11月4日にロンドンで行われる、RM Sotheby’sのオークションに
私の大好きなMannheim 370S Sport Cabrioletのバーンファインド物が出品されるようです~。
この後ろの建物に収まっていたって事なんでしょうかね?
195台が製造されて、現存が7台と言われていたのが、
以前、私がブログネタにネット上を探し回って8台見付けちゃった車ですが(笑)、
元々それだけの台数が作られていれば、やっぱりこういう物件も出てくるものなのでしょうね。
この車は65年間、同じ家族内で所有されていた車らしいのですが、
1958年に今回の販売の依頼主の父親が業者にヒルマンミンクスを売って、
250ポンドのこの車と125ポンドの追い金を得たのだそうです(汗)。
1960年の1月時点での250ポンドは当時の日本円で25万円一寸だったそうなので、
イギリスでは当時の250ポンドがどのくらいの価値だったかは判りませんけれども、
日本での25万円一寸の価値は今でいう200万円前後だったろうと思います。
因みに1958年の250ポンドは3000マルク弱だったようで、
当時のMBで一番安かった180aが8700マルクだった事を考えれば、
プレミア的な要素の全くない、完全に中古車としての価格だった事が判りますよね。
新車時の価値が判らないからアレですけど、
今で考えると、これだけの希少車がその程度で買えちゃったの?って思う所ですよね。
しかし、わざわざヒルマンミンクスを売って入手した車だったのにも関わらず、
1960年から今日まで長期保管される事になってしまったらしいです。
因みに現役だった頃の物と思われる画像がコチラ。
旧車になりつつある時期のものだとは言っても、
修復的意味合いで何にも手を付けていない綺麗な状態の雰囲気が
良く伝わってくる貴重な写真ですね。
車自体もこんな状態から65年も眠ってきているわけですから、
オリジナル資料的な意味合いでとても貴重な物だと思います。
んだば、一寸細かい所を見ていってみましょう(笑)。
フロントフェンダー。
これ、この時期のMBのフェンダーとして特に違和感は感じないのですが、
今までアップした370Sと違って、
タイヤの後部で外側に大きく回り込むデザインになっているのですよね。
この車の車体番号は87129だそうなのですが、
手元の資料によるとマンハイム370Sの最後の車両の車体番号は87130だそうなので、
1933年の最終型の中でもド最終と言える車両だったわけで、
このフェンダーもデザインの方向的に新しい方に進んでいる事を考えれば
最後の方の車両はこの型のフェンダーを備えているという事なんだろうなぁと思っています。
他に注目すべき所はフロントフェンダーから連なるサイドステップが無い事ですね。
上述のブログネタに探した8台の内7台がサイドステップを装備しているので、
多分この形態は珍しいのだと思います。
スポーツロードスターは実物を一度見た事はあるものの、
画像も含めてあまり台数を見られていないのですが、
そちらでは逆にステップがある車両を見た事がありません。
この画像で面白いのは、本来セマフォ―がある筈のAピラーに
アンバーのレンズの、方向指示灯と思われる物が付けられている所ですね。
あっ、も一つ気付いた(笑)。
これは多分、後から施工した物だと思いますが、
上部のエンジンフード用にスリットが切られていますね(笑)。
ベルリンに納車されてイギリスに渡った車らしいのですが、
ヒートしたのでしょうかねぇ?
リア廻り。
ダブルのスペアタイヤが雰囲気が好いですねぇ。
そのスペアの片方のトレッド面がツルツルになっているのも
実用していた形跡っぽくて好いなぁと思います。
この手のトランクは革張りっぽい物を見掛けますけど、
これは金属に塗装っぽいかな?
トランクっていうよりはボディから独立して載せられている葛籠って感じですよね(笑)。
最初に何枚か掲げた画像の中のリア正面の画像の方がハッキリ見えていますけど、
バンパーの下に付いていて
(この画像では片側見えないけれど)左右に蛇腹の付いている物って何かなァと思っています。
リーフスプリングの後端が近そうなので、
何かそれに作用するようになっているのでしょうかねぇ?
ランドウジョイント。
これはカブリオレの幌に張りを与えるための物で
MBでは巻き上げ式のサイドウインドウが付いているオープンで
これの有り無しでカブリオレとロードスターを区別出来るわけですが、
後年の車両の物に比べて華奢に出来ている反面、
造作はコチラの方が凝っているなぁと思います。
ヘッドランプ。
お得意のボッシュですね。
派手ではありませんが、カットは上品且つ綺麗で、
MBのヘッドライトはやっぱりボッシュだなと思わせるものがありますね。
後年になるともっと曲率が大きいような気がするのに対して
これは比較的に平らに近いのですが、
これって技術的にレンズに大きな湾曲を付けるのが難しかったからなんでしょうかね?
この時代の車は特にライトレンズの形状が変わってしまうと
表情が全然違ってきてしまうと思うのですが、
こういった物って割ってしまった場合に入手出来るものなのか、
少しばかり心配になってしまいます。
フェンダーの上のコレはミラーなんでしょうかね?
