
ジムカーナコース・左周りコースの両方で自己ベストを更新した
先日のナリモ.
いつもの如く反省会をやろうと思うのですが,ジムカーナの方はコース攻略をやり切ってますし,ドライビング的にも限界を超えた走りだったのが明白なので(もう1回やれ!と言われても出来る気がしない),今回は左周りコースの方で
1年半前の結果と比較し,アップデートの効果検証を行いたいと思います.
まずはいつもの通りサンプルデータから.
【前回(45.44)】
【今回(44.75)】
続けてコンディションの比較.
前回 ・・・ 気圧:1018.5hPa 気温:15.8℃ 湿度:49%
今回 ・・・ 気圧:1001.7hPa 気温:20.2℃ 湿度:77%
全てのパラメータで今回の方が条件が悪く,パワー的には不利ですね.
では,ロガーデータを使って細かく見ていきましょう.
ホームストレートエンド
青が前回,赤が今回ですが,20hPa近く気圧が低くパワーが出てない割には今回(赤)の方が終端速度が3km/h高いです.車速の推移を見ると途中で車速が伸びている訳ではなく,スタートラインを通過した時点で既に3km/h分のオフセットを築けているのが読み取れます.すなわち「スタートダッシュが良かった」という事ですね.
これには1つ理由がありまして,通常のナリモのフリー走行だとグルッと回って助走してからホームストレートに向かいますが,この練習会はジムカーナ形式なので,コース左端の切れ目からゼロ発進でアタックに入っていく事になります(↓).
この切れ目,当たり前ですがクルマを置くようには出来ていないので,前走車の邪魔にならないような位置にクルマを停めると,左リアが土の上になるんですよね.加えて,アスファルトと土とで高さに差がありますから,左リアが下がって車体が傾く事にもなります.「左リアが下がる」という事は「右フロントが浮く」という事なので,FF車の場合「これじゃトラクションが稼げない・・・」という事になるので,今回は前走車が通過した後,ほんの少しだけ前進して左リアをアスファルトの上に乗せるように変更しました(↓).

(動画で見ると,前走車通過後,僅かに動いているのが分かると思います)
乗っている時は「正直そんなに変わらないかなぁ~?」とも思ったのですが,0.08秒を削り取るために,やれる事は全部やろうと思い試してみたのですが,どうやら正解だったようですね.これだけで0.03秒削れているのでチリも積もれば何とやら~です.
10R~15R
既に感想を述べていますが,SPOONキャリパーに変わっても1コーナーのブレーキングはさして違いを感じず.ただ,続く2コーナー(15R)に向けてのハンドリングに関してはコントロール性が今回(赤)の方がズバ抜けて良かったです.
フロントのロアーアームブッシュをピロ化した事で,動きが素直というか,曖昧さがないというか,切ったら切った分だけ積極的に曲がろうとするので,アクセルを開けてもアンダーステアに転じる事もなく,凄くコントロールが楽でした.ロガーデータ上でも,前回(青)はフロントタイヤと格闘して波形が上下に波打っているのに対し,今回(赤)はキレイなV字を描いているのが読み取れます(↓).
8R~13R
ヘアピン状の2コーナーを回り込んでS字状に抜けるセクションですが,ここもアンダーステアが出る素振りが全くない.今までだと,この辺りからアクセルを開け始めたら(↓),
アンダーステアが出て曲がり切れなくなるので,アクセル開度を微調整してギリギリコース幅が足りる部分を狙っていったのですが,今回はアンダーステアが全く出ないので躊躇なくアクセルを全開に出来ました.ロガーデータを見ると15Rコーナーを抜けた辺りの速度差が6km/h近く高いので,そりゃ今回(赤)の方が速いのも当然だわなぁ~という感じです(この時点で今回の方が0.3秒リード).
10R
S字セクションを抜けた先の直角コーナーですが,ここが少々不可解です.手前の13Rを高い速度で抜けて,ブレーキを踏まずにアクセルワークだけで右へターンしていくのですが,今回(赤)の方がここの車速の伸びが悪いんですよねぇ・・・(↓).
他は想定以上に曲がるのにここのコーナーだけが曲がらず,アクセルを開けられない(↓).
そのせいで前回(青)に比べて露骨に車速が落ちています.これが
プロに指摘頂いた「大舵で曲がらない」の症状なんじゃないかと思います.この時点までに今回(赤)の方が0.3秒リードしていたのですが,アクセルを踏めなかったせいで0.15秒までリードが減ってしまいました・・・.
ピロ化によってこれだけフロントのレスポンスが良くなったにも関わらず,この症状が出ているので,これはサスペンションの問題ではなくタイヤの問題なんじゃないか?と内心思っているのですが,この辺りは別の機会に触れたいと思います.
7R~8R
ここは荒れた路面の部分(↓)をキッチリ避けるために,
ボトムは捨てて小回りを優先したのですが,いやはや,ここでもフロントのレスポンスが素晴らしい.曖昧な動きがなく,スパッ!と切り込んでいってくれるので,ここも今回(赤)の方がV字状の波形となっています(↓).
12R~18R~10R~15R
右のヘアピンを小回りで抜けた後,続く左のヘアピンをクリアして外周部分をアクセル全開で駆け抜けていく訳なのですが,ここのボトムの差がこれまた大きい(↓).
