
9年間プロの高い壁を乗り越えられず苦しんできましたが,
先日のTC2000でようやく上回る事が出来ました.
さすがに9年前ともなるとクルマの仕様が違い過ぎるので,当時のプロの走りと比較するのではなく,これまでの自己ベストであった
2024年2月と比較する形でタイム短縮に繋がった要因を分析してみたいと思います.
いつもの通り,まずはサンプルデータから.
【前回(1'07.454)】
Sec1:27.606 Sec2:27.719 Sec3:12.129 最高速:154.928km/h
【今回(1'07.164)】
Sec1:27.642 Sec2:27.724 Sec3:11.798 最高速:153.409km/h
おっと! これだけ見ると今回の削り取った0.29秒は全てSec3だったようですね.その一方で,最高速は今回の方が下回っているため,コンディション的にはあまり差がなかったのかな?と確認してみると,
前回 ・・・ 気圧:1025.2hPa 気温:12.4℃ 路面温度:21.9℃
今回 ・・・ 気圧:1023.5hPa 気温: 6.7℃ 路面温度:10.4℃
気圧はほぼ同等ですが,気温が6℃低く,路面温度に至っては10℃以上も低いですね.パワー的には今回の方が有利ですし,タイヤ負荷的にも有利と言えるでしょう.加えて今回の方は路面改修分のゲインもありますからSec1・Sec2でも違いが出そうな気もしますが,セクタータイムには表れていませんね.路面のメリットをタイヤのデメリット(摩耗)が打消した形となったのでしょうか・・・?
では,いつもの通りロガーデータで細かく見ていきます(青:前回 赤:今回).
ホームストレートエンド
今回(赤)の方が1.6km/h低くなっています.アレッ? またアタック前の助走をミスったか??と思い,車載を見返してみると(↓),
あ~,前のGR86がスローダウンしたので,動きを確認するためにアクセルを開けるのを一瞬躊躇したんでした・・・.ほんのちょっとの躊躇なんですが,タイムアタックだとこういう部分が致命傷になりますね.これで1コーナーのブレーキングまでに0.1秒,今回(赤)の方が後れています.
(ちなみに,GR86の方は何も悪くないです.私がこういうシーンでビビリなだけ)
第1コーナー
ブレーキングを開始した時点で今回(赤)の方が車速が低いので,その差がボトムの地点まで続き,トータルで0.25秒の遅れとなりました.ブレーキングポイント,ライン取り,立ち上がりの加速は前回(青)と大差ないので,進入速度の差がそっくりそのまま出た感じとなっています.
第1ヘアピン
第1コーナーを立ち上がってS字までの区間は全く差が変わらず,完全に同等の走り.違いが出るのは第1ヘアピンの進入速度(左側の緑丸)となるのですが,この波形の形はロガーの計測エラーな気がしますね.この時の車載を見てみると(↓),
3速全開でもMAX:140km/hまでしかいかないところ,142km/hを記録していますし,フリクションサークルを見るとボールは下(=加速)方向に行ってますが,シフトインジケータが点灯していないので既にアクセルを戻してパーシャル領域に入っているはず.多分コレ,GPSロガー本体が揺さ振られて誤検知したんでしょうね.
第1ヘアピン手前のS字は,私は3速キープで進入するようにしているのですが,アクセル全開だと流石に届かない(レブに当たる)ので,アクセルを少し戻してレブに当てないようコントロールしています.このアクセルコントロールからブレーキへペダルを踏み替えるタイミングはS字の2個目(右)の縁石の上と決めているのですが,今回ここでブレーキングを開始すると車体が結構揺さぶられました.恐らく若干リアがロック気味だったのだと思われますが,この車体の揺れがGPSロガーを誤検知させたんじゃないでしょうか? 今回(赤)のピョコンとした伸び分は無視して良い気がします.
ブレーキングを開始した後,今回(赤)の方は60km/h地点で完全にブレーキをリリースし,旋回を始めていますが,これは新路面(↓)の効果かな?と思います.
今回,この新路面の攻略に割と悩まされたのですが,グリップが非常に高いので,今までと同じつもりで飛び込むと減速し過ぎる上に,立ち上がりの加速も鈍くなっている気がしました(クルマが内側に入ろうとするし,アクセル踏んでも外側に膨らまない).
そこでこの自己ベストを更新したラップ(赤)では,敢えてブレーキングで速度を殺し切らず,バンクにクルマを放り込むようなイメージでボトムを上げる事を意識して走りました.グリップが高かったので「それでも曲がれる!」という確信があったのですが,このデータを見る限りどうやら正解だったようですね.
