駆動系を一新した状態でTC2000を走ってきましたので,各アップデートの効果を細かく見てみたいと思います.まず,内容は以下の通り.
①
クロスミッション投入 ・・・ 3速ギヤ破損による修理
②
ファイナル変更 ・・・ 上記①の辻褄合わせ
③
LSD変更 ・・・ 上記②の辻褄合わせ
④クラッチ交換 ・・・ 摩耗による交換
⑤
フライホイール変更 ・・・ 上記④と同じ
これ以外にもブレーキ関係の変更点がありますが,今回のTC2000ではテストしていないので,こちらに関してはまた別の機会に.内容を見て頂いても分かる通り,アップデートと呼んでいますが実質修理ですし,前回走行した時とは季節も違うのでメリットよりもデメリットのチェックが中心となります(比較対象は同じタイヤでベストを出した
2月のTC2000).
最初はLAP+によるミニセクターの比較結果から.
【前回】
【今回】
季節が違うのでこれだけでは何とも言えませんが,前回の0.48秒落ちとなりました.ざっと見てみると,SCT.1(スタートライン~1コーナー出口)で0.1秒,SCT.2(1ヘア手前のS字)で0.1秒,SCT.4(ダンロップ~80R)で0.25秒という感じで失っているようですね.
続けて,細かく見ていきます.
ホームストレートエンド
前回(緑)が151.8km,今回(青)が152.4km,僅か0.6kmではありますが伸びていますね.0.6kmくらいだと誤差かなぁ~?という気もするのですが,この後も出てくる部分なので,頭の片隅に置いておきます.ちなみに,この結果から今回のコンディションは悪くなさそうですね.
1コーナー
クロスミッションになったおかげで,STEP比が改善され,リズミカルに4→3→2速とシフトダウンする事が出来るようになりました.従来は3→2速の間が結構離れていたので"待ち"の時間が長かったのですが,クロスミッションによってそれがなくなり,ブレーキの踏力コントロールにより集中出来るようになりました(余裕が生まれた).これによって車速の落とし過ぎに注意を払う事ができ,両手でステアリングを操作する時間も長くなる事から,切り込むタイミングの早さと量をより正確に操作する事もでき,結果として当時より減ったタイヤであるにも関わらず,ボトムを2.3km引き上げられています(下の赤丸).
これによってタイムが~と言いたいところなのですが,グラフを見ると立ち上がりで今回(青)の方が遅れています.ボトムが高過ぎたせいか?と思い,遅れたポイントにフォーカスしてみると,どうやら80km付近(上の赤丸)で速度の伸びが一瞬滞ったようです.
では,80km付近で一体何が起きたのか? 車載で確認してみたところ,位置はここでした(↓).
ご覧の通りクリップからは既に離れており,ステアリングを徐々に戻している途中でした.この角度であればクルマの向きも十分変わっており,実際Link ECUのデータを見てもアクセルは全開でした(=ドライバーが向きが変わっていると判断しているので全開にしている).従って,プッシュアンダーを出して失速した訳ではなさそうです(事実,車載で音を聞いてもスキール音はしていない).
となると,タイヤに余力を残した状態で立ち上がっているのに,これでクルマが前に進まない理由は一体何なのか? 考えられる理由はLSDしかないでしょうね.乗っていた時の感触から「効いていない訳ではないが,以前より効きが強くなった訳でもない」と評したのですが,恐らく2速がハイギヤード化された事も合わさって,このB18C用のLSDの性能を引き出すには,B16Aだと少しトルクが足りないのかもしれません(私のB16AだとこのLSDの抵抗に打ち勝てない).パワーを上げる事は出来ないので,これはLSDをシバいてヘタらせ,抵抗を減らすしかないですかね・・・.
1ヘア手前のS字
2速がハイギヤード化された事で,今まで95km/hで2速→3速にシフトアップしていたのが,100km/hでのシフトアップとなりました.これにより,95~100km/hの領域(下の赤丸)では今回(青)の方が微妙に速くなっています.ただ,その後,3速にシフトアップした領域(上の赤丸)では速度の伸びが鈍っているので,トータルでは遅いのかもしれません.
ただ,伸びが鈍る115km/h付近の車載を見てみると,
S字の1個目の進入でステアリングを切り始めたポイントで失速しているので,もしかしたらハイギヤード化の影響でなく,ここもLSDの抵抗増による失速の可能性があります・・・.
