「デブ、給料いいんだろ、900 に積み替えてやろうか?」
オトンが
カウンターの指定席から
いきなり デブ巨摩に提案した
(ガビーン!私が一番恐れてた事を・・・)
「いや、大丈夫す」
意外にも
あっさりとデブ巨摩は断ったので
私は拍子抜けして
「そうなの?」
恐る恐る デブ巨摩に訊ねる
「そこの生意気な女に、アレじゃ勝てねーだろよ」
やけに機嫌がイイ
オトンが食い下がる
(黙れ!糞ジジイ)
「何とか つていけるし、やっぱり CB は 750 かな、と思うんす」
糞ジジイの誘惑に負けない
デブ巨摩の答えに
(ふぅ〜)
蓬莱豚美 ワインレッドの心の溜息
「いいね〜デブ巨摩君!」
オトンが、何故かツボにハマった
「それより、社長に教えて欲しい事が あるんですけど」
ブン!ブン!
CB の排気音がして
「CB750F タイヤ交換と点検完了でーす!」
SUZUKI と描かれたツナギ姿の
豊子が、元気良く入って来た
「悪り~な、デブ、娘2人の次は、孫 2人も面倒かけて」
「孫?なに言ってんすか、社長」
「ヨロシクなっ」
「いや、俺が聞きたいのは・・・」
ふと、夜中に目が覚めて
デブ巨摩が時計をみると
午前3時だった
嫁を起こさないように
静かに起き上がり
台所の換気扇のしたで
ショートホープに火を点け
小窓から、乾燥した澄んだ
夜空を見上げると
あの頃と 同じ
満月だった・・・
輪極道~4
焼肉屋の定休日の水曜日
銭形と豊子は
直接、チバラギの秘密練習場に行き
豚子と落ち合った
三寒四温の
生憎、三寒の日で
チバラギに入ると
急に風が冷たく感じられたが
豊子は、車では
決して味わえない
この、感覚が大好きだった
潰れた ゴルフコースの駐車場に着くと
既に豚子は来ていて
一人でグルグル 8の字をしていたが
豊子と銭形が到着すると
バイクを停め 降りてくるなり
「UNIQLO のウルトラ ライト ダウン メッチャ 温いで〜」
ライダースジャケットの前を
はだけて自慢気に見せる
「電熱ベストは?」
豊子が聞き返す
「アカン!アカン!中国製のドカチン用はモバがメッチャポンコツやねん」
「そうなのか?」
銭形も興味津々に聞き返す
「やっぱり電熱は 12V やないと、無理やで〜」
「UNIQLOは?」
「パチモンに比べたら上等や」
豚子は わざわざ脱いで豊子に渡す
「何コレ!スマホより軽いっ」
「袖なしベストなら398や、インナーなら最強やね」
「全く着てる感ないわね」
「せやろ、バイク用 変わんで良かったわ」
「私も買うわ!」
豊子は絶賛し終えると
「さて、今日はフロントブレーキ 即ち 前タイヤも使います」
「おおぉぉ〜!」
「ついにきたか」
「距離はこんぐらいかな〜」
2回目に持ってきて
クラブハウス裏に隠しといた
ジムカーナ用の小さな目印ポールを
豊子は移動させる
「えっ(; ̄O ̄)」
「なんなん!」
車両一台分しか延長されずに
置かれた目印を 豚子は見て叫ぶ
「アンタ なに期待してんのよ?」
「たったコレっぽっちって、なんなん!」
「そう、車両一台分、銭形さんは もうちょいか」
豚子の怒りをスルーして
豊子は冷静に置き直す
「じぇじぇじぇ!」
銭形も思わず悲鳴をあげる
「だって、二人ともリアは 出来るようになったし、コレで充分!」
「はぁ〜」
「鬼や」
二人が溜息を漏らすと
「まぁ、最初はね、握らなくていいから、人差し指と中指をブレーキレバーにかけて、握ったイメージでリアで減速して」
「こんな風に斜めに持つ感じですかね?」
銭形は 自分のブレーキレバーで