こちら側の端にはウインカー用と思しきレンズもあって、
形状といい、なかなか面白いですが、
今まで見た事が無いので、恐らくMBの部品ではなく、後付けの物でしょうね。
リアタイヤ。
メーカーはダンロップのようです。
と思ったら、フロントは、、、
ピレリでした(笑)。
反対側のフロントもピレリでしたので、前後でおのおの銘柄を合わせているのでしょうね。
どちらもサイズは6.00/6.50-18とあるようですね。
ミシュランのクラシックタイヤにこのサイズがあるかな?と思い、調べてみました(笑)。
日本のサイトでは車種から探せるようになっていなかったので、
御本家のそれで調べてみましたが、ちゃんとマンハイム370Sも載っていまして、
それによると、、、
なるほど、タブルリベットの5.50-18ってのがあるんですね~。
因みに型式をW10と書いていますが、これだとふつうのマンハイム370になってしまうし、
370は20インチらしいのでこれは誤り(笑)。
マンハイム370Sの型式はWS10なんですよね。
スポークホイールは白塗りだったようですね。
オプションではクローム仕上げもあったかもしれませんが、
この方が車格相応って感じがしますし、
こういう部分もボロくなってはいても、いかにも新車当時のままです、、、
って感じで好いですね。
コックピットの様子。
勿論、綺麗ではありませんけれども、
これが新車からのオリジナルの状態なのだとしたら、
90年経った状態とは思えないコンディションですね~。
念入りにお掃除すれば、無論完璧には程遠いでしょうけれども、
そこそこ綺麗になりそうな気もするので、
ただ闇雲にレストアしちゃうのは勿体ない気がしてしまいます。
ステアリング。
流石にクローム?にはポツポツ錆が出てしまっていますが、
これもどこまで綺麗に出来るか試してみたいものです(笑)。
ステアリング上のレバー2つは恐らく点火時期調整とハンドスロットルだとおもうのですが、
車を運転するに当たって、この点火時期調整レバーって
普通、どの程度操作が必要となるモノなんでしょうね。
使用頻度が高いからこそ、この位置に取り付けられたのだろうって思ったりするのですが…。
Tさんにお借りした戦前車の内にもこれが付いていた車はあった筈ですが、
これを弄らずとも困る事が無かったので、いつ使うものなんだろう?って思うのですよね。
今度、Tさんに訊いてみましょう(笑)。
ステアリングホイール上には溝が走っていますね~。
ポントン時代や108世代のエボナイトのステアリングにもこの溝があるのに、
その中間の111の220世代だけ溝を止めたのは何故なのかしら?と思っています。
こんな昔から採用されているのだから、伝統と言えるものでしょうし、
デザイン上は溝があった方が恰好が好いとは思うのですが、
手触り上の好みの問題とここに案外汚れが溜まる事から、
個人的には無くてもイイナァと思ったりしています(笑)。
メーター。
油圧計にはメーカー名がありませんが、
スピードメーターには『Veigel』と書かれていますね。
調べてみると、シュトゥットガルトの50キロ位?北の方に
VEIGELっていう自動車関連部品メーカーはあって、
それは1920年代からある会社のようなので、その会社の製品なのかな?と思ったのですが、
1925年に自動車教習所の教習車用のデュアルコントロール装置を発明した会社らしくて、
HPをちょろっと覗いた範囲ではメーターのメの字もないようだったので
恐らく全く別の会社なのでしょうね。
んで、調べた範囲ではその別の会社と思しきVEIGELはAVCとも言うらしく、
古いBMWのバイクのメーターなども作っていたらしいです。
今の会社としてどこにも出てこないって事は
遥か昔にどこかに吸収されちゃった会社なのかもですね。
かなり話は脱線しましたが、マンハイム370Sのメーカー公表の最高速度は115キロなのですが、
160キロスケールとは結構見栄を張っていますよね(笑)。
まぁ、うちの220君も170キロに対して210キロスケールですから、
同じようなものですが(笑)。
この画像に写っている時計の他にあるもう一つの計器は燃料計だと思われるのですけど、
追加でダッシュ下に取り付けられているのは、、、
どうやら油温計で、何故か水温計がないのですよね(謎)。
車種によってはボンネット先端のマスコットの支柱に水温計が付いていたりするのですが、
マンハイム370Sでは普通のマスコットなので、水温計が無くても良いんかいな?