ボトム重視にしたせいで,今回(赤)の方が立ち上がりで膨らんでいますが,その後スムースに加速しているので,0.08秒後れまで差を縮める結果となっています.
ダンロップコーナー
今回(赤)の方が第1ヘアピンを良い形で抜けられたので,そのままグングン差を縮めたかったところなのですが,2→3速へのシフトアップするところで痛恨のシフトミス(泣).車体が右にロールした状態から左へ切返すため,ギヤが入りにくいポイントでもあるのですが,過去に何度もミスをしているので気をつけていたにも関わらず,ベストラップではキッチリレブまで引っ張る事に意識を割いてしまったため,シフト操作が雑になってしまいました.このミスで0.06秒失っているのでホント痛いミスです・・・.
80Rコーナー
今回(赤)の方がダンロップの進入でミスったせいで遅いかと思いきや,今回(赤)の方がダンロップのボトムを上げられたので,前回(青)との差をグングン縮めていき,第2ヘアピン進入までに逆転.0.02秒リードという形となりました.
ちなみに,80Rのちょうど3→4速へシフトアップする辺りにあったギャップは,再舗装後も健在のようで,軽くクルマが上下に跳ねる動きは変わらず出ていました.「再舗装で消えてくれると嬉しいなぁ~」と思っていたのですがダメでしたね(もしかしたら舗装ではなく,私のEF8の足回りのせいかもしれませんが).
第2ヘアピン
進入の速度はほぼ互角ですが,ボトムスピードは今回(赤)の方が低いです.この原因はライン取りの違いで(↓),
色々試した結果,第2ヘアピンの進入は外に振らず,80Rの出口から真っ直ぐ進入して,ダウンシフトを1個飛ばし(4→2速)で行い,クルッ!と向き変えるのが一番速い事が分かったので今回(赤)もそういう走らせ方をしました.
バックストレート
2速区間では前回(青)と同等の加速を示していたので,第2ヘアピンの攻略法は間違っていないと思うのですが,そこから先の3速区間で今回(赤)の方が車速が伸びず,4速区間に入ると明確に遅れるようになりました・・・.今回(赤)の方がパワーが出るコンディションのはずなのに,昨年から苦しんでいるストレートスピード不足がまだ直っていないようですね(泣).これで再び0.15秒後れる結果となります.
最終コーナー
結局,自己ベスト更新に繋がった要因はやはりSec3=最終コーナーでした.このアタックの前に何回かトライした結果,ブレーキングのタイミングを遅らせようと必死になればなるほど,4→3速へのダウンシフトの操作が苦しくなって,ブレーキペダルを強く踏んでしまいました.なんとか緩いブレーキングが出来ないか?と足掻いてみたのですが,どうしても無理だったので,
「ならば,押してダメなら引いてみな,だ!」
・・・と,今度は逆に早めにブレーキングを開始して,さっさとヒール&トゥのダウンシフトを済ませてしまい,早いタイミングからアクセルを踏み始めてしまおう~という作戦に切替えたのですが,これがどうやら正解だったようです.
ステアリングを右に切り始める前に既にアクセルペダルに足が乗っている状態となり,そこからステアリング越しに伝わってくるフロントタイヤの感触に合わせてアクセル開度を微調整,出来るだけボトムを上げつつ,それでいてアクセルを踏み過ぎて逆に失速しないよう注意を払いつつ,ゴールラインまでコントロールし続けた結果,0.29秒速くなっていました.
つまるところ,プロを超えるために最後に足りなかったのは「Sec3を頑張る事」で,皮肉な事に,それは今まで拘ってきた「飛び込みのブレーキングを頑張る」ではなく,「立ち上がりのアクセル操作を頑張る」という全く逆の攻略方法でした.結果が出た後から見れば「な~んだ,そんな事だったんだ」と思えますが,この9年間色々トライし続けて,それこそ自己ベストを出す直前の周まで試して,それでもダメだったからこそ辿り着けた"正解"だったんじゃないかと思います.
以上,何が自己ベストに繋がったのか?の分析結果でした.
年に2回,周回にして年間80周程度しか走らないTC2000という事もあって,コース攻略に実に9年も掛かってしまいましたが,今回で自分なりの"答え"をようやく見出す事が出来ました.この状態で再びプロに乗って頂いたら,一体何秒を出されるのか? 9年前プロに言われた「
6秒8までいける!」は本当なのか? 2026年は新たな目標設定をまたプロにして頂いて,更に上を目指していこうと思います.