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イイね!
2023年12月15日

バラッドをお前に・18

バラッドをお前に・18













18



誰も気付かない

誰も傷つかない

その犯罪は、もはや犯罪ではない


蓬莱豚子











アンソン達が学校のコピー機で作ったビラは、横浜と川崎中にバラまかれ、既に街の不良の間では、一大イベントとなり、





賭けの対象は猫ビルの屋上から飛び降りるか、降りないかのまで発展していた




哀川〇分で勝ち、飛び降りる


哀川〇分で勝ち、飛び降りない


アンソン〇分で勝ち、飛び降りる


アンソン〇分で負け、飛び降りる


アンソン〇分で負け、飛び降りない




3連単形式の様になり、胴元の豚子には、ドンドン賭け金が集まり



集金係は、一年のカネゴンとミクラスで、もはや豚子のカプセル怪獣となり、せっせと集金していた









・・木曜日の昼休み・・








ビラが無くなったので、



アンソン、ゼットン、ガメラ。剣走はナムル、クッパ、キンタロと、いつものメンバーで、印刷室で新たにコピーしていると




「おい、キムコはどうした?」



アンソンが、キムコと同じ一年のカネゴンとミクラスに聞いた




「今日は、焼肉屋の配達業者の人に、食肉市場に連れていってもらうから、休むって言ってましたよ」




ビラをコピーしながら、カネゴンが答えた




「ふーん」


「あいつ、肉屋目指してんのか?」


アンソンの変わりに、ゼットンが誰となく言う



「でもよ、俺らの一つ下なのに、意外と将来の事とか考えてんのかもよ」


ナムルが答える



「年が明けたら、俺らも、あと一年で卒業だなー」



「なんも、考えてねーよな」




口々に、アンソン達ニ年は、何にも考えてないのに、何か考えこんだ



( ´Д`)y━・~~





「卒業しても高卒にはならねーしな」



ゼットンがボヤくと




「マジっすか!」


一年のカネゴンが叫ぶ



「オマエ、知らなかったのか?」


皆んなで、驚いてるカネゴンを見る






「高級はよ、文部省で認可されてねーから、高卒じゃなくて各種学校卒になんだよ」






「そんな、バカな・・」





アンソンが説明すると、椅子に座り込み項垂れるカネゴん





「まっ、こんな学校卒業しても、雇ってくれる会社なんてねーからよ、諦めろって」









「俺の人生が・・」






「でもよ、ウチのクラスの、サッカー部の翼なんて、夏休みに選抜合宿で北朝鮮に行ったら、洗脳されて帰って来たぜ」




「オリンピックだろ、怖いよなー」




「きっと、スパイ活動とか、させられるんだぜ」




「・・・・」




「おい、カネゴン凄ぇーこと閃いたから、いじけてねーで、こっち来てみ」





皆んなが話してるのに、一人打ちのされてるカネゴンを見兼ねて、アンソンが声をかけた






「なんすか?」






「この最新の、カラーコピー機は、ガス橋の向こうに本社がある、世界のCanonだ」




「はい、分かってます」




「この公衆便所みたいな、クソ学校の生徒じゃ、絶対に就職出来ない、世界のCanonだ、その世界のCanonにもし俺達が関わる仕事があるとしたら?」






「そんな、職業なんてあるんすか?」




「ゴミ屋のパッカー車の運転手ぐらいだな」



机の上に座りながら、ゼットンが、カネゴンの心の傷に塩をぬる






「もう、学校辞めようかな・・」






いきなりの、カネゴンの退学宣言!






(; ̄O ̄)(; ̄O ̄)





