去年は結局4回行った(内プラスが1回)ので、今年は鈴鹿南で練習をと思っていたのですが、3月に通常とプラスが連続開催だったので行ってきました。(せっかく500キロ走っていくのですから2日走れた方が効率的)
2日連続は良いですね。間が空いてしまうと、せっかく前回得られた感覚をすっかり忘れてしまい、思い出すのに午前中ぐらいかかってしまい、午後になってやっとスタート、みたいな感じになってしまいますから。
今回、初日(ハンドリングクラブ)は同乗走行時にセンターディスプレイにスロットル開度とブレーキ踏力を表示させて見ていたのですが、まさかここまで、という数値でした。スロットル開度は100%になっている時間が非常に多くて、これは今までも分かっていたのですが、驚きはブレーキ踏力。ストレートからのフルブレーキ時にはなんと80気圧(ディスプレイの表示がbarなので。約80kgfですね。レーシングドライバがレーシングカーに乗った時の踏力が100kgfと言われますから市販車ではこれ以上は無理かも)ぐらい、しかも瞬間的に、一気にこの数字が表示されるんです。
アルピーヌに乗っていらっしゃる方(マイナー以降の方は無理かな? タコメータの中央にブースト圧と一緒に表示される方は残っているかも)は、是非どれぐらい踏むとこの数字が表示されるか試してみてください。本当に蹴飛ばすような勢いで満身の力を込めて踏まないとこの数字は出ません。これを毎回なんでもないことのように平然とやっているのですから凄いです。
ストレートエンドでのフルブレーキは、サーキットドライビングの基本なので、色々な場面で練習をしてきて、ちゃんと出来ていると自分では思っていたのでショックだった反面、山野さんの同乗走行で感じていた'違う'感じの一部が分かった気がしました。
踏力の数値なんか見なくても感覚で分かるだろ、というのは確かにその通りなんですが、同乗走行と自分がドライブするのとでは、ステアリングの存在のせいなのか、感じ方がちょっと違うんです。(言い訳ですが)
その後の自分の走行ではブレーキ踏力の表示を意識して踏んでみます。確かに車の挙動が変わります。少し気を抜くと昔のブレーキングに戻ってしまって、そうすると一気に挙動のメリハリがなくなるので直ぐに分かるのですが、踏み続けるのはなかなか難しいです。逆に、この踏力は無駄ではない(ブレーキの効きがサチっている訳ではない)ことはこれで明らかになりました。
翌日は(ハンドリングクラブ)プラスです。プラスの特徴は逆同乗。山野さんが助手席でアドバイスをしてくれます。
左回りでの同乗は最初の枠でしかないので、早速昨日の成果を試してみます。結果は
フルブレーキについて踏力はok。ただしそれ以降のブレーキングでcp(クリッピングポイント)の速度が高い、もっと減速して良い。ここで減速すればフルブレーキの開始点をもっと遅らせることができる。
というものでした。ちょっとわからないところもありましたが、次の右回りの枠での逆同乗ではっきりしました。
ブレーキングの開始点をもっと遅く、という走行途中のアドバイスで実践したところ、コーナリングが不安定になり車がスライドを始めましたが、それで良い、それが次のステップに進んだ証拠、と言われたのです。
コーナリングの理想はニュートラルステア、ということはよく言われます。
ニュートラルステアって何でしょう。アンダーステアでもオーバーステアでもない状態、それはそのとおりですが、そもそもアンダーステア、オーバーステアって何なんでしょう。
ステアリングの舵角よりも膨らむのがアンダーで、より切れ込むのがオーバーですが、それは現象を説明したに過ぎません。
極低速以外でのコーナリング時には車は前輪だけではなく後輪でも向きを変えています。4輪操舵ではなくても、です。
詳細は、
ここ(の特に
11と
12)を見ていただくとして、車がコーナリングできるのは、前輪をステアすることによって前輪後輪それぞれにスリップアングルがつき、それによって発生するcf(コーナリングフォース)が遠心力と釣り合うためです。
車の重心点を含むホイールベースと同じ長さの直線を、その時の前輪後輪それぞれのcfの逆比で分割した点をnsp(ニュートラルステアポイント)と呼び、車はこの点を中心としてコーナリングしようとします。当然nspは固定されたものではなく、車の挙動により前後(厳密に言えば左右にも)に移動します。
nspが重心よりも後方にある時、遠心力は重心に働くので、前輪が外側に膨らみます。これがアンダーステアです。
逆にnspが重心よりも前方にある時、後輪が外側に膨らみ、オーバーステアとなります。
