1年ほど前、アルピーヌでハンドリングクラブに参加するにあたり、ミッドシップレイアウトの車のコントロールを理解すべく、色々な、いわゆる'ドラテク(ドライビングテクニック)'に関するサイトを見て回りました。
今までも、荷重移動が、とかGが、とか摩擦円が、等々色々なサイトや雑誌の記事を読んできましたが、ここに至って、やっと信頼すべきサイトが見つかりました。
貴島ゼミナール
言わずと知れた、RX-7からロードスターまでサスペンションを担当された方が本当に理論的に時に実際の数値を使って計算しながら説明してくださっているサイトです。
確かに数式が並んで取っ付きにくいのですが、他のサイトの多くが如何に'理論的'と言いながらも実は理論的でなかったのかが本当によく分かりました。
山野さんも、
ブリジストンのサイトを始め、いくつかのサイトにドライビングテクニックに関すして書かれています。
貴島さんのサイトと同じ頃に見つけたのが、
アバルトで書かれた記事。その頃山野さんはabarthでジムカーナを戦っていたからですね。
興味深いのが、貴島さんと山野さん、書かれている内容がとても良く合致するんです。
言葉は違いますが、理論的な側面からと実際の走りの側面から説明されていて、両方から見た内容が一致するなら、こんなに信頼性の高いことはありません。
そんな山野さんのサイト、3月のハンドリングクラブで理解が出来たと思った後に読み返してみると、改めて内容が良く分かります。
ただし、一部わかりにくい(私は混乱しました)表現があるので説明してみます。
ブレーキングの初期は100%の力でペダルを踏み込み、そこから半分くらいまで緩めるという話をしましたが、それは前よりに寄った旋回軸を中心に戻してやるためです。旋回軸が前よりに寄った状態でそのままステアリングを切り込むと、旋回軸が後ろに行ってしまいます。その結果、アンダーステアが出てしまいます。
ぱっと見、前荷重の方が前輪に発生するcfが大きいのでnspは前よりになり、車はオーバーステア気味にコーナリング出来るんじゃないか、何故そこでnspが後ろに行ってアンダーステア? って思ってしまいます。が、
車がコーナリングできるのは、ステアリングを切ることにより前輪にスリップアングルがつき、それにともなってcfが発生し、その結果後輪にもスリップアングルがついて、同じようにcfを発生させるため、でした。
フルブレーキング時、タイヤのグリップは前後方向に対して殆どが使われています。この時ステアリングを操作してもフロントタイヤにはcfは殆ど発生せず、結果車はコーナリング出来ません。(
貴島ゼミナールの12、最大摩擦円の部分)
ブレーキを緩めればcfは発生しますが、通常時に比べればその大きさは小さいです。
ここでステア量が足りないと思ってしまいステアリングを大きく切ってしまうと、cfと言うのはスリップアングルが付きすぎても減少してしまうので、結果cfのバランスが後輪寄りになり、nspが後方に移動して、アンダーステアになる、ということだと思います。
もう一つ、みん友のMoo-sanさんがブログに寄せてくれたコメントで、同じ3月のハンドリングクラブで山野さんから
クリッピングポイントより前でスピン状態にもっていける位が正解!
と言われた、とありました。これがどういうことなのか説明してみます。
スピン状態、と言うのはオーバーステアということです。
ということは、nspは重心よりも前方にあることになります。
ここでニュートラルステアに持って行くには、nspを後方に持っていく必要があります。
そのためには
ブレーキを弱める(もしくはアクセルを踏む)ことによってcfのバランスを後方寄りにする
ステアリングを戻して前輪のcfを減らす
のどちらか、もしくは両方の必要がありますが、cp(クリッピングポイント)まで減速を続けている(しかもステアリングを切る量が増えるにつれてブレーキングは弱くしている)のですから、必要なブレーキ操作は既に行っています。
ステアリングを戻す、と言うのは(弱い)カウンタを当てることですから、車がオーバーステアになった時には自然な挙動です。
現象に対して必要な操作が決まっている、また自然に行えるので、対応には迷う必要がありません。
それに対して、cpより前でアンダーステアになった状況、と言うのは
nspが重心よりも後方にある、ということなので、
これをニュートラルステアに持っていくためには、nspを前方に持っていく、すなわち
ブレーキングを強めることによってcfのバランスを前方寄りにする
ステアリングを切り足して前輪のcfを増やす
先程説明した、ステアリングを切りすぎている状態でもアンダーステアになるので、この場合にはステアリングを戻す
のどれか、の必要がありますが、本来このタイミングではステアリングを徐々に切り増している状況で、それに伴いブレーキは弱める方向になっているはずです。ここでブレーキを強めなくてはいけないということは、それまでの一連の動作を止めてしまう事になり、コーナリングに失敗してしまっている(以降はリカバリ)、ということになります。
ステアリングを切り過ぎているのも、既に説明したように、やはりコーナリング失敗ですね。
ステアリングを切り足してcfを増やすことで対応できる場合のみコーナリング失敗ではない、と言えますが、最初からこの状況に狙って持っていくのは、オーバーステア気味に持ち込むのと比較すると、かなり難しいと思われます。というか、これが出来たらほぼ完成形になっているのでは?
ということで、先の言葉で山野さんは
コーナリングの最初はオーバーステア気味に入れば、(不安定な状態を)ブレーキとステアリングでコントロールしてニュートラルステア状態を維持するのがやりやすいよ、と語られていて、これは私に対するコメントとも共通しているのではないかと思います。
Posted at 2023/04/06 10:34:28 | |
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