
アタックシーズンを終えた3月頃から「なんだかブレーキのフィーリングが良くないなぁ~」と思い,
ローター&パッドを交換してリフレッシュしたのですが,それでもフィーリングは改善せず,「
対向キャリパーに変えようかなぁ~?」なんて色々調べていました.
それから月日が経って4月に入った頃,フィーリングが更に悪くなって,駐車場で車庫入れをするような極低速のシチュエーションで,ブレーキペダルをソォ~ッと踏むとペダルタッチが物凄く柔らかく,ストロークの半分くらいまで行くようになりました.
「アレレッ? この感触は,まさか
アレじゃないだろうな・・・」と10ヵ月前の記憶が蘇り,ショップでメカニックさんに相談してみたところ,
「それ,マスターシリンダーでしょ!」
とのご回答.うぇぇ~,交換してからまだ1年も経ってないのに,もうマスターシリンダー終わったのかよ・・・.orz
私のマスターシリンダーはNSX用に交換しているので,NSX用ってそんなにヤワなのか?と調べてみたら,サーキット走行を繰返すと摩耗が早く進むので,
後期型のNSX-R(NA2R)に替えるのが定番メニューなんだとか.「確かにType-R仕様じゃないけどさぁ~.それでも一応スポーツカーでしょ~,いくらなんでも短命過ぎない?」と不満思いつつも,しょうがないのでオーバーホールキットを注文したのですが,純正部品のくせに,なぜか6月中旬まで入荷しないとの事で作業は延び延びに・・・.
その間,騙し騙し走らせていたのですが,
先月のTC1000の頃には,いよいよブレーキペダルが奥にスコッ!と入る末期症状になってきたので,さすがにこれは危険だという事で以降,走行休止にしていました.
そして,先週末ようやく部品が揃ったのでショップへEF8を預け,作業完了の連絡を待っていたら「オーバーホールしても直んなかったみたいです・・・」と営業さんから電話が.「ああ,やっぱりなぁ~」という気持ちと「うわぁ~,参ったな・・・」という気持ちが入り混じった状態で一度電話を切ると,その2時間後に「原因分かりました.ダンパーフォークです!」と入電.
( ˙꒳˙ ) ハイ??
口頭で一所懸命説明してくれたのですが,何が起こっているのか全くイメージが湧かないので,「分かりました.今からそっち見に行きます」と仕事を抜け出してショップへ.
降水量10mmというザーザーの雨の中,靴の中まで水浸しになりつつショップに到着してEF8を見せてもらうと,以下のような顛末でした.
まず,私のEF8はダンパーストロークを稼ぐために,フロントに
DC2用のショートダンパーフォークを使っています(↓の左側).
ご覧の通り,このダンパーフォークは純正(右)より大分ゴツいので,ダンパーフォークとブレーキキャリパーの間隔が純正よりも狭くなっています.
更に私のEF8のフロントキャリパーは,ビッグローター対応で
EK9用に変更しているため(↓),
純正よりも位置が上がって,更にダンパーフォークに近づいています.
この状況で,私は4月に
ダンパーフォークブッシュのピロ化を行った結果(↓),
ダンパーフォーク本体が左右にスムースに首振り(↓)出来るようになりました.
この首振り量を実際に現場で見せてもらったのですが,「えっ!? そんなに動くのー??」と驚くほどの振れ幅で,この首振りはダンパーがストロークしてスプリングに力が加わると,スプリングがダンパーフォークを捩じるように力を加えるため,スプリングの巻き方から左フロントのダンパーフォークはキャリパーの方に向く形となります.
この状況でステアリングを右に切って,キャリパーをダンパーフォークに近づけると(↓),
この両者が当たっちゃう訳なんですねぇ・・・.orz
確かにダンパーフォーク側を見ると当たっている痕跡がありました(↓)
でも,単に当たるだけなら物理的にロックされて,ブレーキペダルのタッチは硬い感じとなり,スコッ!と入るような柔らかい感触にはならないのでは・・・?と思っていると,工場長がメカニズムを説明してくれました.
まず,先程も述べましたが私のEF8にはEK9用のキャリパーが入っていますが,如何に天下のType-Rと言えど,テンロククラスは片押しのフローティング(浮動型)キャリパーです.

(ADVICS:
ブレーキ雑学講座 ふたつのキャリパー その1より)
フローティングキャリパーの"フローティング"はその名の通り,本体が浮いた状態で左右に動く訳なのですが,ブレーキを踏んで油圧が掛かり,ピストンがキャリパー本体を押しつけて動こうとした先にダンパーフォークがいるため,キャリパー本体は動きません.キャリパー本体が動かない(動けない)という事は,ブレーキパッドがディスクに当たらないため,勿論ブレーキは効かず,ブレーキペダルを踏んでいるのにクルマは止まらない・・・という恐怖状態に陥る事になる訳なのですが,この時に,私が使っているNA1用のマスターシリンダーが思わぬ動きをします.
私の使っているNA1用のマスターシリンダーは「ALB(ABS)仕様」です.「ABS(Anti-lock Brake System)」は皆さんご存知の通り,ブレーキペダルを強く踏んだ時に,ロックを解除するシステムですが(↓),

(ADVICS:
ブレーキ雑学講座 ABS入門 その3より)
このロックを解除する際,ブレーキキャリパーに掛かっている油圧を抜く必要があります.このため,ABS車用のマスターシリンダーは,想定以上の圧力が掛かった時に油圧を抜くための「センターバルブ」という機構を持ったものがあるそうです(↓).
キャリパー本体が物理的に固定されて,油圧の逃げ場がない状態で,ブレーキペダルを更に奥まで踏み込んで圧力を上げたら,そりゃ想定以上の油圧になる訳で,そうなった時に「センターバルブ」が開いて油圧を一気にリザーバーへ油圧を逃がしてしまうため,ブレーキペダルが奥にスコッ!と入るような感触になるのだと思われます・・・.orz
以上,ブレーキペダルが奥にスコッ!と入る,2024年バージョンでした(泣).
纏めると,以下の部品を組み合わせたクルマで,
・DC2用のダンパーフォーク
・EK9用のキャリパー
・NA1用のマスターシリンダー
・EF8用のダンパーフォークピロブッシュ
以下のようなシチュエーションになると,
・下り坂 or ブレーキングでフロント荷重になった後
・右にフル転舵
ブレーキペダルが奥にスコッ!と入るようです.流用・流用でクルマを組み上げるとこういう事にハマるという,見事な組合せ問題でした(泣).こんなケースにハマる人はそうそういないとは思いますが,皆様お気をつけ下さい・・・.
(謎を解き明かしてくれた工場長,本当に有難う御座いました!<(_ _)>)
Posted at 2024/06/18 21:40:49 | |
トラックバック(0) |
トラブル&修理 | 日記