先日、ある人から190SL用のエンジンプレートのリプロのエンジンプレートの入手を依頼されたので
それについて調査していました。
先だってブログに書いた、
190SLの121921エンジンから121928エンジンに変更になった時期を調べていたのも
実はこの調査の一環だったのですが、
更にエンジンプレートにも2種類ある事が判りました。
拾ってきたプレート画像を番号順に並べていくと結構面白い事が判るので、
一寸やってみませう。
古い順に並べていきます。
ハイ、まず、以上の4つは少しずつ違いがあるのですよねぇ。
違いが判るでしょうか?
先ずはですねぇ、私的に見た目が一番酷いと思うのは3つ目で、
これ、明らかにリプロのプレートに各番号を打刻しているんですよね。
他の3枚はA.G.の間にハイフンがあるけど、このリプロのプレートだけそれが無いし、
TYPの項目に関しても最初から機械的に打刻?してあって黒く色付けしてあるのと、
ただの打刻の違いがありますからね。
その打刻自体に関しても、これだけ若干左右方向が詰まっていて、
且つ文字のラインが太い感じがしますよね。
これ、プレートが朽ちて自然に居なくなってしまったなら仕方ないと思うんですけど、
とにかく見るからに打刻が嘘っぽいので、
個人的には居なくなったままの方がまだ良かったのでは?と思うんですけどね。
しかし1番目も2番目も、実はう~んという感じ。
それはプレートの方じゃなくて、
その上のエンジン番号のブロックへの打刻の方なんですけど、
1番目は921の後がハイフンになっており、
2番目のは全く数字しか打ってありません(汗)。
その後の例を見て行ってもらうと判りますが、この時期は
4番目のように121の後、921の後、そして最後と、
ドットが全部で3つ打ってあるのが恐らく正解だろうと思われるのですよね。
故に、この2つは恐らく車に対してプレート自体はオリジナルで、
オリジナルで無いエンジンにそれを付けてエンジン番号をプレートに合わせて
打ち換えているのかも知れないなァと思うのですよね。
3番目が一番酷いと書きましたけど、
これ自体は見掛けの向上の為にリプロのプレートを使用しただけだと思うので、
エンジン自体はオリジナルだったりするかもですね。
(残念ながらエンジン番号のブロックへの打刻が良く見えないので判断は出来ず…)
で、4番目のもブロックへの打刻が下5桁だけ書体が違うのが一寸怪しいかも?
と思ったのですけれども、その次の03945を見ると、、、
やはり下5桁の03945の書体だけ違っていて、且つ03833のそれと書体も似ているので、
これはこの時期?はこういう物なのかも知れないなと思い直しました。
ここから1957年。
面白いのがエンジン番号のブロックへの打刻位置で
1956年は向かってプレートの左端に合わせて打ち始められているのですが、
1957年はそれより右寄りの位置から打ち始められていますよね。
なんででしょ?
んで、ここからが1958年。
何と、次の2機は番号が1つ違いでした(笑)。
これはまたブロックへの打刻位置が1956年の位置に戻っていますね。
おや?と思ったのはコレ。
プレートが脱落してリベットだけ残っていますが、これまでの物との違いがわかりますか?
私、この画像を見付けるまでは1959年からエンジン番号のブロックへの打刻とプレートの位置が
前から後ろへ移動するんだな、、、と思っていたのですけど、
この02146で既に明らかに周りの風景が変わっていますから、
1958年の後半のどこかで後ろに移動していたのですね。
んで、ここから1959年。
さて、これまでとの違いが判りますでしょうか?