1ヘア
今回(青)の方が進入速度が1.9km/h遅いのはともかく,アクセル全開→ブレーキングのシーンにおける速度低下が鈍いですね(上の赤丸).ハイギヤード化されるとエンブレの効果も小さくなるので,その影響かなぁ~?と思ったのですが,そこから先の速度低下量は変わっていない点からすると,これはエンブレ全体の効きの話ではなく,アクセル→ブレーキにペダルを踏み替える間の部分の話のようです.すなわち,フライホイールの慣性マス増の影響という事でしょうね.ここでは特別悪い影響を与えていないので,一先ずスルーします.
一方,立ち上がりですが(下の赤丸),ここでも1コーナーと同様に,今回(青)の方は67km/h付近で加速の停滞があります.
車載諸々を確認してみましたが結果は1コーナーと同じでした.だとすると,やっぱりLSDか・・・.
ダンロップ~80R
1ヘアでは悪影響はないといったフライホイールの慣性マス増ですが,ダンロップの進入(小さい方の赤丸)では悪影響が出ていますね.速度低下のタイミングがズレているのにドライバーが合わせ込めておらず,思った程,速度が落ちないのでやや突っ込み過ぎとなり,向きが変わらず,アクセル踏めずで,今回(青)の方がボトムが落ちています・・・.恐らく日光の高速コーナーでも同様の結果になると思うので,ここは走り込んで,ドライバーがアジャストしないとダメですね.
続く80Rは,3速キープのためにタイトなラインを選んだ結果,タイヤを横に使い過ぎて,クルマが全く前に進んでいなかったのが分かります.これで0.25秒失っているので,このライン取りはやっぱりダメですね.ただ,かといって通常のラインに戻せば,更に0.25秒遅れますし,これは困りました・・・.( ´~`)ウーン
ただ,3速キープの効果は絶大で,これだけ80Rで失速しているのにも関わらず,最終的な2ヘアの進入速度は今回(青)の方が1.3km/hも高いんですから,「4速を出来るだけ使わない」という考え方は,やっぱりアリなんですね.どうやって80Rと両立させるか? 何か策が必要ですね.
2ヘア~バックストレート
先述した通り,ここから先はタイムを失っている部分はありません.バックストレートの全開加速は結果的にほぼ互角ですね.2速の95~100km/h領域,3速の138~143km/h領域のように,1段低いギヤを選べる部分では今回(青)の方が速くなっていますが,同じギヤになった時は,やはり前回(緑)の方が速いですね.
ただ,面白いのは,
途中遅れても,最後の最後4速域で遅れを取り戻しているんですよね.なんでこんなに車速の伸びが良いのか?とギヤ×ファイナルを再確認してみたのですが,
前回(緑) ・・・ 1.107 × 4.400 = 4.870
今回(青) ・・・ 0.957 × 4.928 = 4.716
今回(青)の仕様の方がやっぱりハイギヤードですし,空力パッケージは一緒で空気抵抗等も増えていないと考えると,この伸びの良さはフライホイール変更の効果ですかね? これを期待して慣性マスを0.5kg増やしたので,そうであれば嬉しいところです.
最終コーナー
ここもブレーキング~旋回の部分は特に変わらず,走れない間のイメトレのおかげでライン取りが適正化されて,スムースに立ち上がれるようになりましたが,特別タイムには繋がっていませんね.強いて違いを挙げるとすれば,
3速キープでゴールラインまで届くようになったので,最後の最後がほんの少し速くがなった事くらいでしょうか.
以上,アップデートの効果確認@TC2000でした.
纏めるとクロスミッションは80Rで遅くなっているが,それ以外は特に変わっていない.1つ下の段で走れる領域(95~100km/h,138~143km/h)は速くなっているが,絶対的な時間が短いので効果は限定的.ゴールライン直前のように上手くハマればメリットが得られる,といったところでしょうか.
それよりも問題はLSD.現状だと抵抗が大きく,タイムロスに繋がっている雰囲気なので,TC1000でもう一度チェックが必要ですね.また,フライホイールはアクセルOFF時の挙動が変わっているので,ドライバー側で感覚の合わせ込みが必要.一方で,4速域での増速効果がありそうなので,次の冬に期待・・・といったところでしょうか.
TC2000なのでデータが少なく,アップデートの成功/失敗の判断はTC1000を走るまで持ち越しにしたいと思いますが,少なくとも「大幅に遅くなった!」という部分はなさそうなので一安心です.仮にアップデートが失敗だったとしても,他の選択肢はないで,これで何とかするしかないですからね・・・. (^_^;)