
日産のレーシングカーというとやはり「GT-R」となってしまう訳なのですが,一言「GT-R」と言ってもとにかく種類が多い! そんな中から面白そうだなぁ~と思ってみたのが今回触れるGT1仕様勢.あんまり日の目を見てなかったような気もしますが,それ故に逆に貴重(レア)という事で,足を止めてじっくり観てました.
最初は1995~1996年のル・マン参戦車両である「NISMO GT-R LM」.こちらは2023年に
ロードカーバージョンを見学した事がありますが,レーシングバージョンは初です.
これが1995年仕様で(↓),
こっちが1996年仕様(↓).
ご覧の通り隣同士なので比較し放題です(笑).両車の違いを色々調べてみたのですが,出てくる情報はエンジンばかりで車体側の差異に関しては見つけられませんでした.
(1995→1996年で排気量を2.6L→2.8Lへ拡大し,ドライサンプ化もしたとの事)
実際観てみても細部が異なるくらいで大きな違いは見つかりませんでしたが,いくつか拾ってみると,まずボンネット中央のアウトレットの形状が違う(↓).
1996年仕様(下)の方が単に穴を開けるだけでなく,一工夫している印象ですね.細かいところだとボンピンの間隔も広くなっているので,エンジンルーム内のレイアウトが変わっていそうです.
続けて,その左上にある吸気口と思わしき穴の形状も異なる(↓).
1996年仕様(下)の方はNACAダクトになっていて,こちらも一工夫している感じですね.
リアウイングも翼端板の形状が異なります(↓).
ロードラッグな感じの1995年仕様(上)に対し,1996年仕様(下)はしっかりとダウンフォースを発生させたい感じのウイングですね.
ボディサイドも横並びなので,違いがよく分かります(↓).
1995年仕様(左)→1996年仕様(右)で,リアタイヤ前の開口部のサイズが小さくなっているのは理解出来るのですが,1996年仕様(右)の方がドア下部分をくり抜いている(アンダーパネルがない)のは意外でした.逆だったら理解出来るのですが,これはどういう意図なんでしょうね?
そこから視線を上げるとミラー形状もアップデートされているのが分かります(↓).
更にリアのフェンダーの辺りを観ると,1996年仕様(右)の方にはNACAダクトが見えます(黒くなっている部分).何かトランク内に冷却したいものがあるんでしょうね.多分1台1台観ていたら気づけない部分もあったと思うのですが,こうして横並びにされると間違い探しみたいで気づけますね.
さて,そこから時は流れて,次にGT1仕様のGT-Rが生まれるのは15年後.ル・マンへの挑戦は「
R390GT1」へとバトンタッチし,その後はGT1というカテゴリー自体が消滅したりして,世代がR33→R35へ大幅に飛んだ後に表れます.
2010~2012年のたった3年間しかなかったFIA GT1世界選手権用のクルマなので,正直,実車を観るまでは存在をすっかり忘れていました(汗).
エンジンは3.8L V6ツインターボの「VR38DETT(↓)」ではなく,
北米の「INFINITI QX56」等に搭載されていた5.6L V8の「VK56DE」なのだそうです.これはレギュレーションで「5.5L以上のエンジンを搭載する事」というのが定められていたため,載せ替えたそうです.
展示車は黒いボディなので分かりづらいですが,空力はエンジンルーム内の圧力を抜く事でダウンフォースを発生させる思想なのだそうで,物凄い数のスリットがあります(↓).

(NISMO:
FIA GT1マシン解説より)
フロントフェンダーも,これでもか!というくらいスリットが入っているのが特徴的でした(↓).
これだけ過激な印象の割には,なんだかタイヤが小さく感じたのですが(↓),
これでも「31-71-18(幅:310mm,外径:710mm,リム:18インチ)」のサイズのタイヤを履いているそうです.
ちなみに,個人的に気に入ったのは,車内に置かれているこのファン(↓).
耐久レースなので,ドライバー用のクーリングファンがあっても別におかしくはないのですが,こんな目立つ位置に堂々と置かれているのがなんだか面白かったです(笑).
以上,Heritage CollectionのGT-R GT1仕様編でした.
Posted at 2025/04/28 19:15:16 | |
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