試しながら豊子にきく
「そんな感じですね」
「直キャブの ハイスロ はみんなこれやで」
10代の時 インパルスに
爆弾キットとハイスロを付けてた
豚子が自慢気にいう
「握るときも、指をかける感じで、効かせたら駄目よ、止めるんじゃなくて減速」
豊子は簡単そうに 簡単に言う
「よっしゃ〜」
豚子の合図で
銭形もその気になり
二人はグルグル周りだした
走ってみると車両一台分でも
余裕がかなり生まれた事に気付く
銭形と豚子
「握らなくていいから、指はレバーよおぉ」
豊子がインカムで叫ぶ
「ういーす!」
「了解でーす!」
「うおぉー」
銭形は体重移動を忘れ
早くもオーバーラン
「おらっ~減速の前に体重移動だろ!ボケてんのかジジィ〜!」
早くも、豊丸子から豊子に人格分裂障害に
「す、すいません」
豊子の罵声が響くが
指をレバーにかけ
妄想モードで周っているウチに
自然と二人は 僅かだが
レバーを効かせてから
旋回しだした
「効かせるんじゃなくて、減速の軽くタッチよおおぉぉ〜」
前ブレーキを使いだした 二人に
豊子は インカムでアドバイス
先日は店で 服部に豚子の 体幹の秘密を聞いたが
どうしてどうして
銭形もかなりいい
初めてのリッターバイクなのに
白バイ隊員のように背筋が伸び
乗車姿勢が素晴らしい
前職は警察官だから剣道か?
しかも、今年で
70 歳になると豚子から聞いてある
「大した、もんだ」
素直に感心しながら
前ブレーキを触りだした
銭形のライディングを観察していたら
「うおおおお~!」
フロントが切れ込みすぎて
銭形は転倒目前
「足付いてえええぇ!」
「うおおおお」
辛うじて左足をついて持ち堪えてる銭形に、豊子はダッシュで駆け寄り
支え、間一髪
「ととと豊丸子さ~ん!」
「ふう~危なかった」
「ああありがと~ございます」
涙目の銭形
「休憩しましょ」
「はははい」
豊子は サイドスタンドを立てやり
銭形が お礼をいいながら
CB から降りると
「カメえええ~」
と、豚子は叫びながら
派手な体重移動しながら
前ブレーキを使い、バンクさせ
パイロンを旋回
立ち上がりは膨れるが
サーキットなら
アウト イン アウト の100点
この狭い 8の字の速度でも
リアが潰れ 滑りかけてるのが分かる
もともと
スキーやスノボーが上手いのも
(やはり、体幹か?)
自分は 最初モトクロスから入った
事を思い出していると
「なんや、とっつあん、ひよったんか~」
豚子は 得意気に
右の時計回りも旋回して
銭形と豊子に向かって加速してくる
(ちょっと速いかな?)
豊子がそう感じた瞬間
「カメええええ」
(あっ危ない!)
「あかああああ~ん!」
豚子は リリースのタイミングを誤り
辛うじてバンクさせたが
その先、駐車場の
長方形の輪留めにまっしぐら
「あっ~!」銭形もさけぶ
ド~ン!
Z 650 があたり、よろめく豚子
「足ついてえええ~」
再び豊子の絶叫
「へっ・・・・」
直ぐに 豚子は足を付き
二人を見る
「・・・・・」
「死ぬかとおもーた!死なんけど」
泣き顔でスマイル
ピント はずれな
わがままブタエット
「足 余裕でついてるし・・・」
冷静に答える、豊子
「うちも休憩しますわ」
「そうね、反省会しましょ」
豊子の返事に
滝のような冷や汗で
何とか冷静に戻り
バイクを降りる
わがまま 豚エット
続きま~す🐷
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輪極堂 | 日記
Posted at
2025/02/25 18:05:40