
先日,
はやぶさんとの比較を行った際,
taka@黒インテ(元)さんから「私にもアドバイスを~」とロガーデータが送られてきました.
takaさんは私のEF8よりもパワーも車重も劣るGK5で,TC2000 7秒台を叩き出す猛者ですので,私がアドバイスなんておこがかましいのですが,TC1000でタイムが肉薄されている事もあり,どんなデータなのか大変興味がそそられたので,引き受けさせて頂きました.TC2000は私が最も苦手なコースなので,的外れなコメントになるかもしれませんが,精一杯やってみます.
まずは,LAP+を使ったラップ分析.TC2000を以下のセクターに分けて,どこがベストだったのかを見てみます.
サンプルは2/24の2本目.このセッションのラップタイムは以下の通りです.
濃いピンクがセッションベスト,次に濃いピンクがセカンドベスト,薄いピンクがサードベストになります.これを元にタラレバベストを出し,このヒートのベストである「15:51:27」のラップと見比べてみると,こんな感じ(↓).
ベストラップとタラレバベストの差が僅か0.3秒ですので,ほぼほぼ1LAP完璧に纏め上げているように思えます.その一方で,ベストラップで濃いピンク(セッションベスト)となったのはSCT.4(ダンロップ~2ヘア)のみで,それ以外は僅かながらも,まだ詰め代があるように思えます.
では,細かく見ていきましょう.
SCT.1(ホームストレート~1コーナー立ち上がり)
ベストラップ (青) ・・・ 12.721
セクターベスト(緑) ・・・ 12.555 (-0.166)
ご自身でもお気づきのようですが,進入でちょっと突っ込み過ぎですね(上段の赤丸).セクターベスト(緑)時に比べて14mも奥で減速を開始しています.ただ,この減速開始の遅れ,ちょっと妙で,ペダルを踏むタイミングはセクターベスト時と同じなのに,その後のレスポンス(減速Gの発生)が遅く,それによって14m進んでしまったようにも見えます.最初はブレーキロックかな?とも思ったのですが,「ABSは絶対介入させない!」と仰っていた点を踏まえると,これがご本人が仰っていた「タイヤを潰す時のタイムラグ」なのでしょうか?
個人的に気になったのは,このラップ,ほんの僅かですがステアリングを右に切ってからブレーキングを開始している点です(↓).
これによって,若干左側にヨーが発生した状態でブレーキングを開始する事になっているので,姿勢制御が介入していたりしないのかなぁ~?と思いました.
次に,ボトムの部分(下段の赤丸)ですが,コーナリング中に一瞬ステアリングを戻されています(↓).

(折角ここまで↑切り込んだのに・・・)

(↑僅かに戻してしまっている)
画像だとちょっと分かりにくいですが,Aピラーとの位置関係で見てもらえば分かるかと思います.恐らく,これは進入で止まり切れず,ブレーキが強めとなり,フロントが沈み込んで前傾姿勢が増し,右リアがインリフトして,予想以上にヨーが出てしまい,それに反応するためにステアリングを戻したのだと思われます.仕方がないと言えば仕方がないのですが,これはちょっと勿体なかったですね.折角クルマが向きを変えようとしているのに,それを止める形になってしまい,以降はひたすら待つ(アクセルを開けられない)状況に陥ってしまいます.これによってボトムも1.6km/h低くなっています.
カメラの画角の関係上,どれだけ縁石に寄れているのか映像から分かりませんが,ロガーデータから私のラインと比較すると,
インベタの私(青)よりもtakaさん(赤)は外側にいるので,イン側に切り込む余地はまだ残っているように思えます.リアが流れ始めた時にGK5がどれだけ耐えられるのか分かりませんが,次回はこのヨーを使って上手く曲げてみては如何でしょうか?
SCT.2(1ヘア手前のS字)
ベストラップ (青) ・・・ 5.855
セクターベスト(緑) ・・・ 5.800 (-0.055)
赤丸の部分を見ると,ベストラップ時(青)の方が僅かに加速が鈍っているのが分かると思います.この原因はシフトアップポイントで,ベストラップ時はココ(↓),
セクターベスト時はココ(↓)でした.
外の風景だとちょっと分かりづらいかもしれないので,画像の左上に付けたコース図を見て頂ければと思いますが,セクターベスト時(下段)の方が下側(1ヘア寄り)になっているのが分かると思います.シフトアップ操作時の車速から,この時の回転数を割出すと約200rpmほど,ベストラップ時(上段)の方が早くシフトアップしてしまったようです(セクターベスト時の方がレブリミットまできっちり引っ張れたという事です).ほんの僅かな差なのですが,これで終端速度にして1km/h,タイムにして0.05秒稼げますので,こういう部分もきっちり拾っていきたいところですね.
SCT.3(1ヘア)
ベストラップ (青) ・・・ 8.810
セクターベスト(緑) ・・・ 8.795 (-0.015)
これぐらいのタイム差だと誤差の範疇に思えますが,実は途中で結構差が変化しています.まず,ベストラップ時の方は,1ヘア進入時のブレーキングで84km/h付近から踏力が弱まっています(↓).
対してセクターベスト時は,ここまで(↓)踏力一定でブレーキングしています.
