2009年06月26日
らしさとは何か
「レオーネだって下りならスピードが出るぞと言われても、とても踏めたもんじゃない。おっかないですよとこぼしたら、お前宇都宮に来いと。エアロスバルの失速立て直しやキリモミのテストに放り込んで、怖いもの知らずにしてやる!と。怖い会社だなあと心底思った」
「サファリラリーでサポートカーを担当した時。競技車に先行するため飛ばしていると、下りコーナーで車が一車線分横っ飛びしたりする。こんなサス、シャシでは欧州車相手の勝負などできない…」
「会社として、水平対向に技術的な必然性を認めて進化・熟成していたとは言えない。ビジネス上は輸出で数が稼げていたし、構造面のメリットや生産設備の都合に甘えて基本骨格を継続していたに過ぎない」
「理想主義で造ったスバル1000が販売面では成績を挙げられず、コストは高く整備性も良くない。その後のレオーネでは、コストダウンや排ガス、安全対策等に追われ、理想形の追求すらままならなかったのが現実」
…ほんの20余年前まで、スバルってこういう状態だったんです。これは何も、外部の評論家が言った事ではない。富士重社員自身の回想に他なりません。
「それでも技術は磨いていました。アクティブトルクスプリットやエアサスなどは課題としても面白く、商品につながる華もあった。反面、水平対向にはこれといってこだわりは無かったですね。パフォーマンスや環境対策では苦労が絶えなかったし」
「しかし、ポスト・レオーネでも4駆を売っていきたいと思うと、直4に意外な厄介があった。特に、他社も苦労していた二次振動。これが駆動系全体に共振してしまう。FFで評価のいい車種が、四駆になると凡作になってしまうのはほとんどこれでつまづく為です。水平対向では無視できるもので、対策のノウハウも要員もない…」
「それで皆が頭抱えてる時、ミシガン帰りの桂田さんが、水平対向+四駆こそ理想のパワープラント・レイアウトだと、シンパを広げだしたから大変ですよ。結局V型、直列、水平対向と全部競作することになっちゃった」
「汎用性の高い直4を持つ事は、会社が存続するために絶対必要だと。しかし、SIAの立ち上げに800億円、小型車向け直4エンジンの設備投資、こちらの見積もりも800億円。クローバー4の660cc化とレガシィの新規開発に大投資した直後でかつ、円高でダメージを受けていましたから、1600億もの追加投資ができる余裕など到底無かったんです」
「スバルのDNAは走りだと言っても、レオーネがそうだったかと考えるとねぇ。あの時代は開発=設計すること、製品の条件=壊れないことでしたから、動的性能を突き詰める所までは行ってなかった。図面から試作車を起こして、実験に渡して一通りチェックして、最後に影山さんや百瀬さん達が乗って、これなら良かろうと。百瀬さんは確かに設計や乗り心地ではプロでしたが…」
「EAエンジンの最大のウィークポイントは吸排気系でした。アルミブロックと鋳鉄ライナーの膨張率差を埋めるために、ヘッドボルトを増やして強引に締め込んだ。それを避けるためにポートは湾曲していたし、スペアタイヤがあんな所にあって(苦笑)管長も取れやしない。排ガス対策の為に等長・等爆レイアウトは封印されてて、OHC化まではどうにか漕ぎつけましたが、マルチバルブ化なんて遥か夢の世界。要は、持って生まれたショートストローク・ビッグボアの素性が全然活かせてなかったんです」
「ですから、新しいエンジンにはとにかく力が入りました。お金がかかるのは申し訳ないけど、機関設計の欝憤を全部晴らさせてもらおうと」
富士重工内部でも明確に水平対向の真価を理解し、金看板として据えたのは正にレガシィ以降の事だと解ります。
技術優位と言われながらも、エンジニア陣が皆で思い悩み考えあぐねた時期があり、片方ではビジネスの波に翻弄されながらようやく今の形になったと。
「レガシィのお客さまは、我々造り手が思う以上に普通の人たちでした。決して走り一辺倒、車高を下げてエアバッグやリアシートを外して、という方々ばかりではないのです」
「レガシィというプロダクトが何を求められているのか、それを改めて考えて再構築しました」
「ドライバーズカーとしての素質は保ちつつ、更にパッセンジャー全員が快適にツーリングできる性能を造り込みました」
「今までのやり方では、レガシィはCセグメントの車になってしまう。Dセグメントでの商品性と、従来から評価されてきた走行性能を昇華・結実させなければ、この先レガシィの存在意義はありません」
こういう造り手の感覚、意志を理解したら、「もはやレガシィはレガシィであることを捨てた、ユーザーを見限った」的な感情論が如何に浅はかなものか。
そりゃね、ワタクシだってあれこれ言いたいこたありますよ。でも、自称「スバリスト」や一部メディアの論調はあんまりだと。
まるで自分達だけがスバルを買って支えてきてやった、みたいな。
マツダに乗ってるワタクシが言えたガラでは無いかも知れませぬが。
命預ける道具ならば、もう少し中身の質を汲んでから論じて頂きたいのです。
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Posted at
2009/06/26 09:41:42
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