慣らしについては、RRの時に
色々考えました。
で、今回も同じパターンでいいか、と思っていたのですが、取説を読むと
3,000kmに達する迄、'スポーティ'走行を避けます。
車両が本来の性能を発揮できるようになるのは、この期間を過ぎてからです。
なんて書いてあります。それ以外の、1,000kmまでは3,500rpm以下で、とかフルスロットルにするな、というのは一般的に言われていることでもあり、問題ないのですが、3千キロというのは長いので、どうしたものかと久しぶりに慣らしについて調べてみたのですが、やはり色々です。
そんな中、みんカラで面白い書き込み(
1,2)を見つけました。
レッドゾーンが(慣らしを前提に)走行距離によって変わる、これ、とっても良いですね。分かりやすいし、気を使わなくてもよい。今の車だったらやろうと思えばみんな出来るはずなので、少なくともスポーツカーではやって欲しいです。
もっと気になったのが、
一定の速度で走ってはいけない(クルコン使用禁止)、という記述。これは非常に興味深かったので、コルベットの取説、探してみたのですが、ありました。
コルベット2020オーナーズマニュアル
確かにそのとおり書かれています。
速くても遅くても、一定速で走るな。クルーズコントロールの使用も禁止。
で、肝心の一定速で走るな、という部分ですが、改めて慣らしについて調べてみると、全く逆の方法を説いているページもあります。代表的なのは
ここでしょうか。高速道路を一定速度で走れ、という内容です。
何が正しいのでしょうか。もうちょっと調べてみました。見つかったのが
このページにある、BMW(バイク)の取説の内容。
(マニュアル以外の、この方の見解には賛同できない部分も多いのですが、趣味の領域ですから、どんなやり方をしようとその人の責任において自由です。影響を受けている人が結構多そうなのが心配ですが。)
初回点検までは、スロットル開度とエンジン回転数を頻繁に変化させてください。一定の回転数での長時間の走行は避けてください。
カーブが多く、なだらかな坂のある道を選び、十分に慎重に走行をする様にしてください。
コルベットのマニュアルを更に説明したような感じですね。
理想的には、
レース用のエンジンのようにテストベンチで慣らしを行うのがベストだというのは間違いないようです。
回転数に応じて適切な負荷をかけて回せる(決してエンジンだけを無負荷で回しているわけではありません。ここ重要)環境は間違いなく外部には存在しませんから。
この、負荷、というキーワードをポイントに考えると、どうすべきがが見えてくるように思います。
平坦地での一定速度での走行では、エンジンにかかる負荷はかなり小さなもの(空気抵抗と駆動抵抗)になります。
高速道路での巡航でエンジン回転が低くても(高いギアで)走り続けられるのはそのためですね。
なので、コルベットのマニュアルの記述になるわけです。アメリカでは、平坦でどこまでも続く直線があったりしますから。
これでは、エンジンを空ぶかししている(負荷無しで回っている)状況に近くなってしまうため、いくら走行しても慣らしたことになりません。
かと言って、普通の人が、普通に車に乗る環境を考えると、高速道路以外では、(特に都市部では)頻繁な発進停止の繰り返しや、渋滞での極低速での走行等、慣らしにとって最も良くない条件になってしまうことがほとんどです。また短距離での走行を繰り返すことも多くなります。
それに比べれば、日本の高速道路はコーナもありますし、アップダウンもないわけではありません。加減速もそれなりに必要になります。それでも負荷の量を考えると巡航状態が長く続く高速道路での走行はベストではありませんが、一般道では難しい(不可能な場合も)状況を考えると、普通の人が出来る範囲の策として、高速道路での慣らしを勧めている、とも考えたのですが、それにしても、なるべく平坦な道を、とか、できるだけ一定速で、という部分を見ると、'負荷'という意味で慣らしの意味を分かっていないように思えてしまいます。