「まて、早まるんじゃない!」



「卒業しても、中卒じゃ意味ないっすよ」



アンソンが止めるが、カネゴンは完全に不貞腐れてる





「いいか、コイツをクソ学校にある、世界のCanonでカラーコピーすると」







アンソンは財布から、伊藤博文の千円札を出して、コピー機の蓋を閉めて、カラーのボタンを押した




ウィーン ♪ ウィーン ♪



すると、千円札がカラーコピーされて出て来た





「おぉぉー!」


皆んな、カラーコーピされた千円札を見て驚く



「本物みたいだな」


「綺麗にコピーされんだな」


「俺達が最初だよな」


「ほら、何枚だって、無料だぞ」





アンソンが100枚とセットして、スタートボタンを押すと





ウィーン ♪ ウィーン ♪




次次とカラーコピーされた千円札、いわゆる偽札が出てきた





「おぉぉ!」


「神ってる!」


「ヤベーな・・」


皆んなの、大歓声が印刷室に沸き起こる







「どうだ!カネゴン、学歴なんかより、矢沢みたいにビッグになるなら金だっ!」






「すす凄い・・」




「それでだな、このCanon製の伊藤博文を、ゲーセンやパチンコ屋で両替すれば、本物のと交換出来るぞっ!」




「おぉぉー!それなら完璧だな」




「松田優作の映画みたいだな」



ゼットンとナムルが言うと




「アンソンって天才だよ!」


最後にカネゴンが叫ぶと、偽札を鷲掴みにして天井にばら撒き



ウィーン ♪ ウィーン ♪



次々とカラーコピーされた千円札が印刷されて出てくる




「CBX のインテグラが新車で買えんな・・」



港北の工業団地で、剣走が乗り捨てたCBXを持ち帰りしたガメラが言った




「単車より、フェアレディZだろ」



ゼットン



「俺はハーレーダビッドソンだな」

ナムル




「何だって買えんだろ〜」


アンソンが得意気に言うと






「俺は、クソして尻拭いてみたいな~!あと堀ノ内の高級店を貸し切りにしてさ~ハーレムだって!」







大はしゃぎするカネゴンだが、何故か皆んな金縛りにあったように、急に黙りこくった





「・・・・・」





「皆んな、どうしたの?俺達の時代が来たんだよ!」




「・・・・」



偽札を天井に投げ、はしゃぎまわるカネゴンの後を、アンソンが無言で指した




「なに、後がどうかした?」


カネゴンが振り向いた瞬間に、生徒指導のキラーカンの鉄拳が顔面に炸裂し


「ひでっぶ」


変な悲鳴で、ブッ飛ぶカネゴン





「よりによって、学校のコピー機で、偽札なんぞ作りおって、このクソガキどもがあぁ!」





声を震わせなが、グローブのようなデカイ拳を握りしめるキラーカン




「ヤバイ・・」


「最悪だ・・」





「何が、俺達の時代だあぁー!」







キラーカンが、突進して来たので、カネゴンを置き去りにして、全員がダッシュで逃げた






















・・・命に嫌われている






キムコを食肉市場まで連れて行ってくれた人は、仲卸のゲンさんという人物だった



市場の食堂で、牛丼ではなく、名物の牛すじ丼を奢ってもらったのだが、これが安くて美味かった




まぁ、手っ取り早くいえば、汁だくの牛筋の煮込みにライスをぶち込んだだけなのだが







「よし、喰ったしけえるか、店まで送ってやるよ」




「あっ、東神奈川で大丈夫っす」





「なんだ、そんなとこで、いいのか?」





「ええ、ついでだから、友達の家に寄ってくんで」




「それなら、イイけど、女か?」



ゲンさんは、第一関節から先がない、小指を立てて笑った




「いやいや、そんなんじゃないですって!」




「俺も、オマエぐらいの歳の時に、今の俺みたいなオッサンに出逢ってればな」




「えっ・・?」




「いや、こっちの話よ気にすんな」



ゲンさんは、灰皿に煙草を押し付けて、立ち上がった









ゲンさんに東神奈川で降ろしてもらい、キムコはユンソナと同じクラスの女子に聞いた、アパートを目指して六角橋の商店街を歩いた




商店街が終わり、少し歩くと、目的の木造二階建ての古いアパートがあり


ペリカンJOGが停められていた



大きさからして、族ステッカーが剥がされた後があり、剣汝のステッカーだったんだなとキムコは確信したのだが








女の子の家に行くのは、初めてで、キムコは取り敢えず緊張をほぐす為に、ステッカーが剥がされたペリカンJOGに跨り、煙草に火を点ける





先ずは、なんて言おうか


アンソンより、豊子の話題から切り出そうか?


それとも、全く関係ない話題にするか?


そんな事を、考えてると





「それ、私の原チャなんだけど!」



声がしたので、振り向くと、赤い鳳凰のスカジャンのユンソナが立っていた





「よっ、久しぶり」



キムコは不意をつかれ、咄嗟に挨拶した




「何の用?」



ユンソナはキムコをまじまじと見て答えた




「いや、近くまで来たもんだから」




「一人?」



「そうそう、食肉市場の帰り」




「別に近くねーし」




(; ̄O ̄)(; ̄O ̄)


