
足回りをイジり始めてから,どうも袋小路に迷い込んだようでタイムが伸びなくなりました.
タイヤを替えたり,ブレーキパッドを替えたり,LSDをイジったり,色々試してみてはいるものの,どうも思った通りのタイムが出ない・・・.データを分析してみても原因が分からないので,ドライバーが劣化しているのかと思い,プロに同乗をお願いしてデータの比較をさせてもらったりもしました.
そんな中で,最近何となく分かってきたのが,フロントタイヤへの荷重の掛け方.
プロの横に座って,その走りを見せてもらうと,自分が思っているタイミングよりワンテンポブレーキングが遅く,「これは曲がれない・・・!」と思った瞬間にフロントタイヤを潰しきって,ゴリゴリと押し付けながら,難なくターンインしていく・・・.自分で走っている時には,こんなにタイヤをゴリゴリ押し付けている感触がないので,「どうやったら,コレが出来るんだ?」と考えてみるものの,答えは出ませんでした.
そんな中,
TC1000で頂いたアドバイスと,
三河で掴んだ感触からフロントタイヤへの荷重の掛け方にヒントがある事に気付き,正確な比較データをとるために日光サーキットでテストしてみました.
試してみたのは,以下の3種類の減衰設定.
①F:2段戻し R:2段戻し (F=R)
②F:4段戻し R:2段戻し (F<R)
③F:0段戻し R:2段戻し (F>R)
まず,①と②の比較結果です.①を基準とした場合,②はフロントの方が減衰が弱い(柔らかい)ので,フロントが沈みやすく・向きを変え易いのがメリットですが,反対にフロントが沈み込み過ぎるのでタイヤを路面に押し付けづらいのがデメリットとなります.
では,その観点で比較してみましょう(①:青色 ②:緑色).
1コーナー(1つ目の赤丸)
②の方が車速が鈍っています.これはロールによって内側(左フロント)の荷重が抜け,トラクション不足になっているためと思われ,①の方はロールが抑えられているため,同じタイミングでステアを切っているにも関わらず,車速が落ちません.
5コーナー(2つ目の赤丸)と6コーナー(3つ目の赤丸)
向きが変わり易いという事は,それだけ早くアクセルを開けられるという事なので,5コーナーでは②の方が上回っています.その一方で6コーナーでは,フロントが沈み込み易いので,②の方が車速の低下が大きく,反対に①はダンパーが踏ん張って,しっかりとフロントタイヤを路面に押し付けているため,グリップを引き出す事ができる事から,同じラインであるにも関わらず,より高い車速でターン出来ています.
8コーナー(4つ目の赤丸)
途中でラインがクロスしているのが,両者の特徴を良く表しています.フロントが固いため,速度が落ちにくく・曲げにくい(ボトムが低い)①と,フロントが柔らかいため,速度が落ち易く・曲げ易い(ボトムが高い)②です.
10コーナー(5つ目の赤丸)と11コーナー(6つ目の赤丸)
10コーナーは3速全開からのブレーキングであるため,フロントに荷重を掛ける事が容易である事から,フロントが柔らかい②でもグリップが得られます.反対に車速の低い11コーナーでは,②はタイヤを路面に押し付ける事が出来ずアンダーを誘発してしまいます.
以上の結果から,②(フロントの減衰が低い)の時は曲げ易いが,フロントタイヤのグリップが得にくく,低車速だと荷重不足からアンダーを誘発するという特徴が見えてきます.
では,次に①と③を比較してみましょう.③はフロントの減衰が強い(固い)ので,フロントが沈みにくく・向きを変えづらいのがデメリットですが,ブレーキング時の荷重移動でフロントのグリップを得易く,またロールも小さくなる点がメリットです(①:青線 ③:緑線).
1コーナー(1つ目の赤丸)
③の方が早めにアクセルを戻してしまっているので,ちょっと比較材料としては使えないですね.スルーして次に行きます.
5コーナー(2つ目の赤丸)~6コーナー(3つ目の赤丸)
③の方がロールが小さい分,3~4コーナーの切り返しが早いので,自然と車速が高くなります.そして,車速が高い分だけ速度を殺さないといけない事から6コーナーのボトムスピードは下がります.ところが,これだけ速度差があるにも関わらず,①と③でラインは全く同じなのです.これは何を示しているかというと,③の方がフロントタイヤをしっかりと路面に押し付け,グリップをより多く引き出しているという事でしょう.
8~9コーナー(4つ目の赤丸)
③の方がロールが少なく,ステアリングレスポンスが良いので,よりアウト側から切り込む事ができ,アクセルも踏めていました.しかし,アクセルを踏む=縦にグリップを使うという事になるため,その分,横のグリップが減って旋回速度は落ちてしまったようです.ドライバー的には③の方がより攻めている感触があったのですが,データからすると攻め過ぎという事で,この辺りがフィーリングとのズレという事でしょうか.
11コーナー(5つ目の赤丸)
データ上では何の差異もありませんが,走行中は明確な違いがありました.その違いは何か?というと,LSDの異音です.今まで11コーナーのアンダーは荷重が掛けられていないせいだと思い,なるべく強めのブレーキングをしてきたのですが,どうやら実際は反対で,低車速なのにブレーキングが強すぎるため,サスだけ縮んでタイヤを潰せていなかったようです.
この結果,タイヤがグリップしないままステアを切って,LSDを作動させる形となり,異音を生んでしまっていたようです.③でフロントを固くした結果,ダンパーよりも先にタイヤが縮む(潰れる)ので,しっかりとフロントのグリップを引き出せ,タイヤがグリップしているのでLSDも鳴らないという結果になりました.
以上より分かった事実としては,減衰が低いとクルマとしては曲がり易いが,タイヤのグリップを引き出せていないので絶対的な限界としては低い,という事です.
つまり,バネやダンパーの固さが使っているタイヤに対して相対的に柔らかいと,タイヤを潰す前にサスが縮んでしまい,タイヤが持っている潜在的なグリップ力を最大限に引き出す事が出来ず,その結果,タイヤが表面上持っているグリップ力に頼った走り方になってしまっている事なのだと思います.
故に,自然とタイヤが潰れる高速コーナーでは上位陣についていけるものの,タイヤを潰せない低速コーナーでは大きく引き離される(=低速コーナーが苦手)という事になったようです.これはEF8という労せず曲がるクルマとRE-71Rのような図抜けたハイグリップタイヤで走ってきた事の弊害でしょう.
今後,これを修正するのに手っ取り早い方法はバネレートアップでしょう.フロントを現在の10キロから12~14キロ辺りまで上げてみる価値はありそうです.あるいはレートは10キロのまま,よりレートの立ち上がりの速い銘柄(BESTEX,eibach,HYPERCO)に変えてみるという手もあるかもしれません.
そして,それを行った上で③の8~9コーナーの失速のような状態がどれだけ起こるかをテストし,必要に応じてタイヤのキャパを更に引き上げていく(225化)というのが今後の方向性に思えます.
Posted at 2017/05/28 00:57:30 | |
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