前日のつづき
8月13日(木)朝4時前に起床。

しょうゆラーメンに餅を入れて、腹に放り込みます。
あと、天候悪化で昼ごはんを作っている余裕は無いと考え、先にアルファ米の五目御飯を作っておきます。

テントから出てみると、すでにほとんどの人は出発した後のようでした。
私もあわててテントを畳み、パッキングを済ませます。

では、船窪小屋まで行くとしますか。(5:00)

あれ? なんかきれいな太陽光が当たって、アルペングリューエンになってます。

まるで、山頂が燃えているみたいです。

こりゃすごい!
右側から太陽が昇ってきているのですが、私の立っている場所からでは太陽を見ることができません。
ちょうど、前方(写真左)で家族連れが太陽を拝んでいるみたいだったので、あわててそこまで走っていきます。

ちょうど下の雲海と上の雲の隙間に太陽が出てきているようでした。

こんな日の出、はじめてみました。

いやぁ、きれいですねぇ~。

しばらく、感嘆しながら眺めていました。

さて、嵐が来る前に山小屋に到着しないと・・・・

烏帽子岳も背景が違うと、印象が変わりますね。

これから進む稜線方面です。
ガスの流れ具合からして強い風が吹き抜けている気配は無いので、まだまだ大丈夫そうです。

おや、山頂付近に誰か居ますね。

昨日私が昼寝していたところで、写真撮影をお願いしたおじさんが立っていた場所です。
どうせなら左の高いところに行かないと(笑)
って、今日は昨日より風が吹いているので無理だと思いますけど。
そう言えば、学生さん達も針ノ木雪渓に向かうと言っていたので、彼らでしょうか。朝日をあそこから拝んだのだとしたら、ラッキーですね。

さて、こちらも天気が崩れないうちに先を急がせてもらいます。

烏帽子岳の反対側、池塘地帯に突入。
晴れていれば、さぞかし絶景だったことでしょう。
これは、これで雰囲気抜群ですけど。

烏帽子岳を振り返ります。
この晴れ間がいつまで持つか・・・

再び、石灰岩質の山を進んでいきます。

富山県側から、どんどん雲が流れ込んできています。

足元にはコマクサがたくさん咲いています。

まずは赤沢岳に到着しました。
この調子なら楽勝と思っていましたが、烏帽子・船窪間が本領を発揮し始めるのがここからだという事を、このときはまだ知りませんでした。

昨日、尾根を登ってくるときに見えていた、崩落地帯に突入したみたいです。

右側に落ちたらマズイのですが、道が微妙に右に傾いています。

一旦、山側に戻りますが、

再び次の崩落地帯

こりゃぁ、すごい道ですね。
風が吹いていなくて良かったです。
ただ、雨が降ったり止んだりし始めました。

さらに、アップダウンがきつくなってきました。

道の崩落っぷりも、かなりのレベルです。

急降下。
ちょっと気温が上がってきたので、烏帽子小屋でアクエリアスの粉に有料(1リットル200円)で分けてもらった水で作った「アクエリアスもどき」を口に含みます。
うげっ、なんだこの味・・・・
アクエリアスってこんな変な味だったっけ?
いや、これは烏帽子小屋でわけてもらった水の消毒液の味か・・・・
(雨水を取るしか無い場所なので、仕方が無いのです。湧き水や雪渓の水が取れる場所と、雨水を利用する場所では水に関しては味といい値段(もちろん無料になります)と言い、天国と地獄ぐらいの差が出ます)

崩落地帯。(振り返って撮影)

滑りやすい登り道。(しかも、森林限界より下まで一旦下ってます)
しっかし、アクエリアス(水分)がマズイのはまいったなぁ。

なんか、ガスの向こう、はるかかなたの高さに山頂らしきものがうっすらと見えてゲンナリします。
ここまで、あまりに上下をしていたので、てっきり不動岳を通り越して、船窪岳付近まで来ているのかと思っていたら、

まだ、不動岳でした。(7:45)
しかも、船窪岳まで3時間、七倉岳手前の船窪小屋まで2時間弱と書いてあるのですが、このとき、これを見落としていました。
吹きっさらしの稜線だと、さすがに雨風が吹き付けてくるので、先を急ぐことにします。

その後は痩せ尾根だったり、

道が今にも崩れ落ちそうだったりしつつもなんとかかんとか進んでいきます。

多少、道の状態がよくなったところで荷物を降ろし、

朝、テントで作っておいた五目御飯を腹に放り込みます。
これはそれほど美味しいものでもないので、さらに美味しくないアクエリアスで腹に流し込みます。

再び崩落地帯

延々と続く悪路とアップダウン・・・・

足場の悪いところ、

ロープの急坂など、こりゃぁ、不人気コースになるのも仕方が無いと言った感じです。
いまだに、烏帽子山頂付近に居た学生君達以外に、誰とも会っていません。

痩せ尾根の向こうに次の山が見えています。

はいはい、山に登る前にまずは下りますよ。
この後、ようやく最初の人とすれ違いました。

そして、登り返しっと。

船窪第二ピークに到着。(10:00)
ここで会ったおじさんに、「ここまで来れば、あともうちょっと」と言われて一安心。

しかし、すぐにロープつきの崩落地帯やら

写真だとわかりづらいですが、ロープが無いと、百パーセント転倒間違いなしの、ぬかるんだ急坂、

同じく、ロープに頼る泥坂、

あの木で大丈夫なんだろうか? というようなロープ。

そして、まだまだ続くアップダウン。

極めつけは、ロープとワイヤーが張られた長い急坂。
何の気なしに、ロープをつかんで進んでいくと、足元が見る見る崩壊して滑り始め、体が下に落ちていくではないですか! 落ちる先を見ると、そちらは谷底が口をあけていて、ロープで体を止められなければどうなるかわかりません! ロープをたるんだ状態でつかんでいたので、成す術なくそのまま落ちて行きます。
そして、ロープのテンションが張ったとき、握っていた手を離さなかったので何とか坂の途中で止まりました。(ロープが解けたり切れたらどうなることかと思いました)
ここまで全力でロープに頼り切ったのは初めてです。
20mぐらいある長い急坂を、ロープとは別に垂直にたらしてあるワイヤーに体を預けて慎重に下りました。

