ギヤ比考察⑧で検討したフロントタイヤの215/45→205/50化の比較結果です.
まず,両者のサイズをおさらい.
215/45R16 ・・・ 幅:214mm 外径:600mm
205/50R16 ・・・ 幅:212mm 外径:612mm
205化すると,ほぼ幅を変えずに外径を12mmアップでき,日光の6コーナーやバックストレートのレブ当たりを対策出来るんじゃないか?というのがアイデアです.
では,LAP+による比較結果です(緑線:215 青線:205).
①1コーナー(1つ目の赤丸)
ここは,まずライン取りです.
215(赤)に対して,205(青)の方が外側から飛び込み,ブレーキングの開始が若干早いですが,これはドライバーの腕の問題(精度が低い)なので無視して下さい.問題はブレーキングを開始した後の減速量で,12km/h近く205の方が低くなっています(1コーナーを抜けると青線の波が収まっている事からもブレーキを緩めている事が分かります).
今回
パッドを変更した訳ですが,確かに1コーナーの3→2速のシフトダウン(トルクが抜ける瞬間)に若干ロックしているものの,これは
以前のパッドでも起きていた事であり,パッド変更のせいではないと思います.
そうすると,原因はやっぱりタイヤで,扁平率が45→50へ上がった分だけ,タイヤが潰れやすくなり,フロントに荷重がかかり過ぎているのかもしれません.ちなみに,この旋回速度の低下で0.08秒タイムをロスしています.
②2コーナー
上記の通り,1コーナーの旋回速度が低いので,2コーナーへ早く切り込まざるを得ないのですが,最短距離を通過しているので,結果的には先程のロスを取り返して,205の方が逆に0.1秒前に出ます.
③4コーナー
2コーナーで早めにクリップについた分,出口のラインが苦しくなるので,4コーナーのクリップを若干外していますが,ロスはほとんどなく,タイム差は変わりません.
④5コーナー(2つ目の赤丸)
ここからが,タイムとフィーリングが一番乖離しているコーナーです.同じくライン取りを示します.
215(赤)の方は若干アクセルを緩めて,イン寄りのラインを取っていますが,205(青)の方は既に外に流れているので,構わずアクセルを踏み抜いて大外回りのラインを狙います.瞬間的には8km/h近く旋回速度が高いのですが,その後,横Gを抜いてタイヤを縦に使えるようになった215に追いつかれるため,ブレーキング開始時点の到達速度は全く同じ.結果,ここでもタイム差は変わりません.
⑤6コーナー(3つ目の赤丸)
外径のアップによって,レブ当たりによる急減速が発生しなくなったので,ブレーキングの減速だけでフロント荷重をコントロールでき,リアを流すタイミングは自由度が増えました.ただ,外側からアプローチすると向きの変わり方が早過ぎて,イン側の縁石に突っ込んでいく形になります.
本来であれば,ここでアクセルを開けてリアの流れを止め,タイヤを縦方向に使って真っ直ぐ立ち上がりたいのですが,実際はアクセルONでフロントタイヤが外へ逃げてしまい,7コーナーのクリップを取れないばかりか,コース幅ギリギリまで外にふくらんでしまって苦しくて仕方ありません.加えて,この際,デフから不快な振動も出ており,明らかにトラクションが掛かっていないのが分かります.
この後,一緒に行ったFD2乗りのアドバイスに従い,タイヤの内圧を225kPa→240kPaへ上げてみたところ,多少はトラクションが掛かるようになった事から,どうやら,ここでもタイヤ剛性の不足が悪影響を及ぼしているようです.
ただ,肝心のタイムは,ボトムスピードが5km/h上がった分だけ早く,205の方が更に0.05秒差を広げています.
⑥8コーナー(4つ目の赤丸)
ライン取りも進入速度も全く変わらないのですが,ボトムスピードは215(緑)の方が若干速いです.
以前の結果からすると,この差が幅2mmの差である可能性もありますが,コーナリング中の感触としては,タイヤが「もうこれ以上無理・・・」という感じで頼りなく,ここでもタイヤの剛性が影響している気がします.
⑦バックストレート(5つ目の赤丸)
205化した最大の理由である最高速の伸びですが,目論見通り,134.6→136.3km/hへ伸びました.レブもちょうどブレーキングを開始するタイミングで当たっており,ギヤ比としてはばっちり!という感じです.
しかし,大径化によって加速が鈍る事はある程度覚悟していたものの,それが115km/h以上の領域から,こんなに顕著に出るとは思いませんでした.215(緑)でレブに当たる瞬間(車速がサチる瞬間)の205(青)は10km/h近く遅く,これで215に0.05秒差まで詰められています.
⑧10コーナー(6つ目の赤丸)
ブレーキングの開始が早いせいもありますが,10コーナーでブレーキが余ってしまい,早々とリリースしてしまっています.結果,旋回速度は5km/h程度,205(青)の方が速いのですが,タイム的には215(緑)に追いつかれてしまい,差は0.05秒まで詰まります.
⑨11コーナー(7~8つ目の赤丸)
ここが最大の問題点です.中途半端に旋回速度が高い状態で10コーナーを抜けてしまったため,アクセルをきっちり踏んで加速出来ず,車速を乗せきれていません.そして,6コーナー出口と同じ症状で,ターンイン後のアクセルONでトラクションが掛からず,フロントが外に逃げてしまっています.結果,アクセルを踏み込むタイミングがワンテンポ遅れてしまい,215に完全に並ばれます.
⑩12コーナー(9つ目の赤丸)
11コーナーで外に膨らめば,当然の事ながら12コーナーのラインが苦しくなるのですが,ライン取りを見てみると,
むしろ215(赤)の方が苦しく,205(青)の方が余裕があるように思えます.しかし,実際はアクセルを踏み込むタイミングが遅れている事から,ここでもタイヤの剛性不足によるフィーリングの悪化(切り返しで反応しない)が影響しているように思えます.なお,ここでの踏み込みの遅れが致命傷となり,最終的に0.2秒の差を205はつけられて負けてしまいます.
さて,纏めると,205化によって狙い通りギヤ比は改善出来ましたが,それによる恩恵は微々たるもので,逆に扁平率50化によるタイヤの剛性不足の方が影響は大きいようです.
リアを流さない走り方であれば,デフへの負担も少なく,レブにも当たらないので,205の方が乗りやすいと思いますが,バックストレートでの加速力や各コーナーでのタイヤの頼りなさを考えると,個人的には215の方が好みな気がします.
トラクション不足を補うアイテムを追加投入すれば,また状況は変わるのかもしれませんが,今回,初めて内圧を上げ気味にして走ってみて,「僅か10kPaでステアリングレスポンスがこんなに良くなるのか・・・」と少し感動してしまった側面もあるので,やっぱり低扁平率側を選択する気がします.
少なくとも,これでリム幅:7.0のホイールに225/45を履かせる(ドーナッツ形状)の選択肢は消えたので,そういった意味では収穫があったと思います.