
それではCR-Sの数値検証編です(感触編は
コチラ).
A052と比較するに当たり,色々とデータを見比べてみたところ,厳しめでいくか? 緩めでいくか? 悩んだのですが,こもりん.さんが今回の結果をハンデ戦の計算に組み込んできそうな気がするので(笑),後で不利にならないように厳しめに分析してみたいと思います.
なお,今回はフロント2本のみの違いです(リアはいずれもA052).
ではまず,サンプル.今回は大分気温が上がってきた事もあり,ベスト比較ではなく,コンディションが比較的近い条件で比較してみたいと思います.
【A052(41.614)】
(どうでもいい話ですが,なぜかこの車載↑だけ再生回数が1500回を超えてるんですよね・・・.なんでだろ?)
気温:22.3℃
湿度:60%
路温:29.4℃
気圧:1017.4hPa
【CR-S(42.063)】
気温:19.7℃ (+2.6)
湿度:49% (-11%)
路温:39.6℃ (+10.2℃)
気圧:1017.1hPa (-0.3hPa)
コンディション差による出力補正としては,気温差(+0.52%)+湿度差(+0.44%)+気圧差(±0%)=+0.96% という事で,約1%(≒1.8PS)CR-Sの方がパワーが出てますが,路面温度が10℃も高く,加えてCR-Sの方はアタック出来るスペースがなかなか見つからず8周目に記録したタイムである事を踏まえると,確実にタイヤの温度は上がり切っているので,出力差分のゲインはタイヤのタレ分で相殺されているかな?と思います.
では続けて,ロガーデータで比較して見てみます(赤:A052 青:CR-S).
全体的に見ると,CR-S(青)の方が各セクションの終端速度が伸びています.前述の出力差の影響も考えられますが,乗った時の印象としては「縦のグリップはCR-Sの方が上」と感じたので,これはタイヤの差(トラクション性能の差)では?と思っています.なお,正確な重量は測っていませんが,タイヤ単体の重量としてはA052よりCR-Sの方が重い印象なので(感覚的には0.3~0.5kg/本くらい?),慣性重量が増して速度が伸び易かったとかはあるかもしれません(ちなみにホイールは全く同じものを使用しています).
一方,ボトムに関してはA052(赤)の方が高い傾向です.これも乗った時のフィーリングと一致していて,ブレーキングで止めた後,ステアリングを切り込んだ時(タイヤを斜めに使い始めた時)のグリップが明らかにCR-Sは悪いです.A052と同じように切り込んでも曲がらず,曲がらないのでステアリングを戻せず,戻せないので立ち上がりでアクセルを踏めない・・・という感じでした.FFよりFRの方がタイヤを斜めに使う時間は長いので,「TC1000でA052の0.8秒落ちだった」という話は,この「斜めのグリップのなさ」に起因しているのではないかと推測します.
では,細かく見ていきます.
1コーナー
最高速(上側の緑丸)はいずれも130km/hでした.CR-S(青)の方はブレーキングの開始をもうワンテンポ遅らせられれば上回った可能性がありますが,CR-S(青)は先述の「斜めのグリップのなさ」があるため,あまり突っ込む事が出来ず(突っ込むと止まり切れずオーバーシュートしてしまう),この辺りが限界というのは合っているかな?と思います.
ブレーキングポイントがズレているので少し分かりにくいですが,ブレーキの効きはCR-S(青)の方が良いため,速度の落ち方もCR-S(青)の方が急です.本来であればブレーキの効きが良い分,踏力を弱めてボトムの位置を合わせ込みたいところなのですが,なんせ斜めのグリップがないので,グリップの縦と横をオーバーラップさせないように「止める」ところと「切る」ところを分けて操作せざるを得ず,A052よりも早く速度を落とし,少し待った後にアクセルを踏み始める・・・という操作になっています(下側の緑丸).
A052(赤)と比べるとCR-S(青)の方が立ち上がりで早く踏めている分良さげに思えますが,進入で突っ込めなかった分の方がロスが大きいので,トータルで見ると0.13秒,CR-S(青)は遅れています.
2コーナー
2コーナーは内圧が高かった時はアンダーステア強くてダメだったCR-S(青)ですが,適正値で走ったこのラップではA052(赤)と完全に互角ですね.クルマのロール量が最大となる状況(横のグリップをMAXまで使っている状況)では,「A052に対して劣っていない」と言えそうです(当然,CR-Sは遅れなしです).
