中3の春
陰キャラな、科学部の男子と職業体験でバイク屋に行った
「おなごなのにバイク屋なんてけったいやなー」
「実家がバイク屋やねん!」
「はぁ、なにを ゆーとんねん」
「せやから、どんなもんか 見に来ったたんや」
「どこぞで、おじょーちゃんのオトンは バイク屋しとるんや?」
「神奈川や」
「そっか、格好ええ〜おとーちゃんやな」
「なにが、格好エエねん!オッサン、アホちゃうか」
「なんや、オートバイ嫌いなんか?」
「乗ったこともないのに、そんなん分かるワケないやろ」
「そりゃおじょーちゃんのゆーとりや、せやったら今から乗ってみんか?」
「ええの!」
「ち、ちょっと豚子ちゃん」
科学の陰キャラが、セーラー服の袖を引っ張る
「跨るだけやって、ほらボンも」
「は、ははい」
「おぉぉ〜足が届かへん」
「やっぱり格好ええね!」
豚子と科学部の陰キャラは
黒い大きなオートバイに 交代で跨たがった
「16になって、オートバイ乗って、おっちゃんやオトーちゃんの年まで、まだバイク乗っとったら、二人とも分かるよって」
輪極堂 秘密のステップ 3
左は速度こそは 遅いが
メリハリがついて来て
様になってきた 銭形と豚子
右はインの肩をパイロンに
「あっ!」
豚子は意識して回ってみたが、腰入れの体重移動が遅れてしまった
「何やってんだ〜!腰入れが遅せぇーんだよ、このドジでノロマな豚!」
相も変わらず、豊丸子の罵声がインカムに響く
銭形は左と同じように
クルッ♪曲がり
加速 ブォン♪
加速といっても、直線の距離が短いので一吹かしだが
「その感じ、90点!」
豊丸子が褒めると
銭形は そのまま得意な左旋回に
ブォーン♪クルッ♪
「銭形、アウト踏め〜!」
ブォーン♪
すると、アウト側の右手が
ハンドルを引きながら、立ち上がった
「おぉぉ〜」
「今のは、100点!」
豊丸子が インカムで 銭形に100点と怒鳴ったので
豚子は思わず、バイクを止めて見てしまった
「今、アウト側 の ハンドル引けただろ?」
豊丸子が銭形に怒鳴る
「は、はい!」
「その感覚で続けろ〜」
豊丸子は 銭形を褒めると 止まって見ている豚子に気付き
「おい、誰が休めってつったんだよ」
「へっ?」
豚子は とぼけて返す
「走れ!このドジでノロマな豚女!」
くっそ〜豊子の奴、完全に人格分裂しおって
豚子は、銭形の 100点 の怒りと嫉妬にまかし
苦手な 右時計回りでも
勢いよく加速し
ブォーン♪クルッ♪
旋回し 次のパイロンが見えた瞬間に
アクセルを捻ると
先程の銭形と同じように
アウト側の左手が ハンドルを無意識に引いてゆき
ブォーン♪
加速して立ち上がった
「えっ?」
そのまま、得意な左でも
ブォーン!クルッ♪
それを見ていた 豊丸子は咄嗟に
「豚子、アウト踏めー!」
銭形と同じ様に叫ぶと
豚子のアウト側の右手は
馬の手綱を引く様に
ハンドルを引きながら
加速!
