
別に写真部員だったわけでもカメラ小僧だったわけでもないのですが…
男の子にとってメカものは憧れの対象でした。
まだクルマやバイクには乗れない中で、カメラと言うのは現実味がありましたねぇ。
普通のサラリーマン家庭では、カメラは一家に一台の宝物…
キヤノン、ニコン、ペンタックスと言う言葉を覚えて、我が家のカメラがペトリと言う聞いたこともないメーカーだったことに、子供心ながら大きく落胆したものでした。
その後、親を散々焚き付けて買わせたカメラがキヤノンの高級機、A-1…
ボディが高価でレンズがf1.8になっちゃったけど、天にも昇る気持ちでしたよ。
当時、カメラはフイルムを入れて撮るもので、ピント合わせもマニュアルでした。
初めて月に降り立った宇宙飛行士もハッセルブラッドにフイルムを入れて手袋をしたままピントを合わせて撮っていたのであって、当時も基本的に同じだった時代…
カメラでオートと言うと、AE・自動露出のことで、AF・自動焦点ではなかったのよね。
自動でピントを合わせると言うのは極めて高度な技術だったようで、NHKのプロジェクトXでもジャスピンコニカの開発ストーリーをやっていましたよ。
触発されて、後年、銀座松屋の中古カメラ位置で探して買ってしまいました。
時が経って、ミノルタのα、キヤノンのEOSとカメラのオートフォーカス化が進んだのですが、依然としてカメラはフイルムを入れて撮るものでした。
私はと言うと、その後カメラ小僧になることもなく、我が家の家宝だったキヤノンA-1は誰に使われることもなく、いつの間にか押し入れの中で忘れ去られていきました。
社会人になった時に使っていたカメラはキヤノンのオートボーイ…
コンパクトフイルムカメラは純粋に写真を撮るための道具であって、カメラそのものは愛でる対象ではありませんでした。
撮った写真も大したものではなかったけどね(笑)
そんな時に目にしたのが「サライ」のライカ特集…
ライカというカメラがあることは知っていたけれど、当時はどんなカメラなのか見たこともありませんでしたよ。
これがライカなのか…
一眼レフでもないしオートフォーカスでもないのに、ニコンやキヤノンのオートフォーカスのフラッグシップモデルよりも高いなんて…
写りはともかく、機械としての姿格好や精密感、エピソードに大いに興味をそそられたものの、買うのかと言われても現実味がわきませんでしたよ。
その後、赤瀬川原平聖人の「ライカ同盟」に巡り合って、ちょうど流行の兆しを示していた中古カメラウイルス・ライカウイルスに羅患して、銀座の松屋や数多ある中古カメラ店などの治療院を受診して、いやはや酷い目に遭いましたよ(笑)
ポルシェに出会うよりも少しばかり前だったと思います。
このライカウイルスに感染した患者、皆同じような症状を持っていました。
まず、写真はレンズの作例のために撮るものだと言うこと…
趣味は写真ではなくてカメラそのものになっちゃった(笑)
クルマでも趣味はドライブではなくてポルシェとかになっちゃっているようなものですよ。
また、空シャッターと言う、マトモな、いや普通の人からしたら何の生産性もない行為を異常なまでに重視すること…
似たような症例として、巻き上げの感触、レンズのヘリコイドの手触り、グッタペルカ(貼り革)の質感などがあり…
これ以外にも、フレアやゴースト、二重線ボケと言った普通であれば忌み嫌われるレンズの癖が、ライカのレンズだと何故か「優れた特性」となってしまい、ともすれば「不良品」のレッテルを貼らてもおかしくないようなレンズが「クセ玉」としてもてはやされ、逆に高値を呼ぶと言う怪現象まで起きてしまう…
そして、世の中のカメラが当たり前にオートフォーカスになり、デジタル化が進む中にあって、頑なにそうした流れに背を向けると…
M型ライカのマニュアルレンズでピントを合わせるスピードは最新のオートフォーカス機より速いのだと…
んなはずないでしょ(笑)
デジカメも出始めの頃は「デジカメはクリエイティブな作品作りには向かない」とか言っているフォトグラファーもいたのに、最近はどうなのよと…
今や画像を切り取る装置はデジタルが当たり前で、自分でピントを合わせるなんて誰も思っていない…
そこらの尾根遺産に富士フイルムが何を作っている会社なのか聞いても「アスタリフトでしょ」と…
カメラのフイルムを作っていた会社だなんて誰も知らない…
デジカメのセンサーのサイズのAPSって何か聞いても誰も分からない…
マニュアルフォーカスどころかピントなんて概念がなくなりそうですよ。
でもその分、カメラのセッティングが複雑になり過ぎて、マニュアルでピントを合わせるよりよっぽど難しい…
ライカはM8からデジタルカメラとなり、現在はM11まで進化しています。
最新モデルは操作系が簡素化されたそうですが、それでも私にはとてもとても理解できませんよ。
電池すらないM3のボディで調整できるのはシャッターダイヤルのみ…
レンズでは絞りリングとピントリング、あとはフイルムの種類だけ…
これ以外、どういう写真が撮れるのかは全て撮影者の責任…
私のクルマとカメラ、ここで趣味の方向性を少し変えました。
クルマはよりオートマチックに、より多目的に…
カメラはより原点に回帰せんと…
画像を撮るだけならライカよりスマホの方がよっぽどきれいに撮れるのではないかなぁ。
でも、あの重量感、精密感、掌に載せた時の満足感、幽玄なシャッター音、恍惚となる巻き上げの感触…
M3は現行のM型ともまるっきり違うのよね(笑)