っているのか?と思いライン取りを見てみたところ,どうやら20Rのエイペックス(赤矢印の部分)を取りに行っているようです.
アドバイザーからヒントを貰ったのか? 自ら独自に見つけ出したのか? 分かりませんが,これで距離をガッツリ縮めてタイムを稼ぎ出しています.これはかなり驚きのラインです.
最終コーナー(最後の赤丸)
なぜ20Rのエイペックスを狙うのが驚きなのかというと,そんなところを通ったら,最終コーナーの進入角度がキツくなって,アクセルを全く踏めなくなるからです.
ところが,この黒いDC5は,何とこんな位置(↓)からアクセルを開け始め,一切失速する事なく最終コーナーをクリアしていきます.
ちなみに,昨年の同コーナーでアクセルを開ける位置はココ(↓)です.
正面のピットの位置を見てもらえば分かりますが,今回(緑)の方がとんでもなく手前からアクセルを開けていっている事が分かると思います.この位置から曲げいける事も驚きですが,それ以上に,強引とも思える曲げ方をしても一切失速せずに加速し続けている事の方が驚異です.車載を見ると,タイヤはほとんど鳴っていませんし,これは新品効果で曲げているのではなく,空力を使って曲げているのではないでしょうか? いやはや恐るべしです・・・.
以上を纏めると,新品タイヤによるグリップの向上も勿論あるのですが,それ以上にフロントのダウンフォースが増えた事で減速→加速への切替え時間が短くなり,ボトムスピードの引き上げに貢献しているようです.空力の効果は2コーナーのような高速コーナーではっきりと差が表れおり,また,低速コーナーでもフロントのレスポンス向上という形で効果が出ているため,全体的に今まで不可能と思われたライン取りも実現出来ているようです.
今回縮まった0.2秒の要因は,間違いなく最終の複合部分にあり,これまで不可能と思われたライン取りによる距離的な短縮と,距離を縮めつつも旋回速度を落とさないというボトムスピードの底上げによって実現されたものと思われます.アベレージスピードの低いミニサーキットでこれだけの効果が得られるのですから,TC2000以上のコースでは,どれだけの差を生み出すのか想像するだけで恐ろしくなります.「見た目通りの恩恵は間違いなく得られた」と言ったところでしょうか.
・・・という感じです.おだてのまつさん,ご満足頂けましたでしょうか?
おまけ編は
コチラ.