スバルの吉永前社長の、恐らくリコール禍以前のインタビュー記事ですかね。
「スバルはエンジンありきの会社だと思われるのが、ウチには一番マズい」
と。
しかし実際、プロダクトを見るとどうでしょうか。コの字だコの字だと「デザインに嵌め込むための水対念仏」が先に来てしまう。
経営と生産、開発それぞれがばらんばらんだ、と以前書きました。
経営トップは「水平対向ありきではいけない」
生産は「とにかく設備を回して数字を上げるのが仕事」
開発は「ウチの最大のアイデンティティは水平対向」
だからデザインがこうなっちゃう。経営から見たら「水平対向ありきではダメだというのに」、デザインはピストンをシンボライズしちゃうんでしょ?
あー、その水平対向のオリジンの話から間違った俗説があるので、ちょっと指摘しましょう。
水平対向の着想は航空機の星型エンジンからだ、という話です。あるときエンジンをオーバーホールかなんかでバラしたら、水平位置のシリンダーが一番痛みが少なかった、という。
それ、あり得ないですから。
そもそも星型エンジンというのはバランス上、シリンダー数が
奇数でないと成り立ちません。14気筒や18気筒ってのは、7発や9発を2つ重ねて複列化したものです。
仮に星型で水平位置に対向するシリンダー数があるならば4、6、8、10気筒となるでしょうが、そもそもそれは勘違いの話です。水平位置で180°、一直線に位置するシリンダーはありません。何処を取ってもです。
星型と水平対向の共通点としたら、回転バランスの良さと、全長の短かさから空冷に有利なところ、潤滑設計が面倒なことくらい。
どこからこんなボーッとした俗説がはみ出てきたのやら。
ともかく、このデザインテーマが
コーポレートアイデンティティの体現とはズレていて、
ブランドアイデンティティの象徴とも言えず、
プロダクトアイデンティティとしては技法が稚拙で、
総じてスバルの社内統治の甘さばかりが滲み出る有様。
そこでタイトルの「二兎を追う」です。
以前から、レヴォーグとWRXのガタガタな造形の原因をいろいろしつこく解析してきました。それは、
「ファミリーユースも考慮すべきツーリングワゴンと、リアルスポーツを標榜するセダンを無理やり共通化した副作用」
として総括しました。そして新しいレガシィです。
これはね。
オーソドックスな立ち位置のセダンと、SUVになりたくて仕方のないアウトバックを無理やり共通化した故の「巨顔」
という事になるでしょう。もはや、レガシィはBMWやメルセデスを指標にしたツーリングカーではなく、
ここら辺の連中と戦う為のアウトバックをまず仕立てて、その都合を引きずりつつどうにかまとめたセダン。こういう成り立ちなんだと。こいつらと比べたらそりゃ、アウトバックも巨顔には見えないでしょ。なんせSUVなんだから。
こうなるともう言葉が無いね、ボンネットの中にあと一枚エンジン載るねってくらい。エ型8気筒w
やったれやもう。
水平対向を残す前提だとね、THSを適合させるにも手間がかかるでしょ。同じ直4のマツダですら止めちゃったのに、OEMでそれなりに高くつく他社コンポーネンツを「政策燃費規制」の主対策に据えるのは危険なんですよ。だったら北米の儲けをきちんと電動化の水平対向最適アレンジなり、ディーゼルのバリエーションや環境対応に注ぎ込むべきだった。
PHVもEVもみんなトヨタ頼みでやります、水平対向はこのまま存置させますでは何の展望があるのさ。
まあ、メディアがようやくスバルの茹でガエル傾向に気づき出したので、こういう話もそろそろ締めようと思いますね。投資もそうですが、みんなが騒ぎ出した頃には遅いって言いますでしょ。
自社の舵取りくらいプロパーできちんとやれよ…。
Posted at 2020/04/27 10:36:20 | |
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