で、コルベットとBMWの取説です。
公道で同じ回転で一定の負荷を掛け続けることは、天まで一直線に登っていくような道路でない限り不可能です。
# コーナがあったら難しい...
ならばどうするか。
回転と負荷は連続して一定でなくても、変化する回転に対応する適切な負荷をある程度掛け続けることが出来れば、トータル(時間の合計)で考えればテストベンチと類似の状況に持っていける、ということなのではないかと思います。上り坂は負荷になりますし、コーナ脱出時の加速もまた適度な負荷になります。勿論、下り坂やコーナの入り口では負荷は掛かりませんが、それぐらいは仕方がないでしょう。(その代わり、ブレーキやサスペンションの慣らしにはなります)
BMWのマニュアルを引用されている方のように、常に加速かエンジンブレーキなんて、誰もいないところでしか出来ませんし、そこまでの必要もまたないと思います。(マニュアルには長時間の一定回転数が駄目、としか書いてありません。)
この方式が優れているのは、既に書きましたが、エンジン単体ではなく、ミッションやサスペンションまでもが、今後遭遇するであろう色々な状況を経験できる、即ち車全体としてのちゃんとした慣らしになる、ということですね。
なので、慣らしとして、現実的な理想は、取り敢えず1,000kmまでは
コーナや坂道もある信号の少ない流れの良い一般道を適切な負荷(低速から高いギアで加速するようなことをしない、必要以上に低いギアで走ることも無駄))を掛けながら、ある程度の距離を一度に乗ることを繰り返す、といったところでしょうか。
ポイントは、暖気は十分に、短距離の移動はしない、激しい渋滞には遭遇しないよう気をつける、ぐらい。
縛りとしては、マニュアル通り、3,500rpm以下、スロットルは50%以下で十分だと思います。
もっと細かく距離を刻んで段階を設けている人もいますが、これぐらいの大雑把な制限で問題ないのではないかと。
最初車に慣れていない頃はアクセル開度も小さく、踏んでも25%くらい、回転数は2,500rpmぐらいでした。
500kmを超えて人間の慣らしも進んだせいか、30%、3,000rpmぐらいになりましたが、これぐらいで通常の加速ができ、流れにも乗ってしまえるので、神経質になる必要はないと思います。
モードはノーマル。パドルによるダウンシフトは急激な回転数の変化の可能性もあるので、この段階ではブレーキで。(ブレーキの当たり付けも必要ですし。)
それよりは、この段階でノーマルモードでの変速タイミングを理解しておいたほうが良いと思います。
平坦地だと、シフト後の回転数が1,500rpmを下回らないように、だいたい2,000rpmでシフトアップしている感じです。
ということは、このエンジン、1,500rpm以下で負荷を掛けないほうが良いみたいですね。
エンジンはピストンの往復運動をコンロッドとクランクで回転運動に変えます。
そのため、ピストンには斜め方向の力が加わります。高回転になれば上下方向の慣性が大きくなり影響は減少しますが、低回転時に大きな負荷がかかるような場合にはこの力(側圧、と言うらしい)が大きくなります。
ek9のエンジン(B16B)の開発者の方が、インタビューで、低回転で負荷をかけるような運転はしないで欲しい、とおっしゃっていました。具体的には2,000rpm以下からアクセルを踏むようなことは避けるように、ということでしたが、それはこういう理由だったわけです。
DCTのシフトスケジュールはこの辺りを考慮しているはずなので、アルピーヌのエンジンの場合には1,500rpmがその回転数に当たるのではないかと。
さて、1,000kmを越えたら、3,500rpm、50%の制限も外れる訳で、その後どうしようかと考えていて、また
面白いものを見つけました。
正確には以前から知っていた
ベストカーの慣らしについての記事で挙げられていたGT-Rの取説にかかれていたのですが、気にしていなかった部分です。
ふと読み返してみると、こんなことが書かれているではありませんか。
但
し、走行距離が2,000kmを超えた場合でも街乗り・低速走行が中心のお客様は、トランスミッション内のデュアルクラッチにあたりがつくまで時間がかかりますので、NHPC又はNISSAN GT-R特約サービス工場でクラッチのならしを実施してください。クラッチのならしを実施したあとは、必ずトランスミッションのセッティング(トランスミッションのセッティング)を行ってください。セッティングを実施しなかった場合、発進・変速時の大きな負担がトランスミッション、パワートレイン系部品にかかり、故障又は破損するおそれがあります。
これが
1,000~2,000kmまで
[M]レンジ([M]レンジの使いかた)を使用し、エンジン回転数を比較的高めに維持して1速から4速の間でのシフト操作を繰り返してください。
と書かれていた理由だったんですね。
GT-RのDCTはゲトラグではなく、クラッチはボルグワーナー(の改良)、ミッションは愛知機械工業製で、モードによってはシフトタイミングが0.2秒という突き詰めたDCTなので
ここまでの扱いが必要なようです。