と余計な心配をしてしまいます(笑)。
で、この追加メーター、一瞬単なる後付けのものだと思ったのですけれども、
よくよく刻みの部分を見てみると、そのデザインが油圧計とスピードメーターと
同様の物になっているのですよね。
なので、ひょっとするとこれも元々装備されていた物なのかもしれません。
このメーターの脇にカーバッチが取り付けられていますが、
他にもこんな所に、、、
取り付けられていたりして、
1950年代終わりに25年落ちの車を楽しもうという人の趣味性が見えて
こういう部分も面白いなぁと思ったりする所ですよね。
ラジオ。
戦後すぐのカーラジオでも結構その存在をアピールするかのような物だったりするので、
大きさからしてこれは恐らく依頼者のお父さんという方がこの車を買われた時に
取り付けた物なんだろうなぁという気がしますね。
ドア内張。
右側には一寸だけ白くカビっぽい物が見えますけれども、
どちら側の革も革自体はしっかりしているように見えるので、
かなり好い生地を使っているんでしょうね。
上縁の上下に分厚いウッドパネルもひょっとすると磨けば光るのでは?という感じもしますね。
ドアガラスは多分見えなくなるまで下がると思うのですけれども、
そのクランクが上を向くとその端がドアの上縁を越えてくる位置になっているっていうのが
後年では一寸考えられない、時代を感じさせるものですね。
サイドシルのMERCEDES-BENZの文字の入ったプレート。
一寸このサイズだと見えにくいかもですが、
以前の同型車両の紹介の時にも書いたと思いますけど、書体がお洒落でイイですね。
シート(ほぼ)全景。
シートも汚れてはいますが、この部分の革自体の状態も案外悪くなさそうですよね。
しかし、スポーツモデルでベンチシートとは、、、って感じがしないでもないですが(笑)。
よくよく見ると、クッション側はセパレートっぽいんですけどね。
シフトレバーとサイドブレーキ。
MTミッションは3速+ODという感じらしいですが、
先程のスピードメーター画像のマークからすると、各ギヤの守備範囲は
1速32キロ位、2速68キロ位、3速104キロ位って感じのようですね。
戦前車の棒状のサイドブレーキって思いつく範囲で殆ど、
立っている状態から手前に引くタイプですよね。
あれっていつ頃から上に引き上げるタイプになったのでしょうかね?
エンジンルーム。
今まであんまり意識した事がありませんでしたが、
マンハイムは左側が出入口のカウンターフローなんですね~。
少なくともW29以降のカウンターフローのMBでは
思いつく限り右側出入口なので、
こうして気が付いてみると、結構違和感があります(笑)。
エキマニが前で集合して後ろに向かうっていうのもまた違和感がありますよね。
これってステアリングギヤボックスを避ける為ですよね。
以前書いたことがありますけれども、
実は右側出入口である220SEbの場合(恐らくM129やM130搭載車でも同じだと思いますが)、
右ハンドルの場合にはやはりステアリングギヤボックスを避けるために
エキマニの出口は前を向き、
ダウンパイプは一旦前に向かってから後ろに向かうのですよね。
右側にホーンのラッパが2つ見えますが、多分元々のホーンは
それらの下方にある先太りの筒状の物だと思う所で、
そのラッパ状の物の方は後年取り付けた物だと思うのですよね。
ヨーロッパの人って本当に後付けホーンが好きですよねぇ。
ラジエター上部。
フラットラジエターなので、エンブレムは平らで好い筈なのですが、
緩やかにセンターに向かって盛り上がっているっぽいですね。
お星さまの周囲のポツポツが220君世代とは比べ物にならないほど細かいのが印象的です。
で、マスコットが付いているラジエターキャップが無いのが気になっていたのですけど、
外されてここにある事に気付きました。
左奥のトレイにキャップがあって、その下にマスコットが入っています。
これがあって好かったなァと思うのですが、
マスコットをよくよく見るとお星さまのフレームが2箇所折れていて
根元と分離してしまっているのですよねぇ(残念)。
右側にある配管はツインのキャブの吸い込み口を
エアクリーナーと繋ぐための物みたいですね。
真ん中のトレイに1本だけ入っているのはスパークプラグだと思うのですけど、
現代的な物よりもかなり全長が短そうですねぇ。
ラジエターカバー?
車両の画像の方にはこんな風に
ラジエターカバーが装着されている物があるんですけど、
この外した状態のカバーの画像の方は下の方が開くように出来ているようですし、
見掛け的にも物が違いそうですよね。
これらからすると、イギリスでも寒い地方で使用されていたのでしょうかね?
その他の付属品。
上掲の昔の画像では旗棒が付いていましたが、それもちゃんと残っているのですね。
こうしてみると長さが違いますが、何故?って感じですね。
勿論エンジンに付いていなかったキャブレターもあります。
手元の資料によるとSolex 35 MOHLTというタイプだそうです。
綺麗になっているっぽいのでOHしてあるって事なんでしょうかね?
さて、気になるESTIMATEの方ですが、15万~18万ポンド、
今のレートで2750万円弱から3300万円弱とのこと。
2019年のRM Sotheby’sのオークションで1932年式の同型車の
綺麗な状態の(多分)ちゃんと走れる状態の車両が
ESTIMATE40万~55万ユーロで流札になっている事を考えると、
幾ら手付かずな状態とは言っても、
ちょいと強気な気もしますが、どうなんでしょうかね?