
いや…ヒドイな。
この「くたばれ」の相手がまさに、ミサイル巡洋艦「モスクワ」だったわけですが、
ホントにくたばったw
実のところ、ロシア海軍にとって巡洋艦というのは大層重要な艦種であります。
ロシア黒海艦隊は、黒海〜エーゲ海〜地中海を繋ぐボスポラス海峡、ダーダネルス海峡の通過について、「モントルー条約」の規定で随伴艦艇数などが制限されるため、艦隊行動の足枷を嵌められています。
特にトルコが空母の通航を認めていないので、旧ソ連時代の「キエフ級」は実質空母ながら、前甲板にミサイル兵装や砲塔を並べて「航空巡洋艦」と称していました。
とにかくソビエト〜ロシア海軍は、対米兵力では全く量的に敵わない規模ですから、個艦戦闘能力をてんこ盛りにしたがる傾向が顕著にあります。
↑Wikiから引用。
艦橋構造物の両舷にこれでもか!!と並べた…これは対艦ミサイル「P-1000 ヴルカーン」の発射筒ですが、長さ12m弱、重さ9.3tの巨大な弾体が連装8基で16発も積まれています。
…こんな観光バスみたいなサイズのミサイルを、ほとんど露天の甲板上に置く設計はロシアくらいしかやりません。
ここに当てたら笑うほどブッ飛ぶぞ、って素人でも分かるもん。
昔、日本海軍の巡洋艦「三隈」などでも、空爆で魚雷が誘爆して致命傷になったケースはありましたから。
先述の「ヴルカーン」は射程が1000kmにも及ぶ、艦載型としては最大級のミサイルですが、…そもそも日本や米国、西側諸国に、通常弾頭でそんな巨大なミサイルを備える国はありません。
日本の90式対艦誘導弾は150km、新型の17式はもう少し伸びるようですが、米国製のハープーンでも最大315km程度に収めています。
この巨大ミサイルを搭載するため、日本のイージス艦「こんごう級」が7300トンほど(最新の「まや級」でも8200トン)なのにスラヴァ(モスクワ)級は9300トンと2000トン重く、船体も20m長くなりました。
島国日本でこの装備は物足りなく映るかも知れませんが、空自のF2戦闘機は対艦誘導弾4発を搭載できます。
F2は80機以上配備されており、その気になればF15で制空権を保持しつつ、大量のミサイルで敵艦隊に飽和攻撃を仕掛ける事も可能なので、横須賀沖から日向灘を狙い撃つほど足の長いミサイルは
ぶっちゃけ要らない
んですね。大体「巡洋艦」ほど大きな艦体も、駆逐艦の大型化・重武装化が進んで不要になっていますが。
しかしそこはオカネのないソビエットロシア。Wikiなんか見てますと、たいがい「計画◯隻 建造△隻」と、軍の要求数を満たせてないのが実情です。
隻数が足りないなら1発の威力をより大きく、1艦の戦闘力をより高く…すると、開発コストや調達費が高騰してますます数が揃わない。
更に、同型艦を何隻か造っている間(とにかく予算が足りないので、建造期間がやたら長引くことも多発してます)、搭載兵器や船体の設計変更なんかしたりして、10隻の建造予定が4隻しか就役せず、うち1隻だけが仕様違いになったりする。
ロシアの国土を考えますと、タダでさえ限られた不凍港に揃わない船、仮想敵だらけの周辺事情が何を招くか。
一隻辺りの訓練や哨戒などの稼働期間が大幅に延びて、整備や休養に回す余裕が無くなります。
実戦に出る前からクタクタなんです。
要は、「ケンカを売れる立場じゃない」軍隊がロシア海軍なのです。
かつてフルシチョフが、水上艦艇の縮小・原潜艦隊の強化に走ったことがありました。ハナからアメリカと水上艦では勝負にならない。ならば水中戦力で圧倒してやる。
ところが、潜水艦戦力対決こそ、ソビエトが乗ってはいけない土俵だった。
彼らは本当に、自分たちの実力を理解していません。正面装備はそこそこ見栄えしても、裏側はすっからかんなのに。
Posted at 2022/04/16 09:03:42 | |
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