DAIMLER-BENZ A.-G.の下の
WERK STUTTGART-UNTERTÜRKHEIMが、STUTTGARTだけになり、
下のMotor-Nr.がMotor Nr. / Engine No.表記に変わるのですよね。
更にエンジン番号の表記法も
上6桁と下7桁の間にハンドル位置/トランスミッション種別の番号2つが入るように改められて、
『121.921-』と、
ミッションはマニュアルしかないという事で、ハンドル位置欄を飛ばしたその次の『0-』が
機械的打刻?+黒塗りになっていますよね。
エンジン番号のブロックへの打刻の方もこの辺りから、
121.921-10-950XXXX.という感じに
繋ぎにドットの他、ハイフンも使用するようになるようですね。
ハンドル位置左を示す『1』が下7桁内に使われる『1』と違う所に注意であります。
んで、前年より桁数が増えているにも拘らず、
エンジン番号のブロックへの打刻開始位置が後退しているのがまた面白いですね。
で、恐らくここからが1960年。
1959年までは下7桁の最初の2桁で西暦末尾をひっくり返して製造年を示していた訳ですが、
ここでそれを廃して製造番号を1桁増やした、
現代?まで続く14桁制がスタートする事になるのですよね。
故にその製造番号も年毎の物ではなく過去からの累計?製造番号に変わっているようです。
この年はまた前年よりも桁が減っているのに
ブロックへの打刻開始位置は逆に前進していますなぁ(笑)。
多分この辺りから1961年。
ちなみにこの辺りから1961年だという根拠は
1961年の190SLの車体番号下6桁が恐らく019740付近から始まっていると思われるからで
MTしかない上に右ハンドルがウルトラレア(25881台中562台らしい)なので、
この辺りは大まかに見て車体番号≒エンジン番号
(但し部品用エンジンの為なのか、車体製造番号<その車両に載っているエンジン製造番号という傾向になっている)
とみなしてよいと思われるからであります。
なんすかコレ?
M121 B.Ⅸって言う事は121928エンジンだと主張したいようですけど、
それだったら、製造番号が2万番台というのはあり得ませんからねぇ。
このプレートの書式も1950年代半ば位に使用されていたものだと思われる
(調査の過程で知りました…笑)し、
その場合、Typ欄には121921なり、121928なりが一緒に入るべきだし、
やっている事が結構滅茶苦茶ですね(苦笑)。
これ↓はヴィークルデータカードによると1961年の6月頃の車のエンジンらしいです。
で、1961年中に121928エンジンに移行。
これもプレートを新調しちゃっていますね。
しかもこれまたプレートのパターンの時代が190SLの物とは違うし。
んで、このエンジンの載った車両にもデータカードがあったのですけれども、
製造年月日がラインを跨いでしまっている為に読み取りにくいんですけれども、
どうやら1961年8月30日とあるみたいです。
車体番号は022329らしいのですが、022122以降が121928ですから、
それに変わったばかりの頃のエンジンのようですね。
データカードによるとこれ↓は1962年3月2日出荷の車輛に載っていたエンジン。
これ↓がまた凄い。
データカードによると、出荷日が1963年5月13日と、
生産終了月の車輛に載っていたエンジンですからねぇ。
この年に作られた190SLは104台しかありませんから結構レアですね。
またこの121928エンジン自体も車体番号022122からという事から考えると、
総数は3800機には満たないと思われるのでレアですよね。
ってな感じで8年も作っていた車なので、エンジンプレート/ブロックへのエンジン番号打刻で
色んな違いがあるものなんですね。
こんな事やってると、その内、鑑定士になれそうだなァ(大笑)。
いや、でもね、この系列のエンジンって結構危ないと思うんですよ。
仮に長い年月の中、どこかの時点でエンジンがパーになった場合に、
W120の180b、c、W121の190a、b、W110の190c、200のエンジンに積み替えられて
誤魔化されている事もあり得ない話ではないですからね。
190SLももはや容易に手の届く車ではありませんから、
万が一幸運にも買える立場になった場合には、
下手な事をされている車両に当らないよう、この辺りは一寸勉強しておいた方がイイと思われます。
マッチングナンバーです!なんて言われて高く売りつけられて
実はエンジン番号が打ち換えだった、って事になったら最悪ですからね(笑)。
んで、肝心なリプロのプレートなんですけど、
何故かSTUTTGARTのみバージョンがどこにも売っていないんですよね。
調べた感じでは昔は売っていたっぽいんですけどね~。
依頼主は、あればSTUTTGARTバージョンが欲しいとの事でしたが、
無ければWERK STUTTGART-UNTERTÜRKHEIMバージョンでいいとの事だったので、
後者の方を発注しました~。