GT1仕様のお次はJGTC仕様のGT-Rのお話.
最初に登場するのは,タイトル画像の1998年のシリーズチャンピオンである「PENNZOIL NISMO GT‐R」となる訳なのですが,このクルマは
2023年に富士モータースポーツミュージアムで観た事があるのでスルーかなぁ~?と思っていたら,「アレ? 色々違う・・・」と気づいてしまったので結局詳しく観る事にしました(笑).
という事で,その1998年仕様の「PENNZOIL NISMO GT‐R」.
パッと見で以前観たものと比べてみると(↓),
リアウイングが違う(↓).
トランクにダックテールも付いていますし,後方に回ってみると(↓),
リアバンパー下がえぐられていて,こちらも形状が異なる.特徴的なフロントフェンダー等は同じなので(↓),
どちらかが前半戦仕様 or 後半戦仕様でエアロパッケージが異なるんでしょうね.
ちなみに,この後のチェックポイントとなる牽引フックの位置(↓)も参考までに残しておきます.
お次は場所を変えて,1999年仕様の「PENNZOIL NISMO GT‐R」.
分かる人には一目瞭然ですが,R33→R34へとベース車両が変わっています.
カラーが一緒なので一見すると同じクルマにも見えますが,リア周りは全然違います(↓).
R33の色々付いたゴテゴテした感じと比べると,非常にスッキリしていますね.
こちらの展示はクルマの横に入ってもOKとの事で,トランク手前の吸入口も確認出来ます(↓).
ちなみにこの吸気口はリアブレーキの冷却用だそうです.また,トランク部分には他に吸気口がないように見えますが,実はリアウインドウとトランクの間にギャップ(隙間)があり,そこからデフの冷却風を取り込んでいるそうです.なお,取り込んだ冷却風を排出するためのスリットがトランク部分に見当たりませんが,これはフロア下に排出しているからだそうです.
フロント側に回ってみると,先程のR33と全く異なる空力コンセプトなのが見て取れてます(↓).
例えば,R33ではフロント前面から空気を取り込んで,バンパーの左右から排出する思想でしたが,こちらのR34ではバンパー横はスッキリとした形状になっています.
フロントタイヤ後方もR33ではバッサリ切った形でしたが,こちらのR34ではもう少し凝った形状(↓).
先程最後に触れた牽引フックもボンネット上部に移動しています(↓).
それだけボンネットの位置が低くなっているという事なのでしょうね.
ちなみに,フロントグリルは黒い板で完全に塞がれたダミーでした(↓).
そこから少し時間が飛んで,お次は2002年仕様の「CALSONIC SKYLINE」.
先程と同じR34型ですが,こちらはエンジンが直6のRB26DETTからV6のVQ30DETTに変更されています.縦置きの直6ではどうしてもフロントヘビーとなってしまうため,もっと早くV6にしたかったそうなのですが,イメージ戦略的にそれが出来ず数年が経った後,R34の販売終了を契機としてV6に変更されたそうです.
V6化によってエンジンルーム内のレイアウトが色々変わったんだろうなぁ~というのが,牽引フックの位置から読み取れますし(↓),
テールパイプもこんな位置に来ています(↓).
3年の月日で空力もアップデートされており,フロントバンパーにはカナードが(↓).
ミラーもエアロミラーになっています(↓).
リアもディフューザーが洗練された形となっていました(↓).
そして,リアのフェンダー部分にスリットがあるなぁ~と思ったので(↓),
トランク側を観てみると(↓),
リアウインドウに吸気口があるのは一緒ですが,トランク部分にも大きく取入れ口が増えていました.コレ何だろうなぁ~?と後から調べてみたら,直6→V6への変更に合わせて前後重量配分を更に適正化しようと,ラジエターをトランクスペースに移動させたのだそうで,恐らくその冷却風の取り込み口ですね.
なお,このクルマで一番特徴的だなぁ~と思ったのが,このリアの低さ(↓).
GT-Rというとどうしてもボリューミィな印象が強いのですが,物凄く薄くて違和感ありまくりでした(笑).
最後は,2003年仕様の「MOTUL PITWORK GT-R」.
この年からシャシー前後のパイプフレーム化が許可され,フロントフェンダーの拡大も出来るようになったため,ボンネットは低く,ホイールハウスは持ち上げられたCカーに近いスタイリングとなっています(↓).
カナードも多段化され(↓),
フロントフェンダー後端も凝った形に(↓).
エキゾーストもこっそりと後ろに控えているという感じではなく,堂々と表に出て来ました(↓).
後ろに目を移すと,リアフェンダー上部にロック機構がありました(↓).
最初は上にクリアのプレートが貼ってあったので,空力を気にしているんだろうなぁ~と思って観ていたのですが,改めて考えてみると,前後パイプフレーム化された事で後端部分を分割出来る事から,これだけ大掛かりなロック機構となっていたのでしょうね.
分割を想定してか,前年型にはあったリアウインドウの吸気口はなくなり,トランク前に横長の開口部があるのみ.設計思想が何か変わったのかなぁ~?と後で調べてみたら,前年型でトランクスペースに持って来ていたラジエターをフロントに戻し(冷却ファンや配管の取り回し等でトラブルが絶えなかったとの事),代わりにミッションを後ろに持って来てトランスアクスル化を行っているそうです.
ラジエターがなくなった事でそこまで大きな開口部が必要なくなったという事なのでしょうが,とはいえ,ミッション用のオイルクーラーはあるでしょうから,その分の開口部でこのサイズなんでしょうね.ちなみに,ラジエター(+配管諸々)⇔ミッションの入替えで重量的にはほぼトントンだそうで,前後重量配分は2002年仕様とそれほど変わらなかったそうです.
またリア周りに戻って,全体的にはマイナーチェンジといった感じですが(↓),
リアウイングの取付部が明らかに違う(↓).
コレ,トランクではなく,フレームに直付けで固定しているんでしょうね.発生したダウンフォースを変形するトランク越しではなく,フレームに直接掛けた方がより効率的にタイヤに力を伝えられるので,パイプフレーム化したからこそ出来る手法なのでしょう.
以上,Heritage CollectionのGT-R JGTC仕様編でした.
やっぱりGT-Rは数が多いですね(汗).ただ,年式毎の違いをこうやって自分の目で見比べられるのは面白いです.「日産ヘリテージコレクション」が膨大な数のクルマを収蔵しているからこそ出来る芸当で,これを無料で観れるのですから有難い事です.