以前、『もっとちゃんと調べましょう』というタイトルで
『ブガッティT41が車の歴史上過去最大といわれる排気量のエンジンを搭載している』
というガセネタをくるまのニュースが流していた事について書きましたが、
今度はAuto Messe Webで御座います(汗)。
なんかね、フランスの『ヴィミーユ』とかいう私の知らない車が、
『世界初のミッドシップ市販車になるはずだった』って書いてるんですけど、
私としては、はぁ?という感じなのですよね。
プロトタイプは1948年のパリ・サロンに出品されたとの事ですが、
それって戦後じゃないですかねぇ。
その上で『初のミッドシップ市販車は1962年登場の「マトラ・ジェット」を待たねばならない』
と言っていますが、これは尚更不正解ですね。
コメントでその部分に関して『はい、違う~』と言っている方がいますが、
その方の言っているルネ・ボネ ジェットI/II/IIIも違うんですな、これが。
正直、私も初のミッドシップ市販車がどれなのかは知りません。
ですが、それより古い市販車は知っています。
1934年から1936年にかけて作られたMBの150(H)がそれなんですよね。
こんな車で御座います。
同じシリーズで130、170というのがあって、それらはVWビートル式のリアエンジン車なのですが、
これはスタイルからも判る通り、れっきとしたミッドシップ車なんですよね。
ボディは画像のスポーツロードスターとスポーツリムジーネ2シーターの2形態があって、
それぞれ5台と6台が作られているらしいのですが、
資料によると後者はkein Listenpreis(定価無し)と書かれており、
どうやら1934年の当時ドイツで最も人気があったとされる
2000kmレースに参戦する為に作られた車両だったらしいのですが、
前者はそれのロードスターバージョンで台数は捌けなかったものの、
6600ライヒスマルクという値段で市販された車だったそうです。
ドイツ語の資料をdeepl訳してみたのですが、それが殆ど売れなかった理由として、
1.値段が高すぎること
2.最低限の荷物置き場さえないこと
3.オープン2シーターはごく一部の顧客しか考えられないこと
4.リアエンジンのコーナリング性能とコントロール性に疑問が持たれていたこと
というのが書かれていました(笑)。
4に関しては(ミッドシップではない)真のリアエンジン車である、
130Hが4300台近く売れている事を考えると理由としては弱い気がしますけどねぇ…。
んで、さらにね、
『F1でさえ1957年の「クーパー・クライマックスT43」が初採用例』と書かれているんですけど、
ワタクシ、レースには疎いので
それが今でいう、フォーミュラのどの階級に属するのか全く判らないんですが、
1922年に発効した2ℓ、650kg以下のフォーミュラの為に設計された、
ベンツのトロプフェンヴァーゲンもミッドシップなのですがねぇ。
車はこれですね。
生産台数は4台。
スポーツカーバージョンも造られたようですが、
結局、市販はされなかったようです。
これを見れば間違いなくミッドシップだと判りますよね。
前側からのエンジン。
一つ前の画像では邪魔なラジエターを外していますが、
こんな感じにエンジン後部上方で冷やす形でラジエターが付くのですよね。
この画像からも判るようにツインカムの6気筒の1997㏄で
最高出力90馬力、最高速度はスポーツカーバージョンで165km/h、
モノポストバージョンで185km/hだったそうです。
繰り返しになりますけど、
この2車種が市販車とレースカーの最古のミッドシップかどうかまでは
私の知識の範囲では判らないものの、
これらは共にMBの世界では結構有名な車種な筈で、
戦前に作られたそれらを差し置いて、よく戦後の車を世界初だとか挙げられたものだと思います。
んで、これらの戦前MBをド無視して話を展開させている割には
デザイン事務所絡みで本物のポール・ブラック師匠の名前を引き摺りだしてきて
そこでそのヴィミーユとやらの薫陶を受けた師匠が
その後MBやBMWなどのドイツ車のデザインを手掛けているとか
実に意味不明なこじつけをしたりしているのですよね。
いやいや、その話の筋からしてなんらかの影響を受けているとしたら
このようなプロトタイプに終わった車ではなく、ドライエの方でしょ、、、
って考えるのが普通な気がしますが…(笑)。
とにかく自動車界の物書きは、無論全てがそうではないのでしょうが、本当にいい加減すぎ。
特にその歴史は新発見が無い限り不変なものな訳ですから、
そうだね、そうだよね、と誰もが納得しつつ読み進められるものにしてほしいものですね。
私もMB以外のメーカーの車種の事については全くのとんちんかんなので、
こういう媒体でこうしてウソが常態化しているのではないかと思わされてしまうと、
そこから得た情報を恐ろしくて知識として蓄えられなくなってしまうのですよねぇ。
こないだのロワイヤルのエンジンの話もそうですが、
とりあえずあまりにも戦前車を舐めすぎで、
物書きでお金を得ている人が世界初、最大・最小・最速等々の一番物を語るなら
先ずはある程度戦前車を学んでからにした方がいいのではないかなぁ、
と思うのですけどね。
昔の自動車雑誌なんかは本当に車が好きな人たち(ただそれぞれ結構偏ってたと思うけど)が
書いていたのだろうと思えるものだったけれど、
今は完全に仕事として向き合っているだけって感じがしてなりません(寂)。
正にやっつけ仕事ってやつだと思います(苦笑)。
アタシなんか、勿論プロの物書きじゃないけれど、
このブログだって検証しまくっていて何時間かけて書いている事か…。
それだって時には間違ったことを書いちゃう事もあるわけですから、
プロの方にはもうちっと真剣にやって頂きたいなぁと思う所であります。
まぁ、プロの方に言わせれば、オマエみたいに暇じゃないよって話なんだと思いますが(苦笑)。
でも、だからってロクに調べもせずに
プロが平然と間違ったことを書いていいって話にはならんと思うのですけどねぇ。