キムコが返事に困ってると




「焼肉屋のバイト?」




「まぁ、そんな感じ」



「ふーん」



ユンソナは返事しながら、煙草を咥えた




「この前さ、豚子ちゃんと豊子が学校に来たんだぜ」





「豊子が?」




「そう、お前に会いにさ」



「豊子、怒ってた?」




「違うって、心配して来たんだよ」




「そうなんだ・・」




「それは、そうと今週の土曜って暇?」




「なんで、クリスマスだから?」




「違うって、ほらコレ」



キムコは、例のタイマン状のビラをユンソナに見せて渡した




「もう、終わったのに、何でこんな事すんの?」




ユンソナは、読み終えると、ビラをクシャクシャに丸め放り投げた




「アンソンは、ユンの事が好きだからだろ」




「こんな事しても、意味ないじゃん・・」




「多分だけどさ、告る勇気がないんだよ、俺がアンソンの立場だったら、やっぱり、コレ、しか思いつかねーよ」





「だからって、勝てるワケないじゃん!」





「それがさ、猫ビルのタイマンってのは、勝っても多摩川にダイブするのが、昔からの決まりなんだってよ」





「何それ!あんな高いビルから飛び込んで、死んだらどうすんのよっ」




「負けても、アンソンは飛び込むと思うよ」





「私に、どうしろっていうのよ?」




「別に、どうもしなくていいって、ただ、それだけアンソンはユンの事が好きだって事を伝えに来ただけ」





「もう、いいよ」




「えっ・・」




「もう、私のことは、ほといってよ」




「そんな・・」





「確かに、豚美さんの言うとおり、豊子のせいにしたのは、私が弱いからだし、あんた達に助けて貰ったのも感謝してるし、あの晩、豚子ちゃんが家に泊めてくれた時は、凄い嬉しかった」






「だったら何で?」





「もう、疲れた・・」




投げやりに呟くと、ユンソナは煙草を投げ捨てた









「・・・・」








キムコは何も言えず、かといって、このまま帰る事も出来なかったので、アパートの脇にある、自販機で缶コーヒー二本買い、一本を座ってるユンソナの前に置き




自分も縁石に座った






「あのさ、俺らが黒猫に入ったキッカケって、豊子の事をハンチョッパリって馬鹿にして、豚子ちゃんと喧嘩したのが原因なんだ」







缶コーヒーを一口飲み、キムコは、なんとなく喋り出した




「そうなの?」





「ドブロク横丁で、アンソンとゼットンと豚子ちゃんの事、三人でボコッってさ、だから、お前が豊子のこと、ハンチョッパリって言った、気持ちも分からなくはないんだ」







「なんて事したのよっ!」








「その後、キッチリしめられたし、でも、それが原因で黒猫に入れたんだ」





「なにそれ、」




「でさ、豊子の事をハンチョッパリって言ったら、日本人の豚子ちゃんが怒ったから、実際、凄ぇービックリしたよ、同い年で、こんな日本人いるんだなって







「一っこ下のくせに・・」





「土手に豚子ちゃんが、乗り込んで来た時、逆に豊子が俺らをかばってくれたんだぜ」







「・・・・・」






「その後、集会前にアンソンが鮫島さんにまわされたステッカーを豚子ちゃんが投げつけたんだ」







「豚美さんじゃなくて、豚子ちゃんが?」





「そう豚子ちゃんが。投げつけた後に、豚美さんの支部がきて、喧嘩にならずに済んだけど、アンソンなんか正座させられて、中坊だった俺なんか半泣きだったよ」









「そんな事があったんだ・・」






そりゃ、今だってさ在日って分かると



馬鹿にしたような、白い目で見られるけどさ、あの街だとさ、族やってると関係ないんだよ




今回の抗争だって、ユンにしろ、アンソンにしろ、パクちゃんにしろ、皆んな在日なのに、全支部が走って助けに行ったんだぜ!








「・・・・」





帰りなんか、凄ぇー台数で、めっちゃ楽しかったよ



二~三年後、卒業して社会にでたら、また俺らは、馬鹿にされたり、白い目で見られると思うけどさ、



あの街で、在日として生まれ育って、族やって、皆と出逢い



俺はマジで良かったと、最近特に思うんだ





「アンソンも、楽しいって言ってた・・・」




「だからさ、ユンにも戻って来て欲しいんだよ」




「・・・」






豚美さんが、言いたかったのは本当は、そんな意味じゃないのかな?



あの人が喧嘩以外で、あんなに怒って、人に説教したの始めてみたよ








「・・・・」








「一応〜土曜日は、単車で迎えに来るから、2時にここで待ってよ」





「勝手に決めないでよ」




「外に居なかったら、ユンの事は、ほっといて黙って帰るからさ」




「・・・・」





「じゃあ、土曜日な」




キムコは、それだけ言い残して




コロッケと焼き鳥の匂いがする。商店街を逆戻りして帰った





















一人でも、私は 生きられるけど


でも誰かとならば 人生は遥かに違う


強気で強気で、生きてる人ほど 些細な寂しさで


つまずくものよ・・・



呼んでも 呼んでも とどかぬ恋でも


むなしい恋なんて ある筈がないと言ってよ


待っても 待っても 戻らぬ恋でも


無駄な月日なんて ないと言ってよ





めぐり来る季節を数えながら めぐり逢う


命を数えながら


畏れながら 憎みながら いつか愛を知ってゆく




泣きながら 生まれる子供のように


もいちど生きるため 泣いて来たのね




生まれた時だれでも言われた筈


耳をすまして 思い出して最初に聞いた



Welcome


































つづきま~す🐷






ブログ一覧 | スローなブギは、止めてくれ | 日記
Posted at 2023/12/15 22:44:26

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私はモービル1の
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