単体でのDCTのクラッチの慣らしってどうやるのか、という疑問は置いておいて、これが1,000km以降の慣らしのポイントになりそうです。
それに先立って、1,000キロ近くなってからスポーツモード(ATモード)を試してみました。
そのシフトスケジュールによってはATモードのままで慣らしを行えるのではないかと考えたからです。
スポーツモード自体についてはまた別に書きたいと思いますが、エンジンの回転数が2,000rpmを下回らないようなスケジュールになるようです。シフトポイントは平坦地で3,000rpm、アクセル開度を意識的に大きくするか上り坂になると3,250rpmぐらいまでは回るようになりますが、それ以上にはなかなかなりません。
考えてみれば、2,000rpm以上で最大トルクを発生しているので、シフトアップ後にその回転数を越えるような速度まで引っ張る必要がないので、当然なのですが。
こうなると、もっと上の回転数まで回すためには、やはりMTモードが必要になります。
で、MTモードで使うためには、その前に、各ギアにおける回転数と速度の関係を掴んでおく必要があります。
excelとかあればかんたんにグラフが書けますが、
こんなサイトも参考になります。
グラフを書く際には、DCTの場合ファイナルが2種類ある点に注意が必要です。A110のスペック表を見ると、1,2,6と3,4,5に対応する2種類のファイナルがあります。
各ギア毎のエンジン回転と速度(A110 S)

とりあえずはRRの冒頭に挙げたRRの慣らしの際にも使った、交差点から約1キロの直線の上り坂(5%)が続く国道を使うことにしました。ここで日毎に回転数のリミットを順次上げながらの加速を繰り返します。
ただ、制限解除で70キロまでとは言っても、4,000rpmでも4速まで、全開だと2速までしか入りません。
クラッチの慣らしと考えると、3速までは入れたい(1->2,2->3)ところです。そうするとやはり5,000rpmぐらいまで(勾配を考えるともう少し)しか一般道では行えません。ダウン側はこの環境では全く出来ませんね。
で考えたのが、より勾配のきつい道路での慣らしです。いろいろ調べて、あまり混まず、直線部分もあって、しかも5キロで500メートル(10%勾配)コンスタントに登る道路を見つけました。速度制限もされていません。ここなら安全を考慮しながらより高回転でのシフト(下り坂を利用すればダウンシフトも)が行えそうです。
youtube上の動画も見て大丈夫そうだったので行ってみたのですが、実際には全く使えませんでした。
かなり寂れてしまった観光地のため舗装の劣化が激しく、それが冬場に凍結するため表面が破壊され路面一面に小石が浮いている状況で、慣らしどころか最徐行で走行する必要があるような道でした。
これより勾配が小さな道では、アップダウンでシフトが可能だとしても大体4,000rpmぐらいの間で収まってしまいます。
それより下のギアにシフトしても、負荷が足らず空転している状況になってしまいます。(これは音ですぐに分かります。)
とすると、一般道での慣らしとしては、これ以上は不可能、ということになります。
# サーキットが貸切状態で使えれば、なんとかなるんでしょうが。
そこで現在考えているのは、ハンクラに参加するためにもてぎまで行く途中の高速が使えないか、ということ。
途中数多くのSA&PAがあるので、出来る限りそこに寄り、イン、アウトの際の減速、加速区間で高負荷でのシフトが行えるのではないか、ということです。新東名の120キロ区間なら、6,500rpmシフトで4速まで入ります。
これが現時点で出来る限りの合理的な慣らしの仕上げかなと思っています。
オイル交換前の現時点で、走行1,622km。もてぎまで500キロ、結局慣らしはGT-R並の2,000kmで終了ということになりそうです。
おまけで、コルベットのマニュアル、該当部分の全訳を載せておきます。
2,414km(1,500ml)までは、以下の指示に従え。パーツは慣らし期間があり、長く使うなら(慣らしをしたほうが)能力を発揮する。
最初の800km(500ml)は低いギアでエンジントルクを制限しろ。(スロットルを深く踏むな)
特に最初の322km(200ml)については、
新しいタイヤの慣らしのため、モデレートな速度で走り、ハードコーナリングはするな。
ブレーキパッドも慣らしが必要で、急ブレーキは踏むな。(これはパッドを替える毎に行うこと)
最初の800km(500ml)
フルスロットルスタート、急停止禁止。
エンジン回転は4,000回転を越えるな。
速くても遅くても、一定速で走るな。クルーズコントロールの使用も禁止。
エンジン回転が4,000回転を越えるような減速のためのシフトダウンは禁止。
エンジンに無理をさせるな。(これは慣らし中以外も)
それ以降2,414km(1,500ml)まで
サーキットでのイベントやスポーツドライビングのスクール等の参加禁止
オイル交換時、また必要に応じてエンジンオイルのチェックをすること。
頷けるところが多いですね。これは良いマニュアルだと思います。まあアメリカは製造物責任が厳しい国なのでこうなるとも言えますが。
基本的なところは、アルピーヌとも共通しています。