ヘアピン
ブレーキング開始のポイントはほぼ一緒ですが,CR-S(青)の方が速度の落ちが早いです(上側の緑丸).乗っていた時に感じた「ブレーキがよく効く」というのは,やはり間違っていなかったようですね.
ただ,そのブレーキの効きにドライバーが合わせ込めていないようで,エイペックス付近(下側の緑丸)ではCR-S(青)の方がボトムが低くなってしまっています.乗っていた時の印象としては,ここで曲がらない印象は受けなかったので,ドライバーが合わせ込めていないんでしょうね.意外とこの差は大きく,このセクションだけで更に0.3秒もCR-S(青)は遅れています.
インフィールド
ヘアピンでボトムが低かったCR-S(青)ですが,その分,しっかりと向きが変わったようでインフィールドまでの加速区間だけで0.15秒遅れを取り返しています(上側の緑丸).
しかし,その後の旋回ブレーキを使う部分では,タイヤのグリップを斜めに使うので,やはりA052(赤)に遅れをとるようです.CR-S(青)は向きが変わるのが遅く・アクセルONのタイミングも遅いのが比較すると明らかです(下側の緑丸).これで折角取り戻した0.15秒を再び失い,遅れはトータルで0.45秒となります.
左高速~洗濯板
インフィールドの立ち上がりでCR-S(青)は出遅れたものの,洗濯板までの車速の伸びで遅れを取り返しています.洗濯板進入の時点では(緑丸の部分),CR-S(青)の方が1km/h車速が高くなっていますので,やはりCR-S(青)の方が車速が伸びるんじゃないかと思います.これで遅れを0,1秒取り戻し,0.35秒差です.
最終複合
洗濯板を抜けた後,最終複合の前半部分はブレーキもアクセルも踏まず,操舵抵抗だけで減速して曲げているのですが,ここはA052(赤)に対して劣っている印象はありません.ただ,最終複合の後半部分,向きを変え終わってアクセルを開けていく部分においては,CR-S(青)のグリップが物足りない感じです.

(この辺り↑)
ここはタイヤのグリップを横→縦へ戻していく場面なので,やっぱり斜めのグリップが物足りないかなぁ~?と思いました.ただ,「物足りない」と言ってもそれはあくまでA052と比較した場合の話で,A052はこういったシチュエーションで他を圧倒するタイヤですから,他のタイヤと比較すれば十分以上の性能なんじゃないかと思います(タイヤのキャラクターの違いと言った方が良いかもしれません).ただ,冷酷に比較してしまうと遅いは遅いのでCR-Sは更に0.1秒遅れて,トータル0.45秒離される結果となりました.
以上を纏めると,ヘアピンでドライバーがCR-Sの特性に合わせ込めず,0.3秒遅れた点を差し引いて考えれば,
A052⇔CR-Sの差は0.15~0.2秒
といったところではないでしょうか.乗っている時に感じた以下の関係性をデータと照らし合わせても概ね一致しているように感じます.
縦 ・・・ A052 < CR-S
横 ・・・ A052 = CR-S
斜め ・・・ A052 > CR-S
あとは,コース特性の差・クルマの特性の差・ドライバーの好みの差といったところで,全開区間が多ければCR-Sの方が速くなりそうですし,逆に旋回ブレーキを多用する区間が多ければA052が速い気がします.総じてみれば,
「A052とほぼ互角であるが,最後の最後の詰めの部分でCR-Sは一歩及ばない・・・」
という感じでしょうか.ただ,両者の値段差を考えれば十分な性能だとも思います.
なお,この「ミニサーキットで,A052に最後の最後で一歩及ばない」という点から,なぜか私はRE-71RSが頭に思い浮かびました.タイヤの特性的にも,横よりも縦なBS特性に近いですし,何より走っている時に出るスキール音がBSっぽいんですよね.RE-71RSをフロントに使った事がないので厳密にはスキール音が一緒かどうかは分かりませんが,RE-71RやRE-11Aとは結構似た音に感じました.CR-Sのサイドウォールは柔らかいので,ここはBSと異なる傾向ですが,全体としてそんなイメージが頭にこびりついています.
繰返しになりますが,A052が買えるなら私はA052を買いますし,練習用タイヤとするには近いけど微妙に違う事も分かったので,現状だと「A052が手に入らなかった時の次善策」からは抜けだないかなぁ~?という感じです.性能的には特に不満はありませんし,良いタイヤだと思いますが,「アジアンタイヤとしては高い!」という意見も理解出来るので,目的やお財布に応じて選ぶ感じでしょうか.