先日のTC1000で,トーを開いて車体が持ち上がるように感じた原因は「ダンパーの温度」と「舵角」といったところまで分かってきたので,「舵角」の方も備忘録がてら確認しておきます.
まず,サンプルにするデータは
195/55R15で205/50R15に0.05秒差まで迫った時のデータです.当時との違いはトー角だけ.厳密にはタイヤの摩耗状態も違いますが,まぁ,ここは横に置いておきます.
続けて,コンディションですが,以下のような感じ.
OUT '10の時 ・・・ 気圧:1022.0hPa 気温:8.8℃ 路面温度:13.6℃
OUT '15の時 ・・・ 気圧:1017.9hPa 気温:7.2℃ 路面温度:11.8℃
気温・路面温度はほぼ同等で,今回のOUT '15の方が気圧だけ4hPa落ちる感じですかね.
気圧のトレンドラインから,タイム差を推測すると(↓),
大体0.1秒落ちる計算.実際のタイムも(↓),
OUT '10の時 ・・・ 41.038
OUT '15の時 ・・・ 41.135 (+0.097)
その通りになっているので,まぁ,順当な結果ですかね・・・.
一応,ロガーデータで比べてみると(緑:OUT '10の時 青:OUT '15の時),
ざっくりこんな感じでしょうか?(↓)
ホームストレート ・・・ +0.06秒 ⇒ 気圧の影響
1コーナー ・・・ +0.04秒 ⇒ インリフトの影響(ネガティブ)
ヘアピン ・・・ +0.12秒 ⇒ インリフト + トーアウトの影響
インフィールド ・・・ -0.14秒 ⇒ インリフトの影響(ポジティブ)
最終コーナー ・・・ +0.04秒 ⇒ インリフト + トーアウトの影響
「インリフト + トーアウト」の部分は,
コーナーの入口~中間の部分(Entry~Middle)はインリフトの効果でよく曲がるのですが,コーナーの中間~出口の部分(Middle~Exit)でトー角が合っておらず,思ったほど曲がらないため,プラスマイナスでゼロになる,みたいなイメージです.
ちなみに,昨日学んだツウな言い方(笑)だと,これを「ミッドアンダー」と呼ぶのだそうです.「ミッドアンダー」は「エントリーオーバー」「エグジットオーバー」と相性が良いそうですが,恐らく「エグジットオーバー」の方は後輪駆動車の話でしょうね(FFでは起こり得ないので).一方,「エントリーオーバー」との相関に関しては今回の1コーナーの結果を見るとFFでも起こりそうなので,次の映像比較でよく見てみたいと思います.
という事で,肝心の「舵角」に関する映像比較です(左:OUT '10の時 右:OUT '15の時).
コーナー毎に詳しく見てみます.
1コーナー
1コーナーの進入は両者とも同じですが(↓),
中間はOUT '10の時(左)の方が舵角が大きいです(↓).
そして,出口は似た舵角ですが,OUT '10の時(左の方が若干大きいですかね?(↓)
中間部分で舵角が少ないのは,右リアがインリフトしてテールスライドが起こっているからでしょうね.テールスライドがおさまった出口側まで同じ舵角となっている事から,ムダなスライドはしておらず,極僅かに流れている感じなんでしょうね.ただ,これで0.04秒遅い(ボトムも3.9km/h低い)ので,やはりリアをスライドさせて走るのは遅いんだなぁ~と思います.
ヘアピン
ヘアピンの入口では,OUT '10の時(左)の方が一気にステアリングを切り込んでいます(↓).
中間でも,OUT '10の時(左)の方が切り込む量が多いです(↓).
しかし,出口では逆にOUT '15の時(右)の方が舵が残っています(↓).
ここから分かるのは,にOUT '15の方は進入でインリフトしてクルマが切れ込んで行くので,それを抑えるために舵を減らし,中間までそれをキープしているのですが,その結果,エイペックス(コーナーの頂点付近)でしっかりステアリングを切って向きを変える!という操作が出来ないため,立ち上がりで向きの変わりが足りず,舵を戻せない・・・となっているんでしょうね.
なるほど.確かに「エントリーオーバー」だと「ミドルアンダー」になる訳ですな・・・.
インフィールド
インフィールドの入口はほぼ同等です(↓).
しかし,中間ではOUT '10の時(左)が大きく切り込んでいるのに対し,OUT '15の時(右)は舵角が少ないです(↓).
それでいて,出口は同じ舵角に戻っています(↓).
これは先程のヘアピンとは真逆で,言うなれば「ミドルオーバー」な状況なんでしょうね.一番欲しいところで,一番向きが変わってくれるので,少ない舵角で高い車速を維持したまま曲がれている,という事なんでしょう.この結果から察するに,トー角を「インフィールドに合わせるとヘアピンで曲がらない」「ヘアピンに合わせるとインフィールドで曲がらない」とか有りそうですね・・・.
最終コーナー
最終コーナーは進入~中間まで,両者似た舵角を維持したまま一定です(↓).
出口付近だけ,若干OUT '15の時(右)の方が舵を入れ続けているので,ここで曲がんないんでしょうね・・・.
以上,トーを開いた時の舵角比較でした.
インリフトさせた時のメリット・デメリット両方が出ているので,正直なんとも言えない結果かなぁ~?と思いました(多分タイム的にはほぼ変わらない).トーを開く事によって,立ち上がりでイメージ通りに曲がらなかった・・・なんて事態は起きなくなるので,アクセルを踏み続けてコースアウト!みたいな危険なシーンが減るという意味ではメリットの方が大きいのかもしれません(ラリー車がドリフトしながらコーナーに入って行くのと同じ考え方ですかね).
ターンインでインリフトしてオーバー気味になるのは,個人的には好みではないのですが,今回のインフィールドのクルマの動きは確かに気持ち良かったので,積極的に気持ち良い方を取りに行くか? 消極的に気持ち悪い方を避けるか? 悩ましい感じですね(笑).
また,今回起きたインリフトは,タイヤが浮き過ぎてケンケンするようなレベルではなかったので,そういう意味ではギリギリちょうど良い塩梅なのかもしれません(狙い通りの合いの子).ただ,それと同時にゲインもなかったという事が分かったので,やっぱり大幅にセットを変更しないと伸び代はないんだろうなぁ・・・とも思いました.