
先日3ヵ月振りにTC1000を走行しましたが,タイムは自己ベストの0.65秒落ちと時期を考えるとなかなかに悲惨な結果でした.
フロントタイヤは日光で降ろしたユーズドなので,新品効果の0.2秒が得られないのは当然ですが,この時期にしては気圧も低め(1010hPa)だった点を考慮しても,せいぜい+0.1秒程度.トータルで0.3秒落ち(41.1秒)くらいが妥当なセンだと思うのですが,実際は41.4秒で,やっぱりどこかで0.3秒失っている計算になります.
乗っている時のEF8の印象としては,文句のつけようがないくらいバランスが良くて,冷えた路面でも挙動は終始安定していましたし,かといって思い通りに曲がらない訳でもありませんでしたし,何でこれでタイムが出ないのか? さっぱり分かりません(レースだとエンジニアさんが一番頭を抱えるクルマの状態ですね・・・苦笑).
唯一欠点らしい欠点と言えば,ブレーキのコントロールが若干シビアだった(思ったよりも速度が落ちなかった)事くらいで,当日のベストを出した時もヘアピンで思ったほどの減速Gが出ず,若干突っ込み過ぎになってステアリングを持ち替える羽目になりました(↓).
これは恐らく,現在ブレーキブースターの交換に合わせて前後のブレーキバランスをフロント寄りにしているため,リアの効きが足りず,絶対的な制動力が下がっているためと思われます.3ヵ月前にセットした時から今はリアタイヤのサイズが変わっていますし,次回はもうちょっとリア寄りに戻してみても良いかなー?とは思いました.
とはいえ,これで0.3秒も変わるはずもなく(せいぜい0.05秒程度でしょう),遅い原因が分からない事に変わりはないので,40秒台を出した時のデータと比較して原因を探ってみたいと思います.比較するデータは以下の通り.
【40秒台時:40.969】
気圧:1015.5hPa 気温:8.7℃ 路面温度:18.3℃
【今回:41.482】
気圧:1008.5hPa 気温:9.5℃ 路面温度:14.6℃
気圧こそ今回の方が低いですが,気温・路面温度はほぼ同等.これでタイムが出ないのは,やはり何かが足りないみたいですね・・・.
続けてロガーデータ(緑:40秒台時 青:今回).
上が車速,下がタイム差です.全体の傾向を俯瞰して見てみると,減速(ブレーキング)している領域では今回(青)の方が速く,反対に加速している領域では40秒台時(緑)に常に引き離されています・・・.確かに今回(青)の方が気圧が7hPa低いので,エンジンパワー的には不利ではあるのですが,気圧-タイムのトレンドライン(↓)から分析してみると,
気圧:7hPa差で失うタイムは,せいぜい0.1秒程度.やはり気圧の差以上に車速が伸びていないようです.40秒台を出した時はアンダーパネルを付けていなかったので,当時と比べれば車重は増えていると思いますが,「100kg=1秒/km」の通説に当て嵌めて考えると,0.3秒ダウン=30kg増.いや,さすがにそこまでは重くなっていないと思うので,やはりエンジンパワーが落ちているのでしょうか・・・?
トップスピードが3.5km/h低い原因の1つとして,後続のクルマを気にしてアタックラインの使い方が中途半端だった点と,ブレーキロック直後のアタックだったので,ヒヨってやや突っ込みが足りなかった点の2つのドライビングミスがありますが,同枠の他のラップを見ても最高速は 131.14km/h が限界だったので,ミスを差し引いたとしても,やはり1.5km/h分くらいはエンジン側に原因がありそうです.
ならば,気圧:7hPa差で1km/hの違いは出るのか?と,こちらもトレンドラインを確認してみたのですが,
気圧は最高速への感度が低いので,7hPa違ったとしても1km/hも差は出なさそうです・・・.となると,やはりエンジン本体の問題か.1つその原因となりそうな要素が思い浮かぶので,次回はそこを変更して再チェックですかね.
さて,加速側の状況は分かってきたので,次に減速側の状況を確認してみます.
