
先月末,
食事会のついでに「BICライブラリ」へ行って調べ物をしたのですが,一番知りたかった情報を得られなかったので,今度は国分寺市にある「東京マガジンバンク」へ行って来ました.
「東京マガジンバンク」への訪問は,昨年に続いてこれで2回目.
前回訪問時のブログに丁寧に本の借り方を残しておいたおかげで,今回はスムースに借りる事が出来ました(1年前の自分に感謝・・・笑).
という事で,その一番知りたかった情報である,フロントアンダーパネルの「アップスイープ」に関して今回調べた結果を纏めておこうと思います.
まず,事の発端は先月「日産ヘリテージコレクション」に行った時に見学した
BTCC仕様の「プリメーラGT」(↓).
このクルマの特徴の1つが「アップスイープ」で,「アップスイープ」とはフロントバンパー下面に設けられたアンダーパネルの後端の部分の形状の事を指しており,バンパー下までフラットだったものが,フロントタイヤの直前でリアのディフューザーのように角度を付けて持ち上げているのが特徴です(↓).
この「アップスイープ」の最適な角度は8~10°だそうで,それ以上角度を付けると加速時の水平姿勢の時はダウンフォース量が大きくなるが,減速時に前傾姿勢となった際,角度がつき過ぎて気流がストールし,ダウンフォースを失うのだそうです.そういった特性は前回訪問時の調査で理解したのですが,では,この「アップスイープ」でダウンフォースを得るためには,アンダーパネルをどれくらい地面に近づければ良いのか?という点が気になっていました.
以前調べた文献では(↓),

(Aerodynamic Effects of Indy Car Componentsより)
「車高を10mm以下に下げないと,アンダーパネルでダウンフォースは得られない」というデータが示されており,これを見て「車検対応の90mm車高では全くダウンフォースが得られない」という事を知りました.このため,EF8にアンダーパネルを装着した後,リアの安定感が増したように感じたのは,
アンダーパネルによってダウンフォースが出ていたためではなく,単に重量物がボディ下面に付いて重心が下がったためなんだろうなぁ~と思っていました.
しかし,実際にこの「アップスイープ」を備えたフロントバンパーの実物を見てみると(↓),
低い事は低いですが,さすがに10mmという事はなさそうだなぁ~と思いました.
じゃあ,一体,このクルマの最低地上高はいくつなんだ?と調べてみたところ,
45mm である事が分かりました.実際は車速が上がれば上がるほどダウンフォースが掛かって車高が下がるため,走行中の実車高はもっと低いそうなのですが,それでも「車高45mm以下であればアンダーパネルでダウンフォースが発生する」という情報を得る事が出来ました.10mmに比べれば45mmというのは大分現実的な数字なので,少し期待感が増してきたのですが,ここで1つ気になる事が.
「車高45mmでダウンフォースを発生させるために必要な車速はいくつなのか?」
2L NAとはいえ,この世代のツーリングカーの出力は300PSを超えています.それなりにかなり高い車速なんじゃないか?と思い,JTCCのツーリングカーの最高速がどれくらいだったのか?を調べてみたところ,こんなデータが(↓).
富士スピードウェイのホームストレートが約1.5kmですから,最高速で240km/hレベルという事ですね・・・.やっぱりレーシングカーだなぁ~と思いつつ,中間加速が知りたいな~と更に調べてみると,こんなデータを見つけました(↓).
TC2000の計測点で196km/hだそうです(ちなみにタイムは57.08).やっぱり化物だな・・・と思いつつ,これくらいの車速であれば,車高45mmでもダウンフォースは出るという事のようです.ちなみに,私のEF8は150km/h台ですから,45mmでは到底足りず,もっと車高を下げないと効果は得られないのでしょうね.
なお,先述の「プリメーラGT」で車高が45mmなのはフロントバンパーの部分だけで,サイド~リア部分はもっと高いです(↓).
これはレギュレーション上の制約から落とせないという事もあるのですが,フロントバンパーで圧縮した空気を素早く抜くためには,むしろサイドの車高が高い方が好都合だったそうです.
そんな感じで定量的なデータが得られたので,「アップスイープ」に興味が湧いてきたのですが,先日,
首都高で緑甲羅をぶつけられてアンダーパネルを破損したので(↓),
いっそ,アップスイープ付きのアンダーパネルに変更するか?とか考えていたのですが,調べてみたら汎用品でも結構良い金額でした・・・.となるとワンオフで作ってもらうしかないか?と更に調べてみたところ,こんな製品を見つけました(↓).

(CF Lab:
アップスイープ Type1 STD FRP製より)
A:320mm B1:295mm B2:185mm C:115mm D:50mm
こんな感じで後付け出来る「アップスイープ」のようです(↓).

(CF Lab:
アップスイープ Type1 STD FRP製より)
価格もそこまで高くなさそうなので面白そうだなぁ~と思ったのですが,果たして私のEF8に取り付けられるスペースがあるのか??
ちょっと厳しいかな・・・.ちなみに「アップスイープ」を付ける場合はストレーキ(↓)は撤去となりますね.
最後に,JTCC車両だと「アップスイープ」ではなく,こういった排出口をバンパー横に設けているケースもありますが(↓),
コレ,ダウンフォースを稼ぐという意味合いではなく,あくまでクーリングのために設けていたそうです.
バンパー横というのは負圧域なのだそうで,ここに開口部を設けると空気がよく抜けるのだそうです.その反面,ドラッグは増えるそうで,「前面投影面積を増やすようなもの」と表現されていました.冷却性能を取る場合は開口部を開け,最高速を延ばしたい場合は開口部を塞ぐ,といった切替をレースでは行っていたそうです.なので出来れば,ここはシャッター式が望ましいそうですが,実際のレースでは簡単なのでテーピングで済ませていたようですね.
こういうのを知ると,
「日産ヘリテージコレクション」で観たGT-RのR33にはあって(↓),
R34にはなかった(↓),
・・・のは,そういう理由だったからかぁ~と理解が深まりました.
以上,アップスイープのお勉強でした.
Posted at 2025/05/03 00:57:17 | |
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