フォーミュラ中心に調べてきたガーニーフラップですが,EF8用を想定するなら当然ツーリングカーを調べるべき!という事で,ホンダコレクションホールでの調査後編です.
ただ,ツーリングカーと言っても,最近のレギュレーションはウイングの装着位置が高いので,
私が目指しているローマウントウイングにはあまり参考にはならないんですよねぇ・・・.また,最近はウイングの共通パーツ化が進んでいるので,DTMと共通化しているGT500マシンや,GT3が大勢を占めるGT300なんかは,新しい発見は少なそうです.
・・・という事で,結局,自由度が高かった古い世代が参考になるため,自然と興味もそちらに向かいます.
まずは,Castrol 無限 NSX (NSX-GT).
当代随一のコーナリングマシン,空力マシンとして名を馳せたマシンですね.
当然,結構な高さのガーニーフラップが付いてます.
特徴的なのはウイングの両端に向かってガーニーの高さが絞られている点でしょうか.
裏から見ると,ガーニーの高さがよく分かります.結構高いですね(10mmくらいありそう).
更にウイングの角度を見ると,どのコース向けのセッティングなのかは分かりませんが,一番立てているのでマキシマムダウンフォース時のセッティングのようですね.つまり,最もダウンフォースが欲しい時のガーニーの高さがこれくらいだという事でしょうか.また,翼端版の形状も影響しているのだと思いますが,フォーミュラよりもガーニーフラップの角度が寝ているのが興味深いですね.
次は,JACCS ACCORD.
実はこのクルマのリアウイングが一番気になっていました.なぜか?と言うと,レギュレーションでウイングの装着が認められつつも,ローマウントである事が制限として設けられたシーズンのクルマだからです.これより前(~'95年)のフェリオではリアウイングと言うよりはスポイラーですし,これより後の'97年仕様のアコードだとハイマウント化が進んでしまうので・・・.
やっぱりレーシングカーとは思えないくらい小さいですね.ガーニーは付いていませんが,注目すべきはその形状です.ウイング後端が衝立状に立ち上がっているのが分かります.
背後から見ると,ちょうど「mooncraft」のデカールが貼れるくらいの高さがある事が分かります.ウイングの前後長がそれほど長くないのに,後端がほぼ垂直に立ち上がっている,これはガーニーフラップと同じ効果を狙ったものではないかと思っています.
そして,興味深いのがこのウイング,中央部はガーニーフラップのように衝立になっているのに,両端は3D形状にして寝かした形状になっている点です.気付きましたかね? コレ,以前のGTウイング考察で述べた,
②GTウイングで重視すべきはウイングの両端(だからこその3D形状!)
・・・の真逆の形状なんですよ.ウイングの両端ではなく,ウイング中央部でダウンフォースを稼ぐ思想ですね.
では,なぜ,こんな形状なのか? セダンボディのアコードですから,EF8以上にボディ中央部の方がウイングの効果が低いのは間違いありません.なのに,この中央部が立った形状という事は,狙いが逆なんでしょう.
つまり,効果が低い中央部のダウンフォースを補うために,ガーニーのようにフラップを立てる,反対に両端側は元々ダウンフォースが稼げているので,ガーニーをなくしてドラッグを減らす・・・.そういう思想だとこういう形状になるのではないかと思いました.もし,そうだとすると,NSX-GTのリアウイングが,両端でガーニーの高さが絞っていたり,B・A・R Honda 006のリアウイング両端に隙間が設けてあったりしたとも頷けます.
つまり,何を言いたいのかというと,ガーニーフラップをGTウイングの後端全面に貼るのではなく,ウイングの中央部(フラットな部分)のみに貼るのも1つの手なんじゃないか?という事です.
確かにリアを安定させるためにダウンフォースは欲しいですが,かと言って過剰にダウンフォースを付けるとローパワー車は失速してしまうので,ドラッグとダウンフォースのバランスを取るという意味で,効果の低い中央部のみガーニーフラップを付けて補ってみるというのも面白いんじゃないかと思いました(フラットな面の方がガーニーを付け易いという意味合いもあります).
ちなみに,このガーニーフラップ追加によるドラッグとダウンフォースのバランスをなぜ気にしているかというと,閲覧室で見たRacing onバックナンバーの実験記事を読んだからです.
ガーニーフラップ装着前 ・・・ ダウンフォース: 520kg ドラッグ:218kg
ガーニーフラップ装着後 ・・・ ダウンフォース:1110kg ドラッグ:570kg
これは車速74km/h相当の気流を当てた時の試験結果だそうなのですが,ガーニーを付ける事によって,確かにダウンフォースは2.13倍に増えているのですが,ドラッグも2.61倍に増えてしまっています.本来,ガーニーはダウンフォースは増えるがドラッグはそれ程増えないのが利点であるはずなのに,この試験結果はそれを示していません.
この原因を記事の中では「ウイングのサイズに対して,ガーニーのサイズが大き過ぎたため」と述べていました.
前回調査したDallara DW12やReynard 96Iを見て頂ければ分かると思いますが,ウイング本体のサイズが小さければガーニーも薄くなり(DW12),ウイング本体のサイズが大きければガーニーも厚くなった(96I)ように,ウイングのサイズに対して適切なガーニーのサイズがあるという事なのでしょう.
風洞もCFDもないEF8で,適切なガーニーフラップのサイズを見出す方法は,まだ思いつきませんが,思想の一部を学べただけでも,今回来た甲斐は十分あったと感じる調査でした.
Posted at 2019/07/01 03:00:17 | |
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