
長文でつまらないです。
素人の個人的意見ゆえ、全て正しいとは思いませんが
シートベルトに興味のある方は一読してください。
走りのアイテムとして4点ベルトがあります。
別名フルハーネスというものです。
走行会でも「4点以上を推奨」という項目がありますね。
こんな事を言うと怒られてしまいそうですが
僕はALTで4点ベルトを使いません。
ミニサーキットなら3点(純正)で充分だと思っています。
僕は純正ベルト部品、サブASSYを作っているメーカーに勤めていますが
純正ベルトはかなり優秀なことをご存知でしょうか?
標準的な機能はELR(エマージェンシー ロッキング リトラクタ)です。
これは緊急時にロックして乗員を保護する機能です。
どのようにロックするのか?
・ベルトの引き出し加速度が一定以上になるとロック
・車両が一定以上の減速Gになるとロック
・車両が一定以上の傾きをするとロック
ぶつかった時、転倒した時などにベルトがロックされる仕組みになります。
最近ではエアバッグ連動のPF(プリテンショナー フォースリミッター)や
レーダー探知によるブレーキ連動機能も付加されて
相当な高機能化、安全化が図られています。
何年もかけて開発→試験→見直し→試験・・・を繰り返し、全ての性能が満たされて世に出るものですが
一番わかりやすい強度試験では1トン以上をかけます。
ぶつかった時は1トン近くの力がベルトにかかるからです。
高級車同士が正面衝突した事故に遭遇したことがあります。
20年以上前の出来事であり、エアバッグは無い時代でした。
互いの速度は約80km、相対速度160kmの大事故です。
僕も救出にあたりましたが
ベルト装着の人は比較的軽傷で、非装着の人は即死でした。
救急搬送が終わってから気になるベルトを観察しましたが
ベルト取付け金具などは変形していましたが、破断することはなく
ウェビング(ベルト)も伸びは見られますが切れておらず
見事に乗員を保護していた状況を目の当たりにしました。
純正ベルトなど話題にもなりませんが、実は凄く優秀な性能を有しています。
では4点はダメなのか?・・・そうは思いません。
レーシングカーや戦闘機などのために作られた4点ベルト(4~6点)は
シンプルで非常に強固な造りになっており
適切な取り付けをすることで純正を遙かに超える性能を発揮します。
しかし・・・
よく見かけるものは、取り付けに「???」を感じるものが非常に多いのが実態です。
ファッションで付けているのでは?と思うものも多数あります。
その状態でトン単位の力が掛かればベルトが切れるか、取付け部から飛んでしまうと考えられます。
では、正しい取付けとは何なのか?
これがあまり知られていないところにもう一つの問題があると思います。
量販店、中古量販店、ネットなどで4点ベルトが手軽に入手できますが
売る方も取付けに対して特に説明をすることはありません。
走行会では、規則を厳しくすると参加者が減る恐れがあると思われ
主催側も強くは言えず「推奨」になってしまい、自己責任という事になるのだと思います。
みんカラなどを見ても適当にファッションで付けているものが多く
それを見た人や聞いた人が
シートベルトアンカーの取付け孔にアイボルトをねじ込んでベルトを付ければOK
と思っている人が多いのではないでしょうか?
(単なる飾りとして付け、使用しないなら何も問題はないですね(笑))
売る側、特に中古などで説明書もない場合も含めて参考になるチラシをお客に渡す
走行会主催側も参考のチラシを渡すなどをすれば
4点ベルトの取付けに対する認知度が上がると思います。
取付けはJAFの車両規則が参考になります。
JAFの規則書
2012国内競技車両規則第4編 附則(P489)から記載があります。
これらを満たすには、ボディに孔明け、規定のベース溶接が必要になります。
純正のベルトアンカー取付け孔にアイボルトを付けても適正なベルトの角度が得られず
充分な強度を得られない車種は多数あると思います。
僕の車(=SF5)はJAFの規則書を参考に
リヤ左を加工、ベース溶接
フロント左を加工、ベース溶接をして角度を満足
右側前後はベース溶接が難しいので純正ベルトアンカー孔を利用して角度を確保し
筑波や富士で4点ベルトを使っています。
純正のベルトアンカー取付け孔はメーカーが補強を入れ、強度も充分にあると思いますから
ベルトアンカー取付け孔の利用は良いと思っていますが
問題はベルト角度になるのでは?と思っています。
純正ベルトアンカー孔では角度や取付け状態が不適切な場合
孔を開けてアイボルトを付けなければなりませんが
ベルトアンカー孔から外れると車体の鉄板は薄く
孔を開けてアイボルトをナットで締めただけではスッポ抜けてしまいます。
(これで死亡した事例はあるようです)
そこでベースによる強度確保が必要になります。
肩部ストラップで見てみますと
床と水平な状態を0度として10~55度に規定されています。
三角関数で計算すればすぐわかりますが・・・・
衝突時に水平方向に1.0t(トン)の力がかかったとした場合
ベルトに発生する張力は
10(度):1.02t 20:1.07t 30:1.16t 40:1.31t 50:1.56t 55:1.74t 60:2.0t
という計算になります。
ここで注意したい事は
角度が急になるに従い張力がはね上がる事です。
角度と張力の関係は正比例ではないのです。
これは腰ベルトにも同じ事が言えると思います。
後部座席のベルト穴にアイボルトを付けて共締めをして
シートの間からベルトを出しているものを見ますが
ベルトを出している付近は相当な角度になっており
もしもの場合は簡単に切れてしまうのでは?と思います。
後部座席を外している場合は、まずまずの角度になっている車種もあります。
アイボルトで純正ベルトと共締めの場合は注意が必要です。
アンカープレート(ベルトの留め金具)などは板厚が3.2mmが主流で分厚い鉄板ですから
普通のネジ長さのアイボルトの場合は、アンカーの板厚分ネジ長さ不足=締付強度不足
になる恐れもありますから確認が必要であり
ネジ長さが不足する場合はロングタイプが必要になります。
これらを良く確認したうえで角度が急な場合や無理な取付けの場合は加工になりますが
孔開け、溶接をするには費用がかかるうえに、車の価値が低下してしまいます。
しかしベルトの角度が満足できなければ最悪の場合は切れてしまう(=死)
またはベルトがズレて内臓などを圧迫し重症または死に至るケースもあります。
ボディに孔を掘りベース溶接することに抵抗がある
年に数回ミニサーキットを走る程度
それならば不適切に取り付けをした4点ベルトより
着脱も楽でメーカーが煮詰めた3点で走り
やはり必要、と思うならプロショップに相談のうえ取り付けする方が良いのでは?と思います。
※純正3点ベルトで走る場合は
走る前にベルトを勢い良く引張ってロックするか?を確認してください。
4点の付けっ放しもあまり良いとは思えません。
純正ベルトは紫外線などによる劣化防止を相当追及していますが
4点は本来競技用のベルトであり、紫外線にそれほど強くないと思われます。
走行が終わったら外して暗所に仕舞う方が良いと思います。
ロールバーも装着せず
レーシングスーツも着用せずに走る僕がもっともらしく言っても説得力に欠けますが・・・
ベルトは命を守るもの
慎重な検討をされることを願います。