ニュートラルステアとは、nspが重心と一致した状態になります。
この時、前輪の操舵量は前輪と後輪のスリップアングルの和に等しくなり、車は前輪後輪のcfの向きのベクトルが交わる点を中心として内輪差のない円周運動を行います。(前輪後輪のスリップアングルが同一になると説明しているサイトがありますが、これはニュートラルステアの必要条件ではありません。重量比が50:50でタイヤのサイズが同一の場合、しかも加減速がない状態でそうなる、というだけです。)
山野さんが'
コーナリングの理想は電車だ'と言われるのはこのことを指しています。(正確にはボギー台車を持つ車両ですね。)
この時に車が最も無駄なくコーナリングできるからです。
私も確かにそれを求めてコーナリングしていたのですが、その速度がサーキットレベルとしては低かった、あくまで一般路でのニュートラルステアを目指していたに過ぎなかった、ということです。
cpで速度が高い、というのは逆同乗で良いところを見せたいという気持ちが暗に働いてフルブレーキ後の速度が速すぎただけだったのだと思います。
最初のフルブレーキングで、コーナリング中に車が確実にグリップするレベルまで減速し、その速度内でニュートラルステアを求めて荷重をnspに維持するようなドライビングを目指していたのですが、実際には、コーナリング中にももっと減速しろは残っていて、コーナリング開始時の速度はもっと速くても良かった。当然コーナリングには車は不安定になるが、不安定でもタイヤのcfの限界まではまだ余裕があるので、その不安定さを逆に利用してニュートラルステアを求めるのがサーキットドライビング、というわけです。
昼からの左回りは同乗なし。フルブレーキをきっかけに不安定な状況を作り出しますが、当然その後のコントロールはまだまだです。オーバーめになることが多かったでしょうか。最後の右回り、再び逆同乗をお願いし、今日の評価をもらいます。
フルブレーキングのタイミングにはばらつきがある。コーナリング中にオーバステアになりかけたらきちんとカウンタを当てたほうが良い。カウンタを当てる癖をつけたほうが先々巻き込んでコースアウトしたりしなくなるから。
まだまだブレーキングでしか姿勢制御を試みていなかった、ということですね。前輪のcfはステアリングの切角でも変化します。レーシングドライバがコーナリング中ステアリングを微妙にコントロールしているのは、やはりニュートラルステアの維持のためなんですね。(ダウンフォースが強い車でのドライブはもっと異なるものだと思います)
でもここまでは、まだコーナの入り口からcpまでの話です。cpからは今度はアクセルとステアリングでcfの限界でニュートラルステアを維持するようなドライビングが必要で、ここはまだ全く未知の領域です。
ということで、今年の計画が決まりました。姿勢が不安定になる状況でのコントロールはサーキットでは練習できず、このもてぎ南コースで練習するしかありません。鈴鹿南はおあずけで、できる限りもてぎに通うことにします。
帰宅後早速既に受付が始まっていた4/23のハンドリングクラブの申し込みを済ませました。6/17についても宿の確保を先行して進めています。その後は9月ですね。5月と7月のプラスは連休なので難しいかな。11月には再びハンドリングクラブとプラスが2日続きであるので、ここで1年の総まとめをしたいと思います。(以降は途中降雪の可能性が出てくるので無理です。11月も実は結構危険)
ニュートラルステア、重心をnspに一致させるコーナリング。言葉では簡単ですが、車の姿勢制御は複雑です。基本はブレーキ、アクセルとステアリングですが、実際にはサスペンションのジオメトリとかが関係してくるので、車の特性の理解が重要になります。
その際、ミッドシップレイアウトで重量バランスに優れ、しかも4輪ダブルウィッシュボーンでサスペンションの挙動が素直なアルピーヌはとても強力なパートナだと思います。
ハンドリングクラブのキャッチコピーとして、駐車場に白線でコースを書いただけなのでコースアウトやスピンしても大丈夫、と良く言われます。コースアウトはともかくとしても、スピンなんで無茶な運転しなければ無縁だろうと思っていたのですが、このスピン、決して無理な運転に由来するものではなく、cfの限界でニュートラルステアを求めて車をコントロールする中で失敗してオーバーステアに陥ったことに由来するスピン(失敗してアンダーステアになれば膨らんで最悪コースアウト)だった、ということですね。ハンドリングクラブが何故'ハンドリング'クラブなのか、やっと分かったのは遅すぎでしょうか。