まだまだ気の抜けない道が続きます。
そして、おなかが減ってきました。
やはり五目御飯じゃとても足りないので、行動食を食べようとウエストポーチを覗くと、しまった!、行動食を入れておくのを忘れてました。。。
雨よけのカバーをかけたザックの一番奥にしまってあるし、さっきのおじさんが、もう少しで着くって言ってたし、、、
もう一分張り頑張りますか・・・
(これが間違いの元でした)

はしごか~、うっへ~、腹減った・・・・

ようやく船窪岳に到着。(11:15) 不動岳から3時間半かかっているので、急激にペースが落ちているのですが、まだ自覚していませんでした。あと、ここから少し下れば山小屋ぐらいの気持ちで居ました。

そっか、もう一回下って登るのか・・・・

まずは、底まで下って、、、(船窪乗越)

再び登り返します。

まぁ、よくもまぁ、あそこから下ってきて、また登ってきているなと思います。

這う這うの体でテントサイトに到着。(12:26)
テントサイトの先にある長い梯子を見て、思わずここでテントを張って一晩過ごそうかと思ってしまったのですが、寒冷前線が通過するのはこれから。
ここから20分行った所にある、船窪小屋まで決死の覚悟で(大げさ)頑張ることにします。

シャリバテ状態がさらに進み、少し進むごとに息が切れる始末。
しかし、あと20分以内で小屋に飛び込めることがわかっているので、根性だけでそのまま進みます。

こういう時、ガスっていて先が見えないのが本当に辛いです。
たかが20分の距離が、永遠に遠く感じます。

ようやく船窪小屋が見えてきました。(12:50)
出発してから8時間弱、餅入りインスタントラーメンと五目御飯、あとはアクエリアスもどきだけでよく頑張ったなぁと思います。。。
小屋に入ると、さも平気だったかのように振舞いつつ、受付を済ませ、案内された寝床で今日の分の行動食を引っ張り出して、貪り食います。

ふぅ~、やっと少し落ち着きました。

船窪小屋、ご覧のとおり、ランプと囲炉裏の雰囲気抜群の山小屋です。
汗と雨で全身がけっこう濡れていたので、服を着替え、雨具を乾かせてもらいつつ、まだおなかが満たされないので、レトルトの親子丼を作ります。
ところが食べようとしたところ、行動食の食べすぎと疲れで急に食欲が無くなってしまったので、隣で作っているところを羨ましそうに見ていた若い登山者にすべてあげてしまいました。

嵐の前の一瞬の晴天です。雨具を外に干します。
この後、寝床に戻ったら寝落ちしてしまい、あっという間に2時間が過ぎていました。
気がつくと、外は嵐。
あわてて、雨具を回収に向かうと、すでに山小屋のスタッフによって、中に取り込まれた後でした。

夕飯の時間です。
すっかり食欲が回復したので、天国のような光景に映ります。

ゴージャス!
いろいろ手製の料理があって、本当に美味しかったです。
(何事にも「ホッホッホ」と笑う小屋の主の人柄含めて、常連ファンが多いのもうなづけます)
しかも、水はテントサイト(20分先)脇の危険な崖から沸いているものを、スタッフがくみ上げてきたもので、1リットル200円ですが、無味無臭で美味しい!
これは助かります。

外は嵐。
テント泊にしなくてよかったです。

夕方になり、ランプに火が灯ります。

山小屋の奥(大町側)は電波が入るので、天気予報で明日の天気図をチェック。
15時に寒冷前線の通過が始まったみたいです。
と言うことは、明日は期待できそうです!
その後、小屋のご主人含めいろいろな方と話をさせてもらい、服や靴下を乾かしながら、楽しくも、考えさせられる夜をすごしたのでした。
明日は遅い時間になればなるほど晴れ上がるんじゃないかという話をご主人にしてみたら、「ほっほっほ」と笑いながら頷かれていたので、明日は長い時間歩けそうです。(もともとそういう予定でしたが)
ちなみに常に崩壊が進む烏帽子--船窪間は、コースをジグザグに作るわけにもいかず、どんどん内よりにコースを変更しているとのこと。(どうりで道が直登、直降でアップダウンが必要以上にきついわけです)
コースタイムも船窪に向かうほうが8時間、烏帽子に向かうほうで9時間はかかるとのこと。(旺文社の地図だとコースタイム7時間ですが、シャリバテしていなくても、そのペースで歩けたかどうか)
私が死ぬ思いをしたワイヤーの急坂、お盆明けに小屋のご主人が今年から導入した小型整地マシンで階段状に岩を砕いて整備するという事を、死ぬ思いをしたという話に「ほっほっほ」と笑いながら話してくれました。(ぜひお盆前にやっていただきたかった(笑))
あと、去年から船窪小屋と黒部湖の平小屋方面を結ぶ道が整備されたそうで、多くの人が道を使わないとすぐに荒れてしまうので、ぜひ使ってほしいとの事でした。(佐々成政のさらさら越えのコースかと思ったのですが、有力諸説によると平の小屋から針ノ木峠方面でした)
そんな話をしていたら消灯時間になったので、寝床に潜り、すぐに眠りに落ちました。
おやすみなさい