踏力一定の方が当たり前ですが,減速度は強くなるのでボトムが低くなり,瞬間的に0.1秒置いていかれるのですが,その後の立ち上がりでセクターベスト(緑)に取り返されてしまいます.ようは,セクターベスト時(青)の方が立ち上がり重視の走り方になっているという事なのですが,その要因として,強めのブレーキでタイヤをしっかり潰してグリップを引き出せている,という点があるようです.ベストラップ時(緑)の方は立ち上がりでアクセルを開けた際,若干横滑りして62km/h付近で加速が停滞しているのに対し,セクターベスト時(青)は一切の停滞がなく加速しているのがデータから分かります.1ヘアの立ち上がり加速は,この先のダンロップ~80Rに繋がる重要なポイントですので,ここは立ち上がり重視の走らせ方の方が良いのではないかと思います.
SCT.4(ダンロップ~80R)
ここはベストを出せていると思いますので,割愛します.
SCT.5(2ヘア~バックストレート)
ベストラップ ・・・ 17.509
セクターベスト ・・・ 17.480 (-0.029)
ここは特に気になる点は見当たりませんでした.2ヘアのコーナリングにも特異な点は見られません.強いて言うとすれば3速域で若干加速が鈍っている点で,これが0.02秒の遅れに繋がっていますが,その後の4速域で取り戻せてはいるので,大して影響はないように思えます.
SCT.6(最終コーナー)
ベストラップ (青) ・・・ 10.945
セクターベスト(緑) ・・・ 10.864 (-0.081)
takaさんが最も気にされているポイントですね.ここはブレーキリリースのタイミングが気になります.ベストラップ時がココ(↓)で,
セクターベスト時がココ(↓)です.
景色がホワイトアウトして見えずらいですが,左上のコース図で位置を見ると,セクターベスト時(下段)の方が上(ホームストレート寄り),すなわち最終コーナーに対して22m手前からブレーキをリリースしているのが分かります.ただ,これは止むを得ない部分もあると思っていて,ベストラップ時は前走車がいるため,距離が近いという点があると思います.このくらいの距離で前にいられると,さすがにブレーキを弱めるのは躊躇すると思いますので,このラップでブレーキを踏んでいる時間が長かったのは仕方がなかったのかな・・・と思います.
最後にtakaさんが気にされていた,はやぶさんとのブレーキングの違いですが,こんな感じでした(↓).
青がはやぶさん,緑がtakaさんです.進入速度の差を考えると前半部分は悪くないんじゃないかな?と思いますので,問題は後半の立ち上がりでしょうね.はやぶさんが加速態勢に入っている領域で,takaさんはまだアクセルを十分踏み込めていないように見えます.この位置(↓)の車載を確認させて頂くと,
アクセルを踏み込むとスキール音が聞こえます.フロントが目一杯でこれ以上は耐えられない~という感じですかね.その一方で,リアは結構フラフラで加速の途中でステアリングを一瞬戻す場面も見られます.まさにフロントもリアも目一杯で何も出来ない・・・って状況のようです.ちなみに,この最終コーナー後半のtakaさんの車速の伸びは,205幅を履いた時の私よりも鈍かったりします(takaさんのGK5は225幅のA052).そうすると,原因はタイヤのグリップではなく,クルマの向き,ひいては最終コーナーのライン取りにあるのではないか?と思います.
高速コーナーでリアがフラフラだと怖いのは当然で,舵をなるべく浅くしたくなります.しかし,単純に舵を浅くするだけだと旋回半径が大きくなってタイムも遅くなるため,これを打ち消すために最短距離,すなわちイン側になるべく寄って走ろうとするものです.ところが,イン側に寄るのが早過ぎると,コーナーのRに沿ってクルマを曲げる形となり,角度がキツくなり,タイヤの負担も大きくなります.その状況下でステアリングを使って無理やり曲げようとすると,恐れていた舵の深さが顔を出してリアがピーキーな動きをするものです.
これを解消するためには,コーナーのRに沿わない.なるべくコーナーから離れて,外側でしっかりと向きを変えて,角度を浅くするのが効果的です.REVSPEED 2017年2月号に掲載されていた,佐々木ライン(↓)みたいな感じですかね?
ロガーのデータで見る限り,takaさんと205幅の私は,ほぼ同じライン取りをしているように見えるのですが,それでも立ち上がりでアクセルを踏める量が違うという事は,この向きの差なんじゃないかと思っています.
以上,GK5のドライビング分析でした.
私のEF8とも比較してみたのですが,とにかくtakaさんのブレーキングの突っ込みが凄いです.「こんな距離からよく止められるなぁ~」と心底思います.それだけ進入で突っ込んでいても,立ち上がりは鋭く,如何に自分がタイヤの性能を引き出せていないのか思い知らされました・・・.シフト操作も早く正確で技量の高さが窺えますし,GK5自体も「よく曲がるなぁ~」と感心してしまいます.これなら7秒台は納得ですし,TC1000でも迫られるよなぁ~と思いました.「柔らかい足回りにまだ慣れていない」との事ですが,それでもかなり乗りこなせているのはデータから分かります.今回挙げたのは重箱の隅を突っつくようなものが多かったですが,反対に言えば,それくらいしか欠点が見当たらないという事です.末恐ろしいと思いつつ,TC1000では負けないように私も頑張ります!