
先日,マツダの論文で
エンジンの吸気ポートに3mmの厚さの断熱材を巻くと吸気温が2℃下がるという事を学びました.
しかし,実際の吸気ポートはシリンダーヘッドと一体となった鋳物なので,周りに断熱材を巻く隙間などなく,「ヘッドの中に異物を埋め込むなんて,メーカーじゃないと無理だなー」と思っていたら,ヘッドとインテークマニホールド(インマニ)の間に挟まっているインマニガスケットで似た効果を得られそうな事に気づきました.
調べてみると,吸気温にシビアなS2000(AP1)では定番メニューなのだそうで,CSOから「
インマニ断熱ガスケット」として製品が出ていました(↓).
「エンジン熱によるインテークマニホールドの温度上昇を抑える断熱ガスケットです.吸気温度低下に伴い,酸素密度向上によるパワーアップが期待出来ます.サージタンクに吸気温度センサーが存在するAP1には特に効果的です」
AP1の吸気温センサはサージタンクに付いているため,サージタンク内の空気ではなくサージタンク本体の熱(温度)を拾ってしまい,センサ読み値が真冬でも60~70℃となるそうです.これだけ吸気温が高いと,ECUはノッキングを避けるために点火時期を遅らせる(リタードさせる)ため,顕著にパワーダウンするそうです.
後期型のAP2では,吸気温センサがサージタンクではなく,スロットル上流に取り付けられているため,こういった事象は起きない事からセンサの移設を行ったりもするそうなのですが,移設ではなく,サージタンクそのものの温度を下げる手法として,ヘッドとインマニの間にあるガスケットを断熱性のある素材のものに交換するのがコレだそうです.曰く「N1レースではレギュレーションで改造範囲に縛りがあるため,それに抵触しない部品としてこういったものを用いる事もある.ストレートの長いサーキットであれば,スリップを使わずとも抜けてしまうくらいパワー差が出る」との事.
私のEF8は,既に
吸気温センサを移設してあり,エアクリ後方に付いています(↓).
なので,AP1と同じ事は起きないのですが,先述のマツダの論文では「吸気温を下げるのにサージタンクを冷やすのは効果的」といった情報も載っていたので,S2000以外でも使っている人いるのかなぁ~?と調べてみたところ,ありました(↓).
オートスタッフという会社が出している「
インシュレーションガスケット」.
狙いはCSOと同じ,エンジン本体からの熱がインマニ(サージタンク)に伝わるのを防ぐためです(↓).
おっ! いいじゃん.B16A用はあるのかな~?と調べてみると(↓),
なぜか記載が「B16C」・・・.EG/EKと書いてあるので,多分「B16A」の誤記だと思うのですが,微妙~.ガスケットなので穴が埋まっている分には加工して穴を開ければ済みますが,穴が余計に開いている場合は間に水が通るだけに都合が悪い.輸出用含めて「B16C」なんて型式はホンダにないはずなので,ほぼほぼリスクはないと思うのですが,微妙だなぁ~と更に調べてみると,M&M HONDAにも似た製品がありました(↓).
こちらの製品名は「
Heat Shield Gasket」.ちゃんとB16A用/B16B用と書かれており安心.解説文(↓)には「耐熱樹脂のベークライト素材で厚さは3mm」との事で,リスクを冒さないならコッチですかね.
「エンジン本体のインテークポートとインテークマニホールドの間に,耐熱樹脂の3mm厚のベークライト素材を使用したインテークガスケットを装着する事で吸入温度の低下で3~5%のパワーの向上を期待出来ます! シリンダーヘッドからインテークマニホールドへと伝わってくる熱を遮断して,金属製のインテークマニホールドがヒートシンクとなってしまうのを防ぎます.その結果,吸入空気のシリンダーへの充填温度の上昇を防ぎ,充填効率を向上させる事が出来ます.吸気温度の低下によって3~5%のパワーアップに繋がります.取付けには純正ガスケット2枚必要です」
しかし,「3~5%のパワーアップ」ですか・・・.マツダの論文では中負荷の2000rpm相当で約2℃低下だったので,形式・運転領域が異なるとはいえ,このガスケットだけで3~5%も上がったりするかなぁ~? 以前調べた時は「
吸気温5℃低下で出力1%向上」といった単位でしたし,この換算だと15℃近く下がる事になるのですが,ガスケット1枚でさすがにそれは・・・と思いつつ,更に調べてみたところ,こんなのを見つけました(↓).

(OPTION2 パーツテストバックナンバー:
零1000 パワープレートより)
2006年5月にZERO-1000が「パワープレート」という名称で製品開発していたという記事.ZERO-1000と言えば「パワーチャンバー(↓)」で有名な会社ですので,ここが出しているなら信頼が置ける.
早速記事を読んでみると,テスト結果はこんな感じ(↓).

(OPTION2 パーツテストバックナンバー:
零1000 パワープレートより)
エンジンはB18C,水温:84℃,油温:80℃,アイドリング状態で吸気温を50℃に合わせた状態から,4速で2500→8000rpmまで回した時の結果だそうです.
まず,絶対値的には最大出力が6.1PS上がっており約3.1%の向上.アレ? 3~5%アップって嘘じゃない?? 過渡応答も4000→7800rpmの到達時間が0.13秒短縮しており,グラフを見るとハイカムに切り替わってから差が出ているので,吸気流量が増えた領域で威力を発揮しているみたいですね.このクルマの吸気温センサが純正取付け位置だとすれば,レブリミット温度が2℃低下しているので,サージタンクの遮熱効果もきちんと出ているようです.
この結果を見ると「N1でスリップ使わなくとも追い抜ける」というのは,あながち嘘じゃなさそうな気もしますが,その一方で,ZERO-1000が「パワープレート」という製品を市販した痕跡を見つけれなかったんですよねぇ・・・.上記の記事はあくまで「開発中」の話なので,もし本当に市販に至らなかったのであれば,その理由を知りたいところです.
以上,インマニガスケットのお勉強でした.
Posted at 2025/08/03 15:42:55 | |
トラックバック(0) |
セッティング(エンジン) | 日記