
ターボなのに
何故Eg本体チューンをするのか?
そんなご質問を数件頂きました。
また僕の素人ウンチクになりますが(笑)
その考えを少し書きます。
興味をお持ちの方
暑いですからお茶の準備をしてください。
ビールは1本OKとします。
途中退室は厳禁です(笑)
ブーストアップで出力向上
これがターボEgの一般的なチューニングであり
モノによっては出力やフィーリングが向上する有効なチューニングになります。
ターボとは排気ガス圧で羽根車を回し、もう一方の羽根車で大量の空気を吸込んで
Egに押し込んでやります。
Egに多くの空気(酸素)が入り、それに見合う燃料を入れてやれば
爆発圧が高まって出力向上になります。
じゃあブーストをガンガン上げればOKじゃない?(ブーストアップ)
いやそうとは限りません。
ターボの風量や回転数には限界があり
限界以上の空気量は出せません。
小さな扇風機で大型扇風機の風量は出せないのと同じです。
じゃあ大きなターボを付ければOKじゃない?(タービン交換)
いやそうとは限りません。
大型タービンを回せる大量の強い排気ガスを出せるか?
大型タービンが押し込む大量の空気を呑み込めるか?
つまりEg本体の能力が必要になります。
タービンに余力があり、Eg能力に余裕があればブーストアップが有効になります。
このような車種は燃料系、排気系なども余裕があるものです。
さらにEg能力に余裕があるものは大型タービンをも回せます。
ここでSF5です。
見た目はGC8と同じEgですが
タービンは小さく、Eg内部部品を変えて能力を下げてあります。
これで実用性や燃費を確保しています。
タービンが小さいのでブーストを上げても風量が出てきません。
そこでGC8のタービンを付けてECUセットを行いますが
今度は増えた空気量をEgが充分呑み込めません。
ブースト圧を1.2kgにセットしたとしましょう。
ブースト圧はEgの手前で拾いますから
見た目のブーストは1.2kgになりますが
Egの食欲が無い状態での圧力になります。
Egには思うような空気が入っていない事になり
「ブースト1.2だけどパワー無いよね」という状態になります。
加えて排気ガス量、ガス圧も弱い(少ない)のである程度回してから効いてくる
「ドッカンターボ」の傾向になります。
「ある程度の出力向上とフィーリングを確保する」
ここまでがこのEgの限界でした。
ひいき目に見て
KM1が計測する辛口セットなダイノパックでは200PS程度(予測値)
一般のダイナモで250PSというところです。
(ダイナモ係数は1.25という辛いダイノだそうです)
数字的には250PSでもEg本体の能力が違うので
GC8には程遠い「遅いEg」でありバトルで勝負になりません。
一般道、高速ではわからなくても
加速の繰り返しや中間加速の多いサーキットでは、その能力差が顕著に表れます。
それでもガンガンにブーストをかければもう少し空気を押し込めますが
タービンが過負荷となってしまいます。
無理にブーストを上げれば排気に負担がかかります。
排気残りがEg内部の温度を上げてしまい異常燃焼の元になります。
同時に排気温度も上昇してEgの排気部、エキマニ、タービンなどを破壊します。
ブーストを上げ過ぎれば空気温度(吸気温度)が上昇して異常燃焼の元になります。
空気温度が上昇すれば空気密度が下がって(酸素量が減る)パワーも出ません。
無理に押し込めて爆発圧力が上がったとしても
Eg内部がそれほど丈夫ではないので壊れてしまう可能性があります。
元々SF5のEg能力が高くない事はわかっていましたが
実際にタービンを替えてみて確信を持ち
そこからEgチューンの構想に入りました。
GC8かGDBかは迷いますが
Egブロック、クランク、コンロッド、ピストンの丈夫なGDBとすれば
大きな爆発圧力に充分耐えます。
シリンダーヘッド本体はSF5をコンバート
吸気、排気の量を決定するカムシャフトをハイカムにして
吸気、排気の時間を長くとることで
大量の空気を呑み込める→爆発力向上(出力向上)→大量の排気ガスをきちっと追い出せる(ガス量ガス圧大)→タービンを回せる
これで大き目のタービンを楽に回せて
大量の空気を呑み込めるEgになります。
これをブースト1.2kgにするとノーマルEgとはケタ違いの空気量を呑み込んだ状態での1.2kgですから
出力もトルクもケタ違いになるという具合です。
ハイカムにすると低回転が無くなるか?
例えば272°のハイリフトなどの過激なカムではそうなってしまいます。
カムの角度が大きいほどバルブ(吸気、排気)の開く時間が長くなり
リフトが高ければバルブの開く高さが大きくなり
低回転ではガス吹き抜けなどが起って扱いづらいものになります。
僕は256°を選びましたが
角度だけを見ればGRBと同程度になると思います。
さすがにSF5のノーマルEg、ノーマルタービンよりは低回転が多少弱いですが
セッティングをきちんとしてやれば充分に扱いやすい性格になり
朝の通勤渋滞などもバッチリです。
各回転しゅう動部研磨とバランシングは
摩擦ロス
ポンピングロス(吸気や圧縮などのロス)
ブレによる回転抵抗ロス
を減らしてやり
燃焼室研磨とピストントップの研磨は
点火後の火炎の広がりを速くすることでレスポンスに貢献します。
様々なロスは6000rpm時に25%にも達すると言われています。
もともと300PSの能力を持つEgでは約70PSもロス馬力を食われて
軸出力は230PSになってしまいます。
これを少しでも取り除いてやり
5PSでも10PSでも搾り出してやろうという考えです。
「ノーマルEgをオーバーホールしてバランシングと摺り合わせをしたらパワーが上がった」
これはロス馬力が減って軸出力が上がった事例です。
ロスを減らす事は出力向上とともにレスポンス向上、燃費向上、耐久性向上にも繫がります。
これにインジェクター、ポンプ、エアフロ、吸気、排気、点火など補器の能力を上げてやり
ECUをきちんとセットしてやれば純正部品ベースのEgといえどもびっくりするほど出力、トルク、レスポンスが向上します。
無理がないので吸気温度、排気温度まで程よくなってしまいます。
気になる出力を以下に記します。
(ノーマルEgの出力は予測)
出力変化(タービンは同じRHF5)
約200PS→267PS(辛口ダイノパック)
約250PS→333PS(一般ダイナモ)
トルク変化(タービンは同じRHF5)
約25kg・m→37kg・m(辛口ダイノパック)
約31kg・m→46kg・m(一般ダイナモ)
割合的に出力33%、トルク44%の向上となりますが
同じ出力のブーストアップ仕様とは全然異なる加速能力とトラクションになり
ステージとやり方次第で400PSクラスのマシンにまで喰らい付くことも可能(リスクはあります)
そしてバトルではターボラグなど微塵もなく8000rpmオーバーまでブン回り
全域レスポンスでライバルに喰いつける「速いEg」になります。
これは数字には表れにくいレスポンスとトルク特性が非常に優れているからであると解釈しており
ここにEgチューンの値打ちがあると思っています。
この仕様で乗りやすく、壊れにくく、燃費もノーマルと大差ないチューンドになります。
見た目が地味でターボ車ではマイナーですが
これが僕が考える「チューンド」であり
構想通りの性能を得られた事例になります。
Eg本体をチューンするワケ
お解りいただけたでしょうか?
あとは運ちゃんのレベルが上がれば言う事なし・・・というワケです(笑)