アルピーヌ、ラジエタの冷却ファンの動作条件がよく分かりませんでした。
普通の車の場合、冷却水の温度に関わらず、エアコンのコンプレッサーが回ると必ずファンも回ります。
ラジエタと重なる形でエアコンの放熱器(ラジエタ)も設置されているからで、ファンコントロールのない車でサーキットを走行した後、エンジンを冷却するためにはエアコンを入れるのは良くある方法です。(夏でもエンジン冷却のためにヒーターを使ったのとは別の話です。)
ところが、アルピーヌではエアコンを入れても直ぐにはファンは回らないのです。(なので水温も大きく変化しない)
かと思うと、全然負荷も掛けていないのに突然ファンが回りだすことがあります。極端な場合は、エンジンを切って駐車しておいた後、エンジン始動と同時にファンが回りだす、ということもありました。
この件、ずっと考えていたのですが、やっと説明できる見解に辿り着きました。
アルピーヌはボディ全体がラジエタ(冷却器)だった、ということです。
最近は流行らなくなりましたが、昔はサーキットを走る場合にはラジエタを交換したものです。
サイズを大きくしたり、またラジエタコアを2層3層にして厚くしたりして、放熱性能をアップしました。
材質はもちろんアルミ。(銅製のものもありましたが)。
アルピーヌのボディはほとんどがアルミです。
そして、エンジンからラジエタに向かう冷却水の太いパイプはアルミ製のアンダーパネルのすぐ上にあります。なので冷却水の熱は直ぐにアンダーパネルに伝わります。更にアンダーパネルと接しているシャシー、ボディにも、同じアルミなので熱は素早く伝わります。
つまり、ボディ全体がラジエタとして機能し、昔ラジエタの熱容量を増やしたのと同じように働いているのではないか、ということです。
アルピーヌの空力の考え方ではボディの下側に沿ってきれいに空気を流しています。空気が密着して流れるのでアンダーパネルの冷却も他車に比べて有効に働きます。
なので、水温が徐々に上がり、サーモスタットが開いて、冷却水をラジエタに送り始めても、その段階では停止時でもファンを回す必要はありません。ラジエタまでの途中でアルミのアンダーパネルに熱が伝わり、冷却されるからです。走行中であればラジエタへも空気が当たりますし、ボディ下部の気流によってアンダーパネルも冷却されるので十分冷却されます。
それで不十分になって初めて、ラジエタの冷却ファンを回して積極的な冷却を行います。
こう考えれば、不可解だったラジエタの冷却ファンの動きも一部(後述)を除き納得できます。
また、アルピーヌの燃料タンクは当初薄い色でしたが、程なく黒に変更されています。
色の黒い物体は吸熱もしますが、また放熱に関しても薄い色より優れています。
ここまで来ると流石に考え過ぎかもしれませんが、燃料タンク(とその内部にたっぷりと蓄えられているガソリンという液体)さえボディと同じように放熱体として利用しようとしたのではないかとも思えます。
そう考えれば、燃料タンクのすぐ下に断熱材もなくラジエタへのパイプが配置されていることも理解できます。バッテリだけはきちんと断熱材によってカバーされているのですから、必要ならば燃料タンクに対しても同じ様にしたはずです。
ただ、このアイデアには2つの予期しない問題がありました。
一つは、言うまでもなく既にアルピーヌでは知らない人のいない燃料ポンプ。最初から予定通りの性能が出ていれば良かったのでしょうが、熱に対して極めて弱い不良品が提供されてしまったのですから、ボディ全体で排熱を受け止める仕組みに対しては問題が起きない方が不思議と言えるぐらいです。
もう一つは、これはヨーロッパでは理解できないことだと思いますが、暑い時期の路面からの照り返し。
放熱器たるアンダーパネルの直下に、同じ様な発熱体が存在するのです。
それだけなら、走行すれば流れる空気で冷却もされますが、日本では当たり前の渋滞。
こうなったら本来放熱するべきところが、全く放熱できなくなるか、下手をすれば更に吸熱してしまいます。
駐車していた後のエンジン始動で直ぐにファンが回るのもボディ全体が炙られていて、ボディ冷却システムの能力が全くなくなっていたからですね。
そうなると予想以上に働くことになるのが、ラジエタの冷却ファン。
アルピーヌのラジエタファンの下のボディ、A110Sが出た頃以降のモデルは大きく穴が空いていますが、初期モデルはもっと違った造形(
moyai110さんの整備手帳)になっていました。もっと大きな面積がカバーされ、縦方向のスリットから後方へ空気を流すような形になっています。
ボディ冷却システムが十分に機能していれば、ラジエタとファンの役割はそこまで大きくないので、これで十分だったんですね。というかボディ下面の空気の流れを乱さないためには、この形が必要だったのだと思います。
ところが日本の夏のような状況ではラジエタとファンに頼らざるを得ない、しかもそれが渋滞時を含む低速時とあっては、下面気流による吸い出しも期待できず、なりふり構っていられず、結果大きな開口部となった、と。
空力的にはこれは乱流を起こすので大きなマイナスだと思います。空力性能的には当初モデルのほうが明らかに優れていたでしょう。当初否定的だったスポイラなどの付加物を装着するようになった一因とも思えます。
空気の話は別に書きたいこともあるのでこれぐらいにしておいて、燃料ポンプが当初の性能を発揮するようになって、通常走行ではよほどのことがない限り熱の問題はなくなったと認識しています。
ですが、発熱量が大きくなるサーキット走行ではどうか?
走行後にラジエタに噴霧器で水を掛けるのは排熱量の多いターボ車でよくやることで、アルピーヌでも効果があるでしょうが、その特性を活かすのであればラジエタより熱容量が大きいボディ、特にアンダーパネルを冷却するのが効果大だと思われます。
なので、路面の照り返しのないパドックなどに格納できる場合には、扇風機等のファンの風をボディ下部に沿って流してやる、これが良いのではないかと思います。
ですが、走行会等で駐車場等にしか駐められない場合、雨天なら問題ありません(そもそも余分な冷却の必要がない)が、炎天下だったりすると大問題です。
この回答として、私は直接水を掛けてアンダーパネルを冷やしています。
当初は燃料ポンプの温度が上がらないように、燃料タンクを冷やすためにこの方法を行っていたのですが....。
アルピーヌの場合、右ハンドル車はフロントウィンドウの左下にメッシュになった室内への空気取り入れ口があります。(左ハンドル車は逆)
ここからは雨水等も入るので、それを室内に入れないように下に排出するパイプがあるのですが、これがちょうど良い具合に燃料タンクに向かっているのです。
なので、このメッシュ部分に水を流し込めば、燃料タンク経由でアンダーパネルにも水が流れます。
1回の走行後、2Lペットボトル2本の水をここから流します。
燃料ポンプのトラブルで積車のお世話になって以来、燃料タンクからエンジンに向かう燃料の温度をチェックしていますが、通常走行後に一度温度が上昇するのですが、この方法を取ってからはそれもなくなり、比較的早く温度が安定し、水温、油温も15分ぐらいで過熱状態から抜け出すので、長時間アイドリングを続ける必要もなくエンジンを切ることができるようになりました。