「ドジでノロマな豚も100点」
「おぉぉ〜!」
「二人とも、今の感覚で死ぬまで回れ〜!」
豊丸子が唸り飛ばす
「じぇじぇじぇ!」
「立ち上がりはアウト踏んで、逆ハン気味にハンドル引くんやなー!」
「そうよっ!」
すると
二人共、苦手だった右時計回りの方が、アクセルの操作がない左手がハンドルを引く感覚が感じられので
速度こそは遅いが ドンドン、メリハリが付き 最小の円で 8の字を回りだした
10周ほどで、二人の走りが乱れ出したので
「よっし!休憩〜ピットイン」
豊丸子が 休憩の合図を出した
「二人とも、立ち上がりで ハンドル引く感じ掴めたでしょ?」
「はい!」
「乗馬の手綱みたいやった」
「そう、そんな感じです」
「乗馬したこと、あるんかい?」
「いや、ないけど、お前だって競馬からだろ」
「なんやと!」
銭形の反撃に豚子が怒るが
豊子が割って入った
「でも、手綱って表現はイイわね!まさに人馬一体とは バイクの為にある言葉よ」
「せやね〜」
「どっかの車メーカーが、やたら人馬一体をセールス文句にしてるけど、座ってハンドル回してるだけで、人馬一体なんてチャンチャラおかしいわ」
「炎上するからヤメんかい!」
豚子が豊丸子の暴走を止める
「豊丸子さん手綱は、わたしでも理解できたんですが、今一つ、質問があるんですけど」
銭形が恐る恐る、豊丸子に言った
「はい、なんでしょうか?」
「何故?立ち上がりにアウト側のステップを踏むんですか?」
「感じませんでした?」
豊丸子は質問を質問で返す
「ん〜?」
「もしかして、イン側のタイヤを潰す感覚?」
「えっ?」
「豚子さん大正解!」
「しかし、ステップ踏むと、地球の反力でバイクはインもアウトも関係なく起き上がろうとするんじゃ?」
銭形は頭の中を整理するために、思った事を、あえて口にだした
「そうですけどね」
バンク中、コーナーリング中には 遠心力もかかってますよね
「はい」
タマと腰を前に押し出しながら
タンクホールドして
遠心力に負けない様に
車体を抑え込んでいますよね
「はい」
その時に
反対のアウト側のステップを踏み
地球の反力で起き上がる力を
バンク角を維持する力に
変えてるんですよ
「バンク角の維持?」
大事です、試験にでます
「試験って・・・」
「そうなんやっ!」
「リアタイヤの イン側のショルダーが 潰れる感覚ありましたよね?」
豊丸子が 銭形のタイヤをチェックしながら訊ねる
「初めて感覚だったから、それがそうなのか、イマイチ」
「その初めてが、タイヤを潰す感覚ですよ、ほら、あんな低速でも きっちりショルダーまで」
豊丸子が CBのリアタイヤを触って見せる
「おぉぉ〜!」
旋回の終盤
次のパイロンが視界に入ったら
アクセルを開けながら
アウト側のステップを踏み込み
タイヤを潰すんです
「ハンドルを引く感覚は?」
「それは、ハンドルが切れて、バンク角が最大で回った証拠」
「ホンマに〜!」
「ついに、私が」
「こんな小さな8の字でも、ちゃんと加速して、タイヤを潰し、手綱を引いてコントロール出来たんですよ、銭形さん」
「しかも、1100ccやで〜」
「あ、あ、ありがとうございます」
銭形は 涙と鼻水を流し
豊丸子に頭を下げる
「ステップワークってのは、抜重ありきの 荷重なんやね〜」
豚子が 自分のタイヤをチェックしながら言うと、豊丸子と銭形は思わず目を合わす
「豚子さん、今の名言、頂きました」
「豚子、今のは、わしにも響いたぞ」
「なんなん?二人して」
「しかし、HONDA のタンク形状って 世界一ですね」
豊丸子は CB を見て呟いた
「そうなん?」
「このバイク、跨るとタンク大きいけど、見た目よりフィットしたのよ〜」
「いや、いや、これウチらには重いし大きいやろ〜」
「やはり、タンク形状ですかね」
銭形は 豚子をスルーして
豊子に訊ねる
「ですね、でも、それが ニーグリップ信者 を生んでしまう原因なんですけどね」
豊丸子は 可愛いくウインクする
「二―グリップ 信者って・・・」
「アカン、また炎上や・・・」
二人が 豊子の暴言に ドン引きすると
「ちょっと、豚子のも乗らして」
「ええよ!カッコ悪いから、タイヤの端っこ剥いてやー」
「オッケー♪ ずる剥けにしてあげる」
豊丸子はZ 650RSに跨ると
「軽っ!なにコレ!」
跨り、車体を左右に揺らした
「せやろー」
「ゼファーXより軽いんじゃないの?」
そう言いながら
車体を限界まで倒しだし
ブオォーブオォー
ブオォーブオォー
人差し指一本で
いきなりクラッチを繋ぎ
キキキー!
アクセルターンで
パイロンに向かっていった
「マジですか?」
「変態や」
ブオォーブオォー
ブレーキターンと アクセルターンを 合わせた二輪ドリフトで
ブオォーブオォー
キキー!
パイロンの 8の字を 白煙とスキール音で 一回も足を着かずに回りだす豊丸子
銭形と豚子の目に映ってるのは、ミッション イン ポッシブル な映画のスタント
「なんて、技?」
「多分、二輪ドリフト」
「初めてみた」
「ウチも生では」
「ジムカーナのレベルじゃないだろ」
「HONDA のタンク形状も 関係あらへんよね」
ブォブォブオォー
呆然と見惚れている 二人の前を豊丸子は リアブレーキをロックして 左足を投げ出し クルッとターンして 二人の前に止めた
「・・・」
「さっ、今日は リアロックのブレーキターンまでやるわよ!」
「正気ですか?」
「ホンマでっか?」
「練習かいし~!」
続きま~す
Posted at 2025/02/17 19:13:26 | |
トラックバック(0) |
輪極堂 | 日記