TC1000における4箇所の減速ポイントのうち,1コーナー以外は今回(青)の方がボトムスピードが下がっているのが分かります.1コーナーのボトムスピードは90km/h近いですので,これを「高速コーナー」.それ以外のコーナーは「低速コーナー」と捉えて考えてみます.
まず,高速コーナーの走らせ方が変わっているのが読み取れます.進入速度が3.5km/hも違うので,それが影響している可能性もなくはないのですが,ここはクルマの特性が変わっているせいでは?と思っています.
今のEF8のセットはどちらかというと高速コーナー寄りになっている気がしていて,TC2000や日光といった高速コーナーの影響度が大きいコースではあまりタイムは落ちていません.実際走っていても,例えば日光の8~9コーナーは狙い通りに曲がってくれますし,それでいて安定感もあるためコントロールも楽です.こういった特性がTC2000・日光といった難コースでも,計測1でタイムが出せる理由なんじゃないかと思っています.つまり,高速域でのコントロール性が高いセットになっているため,40秒台時(緑)のような止めて→曲げるみたいなドライビングをする必要がなく,高い速度を維持したままコーナーに放り込む走らせ方をしても曲がってくれる,という事なんじゃないかと思っています.
じゃあ,これがTC1000の攻略として正しいのか?というと結果がそれを証明していて,高い速度でコーナリング出来ている反面,アクセルONのタイミングは遅れてしまっているので,2コーナーから先で車速が伸びていません(ここだけで0.2秒はロスしています).これから分かるのは「高速コーナー寄り」と言っても,アクセルを踏んで抜けていく高速コーナー(日光の9コーナーのイメージ)ではよく曲がるが,アクセルOFFで飛び込んでいくような高速コーナー(日光の8コーナーのイメージ)ではそんなに曲がらないという事なんでしょう.
次に,低速コーナーの方を見てみると,
先述の通りヘアピン(左側の赤丸)はミスってます.確かに若干突っ込み過ぎではあるようなのですが,ブレーキを残しながら曲げていくような部分で,クルマが思ったほど曲がらないのも要因だと思われます(じゃないとステアリングを持ち替えたりはしない).これはインフィールド(真ん中の赤丸)の方でも読み取れる傾向で,ほんの少しですがブレーキを残す量が多いです.
一方,最終コーナー(右側の赤丸)の方は,ヘアピン・インフィールドと異なり,ターンインではなく,ターンアウトの方で曲がっていないようです.
これは恐らく今年から新たに追加された2段目の縁石の影響かなぁ~と思っています.最終コーナーへアプローチする際,「このラインで2段目の縁石に当たらないよね? 大丈夫だよね??」と一瞬アクセルを踏むのを躊躇してしまうので,その躊躇した分が表れている気もします(これで0.02秒くらいロス).
纏めると,現在の足回りのセットの評価としては,
高速コーナーの減速側 ・・・ ○→△
高速コーナーの加速側 ・・・ ○→◎
低速コーナーの減速側 ・・・ ○→×
低速コーナーの加速側 ・・・ ○→△ (←メンタル的なもので,本当は○かもしれない)
という感じでしょうか.タイム差比較だと「減速域は速くて,加速域は遅い」みたいな感じでしたが,それは「減速域で曲がらないから,ブレーキングを遅らせて突っ込んで稼いでいるだけ」というのが正確なようですね.
以上,タイムが伸びない原因分析でした.分析の結果見えてきた事を纏めると,
①ブレーキングで止まらない ⇒ ブレーキバランスをリア寄りへ
②エンジンが遅い ⇒ 1つ思い当たる要因を排除
③足回りのバランスが高速コーナー寄り ⇒ 低速コーナー寄りに微修正
という感じでしょうか.①・②はテストしてみれば答えは出るで「やれば済む話」で良いですが,③はツラいですねぇ.バランス調整は結局のところ「妥協点をどこに置くか?」という話なので,正解がありませんし,調整にはお金も掛かります.はてさてどうしたものか・・・.