前回(青)は18Rで一度アクセルを戻さないと抜けられませんでしたが,今回(赤)はそんな事をしなくても曲がる♪ 曲がる♪ 次の直角コーナー(8R)までに再び0.3秒の差をつけていました.
ちなみに,先程の直角コーナー(10R)で起きていた「大舵で曲がらない」症状はここでは起きておらず,ステアリングを切ったままアクセルを全開にしているにも関わらず,スムースに加速していっているのがデータから読み読み取れます.やはり速度低下の要因には「舵角」がキーワードとなっているのが窺えますね.
8R
全開でコーナリングしてきた後,直角に左に折れるコーナーですが,ここはフロントのレスポンスの良さを活かして少しドライビングを変更しました.
前回まではどちらかというと進入のブレーキングで稼いで,ステアリングを切った後はコース内にと留まれるポジションにつけるまでアクセルを開けるのを我慢するような走らせ方だったのですが,今回は敢えて進入で飛び込まず,若干手前でブレーキングを終えて,ステアリングを切った後,アクセルを開けながらLSDを使ってラインを合わせていく走らせ方に変更しました.イメージ的には,下図で言うところの日本式→欧州式への変更という感じですかね(↓).

(AUTOSPORT No.1349:日本と世界はどう違う?[特集]スポーツドライビングより)
欧州式の方がラインの自由度が高いので,個人的には出来るだけこちらの走らせ方をしたいのですが,アクセルで向きを変えられる後輪駆動車とは違い,FFは「進入が全て」になるので,なかなかこういったアクセル踏みながら曲げていくドライビングが出来ないのですが,ピロ化のおかげでとにかく曲がってくれるのでこれが出来るようになりました.実際,ロガーデータで見ても(↓),
"待ち"の時間が全くなく,キレイなV字を描いて立ち上がれているので,単純に速いのが分かります.
(今回の方が0.38秒リード)
15R
グルッと回り込むヘアピンですが,ここは今回ブレーキングでミスりました.
これまでと同じイメージでブレーキングしたのですが,タイヤの摩耗が予想以上に進んでいたようで,フロントタイヤが負荷に耐え切れず,ロック気味になってアンダーステアを出してしまいました.
ロガーデータで見ても今回(赤)の方がボトムが7km/hも低いので,明確なミスですね.走っている時は「やっちゃったぁ~」と後悔しましたが,それほど致命傷にならなかったのが唯一の救いでした.
ちなみに,コレがSPOONキャリパーに変更してから初のフロントロックだったのですが,ペダルのタッチが全く変わらず,「えっ!? ロックするの?」という感じでした.これまでだとここまで攻めたらグニュッとした感触があって,「あ~,これはロックする,ヤバイ~」という予測が出来たのですが,SPOONキャリパーは板のように固いのでその予測がつきませんでした.まぁ,ロックと言っても白煙が上がるレベルではないので,そういう意味では「コントロール性が高い」と言えるのかもしれませんが,一度感覚をリセットして,重点的にロックの練習をしてフィーリングを覚えないと,いざ!という時に対処出来ないかもしれませんね・・・.
7R~12R
右のヘアピンを抜けた後の左のヘアピンですが,ここも本当によく曲がるようになりました.
今までだと,軽くブレーキを当ててフロント荷重を作ってやらないと曲がらなかったのですが,ピロ化後はノーブレーキで曲げられます(操舵抵抗による失速だけで十分,という意味).なので,ロガーデータを見た時にこれだけボトムスピードに差が出るのは(↓),
当然の結果だろうなぁ~と思いました.これで今回(赤)の方が0.47秒リードし,ここからゴールラインまでの間はグングン両者の差が開いていき,最終的には0.7秒タイムが縮まる結果となりました.
以上,アップデートの効果検証でした.纏めると,
・ロアーアームブッシュのピロ化は効果大
・滅茶苦茶クルマが曲がるようになった(フロントのレスポンスが良い)
・クルマの動きに曖昧さがなくなり,素直なハンドリングになった
・コーナリング中にアクセルを開けてもアンダーステアに転じる事がなく,そのまま曲がっていく
・FFらしからぬ,アクセルを開けながらコーナリングするドライビングが出来るようになった
・SPOONキャリパーの操作性は違和感なし
・効きも全く変わらない(本来当たり前なのだが)
・どんな踏み方をしても(ペダルを強く踏んでも)一定の位置でペダルが止まる
・そのせいか,踏み始め~最大制動力に達するまでの操作時間が短くなった気がする
・一方で,フロントがロックする感覚はまだ掴み切れていない
・これまで油圧特有のグニュッとした感触に頼ってロック判断していたのをリセットする必要がある
といった感じでしょうか.とにかくロアーアームブッシュのピロ化が大正解でした.アッパーアームなんぞより,先にロアーアームの方をやれば良かったと心底後悔するくらいです.
やっぱりサスペンション関係は,ちゃんと動きを理解して変更しないとダメですね.この2年間,遠回りはしましたが良い勉強にはなりました.
さて,これで残る問題は「大舵で曲がらない」.これに関しては1つ仮説が思い浮かんだので,次はそちらを試してみようと思っています.
